ブラウザを取り巻く環境は大きく変わってきている

ちょっとタイムリーではなくなってしったネタですが、Internet Explorerに脆弱性が発表されて、マイクロソフトから更新プログラムも出ました。一段落したって感じでしょうか。

さてさて、今回の騒動でいろいろ整理しておこうと思ったことを書いておきます。

 

IEのシェアはどの程度か

最新の調査によると、デスクトップで使われるブラウザのシェアはIEが57%と圧倒的で、その次がChrome、Firefoxと続きます。

IEはバージョン別に分けると、IE8が一番多く、IE11が次に続いています。

Chromeがシェア2位に – 3月ブラウザシェア | マイナビニュース

これだけIEを使っている人が多ければ、IEに脆弱性が!とニュースが出ると騒ぎになるはずです。ChromeやFirefoxに同じような脆弱性があったとしても、ここまで騒ぎにはならなかったでしょう。

 

複数のブラウザに対応した方が良いのでは

今回の問題点は、圧倒的なシェアを誇るIEの全てのバージョンで脆弱性が見つかったことです。それによって、「IEを使うことを控える」必要が一時的に生じました。知り合いから「IE使えなかったら、どうやってインターネットにアクセスするの?」という質問を頂戴しましたが、まあそういう感じになりますよね。。。。

エンタープライズシステムでも、Web系システムはブラウザをIEに限定したり、さらにはIEの特定バージョンに限定してたりします。そうなると、IE使えない=業務停止、となりかねません。

リスクヘッジとしては、「IE以外のブラウザでも使えるようにしておく」ということだと思うのですが、エンタープライズシステムの対応コスト、各端末でインストールされることによる管理コストなどの手間を考えると、避けたいなーと思うのが管理側の発想ですかね。でも、そろそろ避けられないんじゃないかという気がしてきます。

最低でも、こういう事態に陥ったときのルールを決めておいた方がいいでしょう。IEが使えない、でも端末にIE以外のブラウザがない、となると別のブラウザをインストールするためにIEを使わざるを得ない、という笑えない状況に陥ります。

 

ブラウザのバージョンアップスピードは早くなっている

ChromeやFirefoxはブラウザの「自動更新」が標準になっており、ユーザーが意識せずとも勝手に最新版に更新されます。良し/悪しの面はありますが、セキュリティ面から考えれば常に最新にしておくのは正しい行為です。セキュリティ被害の原因の多くは、ゼロデイ攻撃ではなく脆弱性を放置された古いバージョンの継続利用です。

Microsoft自身も認めるとおり、自動アップデートはFirefoxやChromeなど現代の多くのブラウザで標準になっている。もっともFirefoxのアップデート自動化は比較的最近のこと。自動アップデートの先鞭をつけたのはGoogleで、Chromeブラウザの一つのセールスポイントになった。言うまでもないが、ブラウザを最新版にアップデートすることはセキュリティーを飛躍的に高める効果がある。Microsoftは親切にもこの点を実証する独自の調査へのリンクを提供している。それ(Microsoft Security Intelligence Report vol 11)によれば、2011年上半期に発生したセキュリティー侵害事件のうち、ゼロデイ攻撃(セキュリティ上の脆弱性が発見された際、問題の存在が公表され、ソフトウェアのベンダー等によって対策が取られる前に行われる攻撃)によるものは1%以下だったという。 Microsoftのレポートによれば、99%の攻撃はパッチを当てられていない既知の脆弱性を利用したものだったという。45%はソーシャル・エンジニアリング(身分を詐称して電話したりのぞき見したりするなど、コンピュータ自体を攻撃する以外の方法で秘密情報を入手すること)によるものだったというのも驚きだ。残念なことに被害件数の90%は1年以上前にセキュリティー・アップデートが行われている脆弱性によるものだった。1年以上も放っておくとは!

ついに! Microsoft、来年からIEを自動アップデートすると発表 | TechCrunch Japan

また、OSやブラウザの開発スピードが早くなっており、これまでの対応方法は通じづらくなっている現状があります。IE6から7が発表されるまでの間は5年かかりましたが、IE10から11が発表されるまでは1年です。どんどん短くなっています。

Internet Explorer – Wikipedia

それでもエンタープライズシステムが5年とかいうサイクルで使い続けてこられたのは、ひとえにIEが新しいバージョンに古いバージョンとの互換性を持たせてきたからです。しかし、独自進化してきたIEも標準化へ舵を切っており、過去の互換性を捨てていく方向にあります。そのあたりの内容は、以下の資料がわかりやすいです。

 

で、何が起こるのかというと、エンタープライズシステムの5年とかいうサイクルでは、ブラウザのバージョンはもたなくなっているということです。途中でバージョンアップすることが当然のように必要になるんじゃないかってことですね。予め計画に組み込むなどの対応が求められるでしょう。

 

