この本で今後の地域行政を知ろう – 【書評】地域主権の近未来図

新内閣の総務大臣に、改革派知事と言われた片山さんが就任した。今後は、より一層地域主権への動きが加速するという予想も出ている。
6月には地域主権戦略大綱が出され、着実に地域主権への検討が進められているが、それでも具体的な国の形がイメージしづらい。

そんな中で偶然手にした一冊。片山さんの対談も載ってましたよ。

「二元代表制」に対する理解はあるか

地方は、首長と議員の両方を、住民の直接選挙で選ぶ。主に、首長が作成した予算案や条例案を、議会の場で議員がチェックする仕組みになっている。

ところが、全国でみると首長提出の議案は97~98%が無修正で可決されている。・・・議会が本来の役割を果たしていないだけのことである。

議会がチェック機能を果たしているかをチェックするのが住民だ。住民には、首長や議員個人のリコール、議会の解散を求める権利もある。名古屋市や阿久根市で運動が起こっているのは、これだ。(名古屋市は市議会、阿久根市は首長。)

自分が住んでいる街の行政は、自分たちでチェックし、リコール等を通して意思を表示することもできる。こういう仕組みや現状を理解することから政治は始まる。

道州制は時期尚早ではないか

道州制になれば、自助努力で解決するのが基本となる。国による財政支援もないと考えるべきだ。

「補完性の原則」という言葉がある。地域主権戦略大綱でも何度も登場する。行政の最小単位でできることを行い、それが難しい場合は広域で、さらに難しければ国で。そうやってボトムアップでアプローチして行政の仕組みを作っていく考え方だ。道州制は地方の行政単位を大きくして、権限を大きくすることだから、まさにこの「補完性の原則」に立つ必要がある。

しかし、今の地方行政の仕組みは逆に感じる。未だ中央集権の形が色濃く、地方には権限や予算の面で制約が多い。(それが、陳情などの「おこぼれ」思考につながるのかもしれない。)そして、住民もあまり興味を持てない。それほど日常が暇でもないし、参画してもしなくても変わらない気がしてしまう。

こういう状況で、道州制で首長の権限を強めたとき、それをチェックするガバナンス機能はどうやって構築すれば良いのだろうか。本書によれば、州知事の権力は今の東京都知事の5倍くらいらしい。

そう考えると、道州制は時期尚早だと思える。中央集権的な仕組みからそのまま道州制にしても、うまく纏まるように思えない。いきなり形を変えるのではなくて、今の地域戦略大綱のように、基礎自治体の権限や予算を移譲してゆき、国の出先機関を統廃合するなどを行うことが先んじて行うべき方向だと思える。

他にも、住民投票の法制化、シティマネージャー制度、地方政党など、今後のいろんな地域行政の可能性・選択肢を提示してくれている。少し今後の地域行政に対するイメージが広がった。

地方を歩いていると、「分権で生活がどれだけよくなったのか」とよく質問されるんですが、私はあえて「地域を変えるために、ご自分で何をしましたか」と問い返しています。自動的に暮らしがよくなるわけではないですから。

今より勉強時間を増やす方法-【オーディオブック】脳がよくなる耳勉強法

  • 脳が良くなる耳勉強法 倍速版
  • 著者:上田渉
  • 価格:1575円(税込)
  • 時間:02時間38分14秒

最近よくオーディオブックを聴いていて、FeBeを利用している。そのFeBeの創業者の本。
脳関連の本は、出すぎているし、胡散臭いものも多いので、タイトルにそうついている本自体にちょっと敬遠したい感が自分の中にはある。その点で、この本はちょっとタイトルは残念。でも、内容としては「聴いて勉強」という発想をあまり強く意識したことがなかった人には良いかもしれない。

<bclass=”h1″>目次

第1章私たちは五感で勉強している
何のために勉強するのか?/勉強の「4つの要素」/なぜ聴覚が勉強の役に立つのか

第2章 音で脳の個性を活かす
脳の個性を活かす勉強法とは/脳の機能を知る/ディスレクシアに学ぶ脳の学習プロセス/自分の得意な感覚を生かす

第3章耳勉強法を始めよう
耳勉強法とは「聴覚マネジメント」/耳勉強法5つのメリット/〈耳勉強法の基礎知識〉オーディオブックの種類・聴き方・テクニック
/言語能力を鍛える耳勉強法/すき間時間マッピング」で耳勉強の時間を見つける/耳勉強法の達人たち

