組織におけるプレイングマネージャーの弊害

組織の中には、部下を「壊して」しまう人が時々存在する。そういう人がどういう要素を孕んでいるか、考えてみる。僕自身はあまりそういう環境に遭遇したことはないけど、いろんな組織で発生しているようなので、推測をたっぷり含めて。

部下を、プレイヤーである自分と比較する

多分、大きな誤解はここからスタートするんじゃないかと思う。そうなると、「自分に比べてあいつは仕事ができない」というネガティブな捉え方から脱却できない。本来管理者は、組織全体のパフォーマンスを最大化するためにあるはずなのに、仕事ができないあいつが悪い、という発想から人を潰すことをしてしまう。

そうではなくて、自分とは切り離して、部下個人をみた場合にどうやったらパフォーマンスが向上するかを考える必要がある。目的の定め方が違う。

 

正しすぎる「正論」を述べる

如何せん仕事ができる人の場合、過去の成功体験があったり、自分に強い自信があるため、それ以外の方法や価値観を受け入れることが難しいことが往々にしてある。また、言っていることが正しいと周囲も納得する場合が多い。

そうなると、意見を言いづらい空気が醸成されやすかったり、高い目標を掲げられて疲れてしまったり、自信喪失してしまう状態になりやすいんじゃないか。こうなると、バタバタと部下が組織から離脱していくようになる。

 

組織としてどう立ち向かえばよいか

プレイヤーとしては非常に優秀で、会社にとって有益っぽく見えることはあるわけです。ただ、全体から見た場合にどうか、という疑問がある。上司からは良い人材に映るし、部下からはちょっとしたモンスターに映る。そういう両面の危険性を持ちあわせているタイプが多いような気がする。

こういう状況を組織としてどう打開するかといえば、やはり広く情報を吸い上げる仕組みを経営者は持っておかないと厳しいだろうと思うわけです。一時期360度評価が注目されたのも、評価者が一方向だけでは、立場や状況によって変わる可能性を拾い切れないからだと思う。

事前に対処するのではなく、後で尻拭いをする

要はまずは部下にやらせてみろ、ってことです。失敗の範囲を推し量って、後からでもリカバリーできるギリギリの線までは任せる、というスタンスを作ることが、自分の問題解決能力を高めると同時に、部下の育成にも成功するんじゃないかと思うので。

つまりは、Before(事前に手取り足取り指導したり、自分でやってしまう)からAfter(部下がやったミスを火消しする)へマインドを変えることが、打開する活路になるんじゃないのかなーと。

 

とまあ列挙してみたけど、書いた内容について誰も需要がないと思うから、どうせ読まれないなと思った。

風間フロンターレにみる、組織における自由と規律の問題

今Jリーグでは風間監督率いる川崎フロンターレが注目されている。昨年4月から就任して2年目になるが、これといった結果が数字上は出ていない。

 

風間フロンターレに対する評価

そして、これに対する評価というのが人それぞれ分かれているのが面白い。

昨年の4月に風間八宏監督が就任したとき、「川崎はなにかやるのでは」という期待感を持ったものだが、残念ながら今シーズンはなにも伝わってこない。ただ感じられるのは選手たちの戸惑いだ。確かに僕自身、川崎の試合のすべてを見ているわけではない。生で見たのは、今シーズン3試合目だったのだが、それでも選手たちが自信を失っていくのが伝わってくる。

低迷川崎に見る「自由」の難しさ 監督の戦術に戸惑う選手 – 47NEWS(よんななニュース)

そりゃ、結果が出ていないプロの世界では、こういう評価になると監督更迭という話も出てくるだろう。その一方で、更迭にならないのではという見方もある。それは、長期的に勝てるチームを作っている、という見方からだ。

思うように結果が出ない川崎は立て直せるのだろうか。この問いに対し「簡単ではない」と答えたい。ただし、この言葉からは悲観的な意味は排除してある。風間監督ははぐらかすが、いくつかの状況証拠から、チーム作りをする上で監督が選手たちを大人として扱い、自律して戦えるチームを作っているのは確実だ。自律して戦えるチームとは、試合で目の前の状況に能動的に対処し、プロとして生活を律することができる集団のことである。

誤算続きでも風間監督更迭の可能性は低い|コラム|サッカー|スポーツナビ

 

つまり、結果が出ていないのは新しい組織を作っているからであり、これまでとは大きく違う組織を作り上げるのには時間がかかるものだ、という見方だ。

こういう話はサッカーの現場ではいろいろあるようで、日本代表でもトルシエの規律主義とジーコの自由主義が対比として語られることもある。昔読んだ岡田監督の講演でも、も横浜Fマリノスを率いていたときのコメントに同じようなことがあった。

