地域の力が日本を変える

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地域の力が日本を変える

 

地方には問題が山積している。過疎化、中心市街地の衰退、若者の雇用場所の喪失。この本を読んでいても、社会資本はこれ以上新規投資できないほどの財政難、公共交通機関の経営難による移動手段の減少など厳しい現実と将来が描かれている。

それでも、前向きに取り組んでいる人たちのインタビューを読んで、希望も感じる。そして、いくつかこれからの地域活性化に必要なポイントが見えてくる。どれも当たり前といわれればそれまでかもしれないが、非常に重要な要素を含んでいる。
 
 
地域内で自立した仕組みを形成する
これは、特に資金面が先行する。国や自治体の助成金に依存しない仕組みを作ることだ。最初の立ち上げは確かに難しい。資金面でも苦慮するので、助成してもらうこと自体が悪いのではない。ただ、継続的な仕組みを構築するのであれば、やはり自立した仕組みが必要なのだ。
 
それは人材についても同じだ。若手の雇用を創出し、地域を振興できる人材を育て、活躍の場を与えることが必要だ。
 
 
地元の事業をインキュベーションする仕組みをつくる
本の中でいくつか登場するが、成功してると思われる事例には、地元の魅力を発見し、それを事業化するまでのインキュベーションの仕組みが組み込まれている。
 
別府温泉で始まったオンパクは、地元の魅力を感じられるマイクロプログラムを用意する取り組みなのだが、これが地元事業者の新しいサービス化につながるインキュベーションの役割を担っている。
 
ただ、ビジネスの起業化支援には、人材、資金、起業に必要な情報・人脈の提供や持続可能なビジネスモデル構築等の経営ノウハウの提供などが求められるが、こうしたニーズに応えることができる専門的な能力を持った中間支援組織が日本ではまだ十分には育っていない。P.61
 
インキュベーションの先に、事業化を支援できる組織の充実も課題だろう。
 
 
新しい資金の流れをつくる
事例として、熊本城の「一口城主制度」や高知県梼原町の「千枚田オーナー制度」が挙げられているが、直接感心がある人たちから少額融資を集める仕組みをつくることが、新しい資金集めの仕組みが生まれている。
 
イベントカレンダー – 【熊本城公式ホームページ】
棚田(千枚田)/高知県梼原町
 
一つの事例では、LLCとLLPの組合せで、出資会社と運営部門を明確に分けて、出資しやすい構造をつくるとともに、出資と運営の責任明確化を図っているというのがあった。
 
ネットの世界ではCampfireみたいなマイクロファイナンスが登場しているし、関心がある人から少額融資を受けやすい仕組みをつくることが、うまく資金運営していく重要なポイントになるんじゃなかろうか。
 
 
とにかく事例が満載だ。これからの地域活性化を考える人は、読んでおいた方が良いだろう。
 
岐阜の中心市街地を初めて見たときは、人の少なさに正直ちょっと驚いたが、最近はギフレクや長良川おんぱくの取り組みを見たり、実際住んでみて穏やかな岐阜の街並みをみて、都市部とは違う価値を感じるようにもなっている。いろんな「良さ」を探すのも、楽しいもんだ。
 
 
 
最後に。

これからの地域再生は、地域経済の成長だけではなく、むしろ地域住民が実感する地域での「暮らしの満足度」や「幸福度」をどう高めていくかに価値軸が置かれるであろう。P.5

思想地図βの「震災復興とGov2.0 そしてプラットフォーム化する世界」を読む

 

東浩紀¥ 2,000

 

久々に言論誌を読んだけれど、これは震災の悲劇さを思い起こさせる。いくつか考えさせられる記事があったんだけど、一番気になった@sasakitoshinaoの「震災復興とGov2.0 そしてプラットフォーム化する世界」について書く。これを読むために買ったと言っても過言ではない。

震災復興とGov2.0の関係

震災で行政機関が機能しなくなった現実があったけれど、一方でネットの世界ではいくつもサービスが立てられ、情報提供が行われた。行政のHPもアクセスが集中したりしてダウンしたが、すぐに民間業者がミラーサイトを立てたりして、普段はあまり使わない行政のHPも、いざというときには情報の信頼性が高いと思われていることが証明された。

参考:

東日本大震災で被災地の人は何を検索したのか – Yahoo!検索 スタッフブログ

 

