株式会社鎌倉新書

鎌倉新書にみる、新しいプラットフォームのあり方

鎌倉新書という企業をご存知でしょうか。久しぶりに面白い企業を見つけたので、書いておきたいと思います。

株式会社鎌倉新書
株式会社鎌倉新書

ビジネスモデル

鎌倉新書という名前から、出版系かなと連想しますが、実態はだいぶ違います。Wikipediaから引用しますが、

1984年、清水憲二が豊島区に仏壇仏具業界向け書籍の出版を事業目的として設立。2000年には供養業界初の葬祭会社情報検索ポータルサイト「いい葬儀」開設。その後は「いいお墓」「いい仏壇」など多数の供養関連サイトを開設、運営。供養業者向けだけでなく一般向けセミナーも随時開催している。

引用:鎌倉新書 – Wikipedia 

「ライフエンディングサービス事業」として、葬儀社や仏壇、お墓などのライフエンディングに関わるポータルサイトの展開がメインになります。

収益モデルとしては、ECプラットフォームと同じになり、事業者とユーザーをマッチングさせるタイプで、事業者からの成約報酬が売上高になります。出店料や広告料はなく、完全成果報酬型になっています。

鎌倉新書_ビジネスモデル
(鎌倉新書のIR資料より)

つまり、いかに成約件数とその単価を増やすかがビジネスのポイントになります。そのためにも、プラットフォーム型のビジネスは、認知度を高め、事業者とユーザをプラットフォームに集めることが重要になりますね。

業績

売上高に関しては、過去5年で順調に伸ばしています。利益率もなかなか良い状況です。

鎌倉新書 通期業績

四半期業績に関しても見てみましょう。こちらについても売上高を堅調に伸ばしているように見えますが、利益率が若干低下していました。直近は回復しています。

鎌倉新書 四半期業績

ただし、今は成長期にあり、人材確保等の投資も行っていると言う説明がありますので、利益率の低下はあまり気にしなくても良いのかもしれません。

IR資料では、各事業の詳細なKPIも掲載されています。ウェブサービスとしてはお墓、葬儀、仏壇の順番で売上高が大きくなっています。

各事業のKPIとして、紹介数・単価・成約率が挙げられています。紹介数や成約率はどれもほぼ右肩あがりのように見えますが、単価だけがちょっと下がって受ける傾向に見えるのは気になるところです。以下は、お墓事業の例ですね。

LE事業1部(お墓事業)の状況
(鎌倉新書のIR資料より)

この単価の下落がどういう傾向を示しているのかは、この数字だけではちょっとよくわかりません。葬式等は家族葬が増えているなど小規模化が進んでおり、あまりお金をかけない傾向はあるのかもしれません。

関東圏では従来の一般葬(参列者が31人以上)が34%にまで減っている。逆に、一般葬より規模がぐっと小さい家族葬(密葬とほぼ同義、参列者30人以下、同32%)や1日葬(1日だけの葬儀、同11%)、直葬(葬儀を実施せず火葬のみ、同22%)が台頭している。

引用:“青山葬儀所離れ”にみる「現代葬式考」 – 日経トレンディネット今後の見通し

追い風となる外的要因が3つあります。1つは、都市化が進みこれまでの血縁や地縁等から選択されることが少なくなってきていることです。これはマッチングを主とするポータルサイトにとってプラスになります。

社会的背景(都市化)と鎌倉新書の役割
(鎌倉新書のIR資料より)

次に死亡者数は増加していく傾向にあるということです。人口動態は1番予測が固いものだと言われており、今の人口動態から予測すると、2040年までは死亡者数が増加するようになっています。

紹介数増加の背景①
(鎌倉新書のIR資料より)

最後にネット利用の増加です。いろんなサービスがネットを経由して利用されていくと言われており、様々なサービスのネット対応が重要になっています。鎌倉新書はポータルサイトをいち早く立ち上げ、この領域を今後広げていくことを考えていくとこのでも追い風になるでしょう。

紹介数増加の背景②
(鎌倉新書のIR資料より)

Yahoo!と提携してトラフィックを大きくする取り組みも行っていますね。

オーダーメイドの葬儀と全国のお墓・霊園のご紹介 – Yahoo!エンディング

また、ビジネスモデル自体として考えた場合にも、今は成果報酬型のみになっていますが、今後変化する可能性も考えられます。あくまで推測になりますが、かつての楽天は出店料のみにしていましたが、その後取引手数料や広告料をとるように変化しています。プラットフォームとしての魅力が高まってきたら、収益機会を増やす方向も考えられます。(そこまで市場が大きくなるのか、あるいは葬儀等の商材がそのようなモデルに合うのかはわかりませんが。)

さらに、先ほど挙げたように家族葬など簡素な葬式を好んであり、価値観が多様化する中でどういう風にビジネスモデルをブラッシュアップしていくのかという点は注目しておくべきかなと思います。

その辺については、新しいサービスを独自で立ち上げるなどの対応が進んでいる部分もあるように見えますので、こういう取り組みが売り上げや利益にどのように還元されていくのかを見ていくべきでしょう。

「偲び足りない」は自宅葬で解消? 面白法人カヤック×鎌倉新書が語る、新しい葬儀のあり方ログミー

先日のエニグモでも見たように、特定領域のプラットフォームというのは、業界事情などに合わせて作りこんでいくことで、参入障壁を高くすることができます。鎌倉新書の場合、葬儀社等の会社に販売サポートを行っていますので、こういう業界特有事情などを考慮した販売サポートなどは、真似しづらいノウハウになるでしょう。

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このように、これまであまりネットを経由して購買される対象になりづらかった商材が、対象になってきています。全体のEC化率はまだ伸びる傾向にあり、特定の領域の専門知識と組み合わせながら、プラットフォーム化される事例というのは今後もまだあるのかな、と思いました。