ど真ん中が空いていたら、ど真ん中に行くのが一番いいんですよ。ところが、「監督の言う通りやったら勝つ」とみんな思ったら、何も考えずにサイドに出すようになった。そういう選手たちを見ていて、「俺は本当の指導者なのかな。こういう指導でいいのかな」と勝っても勝ってもずっとどこかに引っかかっていました。

横浜F・マリノスの1年目(2003年)は年間王者になりました。それで2年目(2004年)は「もういいや、こういうやり方は。お前らちょっと自由にやってみろ」と言ったところ、開幕から1分2敗でクビになりそうになりました。「これはマズイな」と思って、選手に「悪かった。もう1回やり方をもとに戻す。今からでも間に合うかどうかは分からないけど」と言ったら間に合っちゃったんですよ。2年目も優勝したんです。

Business Media 誠:岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは (1/7)

 

自由と規律のバランスは難しい

僕はサッカーは専門ではないけれど、組織論で捉えると、これはいわゆる権限移譲の問題だ。現場に自由と責任を与えることで、仕事の創造性やスピード、本人のモチベーションアップを得ることが主な目的になる。

風間フロンターレでも、前述の記事を読むと、現場である各選手に自由と責任を与えることで大きな組織変革を行っていると読むことができる。ただ、これは本当正解があるわけではなくて、完全に自由にしすぎると規律が失われてコントロールできなくなるし、規律を強めると個人の創造性が失われてその先の広がりが、個人にとっても組織のとってもなくなってしまうかもしれない。

これをうまくバランスとっていくためには、各個人がどの程度まで自由を受け入れられるかを見極めないといけない。人を育てるために投資が必要であれば、それがどこまで許されるのかを見極めて実施しなければいけない。その点で、管理者に求められる能力とプレッシャーは大きい。

 

今、風間フロンターレが注目されているのは、「勝負の厳しい世界でどこまで負けが許されるのか」という点と、「我慢した先に素晴らしいチームが待っているのか」ということだろう。それは誰もわからないが、その葛藤の中で戦う精神力だけを見ても、非常にタフな仕事に違いない。

現状は厳しいと思うけれど、これがどこまで続くのか、どこかで劇的に変化するのか。今後風間フロンターレがどうなるのか、僕はひっそり注目している。

 

「新人」を卒業して、自分に自信を持って仕事をする方法

「自分に自信がないんです。」

そう思っている後輩に、たまに遭遇する。およそ誰でも通る道なのだろうと思う。仕事を覚えても、自分のやっていること、考えていること、判断などに自信が持てない。意見を出しても誰かに否定されてしまう。

人は誰しも不安になる。本当にこれで良いのだろうかと思ってしまう。しかし、それでは自分の仕事の幅を広げていくことは難しい。

それを乗り越えるためにはどうすれば良いか。それは、「自分が何に不安を抱いているか」を、具体的に考えることだ。

 

悪いサイクルにはまってしまう例

例えば、何かを調べて、資料を作成する仕事があるとする。いろいろ調べて資料を一通り作ったものの、やっぱり自信が持てない。上司に「とりあえず見て下さい」と資料を託す。そして、たくさん指摘が返ってきて、「ああ、やっぱり自分はできなかったな」と思う。

これだと、自分がいつまでたっても上司の判断を超えることは難しい。

 

自信がないときは、その原因を考える

一通り資料を作り、自信が持てないと感じたら、「なぜ自信を持てないのか」を具体的に、詳細に考えていく。それは、根拠となる資料集めが不十分なのかもしれないし、自分の自信のなさを表現するように文章が曖昧だからなのかもしれない。あるいは、単なる杞憂で、とりあえず今は心配する必要がないのかもしれない。ひとつ言えるのは、自信を持てない理由はちゃんとあると思うのだ。それを具体的にすることで、自分の自信がない部分と、それをどう乗り越えれば良いのかが、もう少ししっかりと自分の中で見えてくるはずだ。

情報が不足しているのであれば、もっと集める方法を考えれば良いし、アイデアが欲しければ上司に「アイデアを出して欲しい」と相談してみてもいいかもしれない。

 

やってはいけないこと

やってはいけないのは、「何となく不安だから、とにかく全部見て下さい」とやってしまうことだ。これをやると、自分が何に対して不安があり、どれは自信があるかをはっきり自覚できない。加えて、上司からみてもどこまで理解しているかを判断する材料が乏しくなってしまう。

 

自信を持って仕事ができれば、いろいろ仕事の幅が広がる。仕事の幅が広がることは、自分が社会に対するインパクトを大きくできることだ。いろんな人に自信と持って頑張って欲しいと思うし、僕も頑張ろうと思う。