行政機関の仕事に迅速性や柔軟性が乏しい、という指摘はウン十年前からあるのだろう。そこで、情報革命を経てGov2.0が登場する。よく分からないという人は、思想地図βを読むか、この記事を読むと良いと思う。

ティム・オライリー特別寄稿:ガバメント2.0―政府はプラットフォームになるべきだ

 

長大な500キロ圏で、これらの無数の細かい温度差をすべて受け入れ、政府がそのすべての面倒を見る垂直統合的復興策で対応していくことはほとんど不可能だ。P.146

被災地の範囲はとても広く、いろんな個別の事情を抱えている。その中で、画一的な対応となりがちな行政機関では限界がある。だからプラットフォーム化すべきだというのが記事の主旨になる。

Gov2.0をどうやって実現するか

ただ、Gov2.0と言われても、正直あまりピンと来ていない人も多いんじゃないかと思う。「税とか住民台帳とか、間違いが許されないようなシステムを民間に任せるわけにはいかないし、そう考えるとプラットフォームって何?」みたいな。

まずGov2.0で自治体が得られるメリットについて。これは、様々な市民サービス向上アプリを提供できるということに尽きるだろう。

プラットフォームでは、行政機関が提供するデータを元に各民間企業がアプリケーションを提供することになる。主にフロントサービスが中心になるだろう。これは、行政機関が苦手とする領域でもある。こうなると、行政機関が直接アプリケーションの機能に関与しなくなる。ユーザとアプリ開発者の距離が近くなるので、サービス改善のスピードが上がり、行政機関の手間も軽減される。

アプリのアイデアそのものも、行政機関が自ら考えるより多様なアイデアが実現される可能性がある。米ワシントンのApp for Democracyというコンテストでは、1ヶ月で47のアプリが応募されたそうだ。ちなみに、コスト削減は余り期待できない気がする。バックオフィス系のシステムはなくせないし、フロントサービスのいくつかを削減できる程度だと思われる。

ティム・オライリーはSDKとAPIを提供するよう提言しているが、いきなりそれは難しいかもしれない。どちらかといえば、行政が公開して問題ない生データを、CSVなど加工しやすいデータ形式で公開することだろう。

そして、ICT地域活性化協議会もちょうどガバメント2.0について検討を始めているようだ。

 

「ICT地域活性化懇談会」の提言と震災復興に向けた取り組みについて:『ビジネス2.0』の視点:ITmedia オルタナティブ・ブログ

 

どこか先進的な自治体が、「自分のところの取り組みが一番進んでいて、標準だ」みたいなことを言ってくれないかな。岐阜もソフトピアジャパンがあるのだから、App for Democracyのように行政サービスに革新を与えるアプリを作成する取り組みがあっても面白いな。

いずれにしても、どんどん情報公開する自治体と、それを活用してサービス化するエンジニアの両方が必要だ。実現されるまでには、まだハードルが高いだろうか。

参考:

オープンガバメントのWebイメージがわかる動画4本 | Synapse Diary

ライフサイクルイノベーション

ジェフリー・ムーア¥ 2,100

「キャズム」のジェフリー・ムーアの著書。今更ながら読んでみた。企業にはイノベーションが求められているのは変わらないのだけれど、この本が秀逸なのは「企業タイプ」を整理した上で、それに合わせてどのように資源配分すれば良いかを探っているところ。

自分の本当の「コア」とは何か

本書の中でタイガー・ウッズの例が出てくるのがわかりやすい。CMやスポンサーとの提携の方が、本業のゴルフより稼いでいるんだけど、それでもゴルフに集中すべきか?と。みんな「当たり前」だと思うだろうけど、きっとこれが企業になると、「こんだけ稼いでいる事業なんだから、これに集中すべき」みたいになっちゃうんだろうな。

自分のブランドや競争力が何を源泉としているかは、とても良く考えないといけない。

コンプレックス・システム型とボリューム・オペレーション型

本書ではビジネスモデルを2つに大別している。

コンプレックス・システム型のビジネス・アーキテクチャでは、複雑な問題を解決するコンサルティング的要素が大きい個別ソリューションが提供される。大企業を主要顧客とするビジネスはコンプレックス・システム型だ。P.38

