百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない


長く生き残っている企業というのは、戦争や災害、景気の好不況、産業発展による事業構造の変化なども乗り越えてきたわけで、存在として非常に興味深い。老舗というのがどういう要素を持っているのか、なぜ生き残っているのか、老舗でもつぶれるというのはどういうときか。

取り上げる老舗企業というのは、当然ながら事業構造の変化に「比較的」影響を受けにくい清酒製造や菓子小売りなどが多いのはどうしようもないが、それでも学ぶ点は多いはずだ。

 

会社を続けていくためには事業承継が最も大きな問題

ゴーイングコンサーンを実現するためには、事業承継が重要になる。老舗といっても中小企業だ。経営者候補はそんな簡単に見つからないし、どこの企業も20〜30年で経営者交代の時期を迎える。そのたびに、経営者交代リスクにさらされることになる。

そして、出身大学別に社長数をみると、老舗企業では慶應義塾大学がトップとなった。慶應義塾大学出身の社長は八八〇名で、二位の日本大学の七三四名を大きく引き離した。出身大学が判明した社長のうち九・六%が慶應義塾大学出身、ほぼ一〇人に一人だ。

なぜ出身大学のレベルが高めなのか、最初はすぐには理解できなかったが、やはり教育レベルを高くすることで経営者としての素質を少しでも高めようということと、人脈形成なのだろう。事業承継というのはとてもリスクが高いため、自分の子どもにこういう教育を施すことで、ずいぶん前から備えておくものなのだ。

 

財務上の特徴が面白い

長く続いている企業は、全体と比べると売上高営業利益率より売上高経常利益率が高い傾向にあるのだそうだ。それは、本業以外からの収益が多いことを示している。

歴史があるから成せるわざではあるのだけれど、本業が厳しくなっても本業以外からの収益源を設けておくことで、すぐに倒れるようなリスクを小さくしているのだと思われる。そういうバッファを設けるような財務構成は、特徴として面白い。ただ、これは資産効率が悪くなるリスクもあるので、内容や程度については十分に気をつける必要がある。実際、統計では老舗企業は資産効率が低い傾向にあるようだ。

 

老舗を再生する企業の存在

長く事業を続けていくためには、乗り越えなければならない壁はたくさんあるし、変化していく必要がある。本書の中で知った、JFLAという企業は、老舗企業が変化をしていく一つのスキームとして面白いなと思った。

JFLA - ジャパン・フード&リカー・アライアンス

日本酒の蔵元再生に関しては、JFLAは二〇〇七年一〇月に「伝統蔵」という中間持ち株会社を設立した。現在は、その傘下に全国各地の八社(二〇〇九年八月現在)の清酒蔵元を擁して、原料の調達や販売体制の整備が進められている。

これだけ読むと共同調達や販路の共有なのだが、ホームページをみるともっとコンセプトは広くて、食品メーカーや卸会社など、飲食に関する企業を束ね、事業提携やM&Aを行ったり、マーケティングや研究活動を行っている。共同調達の枠を超えているが、ホールディングカンパニーよりは各企業に主体性が残っているようにみえる。こういう形もあるんだな。

 

閉鎖的なコミュニティで信頼を重要視する

長く続いていくということは、ゲーム理論でいえば「繰り返しゲーム」になるので、自分の利益を最大化しようとしても問題が生じる場合がある。そういう場合は、おのずと双方が信用を重視する方が全体として利益を最大化することができる。

本書で出てくる企業も地域の老舗企業であるので、事業範囲はそれほど広くないし、おのずとコミュニティは狭くなる。そういう中では、信用を築き上げることがゴーイングコンサーンを行う上では最重要になる。