Yahooがテレワークをやめることについて

Yahooがテレワークを廃止するらしい。顔を合わせて、コミュニケーションを増やすことで、新しいアイデアや緊密な連携を生み出すことが目的だそうだ。一方で、テレワークは働き方の多様性を認める面から個人の満足度を上げ、妨害が少ないことから生産性が上がるという研究がある。

Yahoo!が在宅勤務者に出社勤務にするかもしくは退職するよう通達 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

Yahoo!が在宅勤務者に出社勤務にするかもしくは退職するよう通達 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

さらに、それを批判する人も現れたりして、このYahooの決定は、それなりに議論を生んでいる。

【続報】Yahoo!の在宅勤務者への通達に対し英実業家がTwitterで反撃 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

【続報】Yahoo!の在宅勤務者への通達に対し英実業家がTwitterで反撃 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

 

HBR.orgのブログ記事でも、賛否両方登場している。

New Research: What Yahoo Should Know About Good Managers and Remote Workers – E. Glenn Dutcher – Harvard Business Review
Marissa Mayer Is No Fool – Michael Schrage – Harvard Business Review

 

テレワーカーの生産性は高いのだし、良いマネージャーがそれらを指揮・管理すれば良いのだという考えと、やはり対面のコミュニケーションは効果的だろう、という両面から語られている。CEOの前職であるGoogleのバックグラウンドが影響しているのでは、とか。

日本でもヤフーニュースになったりしているし、それなりに興味深いネタだ。ちなみに、この記事によると、Yahooの社員は11,500人いて、テレワークはそのうち数百人程度らしい。組織の1〜5%程度がテレワークという感じだろうか。
Why Won’t Yahoo! Let Employees Work From Home? – Businessweek

 

さて、テレワークに対してどう向き合うべきなのだろうか。

雇用する側から考える

まず、企業側からみた場合のスピードとコラボレーションの問題を書こうと思う。 テレワークは個人作業の範囲でみれば、生産性は高い可能性があると思う。それは、僕は確認していないが研究結果があるのだろうし、自分を律して集中することで生産性は高まる気がする。しかし、これには前提が必要になる。具体的には、「協業」の部分が少ないことと、テレワーク分のタスクをきっちり割り当てることだ。

協業を前提とした進め方の場合、テレワークだとコミュニケーションのやり方や頻度によって双方非効率であったりストレスを感じる可能性がある。IT技術によっていろいろ効率的なコミュニケーション方法が採れるようにはなっているが、やはり対面でのコミュニケーションと比べてしまうと、非効率な面を感じる人が多いのかもしれない。すると、スピードの点でデメリットを感じると判断するのかもしれない。

もう一つは、テレワークを実現するためには、分業するためにタスクを明確に分解して与える、という作業が必要になること。そのためには、管理者が予め計画的に分配したり、はじめから定型作業が多い場合が考えられる。不確定要素が多い業務、クリエティビティを重視する業務、スピードを求められる業務などの特徴があると、テレワークという存在は邪魔な存在と思われるのかもしれない。

 

テレワークに対する過剰な期待

テレワークが注目されてきたのは、マクロ的には雇用問題を解消できるかもしれない、企業的には結婚や引越しなどのイベントで去っていく従業員を引き止められることとテレワークの生産性が高いこと、従業員は柔軟に働く手段を持てること、という三方が良いことであり、IT技術の進歩によってテクニカルな問題も解消されつつある、ということだった。

重要なのは、賛成するのも反対するのもどういう立場から見ているのか、ということで、いくつか記事を読んだ感じだと、批判するのはマクロ的というか社会的な観点から見てる論調が多そうだ。社会的には雇用問題や従業員の自由獲得などテレワークは良い方法なのに、それを否定するなんて、という感じ。あとは、テレワークを現実的にしてきたのがIT技術であっただけに、テクノロジー企業であるYahooがそれを排除するのがどうなのか、という感情というか観点もあるようだ。

 

 

僕が思うのは、テレワークは確かに企業・従業員双方にとってメリットがある手段ではあるものの、それも働き方の一形態であるにすぎないし、ビジネスモデルや経営環境によって適・不適はあるのではないかということだ。そして、時代に逆行しているみたいな批判はあるけど、企業として決断することはあくまで営利でありゴーイング・コンサーンなわけだから、テレワークを否定することが企業の否定にはつながらないと考える。Yahooが今後どう変わっていくのかは注目だろう。

リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる

キヤノンでキャリアを積んだ、キヤノン電子社長によるリーダーシップ本。

世の中にはリーダーシップ系の本はたくさん出ている。そういう意味ではこの本はその中の一冊ではあるのだが、書かれている内容は非常に実践的で、わかりやすい。管理する立場になって必要な心構えや行動について、学ぶ点は多いだろう。

 

興味深かったのは、いわゆる「心のケア」についても書かれている点だ。こういうリーダーシップ系だと自身がモーレツ系で、あまりそういうケアに関する記載が見られることが少ないのだけれど、この本では違った。

私自身、何度か苦い経験をしてからは、大きな仕事が終わった後は、部下を休ませないようにしたし、空白期間を作らないように、すぐにちょっとした仕事を入れた。そして、下の人間にもそうするよう指導した。

こうやって、急に電池が切れてモチベーションを取り戻せないようなことになったりしないように、仕事面から管理する人たちの精神面の配慮に関しても必要なのは間違いない。

 

あとは、部下の能力を見極める方法についても書かれていて、参考になった。見極めることなんてそんなに難しくない、と昔は思っていたけど、意外に難しい場合もある、ということを痛い目をみて思い知った。

上司の指示をきちんと理解し、正しく実行しようとする人は、そもそも「ここがわからないのでもう一度説明してください」と必ず疑問点を聞いてくる。

こういう基本的なところをちゃんとチェックして能力を見極めないと、最終的に組織全体に悪い影響を与えてしまうことをちゃんと考えないといけない。

 

リーダーシップ論も時代とともに変わっているが、変わらない普遍的な部分もある。この本は、そういう基本的な原則を教えてくれる良い本だと思う。もう少し前に出会えば良かったかもしれないな、とは思う。

 

酒巻久の名言 厳選集

コーチングのプロが教える「ほめる」技術

コーチングの存在は知っていたが、正直少しその内容については疑っていた。人の話を聞くのは大事だし、ほめることも重要だけど、それで人が変わるなら苦労はしない、というような。あと、調べてみるとやたら短い時間で高い料金だな、と思ってしまったり。それほどの費用対効果があるのかと考えると、ますます怪しむ気持ちが高まってしまっていた。

だけど、改めてコーチングについて勉強してみようと思ったのは、自分がこれまで信じていた部下の育成方法が、人によっては通じない、と感じたからだ。勉強してみると、コーチングには人と接する上で学ぶべき点が多く存在することに気づく。

 

コーチングのエッセンスはいくつかある。詳しい人に聞いたところ、コーチングは「ベストプラクティス」だと言っていた。いろんなエッセンスが集まって形成されているから、取り入れやすいものから入れていけばいいんだと。それを聞いてなんか楽になったので、面白くて使えそうなところだけ取り入れてみることにした。

例えば、現状を認識して、問題を設定して、具体的な行動目標を決める、というステップだったり。コーチングとティーチングの割合を考えたり。フィードバックをどう与えるのが効果的か考えてみたり。

 

 

面白いのは、コーチングする側も気づきを得るよってこと。

とりあえず、中途半端にスキルや知識を取り入れると不自然になってコミュニケーションが白けてしまうんだろうな、と思うし、相手に対して適当なことを言えないな、と思うと事前に相手のことを考える時間を設けてから、部下と話すようになった。コーチングに対して穿った見方してたな。

踊る大捜査線に学ぶ組織論入門

これまで、いくつか組織論に関する記事を書いてきたので、これは読まずにはいられなかった。

ドラマや映画のセリフを引用しているものの、内容自体は至って真面目な組織論。テイラーやマックス・ウェーバーはもちろんのこと、様々な組織の理論と踊る大捜査線の状況が結びついているので、組織論を学ぶ入口としては良いのではないかと思う。

 

組織論が取り扱う範囲は広く、この本一冊からたくさんの示唆が得られると思うが、ここではひとつ取り上げようと思う。それは、「無力感を人が学習する」ということだ。

どれだけ崇高な使命感を抱いても、どこかで自分の力だけではどうにもならないことを知る。あるいは、組織の中での自分の能力不足を知る。そうすることで、人は「無力感を学習する」のだ。踊る大捜査線のスリーアミーゴスのように。

 

しかし、そういう無力感の漂った上司がいるからこそ、部下が自立し、現場への権限委譲が進む場合もある。そういう皮肉というか、マイナスだと思った点がプラスに作用する場合もある。それが組織なのだ。組織全体でどう作用するかが難しいから、優秀で強い組織を作るのは大変な作業になるのだろう。

組織のことを考えるのは面白い。日々の仕事の中に、たくさん発見がある。

「できる管理者」のタスクのお願いの仕方

チームなりなんなり、集団を管理するようになると、誰かにタスクをお願いする場面が出てくる。タスクを割り振るって、考えてみると結構難しくない?