いわゆるBtoBだよね。多数同時の問題解決が難しいので、個別に注力することになる。

これとは対照的にボリューム・オペレーション型のビジネス・アーキテクチャは、標準化された製品と商取引により大量販売市場でビジネスを遂行することに特化している。企業顧客を対象にすることもあるが、ビジネスの基本は対消費者である。P.38

これがBtoC。それぞれに、対象とする問題の複雑度と、それに対する作業効率性がある。ここまでの整理はわかるんだけど、それぞれのタイプが、どういう資源配分をしたらイノベーションを起こせるのかを考察しているところに、この本の価値がある。

コンプレックス・システム型とボリューム・オペレーション型は相互依存関係にある

ボリューム・オペレーションはコンプレックスシステムが作り出した市場カテゴリーをコモディティ化する。コンプレックス・システムが次のレベルの複雑性を作ることで対応する。P.61

コンプレックス・システム型というのは、複雑な問題に対する解決策を編み出す。それが他の組織で適用できるような普遍性が生まれると、どんどんコモディティ化していく。すると、ボリューム・オペレーション型企業が参入してきてコストが下がり、コンプレック・システム型の企業は効率性が下がるので勝負できなくなる。

すると、コンプレックス・システム型はまた複雑な問題を見つけて対処する、ということを繰り返す。つまり、コンプレックス・システム型は常に複雑な問題を解決するよう努めるし、そのときコモディティ化された技術を利用した解決策を出すこともあるので、ボリューム・オペレーション型の企業と協業することになる。

イノベーションを起こすためにどこに注力すべきか

結論を言えば、コンプレックス・システム型企業とボリューム・オペレーション型企業のどちらも破壊的イノベーションにより成功することができる。もし、あなたの会社がコンプレックス・システム型であれば、顧客のニーズが大きい破壊的テクノロジーにフォーカスし、自社の製品リーダーシップの能力を顧客インティマシーの能力で補完するべきだ。一方、ボリューム・オペレーション型であれば、既に確立した市場において破壊的ビジネスモデルで勝負した方が成功する可能性が高いだろう。この場合には、製品リーダーシップの能力をオペレーショナル・エクセレンスの能力で補い、製品を早期に安定供給できるようにすることが重要になる。P.104

無駄にカタカナ語が多いので読みづらいのだけれど、要はコンプレックス・システム型は、まだ市場がないようなところに先進的な技術を用いて解決策を提示することが肝要。

ボリューム・オペレーション型は、市場がある程度あり、コモディティ化される技術と業務遂行力でイノベーションを起こす、というわけ。

自分の企業は何に注力すべきか

これを読んで見えてくるのは、まず自分の企業に合った「問題の複雑度」を見極めなければいけない。IBMがPC事業を売ったのは、PCがコモディティ化して、問題が複雑でなくなってしまったからと捉えることができる。問題が簡単であれば単価が低くなってしまったり、ビジネスモデルが変わってしまう。

SIerが複雑な問題を解決せずに、サーバ機器を入れて、パッケージ製品を導入して、運用保守でお金を稼ぐようなモデルになれば、それはおのずと単価も下がっていく。新しく複雑な問題を見つけて、そこに解決策を提示していかにと、SIerやITコンサルは生き残れない気がするよね。

あと、市場や技術がどの程度成熟されているかを考える。市場が成熟するということは、市場が既に大きい代わりに、成長性が低かったり、コモディティ化されてしまってイノベーションの余地が低かったりする。

これを読むと、例えば複数の事業を抱えている企業はどう整理すべきかとか、自分の企業や係わる市場がどの程度の成熟度なのか、という点でいろいろ刺激的。ちょっと読みづらい本だけどね。

日本における「東京」以外のビジネス拠点はどこか

 

マッキンゼー・アンド・カンパニー¥ 1,995

 

「日本の未来の話をしよう」を読んだ。いろんな著名人が日本の未来について提言している、ということで買って読んでみたんだが、正直あまり目新しいものはなかった感じ。日本の問題点はいくつかの視点から指摘されているし、その逆に日本のポテンシャルに対して肯定的な意見もある。

