エニグモのテイクレートを調べて、ECサイトとしての強さを検証してみた

少し前にエニグモに関する記事を書きました。

Buymaを展開するエニグモのビジネスを分析してみた

書いた後、「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」で、ECサイトのひとつのKPIにテイクレートがある、ということを思い出したので、調べてみました。

テイクレートとは、総取扱高に対する売上高の割合を指します。マーケットプレイス型のECサイトでは、総取扱高を増やしながら、その中で自社の収益をどれほど確保するかが重要になるので、この割合を見るのですね。

エニグモのテイクレートは?

さっそく計算してみましょう。2017年度の第2四半期の数字を使います。

  • 取扱高:166.7億円
  • 売上高:19.2億円
  • テイクレート:11.5%

テイクレートが11.5%と出ました。この数字が高いのか低いのかを判断するため、他のECサイトの数字と比較してみましょう。前述の「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」に計算された数字があるので、それを引用します。

  • アメリカ:10%弱
  • 日本:7%~8.5%程度
  • 中国:3%程度

本を読めばわかりますが、それぞれビジネスモデル商慣習が違い、その結果からテイクレートも決まってきているので、単純な比較には注意が必要です。

この数字をみてみると、エニグモのテイクレートは、相対的に高い数値であることがわかります。それだけ、このプラットフォームに魅力があり、高い独自性を誇っている証拠とも言えるんじゃないでしょうか。

ただし逆に言えば、今後テイクレートを上げていくのは難しいのではないかと思うのです。つまり、今高いテイクレートをいろんな施策で維持しつつ、総取扱高を増やしていくかがポイントになると考えます。

この本は、決算資料を読んでみたいという人には本当おすすめです。

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鎌倉新書にみる、新しいプラットフォームのあり方

鎌倉新書という企業をご存知でしょうか。久しぶりに面白い企業を見つけたので、書いておきたいと思います。

株式会社鎌倉新書
株式会社鎌倉新書

ビジネスモデル

鎌倉新書という名前から、出版系かなと連想しますが、実態はだいぶ違います。Wikipediaから引用しますが、

1984年、清水憲二が豊島区に仏壇仏具業界向け書籍の出版を事業目的として設立。2000年には供養業界初の葬祭会社情報検索ポータルサイト「いい葬儀」開設。その後は「いいお墓」「いい仏壇」など多数の供養関連サイトを開設、運営。供養業者向けだけでなく一般向けセミナーも随時開催している。

引用:鎌倉新書 – Wikipedia 

「ライフエンディングサービス事業」として、葬儀社や仏壇、お墓などのライフエンディングに関わるポータルサイトの展開がメインになります。

収益モデルとしては、ECプラットフォームと同じになり、事業者とユーザーをマッチングさせるタイプで、事業者からの成約報酬が売上高になります。出店料や広告料はなく、完全成果報酬型になっています。

鎌倉新書_ビジネスモデル
(鎌倉新書のIR資料より)

つまり、いかに成約件数とその単価を増やすかがビジネスのポイントになります。そのためにも、プラットフォーム型のビジネスは、認知度を高め、事業者とユーザをプラットフォームに集めることが重要になりますね。

業績

売上高に関しては、過去5年で順調に伸ばしています。利益率もなかなか良い状況です。

鎌倉新書 通期業績

四半期業績に関しても見てみましょう。こちらについても売上高を堅調に伸ばしているように見えますが、利益率が若干低下していました。直近は回復しています。

鎌倉新書 四半期業績

ただし、今は成長期にあり、人材確保等の投資も行っていると言う説明がありますので、利益率の低下はあまり気にしなくても良いのかもしれません。

IR資料では、各事業の詳細なKPIも掲載されています。ウェブサービスとしてはお墓、葬儀、仏壇の順番で売上高が大きくなっています。

各事業のKPIとして、紹介数・単価・成約率が挙げられています。紹介数や成約率はどれもほぼ右肩あがりのように見えますが、単価だけがちょっと下がって受ける傾向に見えるのは気になるところです。以下は、お墓事業の例ですね。

LE事業1部(お墓事業)の状況
(鎌倉新書のIR資料より)

この単価の下落がどういう傾向を示しているのかは、この数字だけではちょっとよくわかりません。葬式等は家族葬が増えているなど小規模化が進んでおり、あまりお金をかけない傾向はあるのかもしれません。

関東圏では従来の一般葬(参列者が31人以上)が34%にまで減っている。逆に、一般葬より規模がぐっと小さい家族葬(密葬とほぼ同義、参列者30人以下、同32%)や1日葬(1日だけの葬儀、同11%)、直葬(葬儀を実施せず火葬のみ、同22%)が台頭している。

引用:“青山葬儀所離れ”にみる「現代葬式考」 – 日経トレンディネット今後の見通し

追い風となる外的要因が3つあります。1つは、都市化が進みこれまでの血縁や地縁等から選択されることが少なくなってきていることです。これはマッチングを主とするポータルサイトにとってプラスになります。

社会的背景(都市化)と鎌倉新書の役割
(鎌倉新書のIR資料より)