また、どうやら長く続く中小企業には、経営者一族以外に、親子代々入社して幹部社員になるケースもあるようだ。これも、信用を重視する企業スタンスに影響していると思う。

親子代々が入社する理由を、「いつの時代でも、会社が社員を大事にしてきたからだと思います。会社から大事にされていなかったら、家で会社の悪口を言うこともあるのではないでしょうか。父親と同じ会社に入りたい、自分の子供をこの会社に入れてもいいと感じてもらえるのは、社員本人たちが大事にされているという自覚を持っているからだと思います」と林社長は語る。会社から大事にされる親の背中を見てきた子供は、その姿を通して福田金属箔粉工業を見つめたうえで、安心して入社するのだろう。

 

企業を長く続けていくためには、成長する企業とはまた違うものが求められる。

プリント・オン・デマンドの今後

Kindleをここ最近絶賛しているけど、やはり紙の媒体だって捨てがたい。今日はそういう話を書こうと思う。Kindleというのは、「電子データを読む権利」を購入しているんだけど、個人とデータの紐付けがかっちりしてしまって、気軽に売却や貸し借りがしづらい。

やはり紙の本は紙の本で魅力があるし、電子書籍に絶滅させられるなんてことはないと思う。ただ、新しい流れとして、「電子書籍で買って、あとで紙の本も欲しくなる」ということがあるんじゃないかと思った。やっぱり直接触れられるものの魅力は大きい。

そこで考えられるのは、プリント・オン・デマンド。最小1冊からでも注文を受け、印刷・製本を行う。日本でも既に事業化が行われていて、アマゾンやパブー、三省堂などが展開している。

Amazon.co.jp: プリント・オン・デマンド(POD)
50ページで700円ぐらい。

 

パブーのオンデマンド印刷 | ブクログのパブー
52ページ白黒1冊で1800円ぐらい。

 

印刷屋が三省堂書店オンデマンドを試してみた « マガジン航[kɔː]

 

これを見ると、今はどちらかというと絶版物を印刷することがメインユーズのような気がする。これまでの自費出版に比べれば、確実に費用面でハードルが低くなっているんだろう。ただ、電子書籍を購入してから紙の本も欲しくなった場合を考えると、まだ値段が高い。せめて紙の値段と同じか、やや安いぐらいでないとニーズを満たすことは難しいと思う。

フォトブックも、デジタル化された写真を手頃な金額で製本するサービスとして、ニーズを掘り起こしている。TOLOTを利用してみたけど、500円とは思えない品質でびっくりした。こういう動きを考えると、電子書籍からオンデマンドで紙媒体を入手するとか、日経新聞と同じように紙と電子のセット販売のパターンが、今後増えてくると思うけどな。

カッコ悪く起業した人が成功する

起業、経営、廃業に関して、豊富な経験に基づいて細かいことまで教えてくれる。この内容で100円は安いよ。まあ、結構レイアウトが崩れて読みづらかったりするけど、その点は値段と内容を考えればご愛嬌。

 

ずっと考えていることではあるけど、結局自分一人で稼ぐ力がどの程度あるかといえば、多くの人たちはないと思うわけです。公務員の天下りがなくならないのは、民間で役立つスキルがつかないからだと書かれている記事があったけど、それは民間でも同じ。ただ、民間の場合はその受け皿となるパイが公的機関より広いだけなんだと思う。

天下りがなくならない本当の理由って単純 〜官僚辞めてみて|旧うさみのりやのブログGT ~移転しました~

 

というわけで、自分でもっと経営に関することをやってみたい、という人にはおすすめです。

事業企画に関わる人はぜひ読んで欲しい「社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた」

あけましておめでとうございます。年末年始は結構読書がはかどりました。というわけで、新年一発目は「社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた」の書評を書いて始めようと思います。

著者は「Table for Two」というNPOの代表を務める方。以前、「「20円」で世界をつなぐ仕事」という本を読んだことがあって、覚えていた。本作は、それを発展させて、NPOだけでなくビジネス全般を対象にして、どうやって「Win-Winの関係」を広げていくかをまとめたもの。

 