第4章耳勉強法を実践しよう
MP3プレーヤーを手に入れよう/オーディオブックサービスを選ぶ/ソフトウェアを揃える

付録著者がおすすめするオーディオブック

本ではいろいろ書いてあるけれど、もっとシンプルに、耳から取り入れることがどういうメリットがあるかを書いてみようと思う。
 
①「聴く」だけでも勉強はできることを理解する
 
当たり前といえば当たり前なんだけど。各インプット媒体によって、使う五感は異なる。
 
・動画 ⇒ 視覚 + 聴覚
・本  ⇒ 視覚
・ラジオ ⇒ 聴覚
 
音楽を聴きながらでも車の運転ができるように、使う五感が違う場合、人間は器用に並行でこなせる。
 
あと、人間は視覚に頼っている比重が大きいので、視覚だけのインプットは効果が低いのではないか、という疑問が自分にはあった。それについては、一理あるのかもしれない。ただ、それは人によっては聴いて覚える人もいる。暗記を声出して覚える方が得意だ、という人がいるように。
 
さらに、例えば本を読んでいるときも、多くの人は心の中で音読している。結局は音声によって脳に取り込んでいるのかもしれない。少なくとも、文字を視覚で捉えることと、音で捉えることの両方を行っているのだろう。
 
オーディオブックを聴いていると、音の流れとして記憶して思い出すこともあるし、聴いたことがきっかけで昔読んだ本の内容を思い出すこともある。そう考えると、「聴く」ことによる勉強は、少なくとも「効果が低い」とは言えなさそうだ。
 
 
②聴くに適したコンテンツを選ぶ
 
使う五感が違うのだから、内容としても「聴く」に適したコンテンツを選ぶ必要がある。オーディオブックは、一定スピードで進んでいくので、本のように自分のペースで進める、ということは難しい。マーキングや書き込みができるわけでもないので、後で特定箇所を思い返すのも難しいのはデメリットになるだろう。
 
ただ、一定スピードで進んでくれるのは、自分でページをめくったりする必要がないので、インプットする労力としては楽だろう。(動画⇒音声⇒文字の順に、受け手の負担は軽くなると思われる。)
 
これを踏まえると、ある程度聞き流しても良いと思えるものが重要。あと、ストーリー性など流れる構成のものだとなお良いと思われる。意外に、こういう歴史モノを聴くと、時系列で進んでいくので面白かったりする。

  • 超速!日本政治外交史の流れ
  • 著者:竹内睦泰
  • 価格:1050円(税込)
  • 時間:07時間14分02秒

③インプットに使える時間を知る
 
オーディオブックを聴ける時間は、生活の中でどれぐらいあるだろうか。
例えば車通勤で片道25分だとすると、50分。さらに、駐車場までの徒歩移動が5分あるとすると、毎日1時間分ある。自宅では、皿洗いや掃除の時間なども使えるだろう。
 
逆にオーディオブック1冊がどれくらいかといえば、新書ぐらいで3時間。ビジネス書で6時間ぐらいだろうか。さらに、倍速で聴いたりすると、必要な時間は半分になる。(実施やってみたが、倍速ぐらいだったら余裕で慣れる。)
 
この例でいけば、ビジネス書1冊を倍速のオーディオブックで聴けば、6日で1冊終わる。特に他の時間を犠牲にすることなく、1週間で1冊消化できるのだ。悪い話じゃない。
 
 
耳を鍛えることで頭がよくなるかどうかはわからないけれど、時間を有効に使いたいと思っている人がいれば、オーディオブックは一考の余地はある。あとは、日本語コンテンツがもっともっと充実してくれることを願う。

人の話しはちゃんと聞こうよ-【オーディオブック】プロカウンセラーの聞く技術

  • プロカウンセラーの聞く技術
  • 著者:東山紘久
  • 価格:1470円(税込)
  • 時間:05時間24分58秒

コンサルタントというのは、人の話しを聞くのが重要な仕事のひとつだったりする。(少なくともそう思っている。)
聞くだけでは仕事にはならないけれど、聞くのもひとつのテクニックだよなあと仕事をしていて思う。
 
人とのコミュニケーションで聞く、という行為は普通に発生する。最近ますます、聞くという行為は重要なんだなあと思う。聞くテクニックが上達すれば、人から学ぶことも多い。
 