ウェブの標準化が進み、ブラウザの互換性は高まるはず

とはいえ、一方で新しい波も来ています。それがウェブの標準化です。HTML5ってやつですね。

これまでは、各ブラウザが仕様を拡張していろいろ利便性を高めてきましたが、そのデメリットとして互換性が進みませんでした。違うブラウザで開くとレイアウトが崩れる、とか。なので、HTML5という規格でウェブの標準化が進められています。その結果としてブラウザの互換性も高まると思います。

このプレゼン資料を読めば、HTML5が何かがさっと把握できますよ。

 

 

今日はこのへんで。

参考:
IEブラウザの互換性問題の緩和方法 – とあるコンサルタントのつぶやき – Site Home – MSDN Blogs

MSはなぜ無償でWindowsを提供するのか

マイクロソフトが、9インチより小さいのデバイスに対して、Windows OSを無償で提供すると発表しました。

マイクロソフト捨て身の反撃 ウィンドウズ一部無償化  :日本経済新聞

また、つい先日はOffice for iPadが無償で提供されましたしね。MSの中で急速に方針転換が図られている印象があります。

MS、「Office for iPad」発表~「Office Mobile」の個人利用は無料に -INTERNET Watch

今日は、マイクロソフトがなぜWindowsやOfficeを無償化するのか。マイクロソフトの置かれている環境や微ビジネスモデルから考えてみたいと思います。

 

世界的にPCからスマートフォン・タブレットへシフト

PCは出荷台数が年々減少しており、2015年にはタブレットに抜かれると予想されています。スマーフォンもどんどん普及しており、台数でいえばPCの比じゃありません。

タブレット年間出荷台数、2015年までにPCを上回る–IDCが予測 – CNET Japan

つまり、世界的にインターネットへの接続機器はPCからスマートフォン・タブレットへ移行しています。その中で、マイクロソフトはAppleやGoogleに出遅れる形になりました。Windowsの落ち込み振りは、このグラフをみれば一目瞭然です。

Microsoft’s Biggest Problem In One Chart – Business Insider

 

ソフトウェア・ライセンスで稼ぐビジネスモデルの弱体化

マイクロソフトの収益構造は、ソフトウェア・ライセンスがメインです。WindowsやOfficeですね。特にビジネス向けが強いです。これが、スマートフォン・タブレットへの移行に伴い、他社からビジネスモデルを弱体化させられています。

Appleはハード・ソフトを完全に垂直統合することで、OSの無料アップデートなどを提供しても利益が出る構造になっています。GoogleはAndroid OSから検索などで生み出される広告収益が基盤になっています。3社の収益構造を比較した記事をみると、そのあたりが顕著に表れていて面白いです。

ハイテク業界を支配するアップル、グーグル、マイクロソフト–収益源で見る各社の違い – ZDNet Japan

つまり、Apple、GoogleともOSを無償にしても懐が傷みにくい構造になっているんですね。そこがマイクロソフトの弱点として表れています。

 

今後どうなるか

マイクロソフトのWordやExcelなどのOffice製品の強みはまだ継続されています。ただ、このあたりもAppleはiWorkを無償で提供したり、GoogleもDocsサービスなどを強化しており、せっせと囲い込みを各者画策している状況です。AppleのプラットフォームであるOffice for iPadが無償で提供されたのも、そういう流れを受けての判断だと思います。

マイクロソフトとしては、PCにおけるOffice製品の強み(ライセンス収入)をいかに確保しつつ、それ以外の囲い込みを防ぐかが当面のポイントじゃないでしょうか。

それ以外にも、Bingのシェア拡大などを狙っているようですが、このあたりは正直未知数かな、と。

ASCII.jp:米マイクロソフトのBingはグーグルの脅威となるか

 

一般ユーザーとしては、Windowsを搭載した格安のタブレットなどが発売されて、入手しやすくなるでしょう。ビジネス向けでは、Officeとの親和性を重視して、Windows搭載のスマートフォンやタブレットが勢いを増すかもしれません。

また、iPhoneやAndroidなど、いろんなプラットフォームでOfficeが利用しやすい状況が出来ていきます。AppleやGoogleも頑張ってはいますが、Officeに関してはまだ盤石な状況がしばらく続きそうです。無料でOSを提供しハードウェアは他社が作る、というモデルとしてはAndroidの方とぶつかりそうなので、スマートフォンやタブレットの使い勝手で、AndroidとWindowsとどちらが選ばれるかが勝負のポイントになるんじゃないでしょうか。

 

小売業はなぜオムニチャネルに取り組む必要があるのか

最近というか少し前から、よく「オムニチャネル」という言葉を耳にします。セブン&アイは、1000億円をかけてオムニチャネルを計画していますし、小売業界ではオムニチャネルへの取り組みがビジネス上必須になってきているようです。