ビジネスを考える上でのたくさんヒント

当然のことながら、サービスを提供する相手の事情や感情を深く理解しないと懐には入り込めない、ということ。発展途上国でのサービス展開を行おうとするサンプルケースが出てくるのだが、まさに「調べたつもり」になって、本当の実情や人の感情の部分も含めて理解しないと、顧客が喜ぶサービスとはならない。

また、敵を作るのではなく、巻き込んで大きな問題を解決していこうというスタンス。競合はたくさんいても、出し抜き、蹴落とすのではなく、もっと大きな目標を念頭に協力していくことができないだろうか。多少きれいごとには聞こえるけれど、発想の広がりを与えてくれる。

長期的な活動に必要なビジョン。ビジネス書でも「経営理念が重要だ」と捉える企業がたくさんいても、実際はこんな状態が多い気がする。

「企業のビジョンなんて、しょせん額縁に入ったお題目」 そんなふうに言う人もいます。僕は企業にはそのビジョンを達成するだけの力があると常々思っているのですが、こんなコメントを聞くにつけ、企業で働く人たち自身がそれを信じていないように思えるときがあります。

でも、それではやはり短期的な視点に陥って、競争し、せめぎあう関係が繰り返されてしまう。

 

長期的視点の重要性

著者の経歴が興味深いのは、経営コンサルを経験した後にNPO法人の代表となっていること。冒頭では、コンサル時代の失敗談が語られている。それは、業務改善を達成したものの、現場には改革した先に何が得られるのかを示せていなかった、というもの。

ビジネスの環境はめまぐるしく変わるし、IT技術の移り変わりも激しい。そういう状況では目先のことに囚われてしまうが、それはそれで重要だとしても、その先が得られなければ、継続的に結果を出すことが難しくなってしまう。ありきたりな言葉ではあれど、短期と長期の両方の目線を持つこと、特に長期的な視野というは強く意識する必要がある、というわけです。

 

 

最近読んだ記事で「延命期に入った資本主義」というものがあって、「なるほどな」と思った。マクロ的にみると、先進国は経済的に疲弊し、産業革命以降育まれてきた資本主義は、右肩上がりに発展することが難しくなっている気がするし、新しいフェーズに入った感覚がある。それがどこまで確かかはわからないけれど、新しい価値観で仕事をし、社会を発展させることが求められている。

 

 

それにしても、NPOやTFTのアピールにもなる、見事な一冊。ぜひ、いろんな人に読んで欲しい。

イノベーションを生み出す社会の仕組みとは何か「Launching The Innovation Renaissance」

イノベーションを生み出す社会を形成するには、どういう仕組が必要か。先日書評を書いた「未来を発明するために今できること」は組織におけるイノベーションを生み出す仕組みが中心だったが、この本はどちらかというと社会全体や国家レベルで述べられている。

 

イノベーションを生み出すインセンティブ設計

イノベーションを生み出すためには、いろいろ社会的なインセンティブ設計が必要になる。この本でも、特許、賞金、教育、移民政策など様々なインセンティブ設計が取り上げられている。

例えば特許については、社会のイノベーションコストを最適化するためのものであり、産業によって「真似る」コストが高いか低いかによって変わると述べられている。

More generally, patents should be stronger in industries with high innovation-to-imitation costs such as pharmaceuticals and weaker in industries with low innovation-to-imitation costs such as software.

最近話題のアップル対サムスンのデザイン特許紛争についても、デザインというのは利便性や感覚の観点でイノベーティブな部分が含まれているのだが、模倣が容易であるため意匠権が確保されている。ただ、なんでもイノベーションを生み出した人を保護するために特許権と強化していくことは、社会のコストを上げてしまい、結局イノベーションを利用されなくなる、という恐れがある。

ソフトウェア開発においても、特許は新しい提言が生まれている。これも、特許はイノベーションコストを最適化するためのものである、という考えがちゃんとみえる。
特許がソフトウェアの技術革新を妨げないようにするべく提案された「Defend Innovation」7項目の内容とは? – GIGAZINE

 

移民政策についてはも、高い技術の人たちだけを許容するのではなく、Low-skillの人であっても社会に取り込むことで、相対的に高い技術の人たちのリソースがイノベーティブな作業に振り向けられる可能性が考えられる。

Low-skill immigration can even increase innovation because it helps highly skilled workers to better use their time and skills.