 

目次

聞き上手は話さない

真剣に聞けるのは、一時間以内

相づちを打つ

相づちの種類は豊かに

相づちはタイミング

避雷針になる

昔の主婦は聞き上手

自分のことは話さない

他人のことはできない

聞かれたことしか話さない〔ほか〕


人は基本的に聞くより話す方が好き

 
冒頭に「人は基本的に聞くより話す方が好き」であると出てくる。本当にその通りだよな、とつくづく思う。
顧客と打合せするときも、目的が曖昧なまま会話がスタートするときがある。聞く側によっては「無駄だよな」と言い切ってしまう人もいるんだけど、そういうときは大抵顧客の頭の中に、何かメッセージがあるのだ。悩んでるポイントなんかが。
 
そういうときは、求められているポイントが何かを考えた方が良い。バッサリ切り捨てずに。
逆に、自分の傾向としては何でも「応えよう」と思って頭を働かせてしまうので、顧客が望んでいない答えを発言したりして、余計なおせっかいになるパターンもある。
 
人が話すときは、答えを求めていないときもあるんだよね。
漠然と不安に思っていることを話してみて、言語化することで自分の頭が再認識して、話しながら自己解決する人も多く見かける。もちろん自分でもそういう場合もあるし。
 
 
答えはひとつではないし、答えないことが答えになることもある。
人が話すときは、その求めている何かを察してあげないと。
 
 
何となく聞いている人は見抜ける
 
これを聞いて再認識したけど、何となく聞いてる人って大体様子と受け答えでわかる。「なるほど」が多い人は、理解してるつもりの人が多いらしい。自分、「なるほど」が多いんですけど。笑
 
本当に理解している人は、繰り返したり言い換えたりすることが多い。「それはこういうことですよね」とか。
何気ない会話でも理解力が測れるんだなあ。自分も気をつけよう。
 
ちなみに、個人的に見抜く方法は、打合せのときに顔を上げること。
これ、資料がある打合せでは効果テキメン。みんな資料を見るから顔を上げている人ってほとんどいない。そのときに、資料を見て考え込んでいる人、必死でメモしている人、眠りに落ちている人、注意力散漫な人、というのが大体わかる。
 
 
個人的には、話すよりも聞くことの方が技術的には簡単だと思う。ただ、相手に波長を合わせることになるので、精神的に我慢を求められることが多いのが難点。
 
先輩や同僚のコンサルタントを見ると2パターンあって、よく話す人とよく聞く人。まあどちらかにわかれる。一概には言えないけど、顧客と良い関係を築きやすいのは、やはりよく聞く人な気がするな。よく話す人で気に入られるのは、圧倒的に仕事ができて、ある種カリスマ性を感じさせる人。下手をすると独りよがりになるので、嫌われるリスクも大きい。
 
自分は前者を目指すんだろうな。
 

  • プロカウンセラーの聞く技術
  • 著者:東山紘久
  • 価格:1470円(税込)
  • 時間:05時間24分58秒

 

【書評】iPhoneとツイッターはなぜ成功したのか?

App Storeで無料だったのでダウンロードして読んだ。これもFREE効果か。

AppleやTwitteの躍進に関する特徴を述べている点は冗長に感じたけれど、全体として技術やビジネスターゲット、時間、働き方の全てが「マイクロ化」していく流れは、理解しやすく納得できた。

特に、働き方について考えさせられる。
複数の組織に所属して、毎日場所を変えて、自分の得意分野で仕事を行う。こういう細切れとも言えるような働き方が、もっと生まれて良いと思う。

非正社員から正社員化の風潮が生まれているけれど、働き方の自由を考えると、もっと柔軟に働きやすい仕組みを考えないといけない気がする。

週40時間を同じ場所、同じ組織にコミットする代わりに、厚い社会保障を手にする今の仕組みよりも、どの働き方でも社会保障は賃金や掛け金の度合いの分受け取ることができて、組織間の移動を行えたり、副業の服務規程を変えたり。テレワークの仕組みをもっと進めたりする方が、いろんな働き方を選択しやすくなる。

日本のGDPが上がらない一つの要因に、労働力の投入が不十分ということがあるそうだ。結婚してみてわかったけれど、子どもができると、特に女性は時間とお金の制約がぐんと上がってしまう。それでも、育児の中で生まれる細切れの時間を労働に変えられるよう努力することが、企業にとって、社会にとってもプラスになるはず。