セブンの1000億円オムニチャネル計画、電通など参加  :日本経済新聞

で、なんでオムニチャネルがこれほど注目されているのか、っていうことを僕なりの理解で書いておこうと思います。

オンラインショップが日用品などへ進出している

Amazonや楽天が台頭しているように、オンラインショッピングはリアル店舗から顧客を奪ってきました。最初は本や電化製品など、どこで買っても価格が変わらないものや、製品が特定しやすく低価格勝負しやすいジャンルがターゲットになりました。

しかし、ECサイトが取り扱うジャンルもどんどん領域を広げていて、今は日用品、食料品や衣料品などに主戦場が移ってきています。Amazonもアメリカでは生鮮食品の配達サービスを提供しています。

知られざるAmazonの生鮮食料品配達サービス「AmazonFresh」とは? – GIGAZINE

日用品や食料品は、価格が最大の購買動機にはなりません。ひとつひとつが少額であるため、多少の手間を考えれば最安値でなくても買うんだろうと思います。

調査対象の消費者の24パーセントが書籍、家電、エンターテイメントなど最先端、流行の商品購入には「低価格」が一番重要であると答えています。 また衣料品や家具 、美容や健康、スポーツや趣味関連の製品で「低価格」を一番の理由に上げたのは18パーセントでした。 しかし食品や飲料品になると「品揃え」と答えた消費者が最多(14パーセント)となっています。そして洗剤やトイレットペーパーなどの日用品に関しては「無料配送」と答えた消費者が最多(16パーセント)となっています。

最新調査「なぜ消費者は最安値でなくてもオンラインで買うのか?」 | 小売×マーケティング「海外小売最前線」

つまり、商品ジャンルによってオンラインショップに求められる購買動機は異なり、必ずしも低価格だけが勝負のフィールドではない、ということです。ここに、リアル店舗がオムニチャネルに取り組む理由があります。

リアル店舗の強みをどう発揮するか

つまり、日用品や食料品などは、単に安いからネットから買うということにはならないわけで、これまでリアル店舗が負けていたロジックである「リアル店舗というストックがコストになる」というビジネス構造を真正面から受けるのではない、ということが言えます。

となると、各小売企業はどうやってリアル店舗を運営しつつネットショッピングの利点をサービスに取り込めるか、ということが焦点になって来るわけです。

個人的には、オンラインショップとリアル店舗のスムーズな動線構築がポイントだと思っています。

どこもオンラインショップを立ち上げて、リアル店舗だけではない購買機会を創出しようとしています。そこで、オンラインとリアル店舗でそれぞれ同じ顧客が来ていることが特定できれば、スムーズに動線を作れるようになります。

例えば、リアル店舗で買った購買履歴を記憶しておき、オンラインで買うときにリコメンドされるとか。リアル店舗で在庫がないときに、その場でオンラインで購入できるとか。オンラインで買って、店で受け取るとか。

いろいろ動線をクロスすることができそうです。これこそがリアル店舗の強みになるんじゃないか、ということだと思います。特に僕が注目しているのは2つあります。

新しい買い物体験の創出

オンラインとリアルで顧客データが一元化されることでリコメンドが高度化したり、スマホやタブレットの普及によってこれまでとは違う買い物体験が生み出されるんじゃないかと思っています。リアル店舗の強みというのは、新しい体験を生み出すことだと思います。

ZOZOTOWNのWEARなんかもそういうところに踏み出すひとつの例じゃないでしょうか。

店舗受け取りの増加

リアル店舗の強みとして、「ついで買い」を誘引することができるという点があります。

今ではオンラインショッピングで買ったものは自宅まで届けてくれますし、配送料も無料になるケースが増えています。ただ、配送業者が逼迫するなど低価格競争の中で苦しい状況とも言われています。

そこで、店舗受け取りを増やして、配送に頼らない受け取りを実現するとともに、来店してもらってついでに買ってもらうというように、顧客の行動を変えることができる可能性があります。

今でもコンビニ受け取りなどはできますが、もっといろんな小売業が取り組めば、店舗受け取りを増やすことができるんじゃないかと思いますし、自社配送の資源で賄うことが可能になります。なので、小売業は店舗受け取りにもっとインセンティブを設けて、割合を増やしたらいいんじゃないかと思っています。

オムニチャネルでオンラインショップ有利な状況に変化が出る | マイ・ストアニュース

僕がオムニチャネルについて思っていることは以上です。セブンが本気でこの領域に投資しているようですが、リアル店舗を持っている企業としては取組みは必須だと思いますし、ここでどれだけ先行優位性を築けるかが、今後の業界動向に関わってくるんじゃないかと予想しています。

ビットコインなどの仮想通貨はなぜ普及しているのか

Mt.GOXの民事再生法申請など、いろいろ話題になっているビットコインですが、いくつか気になるところを書いておきます。ビットコインがなぜ話題になっているのか、というのはこの本を読めば理解できると思います。(Kindleオーナーライブラリーで読める人は無料です。)