このように、社会全体でイノベーションを生み出していこうと思うのならば、いろんな仕組みを導入していく必要がある。

 

教育に関する考察はいろいろ興味深い

面白かったのは、教育に関する考察だ。そもそも、教育は人材育成に大きく寄与する部分であり、イノベーションの観点からも重要だと語られている。

最初に面白い数字だなと思ったのは、かつてはトップクラスの大学卒業者が先生になっていたが、今は47%のアメリカ人教師が、下から3分の1のクラスの大学卒業者である。

Teachers used to come from the top ranks of their college classes, but today 47 percent of America’s teachers come from the bottom one-third of their college classes.

これは、相対的に教師という職業の地位が低下していることになるのだろうか。
また、大学生の数が増えすぎていて、本来は高校卒業者が就くことが多い職業に、大学生が増えている。

Baggage porters and bellhops don’t need college degrees, but in 2008 17.4 percent of them had at least a bachelor’s degree and 45 percent had some college education. Mail carriers have traditionally not been college-educated, but in 2008 14 percent had at least a bachelor’s degree and 61 percent had some college education.

日本でも大学の数について最近話題になったけど、大学の進学率は高いほど良いのか、というのは改めて考えさせられる。また、ドイツとアメリカでは大学への進学率が違っている、というのも興味深い。

As we said earlier, 97 percent of German students graduate from high school, but only a third of these students go on to college. In the United States we graduate fewer students from high school, but nearly two-thirds of those we graduate go to college, almost twice as many as in Germany. So are German students undereducated? Not at all.

ドイツの大学進学率が低いのは、高校時点で座学でけでなく実践的な教育を行っていることも要因のひとつと書かれている。

 

世界単位で捉える必要がある

WSJでは、「米国経済はもうイノベーションでは救われない」という記事が出ていた。

これを読むと、確かにそうかもしれないとも思う。新薬開発の可能性は減ってきているし、米国も労働人口が減少していく。それでも、世界単位で考えれば、すごい勢いで経済発展している国や地域はある。

The number of idea creators around the world is increasing rapidly, and in 2007, nearly one-quarter of world research and development expenditures came from the developing world.

また、世界経済フォーラムの「国際競争力報告」によると、2012年版では日本のイノベーション能力は高いランキングになっていて、マクロ経済環境が非常に悪い結果になっている。
国際競争力ランキング「国際競争力報告 2012年版」【世界経済フォーラム】世界ランキング統計局

これをみると、今日本に必要なのはイノベーションの創出ではなくて経済対策なのだろうか。少なくとも、イノベーションが全てを救うわけではないし、いろんな要素の中でイノベーションが生み出される社会構造が必要である、ということをこの本は教えてくれる。

Amazonの「ほしい物リスト」は最強のキラーコンテンツだ

僕は、Amazonのほしい物リストをとてもよく使っている。日々使っていて、「これは、最強のキラーコンテンツである」ということ思ったので、それについてここで書いておこうと思う。

 

ネットフリックスの「QUEUE」とアマゾンの「Wishlist」

アメリカには、ネットフリックスというオンラインDVDレンタル会社があり、その企業では「QUEUE」と呼ばれるレンタル希望一覧リストが存在する。これを元に、順番にレンタルDVDを発送してくれるわけだ。

そして、この「QUEUE」はひとつのキラーコンテンツになっている。どういうことかといえば、自分の好みを蓄積できる場所であるからだ。次の発送を決める機能と同時に、自分の好みを覚えておいてくれることでもあるのだ。これがなくなったり、他社のサービスを使おうと思っても、リストがなくなることが非常に不便に感じるのだ。