ただ、都市開発の視点についてはいろんな人の主張を読み、考えさせられた。

そういうわけだから、日本のサービス業の生産性が経済協力開発機構(OECD)諸国中でも低水準にあるのも不思議はない。OECDの統計で、加盟諸国の労働1時間当たりの国内総生産(GDP)を米国と比較したものがある。サービス産業の場合、日本の生産性は米国のわずか38.2%だ。日本は下位3分の1グループに属し、全西欧諸国より下(ギリシャとポルトガルを除く)で、スロベニア(33.9%)をやや上回るに過ぎない。P.276

上記の通り、日本のサービス産業における生産性は低いと言われている。もうこれは随分前から叫ばれていることで、先進国では人口におけるサービス産業への従事比率が向上していることから、この生産性の低さは問題だ、という話になっている。

で、サービス産業、そのうち主にナレッジワーカーの生産性に関して、森ビル会長の提言が面白い。

知的創造活動は仕事と生活がシームレスである。ワーク・ライフバランスという面からも、工業化社会の用途分離型の都市構造を用途複合型に転換し、より多くの人が職住近接型の暮らしを実現できるようにしなければならない。P.378

東京のように商業が特定地域に集積してしまうと、地価が上昇してしまうので、ドーナツ型で郊外から人は通勤することになる。全体の通勤時間が長いほど、その分だけ知的創造活動における生産性は低下してしまうだろう。だから、職住近接型の暮らしが、生産性を向上させるとともに、豊かな時間の確保にもつながる。

もっと発展して考えると、ビジネス拠点の局地分散も答えなのだと思う。東京以外の場所に、産業集積拠点を複数作り、ヒト・モノ・カネを分散させることだ。

日本の権力と富と知の東京への「一極集中」は、日本にとって巨大なリスクに変化し始めた。日本は、それに替わる国土発展ビジョンを必要とする。関東大震災の際には、軍部を中心に遷都が検討されたが、それは退けられた。敗戦後も、九州、沖縄はじめ独立ないしは共和国構想が提起されたが、勢いにはならなかった。今回はどうか。東京電力の電力供給が長期的に制約された場合、かなりの機能の事実上の「遷都」が起こるだろう。皇居の京都帰還も検討課題のひとつに上るかもしれない。P.28

8月現在の様子を見る限りでは、東京電力の電力供給は大きく制限されていないようなので、このままだと東京一極集中に対するリスクは、あまり叫ばれない気がしているけれど。

岐阜に住んでわかったことは、地価は安く、通勤移動も東京に比べれば楽だ。その代わり公共交通機関網が発達していないので、車が必要だったりバスを乗り継ぐという負担は別であるけれど。それでも1時間、2時間かかるということは、あまりないんじゃないかと思う。

個人的には、東京以外にビジネス拠点ができるのは良いことだと思う。それは、地域雇用の機会を増やすだろうし。そういう仕事を自分の対象として増やしたいもんだ。

 

東京一極集中 – Wikipedia

21世紀に入り首都圏、特に東京特別区への人口集中は一層進んでいる[4]。2000年の国勢調査結果と2005年の国勢調査結果を比較すると、東京都が約50万人、神奈川県が約30万、埼玉県、千葉県が約10万人と、1都3県で約100万人増加した。同じ首都圏内においても、はっきりと明暗が分かれており、東京都心部への人口流入が続いる反面、多摩地方や埼玉県、千葉県、神奈川県などの一部地域(主に80年代に人口が急増した東京都心から遠い郊外地域)の人口が減少に転じつつある。

 

 

政策提言 分野別 地方の若年雇用こそが成長戦略 : アゴラ – ライブドアブログ

政策提言 分野別 地方の若年雇用こそが成長戦略 : アゴラ – ライブドアブログ

 

 

テレワークは今後普及するか | Synapse Diary

テレワークは、個人としてはワークライフバランスを維持しやすくなるし、企業側も職務分掌を体系的に整理することで効率化を図ったり、優秀な人材をテレワークの形で残すことができるようになる。導入によっていろんな立場の人がメリットを得られる。

 

日本もGov2.0!?:復興に役立つアプリ皆で作ろう 政府が「ネットアクション2011」ヤフーやGoogleも協力 – ねとらぼ

 ネットアクションでは、開発を呼びかけるだけでなく、政府が自らデータを公開したり、ポータルサイトに情報を集約したりすることで、開発者を後押し。民間と協力して開発コンテストを実施したり、ユーザーからの評価が高いアプリやサービスを国が表彰したりすることも計画している。