実際、自治体ではテレワークの実証実験が始まっている。
【青森県】テレワークシステムモデル実験の取組み紹介 (テレワーク最新情報 ~田澤由利のテレワークブログ~)

あと、本の中身の話ではないけれど、初めて電子書籍を読んだ感想として、思ったより読みやすかった。UIもわかりやすく、文字の大きさもよかった。(多分ePUBでできてるのかな?)線を引いたりマーキングできないことに、少しじれったさも感じたけど。電子書籍は、対象が広がればどんどん利用したいなあ。

【書評】20歳のときに知っておきたかったこと

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 2

評判良かったので購入。子どもが大学生になったら、読んで欲しいと思う。起業家精神を説いている本なのだけれど、起業する人でなくても生き方に希望を持てる。人生で挑戦し、失敗することの意義を教えてくれる一冊。

外資系の会社に入って思ったことは、生意気である方が認められる、ということ。もっと言えば、前に出て、意見を言って、行動で結果を残した人が評価をされる。だから、この本で書いてあることはすごい納得できる。

身近なところに問題はあって、それと同じだけ改善の余地がある。
生まれて1ヶ月になる子どもの寝付きが悪いことも、買い物するときに店員に薦められるポイントカードの鬱陶しさも、中小企業の資金繰りの厳しさも。

そういう問題を見つめて、解決に向けて考え、挑戦する。その結果として失敗したとしても、それよりも大切なものが得られるはず。

世の中は見方によって変わるし、自分の行動によっても世界は変わる。

【書評】時間をかけない情報整理術

佐々木 直彦¥ 840
単なる情報整理術にとどまらない内容の濃い、成果志向型の仕事術の本
第1章のタイトルが全てを物語ってます
最近、情報整理について考える機会が多かったので、参考本として購入。いろいろ迷走しかけていた思いが、すっきりした。それは「何のための情報を収集して整理するのか」ということ。
結果を出すための情報整理を

私たちがほんとうに行わなくてはならないのは、大量の情報を、見やすく、あとで取りだしやすいように整理する情報整理ではなく、「ホンモノの情報」を創りだす情報整理なのです。

どうやら自分には収集癖があるらしく、目的を見失って「集める」ことに執着する場合がある。情報を整理することが目的になっちゃいけない。結果を出すことが大事。
相手に行動を促す情報を
情報整理だけでなく、コンサルタントとして相手に伝えるコツも書かれている。これも結構シンプルで自分の中で復習になった。気になったのは次の3つ。
1つ目。伝えるときは、「柱」となるひとつのコンセプトを見つけることが重要。きっと「ひとつ」であることが重要。このブログを書くときに、思いついたまま論点がぼんやりした状態でアップすることもあるけど、もう少しブログを書くときもこういう意識を重視しようかな。疲れるけど。笑
2つ目。論理は一本、物語は複数。論理を積み上げることをコンサルタントは求められるので、その点は磨かれていくのだけれど、物語を出せるかは結構個人のセンスに頼っている気がするな。こういう感性に訴えるスキルというのも、もっと重要視されて良い気がした。
そして最後。この言葉に集約されている。

自分の行動が起こる。相手の行動も起こる。「この二つの行動が起こるための情報整理とは何か」に答えを出したかったのです。

「いつもやり取りしている顧客の上司の上司まで説得できる資料を作れ」と上司に言われたことを思い出した。行動まで結びつけてナンボ。

【書評】やりがいある仕事を市場原理で実現する!

やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!
渡邉正裕
光文社
売り上げランキング: 32741

MyNewsJapanを立ち上げた経験をもとに、市場原理とやりがいある仕事の両立を説く。普遍的な理論のような話が前半にあって、後半は体験談を追っていく構成。

必要なのは「ビジネスモデル構築力」
 
これから必要なのは「ビジネスモデル構築力」。激しく同意。NPOやNGOの人と関わっても、こういう意識が醸成されつつあると思う。収益をあげないと組織は継続できないんだから、どういう風にお金を集めて利益を出すか、ということを考えないといけない。
 