次に死亡者数は増加していく傾向にあるということです。人口動態は1番予測が固いものだと言われており、今の人口動態から予測すると、2040年までは死亡者数が増加するようになっています。

紹介数増加の背景①
(鎌倉新書のIR資料より)

最後にネット利用の増加です。いろんなサービスがネットを経由して利用されていくと言われており、様々なサービスのネット対応が重要になっています。鎌倉新書はポータルサイトをいち早く立ち上げ、この領域を今後広げていくことを考えていくとこのでも追い風になるでしょう。

紹介数増加の背景②
(鎌倉新書のIR資料より)

Yahoo!と提携してトラフィックを大きくする取り組みも行っていますね。

オーダーメイドの葬儀と全国のお墓・霊園のご紹介 – Yahoo!エンディング

また、ビジネスモデル自体として考えた場合にも、今は成果報酬型のみになっていますが、今後変化する可能性も考えられます。あくまで推測になりますが、かつての楽天は出店料のみにしていましたが、その後取引手数料や広告料をとるように変化しています。プラットフォームとしての魅力が高まってきたら、収益機会を増やす方向も考えられます。(そこまで市場が大きくなるのか、あるいは葬儀等の商材がそのようなモデルに合うのかはわかりませんが。)

さらに、先ほど挙げたように家族葬など簡素な葬式を好んであり、価値観が多様化する中でどういう風にビジネスモデルをブラッシュアップしていくのかという点は注目しておくべきかなと思います。

その辺については、新しいサービスを独自で立ち上げるなどの対応が進んでいる部分もあるように見えますので、こういう取り組みが売り上げや利益にどのように還元されていくのかを見ていくべきでしょう。

「偲び足りない」は自宅葬で解消? 面白法人カヤック×鎌倉新書が語る、新しい葬儀のあり方ログミー

先日のエニグモでも見たように、特定領域のプラットフォームというのは、業界事情などに合わせて作りこんでいくことで、参入障壁を高くすることができます。鎌倉新書の場合、葬儀社等の会社に販売サポートを行っていますので、こういう業界特有事情などを考慮した販売サポートなどは、真似しづらいノウハウになるでしょう。

[kanren postid=”4990″]

このように、これまであまりネットを経由して購買される対象になりづらかった商材が、対象になってきています。全体のEC化率はまだ伸びる傾向にあり、特定の領域の専門知識と組み合わせながら、プラットフォーム化される事例というのは今後もまだあるのかな、と思いました。

Buymaを展開するエニグモのビジネスを分析してみた

今日は、エニグモという会社を見てみたいと思います。

株式会社エニグモ | 世界が変わる流れをつくる。
エニグモ

ビジネスモデル

エニグモは、ソーシャルコマース事業とメディア事業の2つで構成されています。事業は2つあるものの、その9割位はソーシャルコマース事業であるバイマから創出されています。

BUYMA.com 世界中のパーソナルショッパーから海外通販ソーシャルショッピングサイト
BUYMA.com 世界中のパーソナルショッパーから海外通販 ソーシャルショッピングサイト

メイン事業であるバイマについては、利用したことがない人は以下の動画を見ていただくとわかりやすいのですが、簡単にいえばインポートファッションブランド商品に特化した、CtoCのプラットフォームと捉えれば良いのかなあと思います。

海外通販としては独立した地位を築いており、顕著な成長してきたのだと思われます。

バイマの売り上げは、プラットフォーム間での売買手数料になります。メディア事業に関しては広告収入ですね。

エニグモ事業構成
(IR資料より)

業績

こちらが、過去5年間のエニグモの売上高と営業利益率の推移です。ずっと売り上げは右肩上がりで、利益率も多少の凹凸あるものの、高い状態を維持しています。

エニグモ売上高

四半期で見ると期末に売り上げが上がったものの直近は、少し利益率が低下していることがわかります。

エニグモ四半期業績

利益が低下した分については、最近の決算発表資料でこのように説明されています。

エニグモ営業利益の差異分析
(IR資料より)

ここから分かる事は、バイマの事業に関しては利益が増えているものの、先行投資が営業利益の増加分を超えるほど行われていることで低下させています。また、メディア事業に関しても利益を減少を引き起こしているようです。

実際の販管費はこちらです。

エニグモ販管費

数字の比率で言えば人件費が一番大きく、増加比率も三番目に大きい数字になっています。それ以外に広告費や本社移転の費用も増加していることがわかりますね。

先行投資については以前から計画として予定していたものになるので、売り上げが予想以上に伸びなかったみるのが良いかと思います。

売上=総取扱高が伸び悩んだ理由は、ユーザーのアクティブ率の低下であり、そのアクティブ率の低下は、魅力ある商品のトレンドを見誤り、用意できなかったことだと分析されています。

ちなみに、この決算発表によって、エニグモの株価は大きく下落しました。

今後の見通し

今後の見通しについてはバイマ中心に考えますが、まずプラットフォームとしての市場規模を考察してみたいと思います。バイマの総取扱高は、400億円に届くかどうか、という規模です。

一方で統計データによると、BtoCのEC市場の中で衣服等の規模は、1.5兆円ほどあります。

EC化率

(経済産業省:平成 28 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査))