貨幣を管理する主体が存在しない

本書では、なぜ貨幣は貨幣であるのか。資産価値はどのように担保されるのか、という根本的なところから書かれていました。ビットコインは、端的にいえば貨幣を管理する主体がいないことが特徴です。ではどうやって貨幣としての信用を担保するのかといえば、ビットコインの取引に参加する無数のネットワークコンピュータです。

要は、貨幣と同じ仕組みをデジタル上で実現する仕組みが仮想通貨であり、そのひとつがビットコインというわけです。

ちなみに、金がなぜ昔から資産として認められているのか、この本で初めてちゃんと理解できました。

 

仮想通貨はビットコインだけではない

先ほど触れましたが、ビットコインは数ある仮想通貨のひとつに過ぎません。それ以外にもたくさん発生しています。ただ、その中で一番主流となる可能性を秘めていたのがビットコインというわけです。

ちなみに、ビットコイン自体はオープンソースから始まっているので、「ライトコイン」などいろいろ改良された派生版の仮想通貨が登場してきています。

Litecoin – Open source P2P digital currency
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最近では「オーロラコイン」が盛り上がってきているようです。

急成長する仮想通貨オーロラコイン―発明者がアイスランド国民に付与へ – WSJ.com

 

今後も仮想通貨は普及していく

なぜ仮想通貨であるビットコインが普及してきているかといえば、従来の通貨とくらべて信用が高い場合があるからです。日本円は安定していますが、それ以外でも海外では不安定な自国通貨があります。そういう場合は、ビットコインにもそれなりにリスクはあるものの、自国通貨に比べてまし、というケースがあるわけです。

さらに、海外送金に関してもビットコインは手軽です。国によっては海外送金自体を制限されていたりしますし、送金手数料もビットコインの方が安いので、海外送金の手段としても利用されているようです。

日本政府も課税を検討しているそうですが、いろいろ課題は山積です。ただ、デジタル決裁は今後確実に普及する分野と見られています。Googleも出資していることで注目されているRippleなど、いつでも手軽に決裁できる基盤が求められるからです。

あのGoogleも出資?次なるビットコインが話題に! – NAVER まとめ
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というわけで、今後も仮想通貨は普及していくでしょう。そのとき、どの通貨が主導権を握るかが今後の注目です。ビットコインが有力視されていましたが、今回の騒動でまたわからなくなりましたね。

 

ビットコインに関連する技術は応用が期待される分野

ビットコインで使われている技術は、それ以外にも応用が期待されます。仮想通貨では、通貨を使ったときにAからBへいくら移動したということが、確実に保証される仕組みが必要になります。それを応用して、電子書籍など電子的な権利の移転を行える仕組みが実現できる可能性があります。

ビットコインの応用で、電子書籍を譲渡可能にするアルゴリズム – Togetterまとめ

それ以外にも、冒頭に紹介した本の中でもいくつか可能性が挙げられています。

また、ビットコインの機能であるP2Pを用いて世界中の誰でも閲覧可能かつ改ざん不可能な履歴簿を実現するということ自体もコイン以外の用途の可能性があると思います。知らぬが仏や嘘も方便というものも当然ありますから、改ざんできない記録簿が本当に人々の幸せに繋がるかどうかは分かりませんが、改ざんできない記録簿という仕組みを活用すれば、粉飾決算、学歴詐称、カルテ改ざんによる医療ミスの隠蔽などを防ぐ仕組みが実現できるようになるかもしれません。これまでP2Pというと、ファイル共有や計算の負荷分散などが主な用途でしたが、P2Pでデータに不正が無いか多くの目でチェックするというビットコインの概念だけも、他分野への応用の余地が多くあると思います。

そう考えると、いろいろ電子上の取引にはもっと多様性をもたらせられる可能性があるわけで、楽しみになってきます。

 

参考:
ネット仮想通貨「ビットコイン」は安全か | 読んでナットク経済学「キホンのき」 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
ビットコインは決済システムとして有望-ウォール街の見方 – Bloomberg
ビットコインをめぐる5つの誤解を解く | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

IBMがx86サーバー事業を売却する理由

IBMというのはいろんな意味で象徴的な企業であったりするので、その動向によって今後IT業界がどう進むのかのひとつのベンチマークにしていたります。以前も、IBMの経営分析を行った記事を書いたりしていました。

米IBMがグローバルで業績好調な理由 | Synapse Diary
米IBMの事業ごとの特徴を分析 | Synapse Diary

で、最近IBMがx86サーバー事業をLenovoに売却するという発表がありました。

米IBMは2014年1月23日、中国レノボにx86プロセッサ搭載サーバー事業を売却する計画で最終合意に達したと発表した。IBMはレノボから23億ドル(2400億円)を受け取る。

News & Trend – IBM、x86サーバー事業をレノボに売却:ITpro

この記事を読むと、いろいろ交渉がありつつも、Lenovoが安く買い上げたという状況のようです。

IBMがサーバー事業を売却、ただし手放すのはオワコンのx86だけ(山本 一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース

 