しかも、不況で、閉塞感たっぷりな日本で、現状を壊して新しくビジネスモデルを構築する人材が活躍できる。きっと↓こんなイメージが一般的にはある気がするけど、これをブレイクスルーするようなビジネスモデルだって、描けるんじゃないの?と、この本は主張している。
 

「気持ち良くお金を払ってもらう仕組み」って言葉があったけど、シンプルで大事な思考だよなあと思う。
 
 
広告モデルの危うさ
 
この本で、広告モデルには一種の危うさがあることを知った。著者の実体験が書かれているが、どれも少なからず広告主の意図と矛盾しないようになっている。あのGoogleでさえ。書かれている内容をどこまで信じるか、ということもあるけれど、テレビやWebや雑誌など、広告収入モデルで成りたっているコンテンツビジネスは、バイアスがかかっている可能性を疑った方が良い、ということを改めて実感した。
 
GoogleのAdsenseのビジネスモデルは秀逸だと思うけど、そういう仕組みによって、おのずと自分の事業に制約がかかってしまう可能性があることも、今後ビジネスモデルを自分で考える上では参考にしたい。
 
 
コンテンツビジネスはデータベース化を考える
 
本の中では、書いた記事をデータベースとして蓄積して、会員に利用してもらうことが有益みたいなことが書いてあったけど、確かに自分が最近感じていることと重なる。コンテンツビジネスには、「データベースを売る」という概念が重要になっている気がするもの。今後はますます「新しい情報」には価値がなくなって、「誰も知らない情報」か「膨大な知ってる情報の蓄積」のどちらかに大きく触れていく。
 
 
市場原理と公共性のバランスについて、数年来何となくもやもやしていた気持ちが、少しは晴れた気がした。

あわせてどうぞ。

【書評】吉越式会議

吉越式会議
吉越式会議

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吉越 浩一郎
講談社
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トリンプの元社長、吉越氏の最新刊。期待して読んだけど、これは良い。会議術としては、本当実践的な内容が入っていて、すぐに試してみたくなる。集団で仕事をする人は、ぜひ読んで欲しい。会議が効率的でない人や、会議なんて不要だと思っている人は、読んでおいて損はないと思う。それぐらい、有益な内容だった。

読んで気になったことを書いておく。

 

組織全体まで「横展開」されるまでが重要

吉越式会議では、社長が出席している会議であるにも関わらず、結構細かいことまで取り扱っているのだそうだ。自分としても、会議で取り扱うことは、出席者によって段階というかレベルがあると思っていたので、結構衝撃的。でも、言われてみれば納得できる。

社長であろうと誰であろうと、問題と思ったことは指摘すれば良い。指摘する、ということは組織として「できていない」からだ。そして、対策を検討する。そして、重要なのは再発防止のために「横展開」するということだ。他の組織や、他の対象を考えた場合に、同じように対策を講じるべきところがないか、検証する。

人間の作業の正確性を信用してはいけない、マニュアルが更新されているかも重要なチェック項目だと言っていた。やはりマニュアルの充実は大事なんだな。

 

上司にアイデアを求めてはいけない

これは、全てに当てはまるわけではないと思うが、ブレインストーミングやアイデア会議、上司にアイデアの相談をするのはよくない、と本書では言っている。それは、現場の事情は現場の担当者が一番知っているはずであり、そこから生まれるアイデアが最も良いはずだ、という考えに基づく。

ただし、上司や経営者は、そのアイデアの結論に至るまでの検討経緯(ロジック)が妥当であるかは検証しなければいけない。

この、担当者のアイデアそのものではなく、その思考過程を上司は検証するのだ、という切り分けは、非常にわかりやすく、取り組みやすい説明だと思う。

 

サテライトオフィス・在宅勤務の実現方法

ちょっと面白かったのが、会議を充実させることで、サテライトオフィスや在宅勤務の実現が可能になるのでは、という示唆。

現在の日本社会では、やはり女性を戦力として有効活用できていない場合が多く、女性も結婚や妊娠を機会にキャリアが途絶えてしまうことがある。これは、個人にとっても企業にとってもロスであるので、できるだけ在宅勤務や短時間勤務などの柔軟な勤務形態を実現し選択肢を増やすことで、女性にもっと働いてもらう必要があると思っている。まあ、実際は女性だけでなく男性でも家庭の事情を抱えていたり、いろいろなケースがあると思うが。