衣服等のEC化率は他のジャンルに比べて少し低めで、11%ほどになっています。

バイマがBtoCなの?という疑問もあると思います。僕自身も、統計データとしてはどっちなのかな?と思いました。なので、CtoCも見ておきましょう。統計データでは明確にフィットしそうな数字が見当たりませんでしたが、フリマアプリの市場が3000億円程度のようです。

いずれにしても、数千億~数兆円の規模は全体としてありそうです。そのうちのどれだけが、バイマの対象となるインポートブランドの市場なのかはわかりませんが。この場合、注目すべきはEC化率で、他のジャンルに比べてEC化率が低いことから、まだ伸びる余地があるという点でしょう。

また、競合との比較についても考えてみたいと思います。直接の競合というわけではないかもしれませんが、衣服のEコマースとして、ZOZOTOWNを手掛けるスタートトゥデイを選びました。

売上高比較

営業利益率比較

グラフを見るとわかりますが、売上高に関してはスタートトゥデイが大きくなっていますし、成長率も高くなっています。利益率で見ればエニグモも全然負けていないどころか、高い状態を維持しています。

ここから考えるのは、やはりインポートブランドの市場というのは、全体からみればある程度限定的な市場であり、ZOZOTOWNのようなオールジャンルの企業と直接比較するものではないかもな、ということです。

バイマは海外の様々なところにパーソナルショッパーを確保しており、プラットフォームとしては独自の地位を獲得していると思っていますが、今後の成長という意味だと、国内に限らず海外への展開が肝になってきます。実際、エニグモはバイマの海外展開もスタートさせています。

まとめ

エニグモは、バイマというインポートブランド商品に特化したCtoC市場を確立することで、成長してきました。プラットフォームの成長に合わせてユーザーや品ぞろえが拡大し、よりプラットフォームを拡充させようとしています。

短期的に利益が落ち込んだようですが、当面という意味では大きな懸念はないようです。また、長期的な成長という観点では、バイマの海外展開やバイマ以外の儲けどころなどを作ろうとしている段階といったところでしょうか。

Eコマース市場は群雄割拠な状況です。こうやって調べてみて、その中でここまで成長させているのはすごいなーと思いました。

TSUTAYAを運営するCCCが書店最大手だって知ってましたか?

TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ。TSUTAYAはCDやDVDの販売・レンタルのイメージが強いですね。最近でも、DVDレンタルし放題のサービスを発表しました。

TSUTAYA、月額1000円でDVD借り放題・動画見放題 (ITmedia NEWS) – Yahoo!ニュース

しかし、カルチュア・コンビニエンス・クラブは今や書店最大手だってご存知でしたでしょうか。

カルチュア・コンビニエンス・クラブについて過去にも記事にしてきましたが、今回は改めて最近の業績を確認するとともに、なぜ書店最大手になったのか。業界動向やカルチャーコンビニエンスクラブの戦略を確認したいと思います。

CCCの売上高推移

カルチュアコンビニエンスクラブは2014年から非上場になっており、IR資料はありません。

しかし、企業ウェブサイトに売上高が掲載されていますので、特定できる範囲でグラフにしたのが以下です。

2015年の売上高が特定できませんでしたが、それを除けば順調に成長しているように見えます。

CCCの売上高推移

会社概要|CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

取り巻く状況

書店業界は縮小が続いており、厳しくなっています。以前ここで上場企業である書店の分析をしましたが、小売としての書店業界は限界が見えてきています。

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もう一つの事業収益であるレンタル事業に関しても、ストリーミングサービスに押されており、なかなか難しくなってきているようです。

ただし、カルチュア・コンビニエンス・クラブはそれ以外にもTポイントや携帯電話事業なども行っており、どの分野がどれぐらいの収益を稼いでいるのかは簡単には特定が難しそうです。

CCCの戦略

CCCが書店最大手になった理由を考えるのがこの記事の目的なのですが、まずこれまでのカルチュア・コンビニエンス・クラブの企業戦略を整理しておきたいと思います。

簡単な模式図が以下のようになっています。店舗パッケージを企画し、その運営(仕入れ・販売)を行います。ただし、FC店の場合は販売はFC店側で行うことになります。TSUTAYAの場合は、CD・DVD・書籍などが対象になるわけですね。

TSUTAYAのビジネスモデル_mini

もちろん、TSUTAYA DISCASのようなネットサービスも行っていますし、Tポイントなど多岐に渡る事業を展開しているので、これは単純化した図になるのですが、小売店舗がビジネスの中心であり起点になっているのが、今後の戦略を読み解くポイントです。

TSUTAYAの店舗数は、CCCのサイトによると1468店舗あります(2013年12月末という古い情報ですが・・・)。

TSUTAYACCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

なので、市場が縮小しているからといって、AmazonやNetflixに対抗するために戦略シフトする、ということも戦略としては考えられなくもないのですが、CCCの場合は「小売店舗を起点に」今後の戦略を描いています。その理由は、これまでのCCCの事業モデルから理解できます。

