愛知県を中心に、三洋堂という書店チェーンがあるのですが、久々に行ったら保険を始めていたので驚きました。これまでもCD・DVDレンタルをやっていたり、中古本販売も始まるなど、事業領域を広げていたのですが、保険販売までやるとは少し意外でした。
三洋堂が保険サービスを始める理由
調べてみると、2012年から開始しています。収益の多様化を図るのが狙いだそうで。
三洋堂書店は店頭で保険商品の販売を始める。保険販売店チェーンを手掛ける企業と共同出資で子会社を設け、2014年3月期までに30店で取り扱う計画。書籍販売が伸び悩む中、同社は4月に持ち株会社に移行し、M&A(合併・買収)などを通じて収益の多角化を急ぐ方針を打ち出している。第1弾として、保険販売の競合が少ない郊外に立地する店舗を中心に新事業を展開する。
他に、太陽光の売電も行っていました。
売上高を見ると、過去5年でじわじわ下がっているのがわかります。
というわけで、三洋堂は多くの店舗を展開している強みから、書店を起点にした「ブックバラエティストア」を掲げて、いろんなサービスに広げていくことが今後の方針になっています。
今後の書店業界はどうなるか
三洋堂のことを調べようと思っていたのとほぼ同じタイミングで、書店に関する記事を2つほど読みました。いずれもとても興味深く、そしてどちらもネット書店の大物であるAmazonとの対比で語られていました。2つの記事は必読です。
やっぱり一覧性はもちろん、客の欲求をモチベートしてくれる本棚という役割はITでは賄えない。ましてどんどんデバイスが小さくなってるわけなので、どうやらITの未来は、すべてが画面で完結する世界ではなさそうだ。
なんのかんの言っても、アメリカでEブックは売上げ全体の20%を超えるぐらい、つまり8割はまだ紙の本が読まれているのだ。小さな書店であっても、店に足を一歩踏み入れれば何百、何千もの本が目に飛び込んでくるのに対し、アマゾンのホームページにはどうしたって数十タイトルしか収まらない。へぇ、こんな本があるんだ、面白そうだな、と思わせるdiscoverabilityは限られている。
どちらも、書店の方が優れている点もあるよ、ということに関しては共通しています。僕の理解でいえば、特に視認性と書店員のキュレーションから生まれる「偶然の出会い」が、刺激的な結果を生み出すのだと思います。
ネットはアルゴリズムには強いですが、如何せんPCにしてもスマートフォンにしても画面が小さいことと、偶然を生み出したり、体験するのは難しいということで、向き・不向きがあります。
昔本屋でアルバイトをしていましたが、本屋というのは気軽に来るという意味ではとても有効なプラットフォームであり、「場所」としての価値は未だに高いんじゃないかと思います。機械では代替が難しいところ(視認性やキュレーション)に特化していく、リアルならではの体験型を増やしていくことが、今後の書店が生き残る道のひとつだと思います。