サーバー事業のコモディティ化が急速に進む

x86サーバーとは、いわゆるPCサーバーのことです。PCと同じ構造になっていて、安価で現在主流になっています。

コンピュータの黎明期はメインフレームが主役だったが、その後UNIXが台頭した。x86サーバーは安価だが、性能や信頼性がメインフレームやUNIXに比べて劣る弱点があった。しかし、CPUパワーの向上などで性能が上がったため、今はx86サーバーが主流になっている。国内全サーバーの出荷金額のうち、50%弱はこのx86系サーバーが占めるといわれている。

<いまさら聞けないキーワード>x86サーバー | BCN Bizline

過去にIBMがPC事業をLenovoに売却したときも、サーバー事業は残しました。システム導入などサービスの付加価値として意味があると判断したんだろうと思います。しかし、台湾メーカーなどODM、AWSをはじめとするクラウドサービスの勢いに押され、収益が厳しくなってきたようです。

 

IBMの今後の戦略

ちょうど、IBMが1月にFY2013の業績発表をしていましたので、その資料からサマリー部分を抜き出して見てみます。

IBM_FY13_Summary
(引用:www.ibm.com/investor/attachments/events/4Q13 Charts.pdfより)

ここに端的に書いてありますが、スマートビジネス・アナリティクス・クラウド系は今後成長分野。ソフトウェアやサービス事業は引き続き堅調。ハードウェアは減少です。IBMは元々高付加価値を目指す企業なので、コモディティ化してスケール勝負になる分野は手放して、高付加価値となる領域に移っていきます。

そういう意味でIBMは、「コグニティブコンピューティング」と呼ばれる分野に資源を集中投下していく方針のようです。(コグニティブコンピューティングについては、ちょうど最近読んだ「ITビジネスの原理」で説明されていました。)

M2M、IoTと呼ばれるような、機器を「スマート化」して消費電力などリソースを最適化したり、情報伝達を効率的に行う事業や、ビッグデータからの分析など高度な解析技術が求められる領域が中心でしょう。

 

というわけで、個人的にはサーバーリソースに関してはクラウド利用がもっと普及する、というところと、ソフトウェアに求められる機能やサービスも高度化していくんだな、というところが注目です。

経営を志す人なら読むべき。「ITビジネスの原理」

これは、経営に携わる人、志す人なら必ず読んだ方が良い。それぐらい良い本です。

ITビジネスというのは、非常に早いスピードで進化し、変化しているわけですが、ここまでシンプルに、原理として落とし込めている本というのは、なかなか存在しないと思います。非常にわかりやすい。

GoogleとFacebookの違いについて、

GoogleよりFacebookの換金化が比較的難しいのは、ユーザのインテンションが読み取りにくいことに起因しています。

という一言で表現してしまうあたり、ぐさっと刺さるものがあります。

インターネットの勃興からウェアラブルなどこれからの見通しまで、ひと通り整理されているので、ぜひいろんな人が読んだ方が良いんじゃないかと思っています。インターネットでどうやってお金が生まれているのか、というビジネス面から解説されていますので。Pintarestが注目されている理由、Twitterよりもトラフィックをもたらしている理由も、この本を読むとわかります。

PintarestはTwitterよりもトラフィックをもたらしている

昨日の任天堂ではないですが、外部環境がどんどん変わってきてしまって、戦略を柔軟に見直したり、先を読む力が経営には求められています。そのときに、原理を捉え、この先がどう向かうかを考える。そのきっかけをこの本は与えてくれるでしょう。

「ビッグの終焉」を読んで、今後の大企業や個人に必要なことを考える

ITが登場して以来、いろいろ社会環境が変化しています。それは「あらゆる大きなもの」が崩壊してきている、ということです。

例えば、メディア・企業・政府。マスメディアは、個人ブログやSNSによる情報の伝播と勝負せざるを得なくなりました。大企業は、個人が行うネットショップの価格や独自性と勝負せざるを得なくなりました。政府も、SNSなどから寄せられる意見やムーブメントを無視することができなくなりました。

これらはすなわち、IT技術によって個人の力が増幅されているから起こっているのです。

というわけで、「ビッグの終焉」という本を読み終わりましたので、簡単に思ったことを書いておこうと思います。基本的には海外の事例がほとんどですが、日本でも同じことが起こっています。

大企業が負けてしまう理由

最近だと、ヤマダ電機がネットショップの勢いに押されて、苦戦しています。

ヤマダ電機が赤字転落!ヤマダ電機が苦境に陥った理由 – NAVER まとめ

ヤマダ電機が苦戦しているのはネットショップだけが原因ではないと思いますが、家電量販店に行く人は確実にネットで価格をチェックして交渉に臨みます。ネットショップが安いのは出店コストがないからなので、当然安くしないと買ってくれなくなります。