なぜリアルにこだわるのか。映画や音楽が急激にネット配信にシフトする中、ネットに事業の軸を移すことはできなかったのか。理由を探せば、増田社長が進めてきた事業が、リアル店舗を軸にしたFC事業だったというところに必然的に行き着く。

引用:「TSUTAYA」は小売業の未来を示せるか (3ページ目):日経ビジネスオンライン 

そして、TSUTAYAとは異なる店舗フォーマットとして、「蔦屋家電」や「蔦屋書店」などを直営で実験的に展開しながら開発を進めています。

で、次の戦略がSPAモデルの展開になります。

TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い | メディア業界 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

オリジナルコンテンツを作り込み、それを自社販売網で売り出す。売上予測や在庫管理を一体的に行うのがSPAの特徴です。先ほどの図をベースに変えれば、左側の領域を自社でも展開するということですね。

TSUTAYAのビジネスモデル_mini

CCCは最近徳間書店を買収しました。出版社を買収していることから、こういうコンテンツ企画を行いたいという目的でしょうし、そのためには「売る先」としての書店販売網も強化する必要があるのです。これが、書店最大手になっていった理由だと、僕は推測しています。

ということで、SPAモデルは有名になりましたし、原理として理解するにはシンプルなのですが、実際に行うのは非常に難しいのだと想像します。もともと衰退していく業界と言われている中で、新しいビジネスを作り出しているのですから。

この記事を書くためにいろいろ調べたり、思考を整理してみると、調べる前は「結構いろんなことをやってるな」という漠然としたイメージを持っていましたが、戦略的整合性を描きながら挑戦してることがよくわかってきました。

非上場となってどうなるかと思っていましたが、CCCの業績は好調のようですし、新しいビジネスモデル構築に向けて邁進中ということです。

今日はこのへんで。

グルメサイトの二強「食べログ」「ぐるなび」のビジネス戦略を比較する

グルメサイトといえば、食べログやぐるなびが代表的でしょうか。それ以外にもホットペッパーやRettyなどもあるようですが、皆さんはどのサービスを利用していますか?

今回はアクセスが多そうな上位2社である、食べログとぐるなびを調べてみました。

Googleトレンドで比較してみると

食べログとぐるなびのGoogleトレンドを調べてみると、食べログの方が圧倒的に多くなっています。

こうなると、「メディアとしての支持を得ているのは食べログ」という印象を持ちます。

グルメサイトのビジネスモデル

食べログもぐるなびも、基本的には同じビジネスモデルになっています。

グルメサイトのビジネスモデル

収益は主にユーザーサイドと飲食店サイドがあり、ユーザーサイドの場合は有料課金、飲食店サイドは登録料や広告料になります。

つまり、グルメサイトは両者を媒介するプラットフォームになるので、両者に対して利便性を高めつつ、どこからどのようにお金をとるのかがポイントになります。

ユーザーのアクセスはどちらが獲得しているか?

食べログの公開資料によると、PV数は食べログの方が、ぐるなびよりもやや上回っているようです。

グルメサイトのアクセス数

https://tabelog.com/editorial/owner/tabelog_mediadata_1605.pdf

PVがユーザーからの支持だと読み替えると、食べログは多くのユーザーから支持されているのだと思います(ちなみに、僕は食べログを使うことが多いです)。そういう点では、ぐるなびよりもトラフィックを稼げているのは、成功しているといえるでしょう。

両者の今後の集客戦略も見てみましょう。

食べログは、ラーメンやスイーツなどで高い評価を集めた店を紹介する「食べログ 百名店」を企画し、新しいカットでメディアとしての魅力を高めるようです。

食べログの集客
(カカクコムのIR資料より)

ぐるなびは、インバウンド需要の取り込みや関連サイトとの連携によって、集客を高めようとしています。

ぐるなびの集客
(ぐるなびのIR資料より)

どちらも別メディアとの提携による集客拡大を述べていて、新しい集客方法を探しながら拡大しているようです。

どちらが収益が高いのか?

両者の売上高を見てみると、また違う様子が見えてきます。以下は、両者の過去5年間の売上高の比較です。(食べログはカカクコムのひとつの事業になっているので、IR資料で食べログの売上高だけを抜粋しています。)

食べログとぐるなびの売上比較

グラフを見てみればわかりますが、食べログは、ぐるなびの半分ぐらいの売上しかありません。食べログの方が使われているのに、ぐるなびの方が売上が大きいというのは、最初見たときは、違和感を覚えました。

いろいろ調べてみると、これはそれぞれの事業モデルの違いから出てきているようです。

食べログの収益モデルは、ユーザー課金、広告、飲食店課金の3つから獲得しており、飲食店課金が最も多くなっています。

食べログの収益構造
(カカクコムのIR資料より)

ぐるなびの収益モデルとしては、飲食店課金、広告になっており、ユーザー課金はありません。


(ぐるなびのIR資料より)

両者とも飲食店からの課金収入が最も大きな比率を占めています。やはり、飲食店の集客費用としてのメリットが大きいからでしょう。

しかし、食べログの場合は個人からの課金も少なからず存在しており、飲食店一辺倒ではないこともわかります。

飲食店サポートはどちらが手厚いか?