アマゾンは、これと同じような機能を「Wishlist」として実現している。自分が欲しいものをたくさん登録することで、自分もこれを覚えておける。欲しい本や物を気軽に登録することができるし、あとでよく見返す。楽天ブックスで本を買おうと思うけど、リストはアマゾンに登録されているので、欲しい商品を思い出す場合は必ずアマゾンで確認することになる。こうなると、ますます他社で買うことが面倒臭く感じてしまう。

 

ほしい物リストはどんどん対象を拡大している

ほしい物リストは、新しい機能がどんどん導入されている。単なる自社商品のブックマークでは既になくなっている。

 

自社以外の商品を登録する

既にChromeの拡張機能などで、アマゾンにない商品でもほしい物リストに登録することができるようになっている。最初はなんでこのような機能を搭載したのか直感的には理解できなかったのだが、ほしい物リストの価値を高めるためには、その対象を広げることが合理的なわけだ。

最近は、他社の商品どころか、単なるメモまで追加できるようになっている。

 

外部に公開する

リストを複数作ることができるし、それを公開することもできる。震災でも活躍したが、商品リストを他人に的確に伝え、かつ重複購入がないようにするためには、とても便利なツールになっている。

 

楽天はなんでほしい物リストを作らないのか

以前から疑問なのだけれど、楽天はほしい物リストに該当するものが見当たらないが、なぜ存在しないのだろう。正直、ちょっといいなと思った商品でも、それを蓄積しておける場所が存在しない。これは大きな違いだと思う。蓄積しておける場所が必要なのだ。

アマゾンのほしい物リストは楽天の商品を登録することが可能だ。

 

というわけで、この記事を書くために自分のほしい物リストを見直したら、620も商品が登録されていた。僕は時間があるときに、不意にほしい物リストをついつい眺めてしまう。そして、その中から値段と気持ちが合致する商品を見つけて、今日もクリックしてしまうわけだ。

Zyngaの凋落をみて業界のスピード感を思い知る

[scshot url=”http://zynga.com/”]

TechCrunchに、Zyngaがなぜこけたのかが書かれていた。

なぜZyngaはこけたのか?

なぜZyngaはこけたのか?

 

Zyngaのこれまで

Zyngaは2007年に設立されたソーシャルゲーム会社で、主にFacebook上で動くゲームを提供している。CityVilleやFarmVilleが有名。(ジンガ – Wikipedia

TechCrunchの記事によると、

  • PCのゲーム市場が成熟して細分化
  • Facebook上に掲載していた広告コストが上昇
  • ゲームによるフィード更新を行うが、過剰でスパム化→Facebookがゲームによるフィード更新を制限
  • モバイルへの移行の波に乗り遅れた

という感じ。最初の事業モデルとしては成功したものの、市場が成長し、事業環境が変わることに対応できなかったということだろう。

 

そして、これが今のZyngaの株価。
ZYNGA INC – CL A (ZNGA:NASDAQ GS): Stock Charts – Businessweek

 

マネタイズの弱さとモバイルへの対応遅れが大きな痛手

以前取り上げたけれど、GREE・DeNAと比べると、Zyngaはユーザ数が一桁多い。けれど、売上高も利益率もGREEやDeNAの方が高いのだ。日本から誕生したこの二社と比べると、マネタイズが弱いのは間違いない。

マネタイズのモデルが違うのも特徴だろう。PCの場合は広告収入がベースになるが、モバイルの場合は課金収入がベースになっている。こういう収益モデルの転換も苦戦した原因のひとつなのかもしれない。

 

あとは、ここ最近ずっと言われているモバイルへのトレンドに乗り遅れることは、結構致命傷で、Facebookもずっと注力すべきはモバイル、と宣言している。GREEもDeNAもフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を素早く行った。

 

