小売業はなぜオムニチャネルに取り組む必要があるのか

最近というか少し前から、よく「オムニチャネル」という言葉を耳にします。セブン&アイは、1000億円をかけてオムニチャネルを計画していますし、小売業界ではオムニチャネルへの取り組みがビジネス上必須になってきているようです。

セブンの1000億円オムニチャネル計画、電通など参加  :日本経済新聞

で、なんでオムニチャネルがこれほど注目されているのか、っていうことを僕なりの理解で書いておこうと思います。

オンラインショップが日用品などへ進出している

Amazonや楽天が台頭しているように、オンラインショッピングはリアル店舗から顧客を奪ってきました。最初は本や電化製品など、どこで買っても価格が変わらないものや、製品が特定しやすく低価格勝負しやすいジャンルがターゲットになりました。

しかし、ECサイトが取り扱うジャンルもどんどん領域を広げていて、今は日用品、食料品や衣料品などに主戦場が移ってきています。Amazonもアメリカでは生鮮食品の配達サービスを提供しています。

知られざるAmazonの生鮮食料品配達サービス「AmazonFresh」とは? – GIGAZINE

日用品や食料品は、価格が最大の購買動機にはなりません。ひとつひとつが少額であるため、多少の手間を考えれば最安値でなくても買うんだろうと思います。

調査対象の消費者の24パーセントが書籍、家電、エンターテイメントなど最先端、流行の商品購入には「低価格」が一番重要であると答えています。 また衣料品や家具 、美容や健康、スポーツや趣味関連の製品で「低価格」を一番の理由に上げたのは18パーセントでした。 しかし食品や飲料品になると「品揃え」と答えた消費者が最多(14パーセント)となっています。そして洗剤やトイレットペーパーなどの日用品に関しては「無料配送」と答えた消費者が最多(16パーセント)となっています。

最新調査「なぜ消費者は最安値でなくてもオンラインで買うのか?」 | 小売×マーケティング「海外小売最前線」

つまり、商品ジャンルによってオンラインショップに求められる購買動機は異なり、必ずしも低価格だけが勝負のフィールドではない、ということです。ここに、リアル店舗がオムニチャネルに取り組む理由があります。

リアル店舗の強みをどう発揮するか

つまり、日用品や食料品などは、単に安いからネットから買うということにはならないわけで、これまでリアル店舗が負けていたロジックである「リアル店舗というストックがコストになる」というビジネス構造を真正面から受けるのではない、ということが言えます。

となると、各小売企業はどうやってリアル店舗を運営しつつネットショッピングの利点をサービスに取り込めるか、ということが焦点になって来るわけです。

個人的には、オンラインショップとリアル店舗のスムーズな動線構築がポイントだと思っています。

どこもオンラインショップを立ち上げて、リアル店舗だけではない購買機会を創出しようとしています。そこで、オンラインとリアル店舗でそれぞれ同じ顧客が来ていることが特定できれば、スムーズに動線を作れるようになります。

例えば、リアル店舗で買った購買履歴を記憶しておき、オンラインで買うときにリコメンドされるとか。リアル店舗で在庫がないときに、その場でオンラインで購入できるとか。オンラインで買って、店で受け取るとか。

いろいろ動線をクロスすることができそうです。これこそがリアル店舗の強みになるんじゃないか、ということだと思います。特に僕が注目しているのは2つあります。

新しい買い物体験の創出

オンラインとリアルで顧客データが一元化されることでリコメンドが高度化したり、スマホやタブレットの普及によってこれまでとは違う買い物体験が生み出されるんじゃないかと思っています。リアル店舗の強みというのは、新しい体験を生み出すことだと思います。

ZOZOTOWNのWEARなんかもそういうところに踏み出すひとつの例じゃないでしょうか。

店舗受け取りの増加

リアル店舗の強みとして、「ついで買い」を誘引することができるという点があります。

今ではオンラインショッピングで買ったものは自宅まで届けてくれますし、配送料も無料になるケースが増えています。ただ、配送業者が逼迫するなど低価格競争の中で苦しい状況とも言われています。

そこで、店舗受け取りを増やして、配送に頼らない受け取りを実現するとともに、来店してもらってついでに買ってもらうというように、顧客の行動を変えることができる可能性があります。

今でもコンビニ受け取りなどはできますが、もっといろんな小売業が取り組めば、店舗受け取りを増やすことができるんじゃないかと思いますし、自社配送の資源で賄うことが可能になります。なので、小売業は店舗受け取りにもっとインセンティブを設けて、割合を増やしたらいいんじゃないかと思っています。

オムニチャネルでオンラインショップ有利な状況に変化が出る | マイ・ストアニュース

僕がオムニチャネルについて思っていることは以上です。セブンが本気でこの領域に投資しているようですが、リアル店舗を持っている企業としては取組みは必須だと思いますし、ここでどれだけ先行優位性を築けるかが、今後の業界動向に関わってくるんじゃないかと予想しています。