ぐるなびは、飲食店に向けた営業アプローチが強化されているようです。それはIR資料からも読み取れます。

ぐるなびの飲食店向けの案内ページがこちらです。

【飲食店の集客なら】ぐるなび掲載のご案内

一方、食べログの飲食店向けページはこちら。

食べログ店舗会員のご案内 [食べログ]

比較してみると、ページを作って集客を高めるというアピールポイントは共通していますが、リピーターの創出に向けた仕組みの提供や、顧客分析なども行っています。

さらに、1000人の営業部隊がオフラインで販促活動を行うなど、ネット企業というイメージが高い食べログ(カカクコム)とは違うアプローチになっていることがわかります。

ぐるなびの営業体制
(ぐるなびのIR資料より)

食べログはネット予約は拡大する方針ですが、経営サポートまでは行う様子がありません。飲食店へのサポートについては、経営方針としてぐるなびの方が力を入れていると言えるんじゃないでしょうか。

二社の違い

大きなレベルでは、両者とも事業モデルとして同じと捉えることができるのですが、力点の置いている場所が違うため、それがそのスタンスや収益の結果が異なっていることがわかりました。

食べログは、カカクコム全体がメディア企業であり、メディアとして事業を構築することが得意なようですが、一方で飲食店に営業をかけていくことは、ぐるなびの方が得意そうです。

その結果だと思うのですが、ぐるなびはチェーン店への強化がIR資料で強調されています。営業効率を上げるためには一件あたりの売上を高めるのが王道です。そのため、ぐるなびはチェーン店を多く持つ大企業がメインターゲットになっていると推測します。

一方で食べログは営業にあまりコストをかけない代わりに中小企業を多く対象にしている、という違いがあるように感じます。(そのため、収益としても多くは獲得できないのでは・・・。)

まとめ

  • PV数が多いのは食べログ
  • 売上が高いのはぐるなび
  • ぐるなびは営業強化でチェーン店を中心に経営支援

両社ともまだ伸びていますし、しばらく競争が続いていくのだと思いますが、集客チャネルを多様化させたり、オンライン予約を強化するなど、戦略が似通ってきている印象があります。今後はそれぞれ棲み分けを行いながら、市場を広げていくことでしょう。

この記事を書くにあたって、こちらの本を読みました。Kindle Unlimitedに入っている人は無料で読めます。ライトな本ではありますが、飲食店業界が置かれている問題や解決策が端的に書かれていて、面白かったです。

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書店が2割の自治体で消滅。書店を経営する企業の業績はどうなってる?

書店が2割の自治体でない、というニュースがありました。

「書店ゼロ自治体」が増加!最も書店が少ない地域は? | ホウドウキョク

また、このブログで過去に三洋堂に関する記事を書いたせいか、アクセス解析をみると「三洋堂 倒産」というキーワードで訪問している人がいるのを見て、え?と思い、久しぶりに三洋堂の業績を確認してみることにしました。

ちなみに、過去に三洋堂について書いた記事がこちらです。

書店で保険が売られる時代。今後のリアル書店は生き残れるか

三洋堂ホールディングスの業績

以下が、過去5年の通期業績です。

三洋堂HD通期

売上が低下傾向にあります。営業利益率もあまり良いとはいえません。

IR資料をみても、書店事業の衰退を止められず、苦戦していることがわかります。「今は事業の転換期」として上場以来初の無配となっています。

三洋堂HD 株主還元

他の書店業の業績もみてみる

書店業で上場してきる企業について、比較してみましょう。上場していて業績が確認できたのは、丸善、文教堂、ビレッジバンガードです。

ちなみに、他にも大きな書店は存在していますが、非上場が多いのです・・・。参考までに、他サイトで書店別の売上高をまとめた記事があったので、ご紹介しておきます。

発表!書店の売り上げランキングベスト20 | コトビー[KOTB

さて、それでは上場している各社の売上高の推移がこちらになります。

書店売上高

まず売上規模でみると、丸善が突き抜けて大きくなってます。それ以外は、同じぐらいの規模ですね。丸善はジュンク堂も買収して、スケールはありそうです。

次に利益率も見てみます。

書店営業利益率

こちらだと、どこも波がありながら、低い利益率です。業界全体がなかなか利益を出すのが難しいのがわかります。

ビレッジバンガードは、雑貨比率を高めて書店の利益率の低さをカバーするのが特徴だと思っていましたが、他社と大きく違うわけでもなさそうです。

一番売上が大きい丸善でも、文教市場や図書館市場で売上と利益を稼いでいて、店舗や出版はジリ貧。

丸善CHI事業セグメント

こちらの東京商工リサーチの調査結果を読む限りでは、書店の売上は減少しており、業界全体として苦境にあることがわかります。

「全国書店1,128社の業績動向」調査東京商工リサーチ

個人的には電子書籍の利用が増えているので、紙で本を読む機会が減っているのですが、とはいえ本屋がなくなっていくのは寂しいものです。

 