さて、なんで会議を充実させることが、サテライトオフィスや在宅勤務を実現できるかというと、以下のような論理展開である。

  • 会議によって課題やデッドラインが明確になる
  • 上司がちゃんと仕事をコントロールし、部下に適切な仕事の範囲を与えられる
  • 部下は、仕事をこなす過程において、誰かと密に相談したり誰かの仕事を急に引き受けなきゃいけない状況がなくなる
  • テレビ会議などのちょっとした接点さえあれば、あとはサテライトオフィスや在宅勤務で仕事が可能になる

結構重要な示唆だと思う。本当にこの域に達するためには、組織を相当充実させる必要があると思うが、こういう結果が得られるのならば、会議を頑張る価値もありそうだ。

 

いろいろ考えさせられた。読んでいると、試してみたくなる。
あと、自分の業種的にはITシステムの内製化の取り組みも気になった。内製化した方が組織として変革スピードが上がるし、コストについても納得性が高くなる。ただし、内製かするための人材を確保するのが、実際は結構大変ということなんだけど。

【書評】自分をいかして生きる

自分をいかして生きる
西村佳哲
バジリコ
売り上げランキング: 3996

「働き方研究家」の方の著作。働くことを考えさせられる一冊。今の自分にとっては、いろいろ考えさせられることが多かった。こういう、自己啓発というか、今の自分を見直すような本は、目新しいことがあまり多いとは言えないが、それでも定期的に読むと、新しい発見があるから不思議だ。

いろいろ目に留まった言葉を書き残しておく。

良い働き方とはなんだろうか

「いい影響」とは、その仕事に接した人間が「よりハッキリ存在するようになる」ことを指すんじゃないか。「より生きている感じになる」と言い換えてもいい。

 

働くことを通じて、「これが私です」と示せるような、そんな媒体になる仕事を求めているんじゃないか。

 

会ったこともないどこかの誰か、自分の仕事に触れる見ず知らずの誰かと、存在の交わし合いを望むこと。

自分の存在感を、潜在的に求めてるんだろうな。マズローの承認欲求だろうか。そういう、自分の存在感を追求できる仕事が、良い働き方なんだろうな。

どういう気持ちで仕事に取り組むのが良いんだろうか

「こんなもんでいいでしょ」という感覚の中で行われた仕事は、同じ感覚を人にうつす。ある人間の<あり方>が、仕事を通じて他の人にも伝播してゆく。

 

一名の人間においてはその循環もいつか終わるわけだが、迷ったり見失うことがあっても、その都度、より「生きる感じ」がする方へ動いてゆけばいいなじゃないか、と思う。

やはり惰性じゃだめだな、という気持ち。そして、自分が生き生きとできる場所を求める感覚を大事にしたいもんだ。

【書評】情報を共有し、活用する技術

最近ナレッジマネジメントの興味を持ったので。具体的な方法が書いてあって、わかりやすかった。ただ、初歩的な部分が多かったりするので、あまり前提知識がない人が読むことを薦める。
 
参考になったことは、ここにメモ。

マニュアルに書かれるべき内容

 

マニュアルに書かれるべき3つの内容
①その行為の方法
②目的・意義
③例外時・異常時の対処法

これは、言われてみれば当然なんだけど、意外に守られていないのではないか。特に②。システム運用などでは、よくマニュアルとして手順などを記載するが、「何の目的でやるのか」など書かれていないことが多い。
 
これでは、時が経ち、人が変わったときに、意味の無い作業を繰り返してしまうことにつながる。理由がわからないから、理由を考えないし、見直すこともできないからだ。だから、必ず理由は書くべき。マニュアル文書をテンプレート化して、必ず書くよう「目的」の項目を盛り込めば、そういうリスクも減らせそうだ。
 

情報の「置き場マップ」をつくる

 
これは、まあポータルみたいな概念かね。情報がどこにあるかわからない状態では使われないので、それをガイドする役目をどこかに設ける必要がある。それが情報の「置き場マップ」ということだろう。
 
Yahooは各情報を分類し、到達までの時間を早めている。こういう目次で情報を整理することは不可欠だろう。逆にGoogleデスクトップみたいに、検索で見つける方法も考えられる。分類と検索システムの両方を整備して、情報へたどり着ける状況を作るのが望ましい。
 
チームの情報などを、どういう風に整理して、たどり着いてもらうようにするかは、組織に合わせてよく考えなければならないと思う。