他にも不幸は重なったのだろうけど、移り変わりのスピードが早く、方向性やタイミングを誤ると、時代の寵児と言われていた企業もすぐに衰えていく。

とはいえ、GREEやDeNAもドコモがソーシャルゲームに参入したり、Facebookはプラットフォームとしてどうやって収益モデルを構築するかは、各社しのぎを削っていて、決して安泰というわけではない。

 

こういう移り変わりをみると、本当にこういう業界のスピード感は尋常じゃないなと思う。一瞬で覇者になることもできるけれど、衰退するのも早い。

 

参考:モバイル事業でグリーやDeNAの後塵を拝したFacebookがモバイル分野で成功するには  | ITトレンド・セレクト | 現代ビジネス [講談社]

国内回帰は今後進むか

アメリカで本国回帰っていう話があった。

 

アメリカの本国回帰トレンドを日本にも — 岡本 裕明 : アゴラ – ライブドアブログ

アメリカの本国回帰トレンドを日本にも — 岡本 裕明 : アゴラ – ライブドアブログ

 

アメリカで本国回帰が大きな流れになりつつあり産業、特に製造業の海外拠点から国内へのシフトが目に付くようになってきました。理由は海外、特に狭義の意味で中国の製造コストが上昇、運賃や労働効率性を考えればアメリカ本国で製造しても競争力を維持できるようになってきたのです。

中国の人件費向上はどれくらい?

実際にどれくらいなんだろうと思って検索してみたら、中国の人件費は、ずっと10%前後の上昇を達成しており、2009年時点で上海の年収は66万円程度になっている。

中国の平均年収(年収/所得/給料/賃金/報酬)2010年データ | 上海ではたらくビジネスマンのWEBサイト

中国の平均年収(年収/所得/給料/賃金/報酬)2010年データ | 上海ではたらくビジネスマンのWEBサイト

これに輸送コストや研修コスト、労務管理リスクなどを含めていくと、人件費によるコスト圧縮効果が下がってきているんじゃないか、ということだと思う。今後もこんな感じで人件費が上がっていくことを考えれば、そろそろ事業構造をシフトしておかないと、という危機感もあるのかもなあ。

他に人件費が低い労働力を提供できる国ないの?

中国が人件費が上昇してくるとなると、他のまだ人件費が低い国に資本が集まるんじゃないかとも思うし、タイなどは親日で今後発展が期待されるという話があった気がした。だけど、これを見ると、東南アジアで中国以外に大きな資本投入が見込めるほど人件費が高い国はないんじゃないかと思えてくる。

www.bk.mufg.jp/report/aseantopics/ARS166.pdf

www.bk.mufg.jp/report/aseantopics/ARS166.pdf

それに、カントリーリスクや物理的な距離、人口や土地なども考慮する必要があるので、中国と同じような規模で人口や土地を有している国というのは、アジア地域ではないのかもしれない。

日本でも国内回帰が進むか?

日本でも国内回帰の動きはある。レノボやHPは、日本工場での生産によって、「Made in Japan」のブランド力を利用したり、高い量産品質や柔軟な対応力を取り込んでいる。

レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか (プレジデント) – Yahoo!ニュース

レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか (プレジデント) – Yahoo!ニュース

 

アメリカでも日本でも、製造業は旧時代のビジネスのように捉えられているけど、市場としてはまだ立派に存在している。今後はいろんな国でアウトソーシングの意味は変わってくると思う。少なくとも「安い労働力確保」という要素は相対的に低くなっていくと思う。そのとき、日本国内にも投資拡大のチャンスは訪れるんだろうか。

地方新聞のシェアの高さに驚く

日本全体でみると、地方新聞のシェアって高いんだなあ。

地方における地方新聞の普及率は大手紙を寄せ付けない。ABC協会のデータによれば、47都道府県のうち、実に8割近い37道府県で地方紙が全国紙を圧倒しているのだ。徳島新聞、鳥取県の日本海新聞、福井県の福井新聞が、県内シェア75%を超える御三家だ。その三県では全国紙5大紙が束になっても半分にも満たない。
大阪維新で地方新聞の時代が来る! : アゴラ – ライブドアブログ

