あけましておめでとうございます。年末年始は結構読書がはかどりました。というわけで、新年一発目は「社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた」の書評を書いて始めようと思います。
著者は「Table for Two」というNPOの代表を務める方。以前、「「20円」で世界をつなぐ仕事」という本を読んだことがあって、覚えていた。本作は、それを発展させて、NPOだけでなくビジネス全般を対象にして、どうやって「Win-Winの関係」を広げていくかをまとめたもの。
ビジネスを考える上でのたくさんヒント
当然のことながら、サービスを提供する相手の事情や感情を深く理解しないと懐には入り込めない、ということ。発展途上国でのサービス展開を行おうとするサンプルケースが出てくるのだが、まさに「調べたつもり」になって、本当の実情や人の感情の部分も含めて理解しないと、顧客が喜ぶサービスとはならない。
また、敵を作るのではなく、巻き込んで大きな問題を解決していこうというスタンス。競合はたくさんいても、出し抜き、蹴落とすのではなく、もっと大きな目標を念頭に協力していくことができないだろうか。多少きれいごとには聞こえるけれど、発想の広がりを与えてくれる。
長期的な活動に必要なビジョン。ビジネス書でも「経営理念が重要だ」と捉える企業がたくさんいても、実際はこんな状態が多い気がする。
「企業のビジョンなんて、しょせん額縁に入ったお題目」 そんなふうに言う人もいます。僕は企業にはそのビジョンを達成するだけの力があると常々思っているのですが、こんなコメントを聞くにつけ、企業で働く人たち自身がそれを信じていないように思えるときがあります。
でも、それではやはり短期的な視点に陥って、競争し、せめぎあう関係が繰り返されてしまう。
長期的視点の重要性
著者の経歴が興味深いのは、経営コンサルを経験した後にNPO法人の代表となっていること。冒頭では、コンサル時代の失敗談が語られている。それは、業務改善を達成したものの、現場には改革した先に何が得られるのかを示せていなかった、というもの。
ビジネスの環境はめまぐるしく変わるし、IT技術の移り変わりも激しい。そういう状況では目先のことに囚われてしまうが、それはそれで重要だとしても、その先が得られなければ、継続的に結果を出すことが難しくなってしまう。ありきたりな言葉ではあれど、短期と長期の両方の目線を持つこと、特に長期的な視野というは強く意識する必要がある、というわけです。
最近読んだ記事で「延命期に入った資本主義」というものがあって、「なるほどな」と思った。マクロ的にみると、先進国は経済的に疲弊し、産業革命以降育まれてきた資本主義は、右肩上がりに発展することが難しくなっている気がするし、新しいフェーズに入った感覚がある。それがどこまで確かかはわからないけれど、新しい価値観で仕事をし、社会を発展させることが求められている。
それにしても、NPOやTFTのアピールにもなる、見事な一冊。ぜひ、いろんな人に読んで欲しい。