これもIT技術によってネットショップという業態が成立するようになったことが、そもそもの原因です。本書の中では、こう説明されています。

規模の競争優位は陳腐化している。最小効率規模はどんどん小さくなっている。

事業を始めるための初期投資や、店舗運営などのオペレーションコストが劇的に小さくなったことで、損益分岐点がとても低くなりました。これまでは、大企業などが資本を投入して基盤を作ることで、初めて事業が成立していたようなところ、あるいは大企業が「規模の経済」を働かせて、大きくなることで効率化され、低コストになるという部分がありました。しかし、損益分岐点が下がってしまったことで、規模の経済を追求しなくても事業を運営できるようになったというわけです。

 

それでも「大きなもの」が必要な理由

では、個人や小さな企業でも勝てるようになったなら、大きい企業などの存在は不要か、と言われるとそうでもありません。それは、大きなものが「社会の信用」を形成する上で大きな役割を果たしているからです。

大企業が販売しているものは、品質はそれなりに高いと感じますし、大手メディアの記事は個人ブログよりは高いという感覚があります。そういう「信用」が裏側には存在するのです。メディアや企業や政府が小さくなると、こういう信用を形成する力が弱くなるリスクはあります。

メディアの例だと、個人ブログも多くはマスメディアの記事を参照したり引用しており、マスメディアの存在がないと個人ブログも成立しないものの、結局マスメディアが弱ってきているという矛盾のような状態です。

 

これからの社会はどうなるのか

大きな存在と小さな存在のパワーバランスは、今後も変化していくでしょう。大きな存在と小さな存在は、それぞれどう生き残っていくんでしょうか。

本書の中では、「大きなものがソーシャルの力を取り込む」ことが、ひとつのアプローチとして提示されています。民衆の声を集め、分析し、企業の戦略や政府の政策に活用する。そういう折衷的なところが現時点での落とし所だと感じます。あとは、大企業が勝てるフィールドが変わっているので、ネットがあったとしても「規模の経済」が有効なところを探すか、というところですかね。クラウド事業者などはまさにそういう部分になっています。

個人や小さい企業は、大企業がこれまで獲得していたフィールドに攻め込んだり、新しい分野を切り開いています。今後は、いかに自らの信用を形成するかを考える必要があるでしょう。政府の管理や大企業の取り組みによって形成されていた信用は、一部なくなっていくかもしれません。一個人や一企業が、どうやって社会から信頼を得ていくのかは、常に考えなければいけなくなっていると思います。

 

ラジオやテレビが登場したときも、今と同じようにあらゆる社会的な仕組みが変化したんでしょうかね。そう考えると、そういうレベルで政治も、企業経営も、社会を構成するいろんなところが変わっていくんだと思います。一度大きな資本へ向かったエネルギーは、小さいものへ分散していくんでしょう。日本でも地方が再燃したり、小さな企業が盛り上がるといいなと思います。

地方におけるデータセンター事情について

今日は日本におけるデータセンター事情について、書きます。

地方自治体によるデータセンター誘致が、加熱しているという記事を読みました。データセンター誘致が公共事業として良いのではないか、ということですね。

echo-news – 最強の公共事業とは何だろうーー再加熱するデータセンターの自治体誘致

 

首都圏集中から地方分散化へ

日本国内にあるデータセンターは、首都圏に集中しており、その数字は50%とか70%などと言われています。しかし、東日本大震災によって、電力不足や稼働停止などの影響を受けた結果から、首都圏に集中したデータセンターを、地方に分散させようという流れが生まれました。

 

国もデータセンター分散化を後押し

総務省は災害対策を目的として、データセンターの地方分散を促進するための税制優遇を設けるなど、施策を講じています。

総務省|電気通信政策の推進|データセンターの地域分散化の促進

 

地方に建設することはコスト面でも優位

データセンターのコスト構造をみると、土地・建物・電力などの比率が、全体の半分程度を占めています。機器などはどこで調達してもあまり変わりませんが、土地に紐づくコストについては、地方に建設することによって、コストを削減することができます。コスト優位性は、データセンターにおいて非常に重要な競争軸のひとつです。

連載/データセンターの電力効率、コスト効率を上げるには(2):新しいかたちのデータセンターを日本中に分散配置しよう (1/2) – スマートジャパン

 

地方におけるデータセンター建設の例

実際に、北海道や島根、青森などの地方でデータセンターが建設される事例があります。

クラウド ビフォア・アフター:郊外型データセンターの今とこれから – ITmedia エンタープライズ

これらを見ていると、単純な誘致だけではなく、地方の特性として自然エネルギーの活用やスマートタウン事業など、自治体の政策と関連した取り組みになっています。さくらインターネットが北海道石狩市に建設したデータセンターの例は、単純に誘致して建設するのではなく、企業の戦略と自治体の施策が合致している点が、非常に興味深かったです。

ASCII.jp:“箱”だけ作るから地方データセンターは失敗する|まもなく2周年!北の大地に石狩データセンターあり

 

本当に地方分散化は進んでいるか

データセンター事業としてみると、成長しています。国内のデータセンター総床面積はCAGR4.3%という堅調な伸びです。これは、増大するデータ処理量への対応、複雑化した機器管理コストの低減や機器の拡張性に関するニーズが高いことが要因です。