 「これ(ネットアクション)が成功しなかったら日本のオープンガバメントは10年遅れると思ってやっていきたい」――担当者の言葉には、強い決意がにじんでいた。

日本にもついにオープンガバメントの本格的な流れが?最後のコメントには意気込みが感じるね。

「シリコンバレー」の作り方

東 一眞¥ 500

以前ソフトピアジャパンについて書いたけど、単純にソフトピアジャパンって、「なんでシリコンバレーみたいにならないんだろ?」と思ったんだよね。ソフトピアジャパンが「日本版シリコンバレー」と銘打たれて設立されたのであれば、どういう要素が必要かを研究されたはずだろうし、その結果が現状なのだとすれば、何が地域経営として問題だったのだろう。

というわけで、少し古い本だけど「シリコンバレーの作り方」を読んでみた。シリコンバレーの発祥とか、シリコンバレーのようなテクノリージョンを形成する上で必要な要素の分析とか、いろいろ面白かった。

読んでみて最後に思ったのは、結局ソフトピアジャパンで決定的に不足しているのは「生まれた技術や企業を、どうやって市場につなげるか」という仕組みがないことではないか、という気がした。ここ数日調べてみたけど、ソフトピアなどで生まれたスタートアップ企業に対する経営面でのサポートというのがほとんど情報がみつからなかった。

(過去に岐阜県が主体になってベンチャーキャピタルとして投資していた実績を見つけた。時期的にはITバブルの頃か。http://www.pref.gifu.lg.jp/soshiki/shoko-rodo/mono-zukuri/index.data/vc_houkoku.pdf)

つまり作ったあとどうやって大きくしていったり、企業に買われていったり、上場したりという主に経営ノウハウに関する情報やそれを企業にインストールしていく仕組みがないんじゃないか、と。

前回記事で、成功したものの岐阜には市場がないから結局出ていってしまった企業がある、ということを書いたけれど、いかに残ってもらうインセンティブを形成しておくか、というのは大切かもしれない。それは税制優遇措置だったり、ベンチャーキャピタルの存在だったり、人材の吸引力だったり、知識人の豊富さに現れる。

日本ではここ数年で新規上場数が減ってきているし、逆にロシアなんかはスコルコボという「ロシア版シリコンバレー」を大統領の肝いりで構築しようとしていて、その内容や本気度は全く違う。

【連載】 西田光毅の「ロシア版シリコンバレー“スコルコボ”レポート」Vol.1 | Impress Innovation Lab.

「スコルコボ・プロジェクト」とはモスクワ郊外の街スコルコボにあるロシア版のシリコンバレー・プロジェクトで、税金やその他の誘因によって、ロシアでのイノベーションやハイテク産業の生産を盛り上げようと、ロシアが「特区」のような形を取って、力を入れているプロジェクトである(正確には特区ではなく、バーチャルな特区)。

日本という国は元々資本がない中でどうやって生きていくか、という点に関して、シリコンバレーがひとつのモデルになると思うのだけれど、どうしたもんか、という感じだなあ。

再生可能エネルギー法案で、電気代はどうなるの?

再生可能エネルギー法案がいろんなところで議論されている。賛否両論巻き起こっているみたいだけど、どうなんだろ。

Q 買い取り期間や価格は決まっているの?

A いずれも決まるのは法案成立後です。期間は、家庭の太陽光の場合は現行制度と同じ10年間と決まっていますが、その他は15~20年の範囲で決めます。価格は、太陽光以外は1キロワット時あたり15~20円の範囲で決めます。太陽光は発電システムのコスト低下が進むと予想されるため、年度ごとに決めます。家庭の太陽光は現在同42円ですが、12年度は同30円台後半程度に下がるようです。いずれにせよ、現在の業務用の電気料金は同11~14円程度なので、電力会社は高めの価格で買い取ることになります。

Q 電力会社も大変だ。

A いえ、電力会社は高く買い取った分を電気料金に上乗せできます。制度導入10年後には、上乗せ負担額は標準家庭で月150~200円程度と試算されています。普及のためには電気代が高くなるのも我慢して、という法案なのです。

via mainichi.jp

産業政策で補助金なり貿易規制を与えるときは、その産業を国策として保護・育成していくということなんだと思うんだよね。再生可能エネルギー法案というのは、そういう形を明確につくろうということだと思うんだけど、税金を投入して、産業としてペイされるまでにどの程度の期間が必要なのだろう。