最近、この本を読みました。テレビの今後とか、フジテレビがなぜ勢いがなくなったのかなどがわかって、非常に面白かったです。

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カメラのキタムラの業績からみる、写真印刷市場の動向

先日カメラのキタムラに行ったら、非常に混雑をしていて、失礼ですが驚きました。

写真のプリント市場と言うのはデジカメやスマホの普及によって減少していると思っていたので、写真をメインにビジネスをしているカメラのキタムラが、とても盛況の状況を自分でイメージできていなかったせいです。反省しました。

というわけで、カメラのキタムラの業績を確認して、業界動向やカメラのキタムラの戦略を探りたいと思います。

カメラのキタムラの最近の業績

まず過去5年間の通期業績から。

売上は減少しています。最新の通期では赤字も計上していますね。

四半期でみても苦戦している印象があります。

IRの資料を見ても、ここ数回の四半期発表で業績があまりよろしくないことが書かれています。

とは言え、カメラや写真の業界が変動している中で、無策であったはずはありません。カメラのキタムラはどういう戦略の変遷を取り今どこに向かおうとしてるのでしょうか。

カメラのキタムラの戦略

Wikipediaに、これまでの戦略概要が書かれています。

・日本におけるデジタルカメラの急速な普及に伴い、2000年代前半には売上が大幅に減少する写真用品店やDPEチェーンが多かった。
・これに対しカメラのキタムラは、フルデジタル・ミニラボの全店への導入を2001年11月に完了し、デジカメプリント需要に応えられる体制をいち早く築き上げた。
・さらにデジタルカメラ販売においては、家電量販店に価格勝負を挑んだ。
・デジカメ販売での利益は薄くなるが、得意客をつくることでデジカメプリントの受注を増やし、利益はそこから確保する。
こうして同チェーンは、生き残りと成長を図った。

引用:カメラのキタムラ – Wikipedia 

非常にわかりやすいですね。カメラはデジカメなどで価格競争を行い、プリントサービスによって収益を作り出すモデルをとってきたようです。

さらに最近ではスマートフォンの販売も取り扱っており、売上拡大のチャネルを増やしてきました。

だいたいわかったのですが、具体的な状況確認するために、もう少し細かい業績を見てみようと思います。

セグメントごとの売上

IR資料から、各セグメントの業績を確認しましょう。以下が、セグメントごとの売上になります。いくつか事業がありますが、圧倒的に店舗販売の売上高が大きいですね。

キタムラ セグメント別売上高

そして、こちらが過去3年の売上高の推移になります。

セグメント別売上高推移

さらに経常利益も見てみると、過去3年で店舗販売セグメントが減収減益になっています。これが、全体の業績に最も大きい影響を与えている状況です。

キタムラ セグメント別経常利益

店舗販売のさらに詳細を見てみると、売上高として構成比率が高いのは、「イメージング部門」と「ハード部門」。最も売上高が高いのが「ハード部門」で、デジタルカメラやスマートフォン販売が対象になっています。そして、その売上高が最も落ち込んでいるのも「ハード部門」です

キタムラ 店舗販売セグメント

各部門の利益率は発表されていないので、売上高側からの推測になりますが、まずデジタルカメラ市場全体で、販売台数が落ちてきている状況があります。

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そして、スマートフォンについても、総務省の販売ルールの変更などもあり、キタムラは影響を受けているようです。

カメラのキタムラ大量閉店は、総務省のスマホ割引規制が影響か?広報に聞く – CNET Japan

IR資料によると、2018年3月期の柱は、次の6つになっています。

  • 店舗の戦略的配置
  • 専門性の強化
  • 固定費の削減
  • イメージング商品のラインナップ拡充
  • オムニチャネルの加速
  • 七五三・年賀状

これを読む限りは、1000店舗を超える店舗網を生かした戦略がベースにあり、カメラやスマホの販売、写真印刷の販売というモデルはあまり大きな変化を行わないように見えますね。

スマホの普及、インスタグラムなどのSNSの普及で、僕らが撮る写真の数は圧倒的に増えました。今後は、それをどう保管したり、アレンジしたり、シェアして楽しむか、というところに一層フォーカスされていくと思います。

久々に店舗に訪れたらとても人が多かったのですが、数字を見る限りはやや厳しい印象を持ちました。今後、キタムラがどうビジネスを展開していくのでしょうか。

GoProにみるアクションカメラ市場の現在

GoProが注目されてから、アクションカメラが流行ってますね。

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最近見た映画のオデッセイでも、いろんなシーンでGoProが登場してきていました。

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ということで、アクションカメラの市場動向がどうなっているのか、その中でリーダー企業といえるGoProがどのような業績で、戦略を持っているのかを見てみたいと思います。

データでみるアクションカメラ市場

販売データでみても、デジタルビデオカメラ市場の中で、アクションカメラは大きく成長しているようです。2016年9月の記事ですが、BCN RETAILの記事によると、

一方、「Go Pro」に代表されるアクションカメラは伸びている。デジタルビデオカメラ全体に占める販売台数構成比は、2013年以降、急拡大し、2015年には15.0%を占めた。月単位で見ると、昨年12月からさらに上昇し、直近の7月は32.2%、8月は33.7%に達した。

アクションカメラが拡大 変わるビデオカメラのニーズと用途 – BCN RETAIL

と書いてあります。これをみると、アクションカメラ市場は拡大していることがわかりますね。

アクションカメラの先駆けであるGoProは調子良い?

