思想地図βの「震災復興とGov2.0 そしてプラットフォーム化する世界」を読む

 

東浩紀¥ 2,000

 

久々に言論誌を読んだけれど、これは震災の悲劇さを思い起こさせる。いくつか考えさせられる記事があったんだけど、一番気になった@sasakitoshinaoの「震災復興とGov2.0 そしてプラットフォーム化する世界」について書く。これを読むために買ったと言っても過言ではない。

震災復興とGov2.0の関係

震災で行政機関が機能しなくなった現実があったけれど、一方でネットの世界ではいくつもサービスが立てられ、情報提供が行われた。行政のHPもアクセスが集中したりしてダウンしたが、すぐに民間業者がミラーサイトを立てたりして、普段はあまり使わない行政のHPも、いざというときには情報の信頼性が高いと思われていることが証明された。

参考:

東日本大震災で被災地の人は何を検索したのか – Yahoo!検索 スタッフブログ

 

行政機関の仕事に迅速性や柔軟性が乏しい、という指摘はウン十年前からあるのだろう。そこで、情報革命を経てGov2.0が登場する。よく分からないという人は、思想地図βを読むか、この記事を読むと良いと思う。

ティム・オライリー特別寄稿:ガバメント2.0―政府はプラットフォームになるべきだ

 

長大な500キロ圏で、これらの無数の細かい温度差をすべて受け入れ、政府がそのすべての面倒を見る垂直統合的復興策で対応していくことはほとんど不可能だ。P.146

被災地の範囲はとても広く、いろんな個別の事情を抱えている。その中で、画一的な対応となりがちな行政機関では限界がある。だからプラットフォーム化すべきだというのが記事の主旨になる。

Gov2.0をどうやって実現するか

ただ、Gov2.0と言われても、正直あまりピンと来ていない人も多いんじゃないかと思う。「税とか住民台帳とか、間違いが許されないようなシステムを民間に任せるわけにはいかないし、そう考えるとプラットフォームって何?」みたいな。

まずGov2.0で自治体が得られるメリットについて。これは、様々な市民サービス向上アプリを提供できるということに尽きるだろう。

プラットフォームでは、行政機関が提供するデータを元に各民間企業がアプリケーションを提供することになる。主にフロントサービスが中心になるだろう。これは、行政機関が苦手とする領域でもある。こうなると、行政機関が直接アプリケーションの機能に関与しなくなる。ユーザとアプリ開発者の距離が近くなるので、サービス改善のスピードが上がり、行政機関の手間も軽減される。

アプリのアイデアそのものも、行政機関が自ら考えるより多様なアイデアが実現される可能性がある。米ワシントンのApp for Democracyというコンテストでは、1ヶ月で47のアプリが応募されたそうだ。ちなみに、コスト削減は余り期待できない気がする。バックオフィス系のシステムはなくせないし、フロントサービスのいくつかを削減できる程度だと思われる。

ティム・オライリーはSDKとAPIを提供するよう提言しているが、いきなりそれは難しいかもしれない。どちらかといえば、行政が公開して問題ない生データを、CSVなど加工しやすいデータ形式で公開することだろう。

そして、ICT地域活性化協議会もちょうどガバメント2.0について検討を始めているようだ。

 

「ICT地域活性化懇談会」の提言と震災復興に向けた取り組みについて:『ビジネス2.0』の視点:ITmedia オルタナティブ・ブログ

 

どこか先進的な自治体が、「自分のところの取り組みが一番進んでいて、標準だ」みたいなことを言ってくれないかな。岐阜もソフトピアジャパンがあるのだから、App for Democracyのように行政サービスに革新を与えるアプリを作成する取り組みがあっても面白いな。

いずれにしても、どんどん情報公開する自治体と、それを活用してサービス化するエンジニアの両方が必要だ。実現されるまでには、まだハードルが高いだろうか。

参考:

オープンガバメントのWebイメージがわかる動画4本 | Synapse Diary