武雄市長物語 : 再生可能エネルギー法案は通せ。

自然エネルギーの不都合な真実 : アゴラ – ライブドアブログ

¥ 780

日本も脱原発に向かう

とはいえ、米国で原発が作られなくなったことで、軍産複合体の一部門だった原発産業は仕事を失った。代替策として考案されたのが、日本や西欧など対米従属の同盟諸国に米国の技術での原発増設を加速させ、原発産業が米国で儲からなくなった分を同盟諸国での商売で取り戻す策だった。対米従属が戦後の最重要の国是である日本では、米国からの依頼(命令)であれば、活断層などあらゆる危険性を軽視して原発が増設された。対米従属の国是を推進する右派(右翼)が原発を強く推進する構図ができた。

 このような流れの結果として、日本は、地震大国であるのに原発大国となった。しかし、今回の震災後に米政府が日本に脱原発を押し売りしていることから考えて、すでに米国側は、同盟諸国に原発を売って自国の原発産業の儲けを確保する戦略をやめた可能性が高い。西欧諸国も次々と脱原発している。いまだに原発に強くこだわっているフランスは、米国と別の独自利権だ。フランスは、1960年代に対米従属をやめて自主独立の国是を開始して以来、米国から自立した独自の原発産業を持っている欧州で唯一の国だ。
フランスの変身

 米国の原発産業の2大企業は、ゼネラル・エレクトリック(GEエナジー)とウェスティングハウス(WH)だが、いずれも2006-07年に日本企業に事実上身売りされている。WHは06年に東芝に売却された。GEエナジーは07年に日立との企業連合体(GE日立ニュークリア・エナジー)に変身した。東芝の買収額は、WHの企業価値をかなり上回る高値買いだったが、当時は、これから中国など新興市場諸国が原発をどんどん建設するはずなので、東芝のWH買収額は高くないと言われた。

 しかし今になって考えてみると、新興諸国の原発建設が増えてWHが儲かるのなら、そもそもWHが身売りに出されることもなかったはずだ。WHは、00年に英国の国営核燃料会社(BNFL)に買収されたが、BNFLは6年後に東芝にWHを売却した。BNFLを所有する英国政府は、00年にWHを買ったときは新興諸国の原発が増えて儲かると考えたはずだ(BNFLはWHと同時にスイスのABBの原発部門を買収した)。だが、06年にWHを売却したとき、英政府は、もはや原発が儲かるとは考えていなかったことになる。
Westinghouse Electric Company From Wikipedia

こういう角度から考えるのも面白いもんだなあ。

人口と財政力指数の相関関係

気になったので、人口と財政力指数の関係を確認してみた。データは、やや古いけど平成19年度。

ちなみに財政力指数とは。

財政力指数(ざいせいりょくしすう)とは地方公共団体の財政力を示す指標として用いられるものであり、基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値である。通常は過去3カ年の平均値を指す。

財政力指数が1.0を上回れば地方交付税交付金が支給されない不交付団体となり、下回れば地方交付税交付金が支給される交付団体となる。したがって、地方交付税交付金が地方公共団体間の財政力の格差を調整するために支給されるものであることを踏まえると、その性質上必ずしもすべての地方公共団体に地方交付税交付金が支給されるわけではないが、近年において日本全国47都道府県の中で1.0を上回っている都道府県は、東京都と愛知県しかないため、東京都・愛知県を除くすべての道府県に支給されているのが実状である。また、市町村は、一部の市町村を除き1.0を上回っていない。

なお、2004年度から2006年度における第1期の三位一体の改革に伴う地方への税源移譲により全国的に高くなる傾向にあるが、社会保障関係経費等の増嵩もあることなどから必ずしも地方財政の自由度が高まっているものを示した指標にはなりえていない状況にある。

財政力指数 – Wikipedia

まあ、自治体の財政力を図るひとつの指標ですね。その結果がこれ。横軸が人口。縦軸が財政力指数。

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(平成19年度人口増減率ランキング、財政力指数ランキングを元に作成。)

これを見ると、人口が多くなればなるほど、財政力指数のバラつきが低くなるのではないか、という仮説がみえる。逆に、人口が少ないほどバラつきが大きい。

試しに違うグラフも作った。全国の自治体の人口をパレート図で表したもの。例えば、人口50万を超える都市って全体の3割ぐらいになっている。

f:id:synapse23:20110712195234p:image:w640

日本の市の人口順位 – Wikipediaを元に作成。)

