「失敗の本質」は昔から気になってた。超入門なんて本が出ているし、ここでも紹介されているもんだから、ついつい買ってしまった。だけど、予想以上に面白かった。
目標を設定できない「平和ボケ」の伝統 – 『「超」入門 失敗の本質』 : アゴラ – ライブドアブログ |
これ読んでいると、日本人のアイデンティティというか、歴史の中で深く刻み込まれた特性みたいなものに、つい思いを馳せてしまう。自分の中にもそういう部分があるなあ、とか。迷走している組織って、そんなに珍しくないよなーとか。
軍事本というよりは、ビジネス本としてエッセンスをさくっと捉えるのが良いと思う。心に残った2点を書いておく。
「戦略」というものをどう意識するか
「戦略とは指標を追いかける指標のことである」P.48
戦略の定義はいろいろあるし、どれも正解だと思うんだが、これが今まで教わった戦略の定義の中でわかりやすく、そして明解だと思う。指標を明確にする、という行為そのものが組織に方向性を与えるし。
そして、日本人はこの指標を設定するのが苦手で失敗したり、経験的に無意識に獲得した指標を追いかけて成功するけど再現性がなかったり、というわけで。
どうやって自分から変化していくか
いろいろ失敗の要因が書かれているんだが、こういうことがわかっているのに、なんで何十年経っても改善されずに継続してしまうんだろうなあ。歴史の中で培われた特性はそんなに簡単には消えなくて、一方で人間は時間とともに過去の教訓や失敗は忘れてしまうからなのかね。
最近調べた雪印乳業にしても、2000年に起こした食中毒事件が倒産(正確には事業分割か)のきっかけになったんだが、1955年にも同じような食中毒事件を起こしているんだよね。だけど、それぐらい時間が経つと緊張感なんかも風化してしまうのかもしれない。
自分たちの思考や体質を治すためには、まずはこの本に書いてあることを自覚することから始まる。特に変化を自ら起こすというのが、日本人は苦手なのかもな。
インテルが日本企業の高品質DRAM参入で苦しんでいるときの、なかなか転換できない姿勢と、そこから脱却していくきっかけの言葉は何とも印象的。
「僕らがお払い箱になって、取締役会がまったく新しいCEOを連れてきたら、そいつは何をするだろう?」
日本人でもアメリカ人でも、やっぱり自ら変わるのはしんどい作業だ。これまでの自分を否定することになるのだから。それでも、自分から変化できることが最終的にブレイクスルーを生み出す。