アクションカメラのリーダー企業といえばGoProですが、実は苦戦しています。通期5年の業績推移を見てみると、2015年をピークに、2016年は売上が低下しています。さらに、赤字ですね・・・。

こちらが直近4四半期分の業績です。

恐らくクリスマス商戦で12月期は売上が伸びていますが、いずれもずっと赤字になっています。

GoProは、新しい領域を開拓して売上を伸ばしてきましたが、それもニッチにとどまっていて、新しい顧客層の開拓やサービスの開発が必要と言われています。

これまで、撮影された動画を利用したメディア企業を目指して諦めたり、ドローン製品を開発してすぐリコールするなど、いろいろ苦戦しているようです。

脱「一発屋」狙うGoProが好決算 中国と欧州でカメラ製品好調 | Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)
GoProドローン「カルマ」まさかの全機リコール発売後わずか16 | ROBOTEER

バランスシートをみても、自己資本が減少しており、長期負債が増えているのがわかります。

こちらが2016年12月時点で、

BS Annual

こちらが2017年6月時点です。

BS Quarter

GoProが苦戦する理由

では、なぜGoProが苦戦しているかといえば、Business Insiderの記事に端的に書かれていました。

しかし、GoProはスマートフォンを手に入れた消費者に、もう1台、カメラを購入させるという壁にぶつかってしまった。加えて、GoProが切り開いたニッチな市場には、多くの安価な競合製品が登場した。GoProのフラッグシップモデル「Hero5 Black」は、399.99ドル(約4万6000円)で販売されている。しかもハーネスやマウントなどは別売りだ。

引用:スマートフォンの普及で苦戦するGoPro | BUSINESS INSIDER JAPANスマートフォンでの動画撮影の普及

 

まず、スマートフォンのカメラ性能の向上です。通信容量などいろんな環境が相まって、動画の広告やコンテンツが増えています。そのようなトレンドと相まって、スマートフォンで動画を撮れば、わざわざGoProを買わなくても、という流れが生まれて、結果としてGoProの市場を小さくしてしまったと考えられます。

少し古いですが、こういう調査結果もあります。

動画撮影はデジカメよりもiPhoneで行う人が多数! – iPhone Mania

廉価品との競争激化

もうひとつは、廉価品との価格競争です。アクションカメラの機能自体はそれほど特殊じゃないこともあって、中華系のアクションカメラが格安で台頭してきています。

アマゾンで「アクションカメラ」と検索すると、格安でGoProにそっくりなカメラがたくさん出てきます。価格は、数千円程度になっていて、GoProに比べると格安です。

Amazonの検索結果(アクションカメラ)

僕も1つ購入してみました。

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使ってみると、価格の低さと相まって気軽にがしがし使えます。広角レンズはやはりスマホとは違った切り取り方をしてくれるので斬新です。写真も動画も、だいたいiPhoneと同じぐらいのクオリティがあり、その程度で問題なければ、実用的なレベルです。

ということで、GoProは高級路線だと思うので、そこで一定のニーズを生み出せるか、あるいはドローンなど別領域でブレイクスルーできるか、など経営面では結構課題が多い印象を持ちました。

ちなみに、最近Kickstarterで面白い動画撮影ガジェットを見つけました。ウェアラブルで動画撮影できる、というもので、こちらも数千円です。こういう手軽に楽しめる動画撮影、というのは今後もトレンドとしてありそうです。

最近、「決算を読む習慣」を読みました。「決算を読めるようになるノート」の著者で、noteの記事と同様、非常に読みやすくて示唆に富んでいました。

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ERP大手のSAPがなぜデザインシンキングを手掛けるのか

ERPパッケージを手掛ける大手企業のSAPが、デザインシンキングのワークショップをシリコンバレーで開いているという記事を見て驚きました。なぜSAPでデザインシンキングなんでしょう?

デザインシンキングで刷新された顧客と共創する企業体質 [SAP] | ISSUES | WORKSIGHT

デザインシンキングを取り入れている事は、公式サイトでもアピールされています。

Design Thinking with SAP | SAP

さらにYouTubeには、日本製紙を対象にしたデザインシンキングワークショップの様子が掲載されています。

SAPが何を目指しているのか、決算内容やIR資料も含めて、企業戦略を考えてみたいと思います。

SAPの業績

業績は、通期で見ると、劇的とは言わないまでも伸びています。

SAP

ではIR資料も見てみましょう。2017Q2のプレゼンテーション資料をみると、クラウドサブスクリプションの成長を強調しているのがわかります。Key Performance metricsのひとつにCloud Subscription & Support Revenueが記載されています。

sap 2017 q2 presentation.pdf

念のため数字を見ておくと、クラウドサブスクリプションは全体の売り上げの中でまだ小さなものです。それでもその領域が確実に伸びているとアピールをするのは、企業戦略上重要な意味が持っており、投資家も興味関心が高いからだと考えられます。

sap 2017 q2 presentation.pdf (1)