日本全体でどんどん人口は減っていくし、ネットメディアも広がっていくから、旧メディアである新聞は今後の生き残りが難しいんだと思ってた。というか今でも思っている。それでも、ローカルなニュースというのは確実にニーズがある。イベントなど地元の交流を促したり、市役所公務員の不正を報道することで公権力の監視を行う部分で意味がある。

 

ここらへんを見ると、人口減少によって新聞の発行部数が減少しているのは間違いないのだが、人口減少よりも減少幅が大きい。普及世帯数で見ると、明らかに新聞を購読しない世帯が増えている。

存亡の機を迎えた新聞(1)

存亡の機を迎えた新聞(1)

新聞の収益構造としても、新聞そのものの販売収入はあまり変わっておらず、広告収入が減少していることが影響が大きいようだ。新しい収益モデルが求められている。

 

全国紙はテレビやラジオなどメディアの複合体によって体力をつけて生き残るのだと思うが、こんな状況でローカルメディアというのは、生き残る方法があるんだろうか。地方に住んでいて、地元の情報がうまく入手できなくなったら、どういう社会になるんだろうか。

「超」入門 失敗の本質

「失敗の本質」は昔から気になってた。超入門なんて本が出ているし、ここでも紹介されているもんだから、ついつい買ってしまった。だけど、予想以上に面白かった。

目標を設定できない「平和ボケ」の伝統 – 『「超」入門 失敗の本質』 : アゴラ – ライブドアブログ

これ読んでいると、日本人のアイデンティティというか、歴史の中で深く刻み込まれた特性みたいなものに、つい思いを馳せてしまう。自分の中にもそういう部分があるなあ、とか。迷走している組織って、そんなに珍しくないよなーとか。

軍事本というよりは、ビジネス本としてエッセンスをさくっと捉えるのが良いと思う。心に残った2点を書いておく。

 

「戦略」というものをどう意識するか

「戦略とは指標を追いかける指標のことである」P.48

戦略の定義はいろいろあるし、どれも正解だと思うんだが、これが今まで教わった戦略の定義の中でわかりやすく、そして明解だと思う。指標を明確にする、という行為そのものが組織に方向性を与えるし。

そして、日本人はこの指標を設定するのが苦手で失敗したり、経験的に無意識に獲得した指標を追いかけて成功するけど再現性がなかったり、というわけで。

 

どうやって自分から変化していくか

いろいろ失敗の要因が書かれているんだが、こういうことがわかっているのに、なんで何十年経っても改善されずに継続してしまうんだろうなあ。歴史の中で培われた特性はそんなに簡単には消えなくて、一方で人間は時間とともに過去の教訓や失敗は忘れてしまうからなのかね。

最近調べた雪印乳業にしても、2000年に起こした食中毒事件が倒産(正確には事業分割か)のきっかけになったんだが、1955年にも同じような食中毒事件を起こしているんだよね。だけど、それぐらい時間が経つと緊張感なんかも風化してしまうのかもしれない。

自分たちの思考や体質を治すためには、まずはこの本に書いてあることを自覚することから始まる。特に変化を自ら起こすというのが、日本人は苦手なのかもな。

 

インテルが日本企業の高品質DRAM参入で苦しんでいるときの、なかなか転換できない姿勢と、そこから脱却していくきっかけの言葉は何とも印象的。

「僕らがお払い箱になって、取締役会がまったく新しいCEOを連れてきたら、そいつは何をするだろう?」

日本人でもアメリカ人でも、やっぱり自ら変わるのはしんどい作業だ。これまでの自分を否定することになるのだから。それでも、自分から変化できることが最終的にブレイクスルーを生み出す。


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