データセンター市場調査2013:相次ぐ新設で拡大 首都圏・地方別では課題も |ビジネス+IT

データセンター全体としては増えているのですが、ロケーションでみるとやはり首都圏が伸びており、地方は微増の状況になっています。

クラウドコンピューティングサービスは、低価格を強みとするため、建設コストや運営コストの低い地方のデータセンターが適している。さらに震災以降、企業の事業継続に対する意識が高まり、首都圏のセンターから距離のある地方のデータセンターをバックアップセンターとして活用するユーザー企業が増えていくと期待されていた。  こうした背景から、近年、クラウドコンピューティングの本格的な普及を見込み、地方にデータセンターを建設するIT事業者が増加していたが、長引く景気の低迷の影響による企業のIT投資予算の縮小により、期待されていたよりもクラウドコンピューティングサービスや事業継続サービスの普及が進まなかったことから、地方のデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきており、IT 事業者による地方のデータセンターへの投資は、今後は微増にとどまると予測している。

相次ぐ新設、今後もデータセンターへの投資は堅調に拡大~矢野経済研調査

実際、IT投資におけるBCPへの予算は1%以下であり、BCP対策を行うにあたってもコストを優先的に考えるという調査結果があります。

年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT

 

また、先ほどの記事から引用すると、

中でもIT事業者による首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)のデータセンターへの投資は今後も堅調に増加するいう。大口ユーザーである大手企業が、緊急時に自社の情報システム部員が駆け付けることができる首都圏の立地を求める傾向は今後も変わらないと見込めることがその理由。  一方、地方(その他道府県)のデータセンターへの投資は、微増の推移に留まるという。それは、地方立地の特性を活かせると言われていたクラウドコンピューティングサービスと事業継続サービスが当初の期待ほど普及しておらず、ユーザー企業からの地方に立地するデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきていることがある、としている。

データセンター市場調査2013:相次ぐ新設で拡大 首都圏・地方別では課題も |ビジネス+IT

となっています。

まとめると、以下になります。

  • IT投資、特に災害対策への投資は低調で、地方へシステムやデータを分散させる意欲が低下
  • クラウドコンピューティングなどまるごとアウトソースするのではなく、自社で保守できる体制を残す傾向が根強い

クラウドコンピューティングが加速していないため、自社で駆けつけて管理する体制を構築する必要があり、さらにIT投資全体やBCPへの関心もやや落ち着いてきているので、地方へのデータセンターの進出がいまいちという状況なのでしょう。

 

今後はデータセンターの分散化は進むか

では、今後データセンターの地方分散化は進んでいくのでしょうか。まず、クラウドコンピューティング自体は、市場が確実に拡大していますし、今後も成長が期待されます。

年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT

気になるのは、内訳をみるとプライベートクラウドの割合が多くなっていることです。さらに、こちらの記事をみるとオンプレミス型への期待が大きく、地方に分散させるホスティングはあまり高くないです。

国内プライベートクラウド市場予測を発表

とはいえ、データの分散などバックアップサイトとしてのニーズは堅調に続くでしょうし、クラウドコンピューティング自体は成長していくので、地方にもデータセンターは増えていくのでしょう。

ただ、そのときはスマートタウンなど、地の利や自治体の政策と合わせて拠点を作るアプローチが良いですし、その結果としてIT技術者など人が集まってくるんじゃないでしょうか。

SNSとマーケティングの関係を理解したい人は必読。「ウェブはグループで進化する」

新年最初の読書は、「ウェブはグループで進化する」でした。読んでみて思ったことは、「マーケティングを考える上では必読だな」ということでした。

2012年と少しタイムリーではない本でしたが、当時話題になっただけあって、SNSの潮流をどう捉えるかがよくわかる内容です。

著者はGoogle+をてがけ、GoogleからFacebookへ移籍した人で、一旦書いた本がGoogleから出版差止めになったという、曰くつきです。

マーケティングで考えた場合に、いろいろ目新しいエッセンスが満載でした。

 

インフルエンサーではなく、ネットワークの構造に注目する

よくネットマーケティングでは「インフルエンサー」を見つけて、そこに情報を流してもらうというアプローチが言われます。僕はこれ自体は間違っているとは思いませんが、それよりも重視すべきは「ネットワーク構造」だとこの本では述べられています。

理屈はシンプルで、以下のようなことです。

  • 元々、人は強い絆(親しい人)から強い影響を受ける
  • 人は小さいグループを複数形成する

つまり、幅広く強大な影響を与えるインフルエンサーというのは実際は少ないので、たくさんの「普通の人」が形成している小さなグループやグループ間に、どうやって情報を流すかに着目しようということです。