逆に、デザインシンキングなどの取り組みはIR資料には特に見られませんでした。長期的な取り組みであり、このような業績に直接寄与するかは測りづらいという面もあるのかもしれません。

SAPの戦略シフト

では、デザインシンキングをなぜ取り入れているかということを考えてみたいと思います。

SAPなどのERPパッケージは、様々な業種業界にいる企業のベストプラクティスをパッケージに取り込むことで、生産性が向上することを売りにしてきました。

しかし、それだけでは新しい付加価値を追求することが難しくなってきており、ビジネスプロセス時代を見直したり、UIなどのフロントエンドに価値を見いだすなど、新しいアプローチが求められているのだと推測します。

また、YouTubeに出てきた日本製紙のように、長い顧客のビジネス自体を成長させることが、SAPの成長にもつながるケースになる、という点もあるのかもしれません。

 

最近読んだ「9プリンシプルズ」でも書かれていましたが、現代は複雑性が高まっていて、不確実性に対応したり、新しいチャレンジをするなどよりクリエイティブな要素が求められている時代です。

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SAPは、そのような新しい時代に合わせた戦略シフトを行っているように感じました。

Netflixがオリジナルコンテンツを強化する理由

VODは、僕はAmazonプライムを使っているのですが、今日はネットフリックスの話です。

この記事を読んでいろいろ面白かったのと、

Netflixの世界戦略を「アニメ」に見た──独自作品の配信を強化する本当の理由|WIRED.jp

今ちょうど「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」を読んでいて、ネットフリックスの現在の決算状況を自分で確認したくなったので。

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ネットフリックスは、オリジナルコンテンツへの投資に熱心です。それは、先ほどの記事にも書かれています。

なぜネットフリックスは、これほどの金額をオリジナル作品に投じているのだろうか。正解は、そのほうが権利関係が格段にシンプルになるからだ。 現在のアニメの多くは、地域ごとのライセンスが複雑に入り組んでいる。このため、ネットフリックスは世界中で一貫したラインナップを提供することができない。契約が切れてしまえば、ユーザーが視聴済みかどうかに関係なく、そのアニメは見れなくなってしまう。

引用:Netflixの世界戦略を「アニメ」に見た──独自作品の配信を強化する本当の理由|WIRED.jp 

 

オリジナルコンテンツには、大きな金額が投資されているようです。

同社は16年に独自コンテンツの制作に50億ドル(約5,460億円)を投資し、さらに17年には60億ドル(約6,552億円)を投じている。これは、NFL単体に毎年20億ドル(約2,183億円)近くを支払っているESPNを除けば、どのテレビネットワークやストリーミングサーヴィスよりも高額である。

引用:Netflixの世界戦略を「アニメ」に見た──独自作品の配信を強化する本当の理由|WIRED.jp 

 

これがどれぐらい大きい金額なのかイメージをつかむため、決算の状況を見てみましょう。

ネットフリックスは増収減益

まずは、売上です。右肩上がりですね。順調に伸びているのがわかります。ただし、利益率は低下気味です。売上高は最新の2016年だと88億ドルぐらいです。Wiredの記事の数字によれば、60億ドルをオリジナルコンテンツに投じているということですから、売上高の3/4ぐらいの規模です。すごい大きな投資ですね。

Netflix Income

ちなみに、四半期でみても傾向は同じです。

Netflix Income Quarterly

増収減益ということは、コストを増加する要因があるということです。具体的な項目でみると、全体的にコストは上昇しているのですが、研究開発費が比率としては高くなっているようです。

そこで、今度はバランスシートを見ていきましょう。

ネットフリックスのバランスシートが大きく変化している

バランスシートを見てみます。変化を確認するため、2014年と2016年で比較してみましょう。

2014年

2016年
Netflix BS 2016

比較してみると、全体的にバランスシートが大きくなっている部分もあるのですが、まず左側(資産)をみると、明らかに流動資産(キャッシュ)が減って、固定資産が増えています。この固定資産で占めているのが「無形資産」です。50億ドル弱が増えており、これがオリジナルコンテンツに該当すると思われます。投資したお金がこちらの資産として計上されているわけですね。

次に右側(負債・資本)の資金調達側にも注目してみましょう。長期負債の割合が大きく増えていますね。自己資本比率は低下しています。なので、資金は長期負債を中心に調達しているのがわかります。

さらに直近の四半期でみると、長期負債の割合をさらに増やしています。

以上を見た通り、現在は大規模な投資によってコンテンツを独自で作成し、囲い込みを図っているフェーズと考えます。利益を圧迫させたり、自己資本比率を大きく下げても投資する、という戦略は、明らかに「先行投資」であると想像します。

Amazonも独自コンテンツを強化していますし、テレビがコンテンツと放送の両方を牛耳っていた時代が終わり、今後はこういう新しいプラットフォーマーがコンテンツを握って垂直統合していく世界が来るようです。

ネットフリックスにいつか加入する日が来るかな。

 

この記事を書く参考になるかな、と思って以下の本を読みました。日本のテレビやVODのここ数年の動向が理解できてよかったです。

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