人口が少ない自治体ほど経営努力によるインパクトが大きくて、財政に余裕があったりなかったりの幅が大きいという仮説ができあがる。

大きいほどブレ幅が小さくなるのは、人口増による税収増加や、人口が集まる都市部の経済活動によって収益が安定するからかもしれない。逆に人口が少ないところは産業が安定していなかったり、衰退産業を抱えていたりするので、税収が安定しないのかもしれない。

人口があまり多くない都市に住んでいる人は、ちゃんと自分のまちの財政状況をチェックした方が良いのかもしれないし、都市部はなんだかんだ安定しているかもしれないから、充実した行政サービスを受けるなら都市部の方が良い、という選択も考えられるかもなあ。

いや、あくまで数値だけを元にした思考実験ですよ。

郡上市の例から地方分権について考える

f:id:synapse23:20030921143300j:image:w360

自分が住んでる自治体の財政が、突如火の車になるのかもしれない。

岐阜県郡上市で、市内の各地域にある振興事務所に対して予算枠を増やしている、というニュースをみて、ふとそう思った。

asahi.com : 岐阜・郡上市、合併8年目の改革 地区に権限と財源 – マイタウン岐阜

地方分権が叫ばれて久しいけれど、この記事を読むと、まさに地方に根ざした権限の分散が図られているようだ。なんで、郡上市はそういう方向に進んでいるんだろう。

普通交付税はどのように決まっているか

その前に、普通交付税はどのように決まっているのか確認。

普通交付税の額の算定方法 普通交付税の額の算定方法は下式のとおりです。「基準財政需要額」、「基準財政収入額」等について以下に解説を加えております。

* 各団体の普通交付税額 = (基準財政需要額 - 基準財政収入額) = 財源不足額

* 基準財政需要額 = 単位費用(法定)×測定単位(国調人口等)×補正係数(寒冷補正等)

* 基準財政収入額 = 標準的税収入見込額 × 基準税率(75%)

総務省|地方財政制度|地方交付税

これだけだとうまくイメージしづらいけれど、基本的に組織が統合されて経費削減が行われるため、合併されれば普通交付税は削減されるのだそう。

ただし、合併後10年間は、合併しなかったときの普通交付税を全額保証されている。そして10年経過した後、5年かけて合併後の金額に徐々に戻されるため、実質減額に向かう。

合併すれば交付税は減らされないのですか?

郡上市の現状は

郡上市は、地方交付税依存度が40%を超過しており、東海圏ではトップになっている。

地方交付税依存度が多い市区ランキング(2010年度:東海編)|ランキングなら eriQoo.com

合併による交付税措置がなくなると10%の30億円弱も収入が減少する見込だそうだ。市長の施政方針でもこう書かれている。

しかしながら、合併支援措置の段階的縮減が始まる平成26年度以降は普通交付税が減少し、平成31年度には、人口の減少分も含めると30億円以上減少する見込みです。

平成23年度施政方針|岐阜県郡上市(ぐじょうし)-Gujo City

地方交付税への依存が高い分、この減少は大きく響くことになるのだろうと予想される。

考えてわかったこと

組織論から考えると、各自に責任感を持たせ、主体的に考え、行動を促すためには、権限を与えることはとても効果的だ。個人や組織全体のモチベーション向上にもつながる。また、「現場の情報」を上層部が把握するのは困難で、うまく情報処理ができず、実情と乖離した判断がされるとも言われる。

一方で、地方に権限が分散すると、統一した戦略を実行できなかったり、セキュリティや作業の品質など、ガバナンスの問題が生じることも事実だ。

いろんな組織で権限の集中と分散に悩むと思うが、そういう意味では自治体も変わらない。

どのような権限配分が適切かはよくわからないけれど、人間の特性として、ある危機に直面して初めて、大きな転換ができるのかもしれないと、今回の震災やこの記事を読んで痛感する。厳しい状況だと認識したからこそ、思い切った転換を図ろうとしている。行政サービスは画一化ではなく、地方に根ざした多様化が求められいる。

参考:

地方財政改革と郡上市の今後 – GAZNAK blog