そうすることで、親しい人から受け取った情報は、信頼され、購買などの判断に強い影響を与えるというわけです。だから、自分が流す情報に関心を持ってくれる人たちを見つけて、そこに情報が流れるよう、メッセージを発信することが、マーケティングにとって重要になります。

 

SNSを有効なマーケティングツールにするためには、プランの作成と実行後のフィードバックが重要

TwitterやFacebookがマーケティングに有効だ、などと言われ、取り組んでいる企業もたくさんいますが、どれほど有効に働いているかよくわからないケースを見かけます。

この本では、グループと情報の流れに着目し、トライ&エラーでどれだけ反応が得られるかを検証することが重要と書かれています。同じようなことは「USERS」という本にも書かれていましたが、それだけSNSを運用するというのは、非常に手間がかかるものだということです。

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方 | Synapse Diary

SNSは実社会の人間関係をオンラインへ投影したものであり、SNSの隆盛はあったとしても、SNSというサービス自体は今後も継続的に使われるし、もっと発展していくでしょう。それを考えると、現時点でSNSをマーケティングツールとして使いこなすことができれば、今後の企業の優位性を築くことができます。

この本には、どのように取り組んだら良いかのアプローチも丁寧に書かれているので、もう一度読み返して、実践してみようと思います。

 

それ以外にも、認知心理学やパーミッション・マーケティングとのつながりも述べられていて、いろいろな知識がつながっていくようで、楽しく読める一冊でした。

参考:心理と行動の関係が理解できる「ファスト&スロー」 | Synapse Diary

小説「ラストワンマイル」が物流業界の現状を描いていて驚いた

ラストワンマイルという小説を読みました。そこまで意図して読み始めたわけではありませんでしたが、ちょうど今、ECサイトや物流に対する関心が個人的に高くなっており、非常にタイムリーなビジネス小説でした。

この小説を読むと、実際に今起こっているEC市場の競争がよくわかります。Yahooショッピングがなぜ出店料を無料にしたのか。これからの競争のポイントがどこに置かれるのか。

 

重要なのは「ポータル・決済・物流」

少し前に「大前研一 日本の論点」という本を読んだのですが、そこでは今後のECプラットフォームには次の点が必要だと書かれていました。

私は次世代のカギを握るネット時代の三種の神器は、「ポータル」「決済」「物流」だと考えている。そして、この3つの分野をしっかり握っているのがアメリカの強みだ。

ただ、それ以上詳細な説明がなく、僕としてはピンと来てなかったんですよね。それが、この小説を読みながら、やっとわかりました。わかってみるとなんてことないんですが、「人がネット上で買い物をする上で必ず行われる行為」なので重要なんだってことですね。

 

商品(情報)の信頼性をどう確立するか

「ポータル」というのは、まさに入口のことで、消費者から選ばれる「入口」を作れるかどうかが重要になります。そのためには、プラットフォームやプラットフォーム上で掲載される情報に、いかに信頼性を高めるかが重要になってきます。

Amazonや楽天などのECサイトは、これまでここに多大な労力を払ってきており、納得性が高く豊富な情報を提供することや、購買者のレビューを掲載することで、信頼性を高めてきています。他にも、大手ではありませんが、その筋の信頼できる人がすすめる商品を取り扱ったり、完全にセルフサービスで完結するのではなくチャットなどを組み合わせてサービスを提供するタイプのECサイトも登場してきています。

AmazonだけがECじゃない。米で始まったEC新時代 – 湯川鶴章メルマガ ITの次に見える未来 – BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

「ラストワンマイル」でも、これが論点のひとつになっており、小説の中では別の解決策が提示されています。

 

物流は戦争状態

決済や物流などは、買い物に必要な機能であり、有力なプラットフォームを形成する企業は、垂直統合してきています。それは、他社に重要な部分を握られるのが嫌だ、というところと、購買の入口から出口までを一気に完結させることで、マージンを最小化しようということでしょう。

Amazonがドローン(無人飛行機)で荷物を配送する構想を発表していましたが、その理由もうなずけます。

アマゾンも開発、「ドローン便」は離陸するか(動画) « WIRED.jp

また日本でみると、Yahooショッピングは物流面でAmazonや楽天に遅れを取っていましたが、アスクルと業務提携して物流に注力してきています。

アマゾン、楽天に殴り込み ヤフー、通販物流参入の本気|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン

 

一方で、最近だとAmazonの配送請負業者から佐川急便が撤退し、ヤマトに一本化されています。

クロネコの悲鳴、ヤマトに豊作貧乏のジレンマ  :日本経済新聞

ECの発展で物流も増えているのですが、各ECサービス業者が物流を垂直統合してきており、物流業者は苦しくなっている感じです。まさにこういう事態の問題提起が、「ラストワンマイル」が描かれているので、数年前に描かれたことが、実際に起こっているということなのだと思います。

 

このあたりは、O2Oやオムニチャネルなどとも関連して非常に面白い分野なのですが、ひとまず興味がある方は「ラストワンマイル」を読むと良いでしょう。

今日はこのへんで。