ということで、効果的なタスクの割り振り方を考えてみた。

「とりあえず自分でやるか」になっていないか?

仕事ができる人の中で、誰かに仕事を任せることが苦手、という人がいる。これは、初めて管理者になったときに顕在化する。管理者でないときは仕事ができるので重宝されるが、管理者になっても同じやり方をしてしまうので、チーム全体でタスクが最適化されない、チームメンバーが成長しない、自分が忙しくてメンバーを管理できていない、などいろいろ問題が生じてくる。

こういう場合は、思考の優先順位を「チーム全体の最適化」にシフトする必要がある。得意な人に得意そうなタスクを回すこと。いろんな人の作業負荷を平準化すること。管理者にはそういう交通整理が求められる。

 

ちゃんとメンバーの現状を把握しているか?

タスクをお願いするからには、メンバーの状況は把握しておかないといけない。すごい忙しくて仕事が回らない人にお願いしても、いつまでもタスクが消化されないかもしれない。あるいは、「もっと暇な奴がいるんだから、そっちにお願いしてくれよ」と反発を喰らうかもしれない。

まずはだいたいのメンバーの状況を把握しておく必要があるし、もしそのときになって知らないのであれば、確認すべきだ。最低限のマナーとして。

「あなたでないとダメ」な理由は?

タスクをお願いする人に対して、「あなたでないとダメ」な理由が必要だ。何となく目についたぐらいでノリでお願いすることもあるけれど、理想からいえばその点はちゃんと考え抜いて依頼したい。

これはお願いされる側の納得感も高まるし、モチベーションを上げることにもつながるだろう。

タスクの優先順位が説明できるか?

お願いするときは、依頼するタスクの優先順位も明確にしておく必要がある。それは、「今○○のタスクで忙しいから、その仕事後回しでいいですか?」と聞かれたときに困るからだ。そのときに、「今はこっちの方が早く終わらせないといけないから、こちらを優先で。今お願いしている○○のタスクは、別の人に回しておくわ。」みたい返答をしないといけない。それをするためには、ちゃんと全体のタスクの中で、これがどの程度緊急で重要かを理解していないといけないのだ。

つまり、メンバーが今抱えているタスクの中に新しいタスクを押しこむんだから、玉突きが起こったりスケジュール調整が必要になるのは当然のことだ。いろいろ柔軟に、各種タスクの優先順位を見極めて、新しいタスクをスムーズに押し込んでいく必要がある。

 

あとは、相手に気遣いしすぎると、時に人に対して鬼になれない、ということもあるかもなあ。高等テクニックだけど、ここらへんを無自覚でできてる人もいるよね。時々暴発もするけど。

人が成長を実感するのはどういうときか

社会人になって、最初の数年の間で自分が成長したと実感したのはどういうときだろうか。僕は「直属の上司の背中が見えた」ときである。

最初のうちは、当然のことながらほとんど何もできない。一挙手一投足教えてもらえないと動けないほど、使えない状態である。そういうときは、必死に教えてもらったことをひとつずつ吸収していくしかない。このとき、上司というのは「遠い存在」になるし、自分がその上司のポジションに成り代わることを具体的に想像するのは難しい。

 

しばらくすると、徐々にいろんな状況が見えてくるし、自分で工夫する余地もできてくる。すると、具体的に上司と自分のギャップもわかってくる。

物事に対してどういう考え方をするのか。なぜ自分より早く作業を進められるのか。どのようにクライアントとコミュニケーションを図るのか。

そういう点がわかってくると、改めて「遠い存在」であることを実感したりする。ただ、ここで具体的にギャップを認識することで、自分の行動を改善することができるようになる。

 

そして、もう少し頑張って仕事をしていると、やがて「背中が見える」瞬間がやってくる。自分がもう少し努力すれば、届きそうな感覚。この瞬間を感じられると、自分の努力は間違っていないんだと思えるし、自分の感覚が「遠い存在」から「届きそうな存在」に変わっていることそのものが、成長の実感になる。

 

つまりここで重要なのは、「上司と部下の距離感」ということになる。ある程度年数が近いと、このギャップを埋めるスピードも早くなるので、成長実感を早く得られることになる。距離感が遠いと「まだまだ遠い」の連続になってあまり実感が得られなくなる。

 

 

なんでこんなことを不意に書こうと思ったかといえば、最近の自分が少しそういう感覚を忘れつつあるからだ。でもこれは当然のことなのかもしれない、とも思っている。

それは、

  • 年数が経てば注意する人はどんどん少なくなる
  • キャリアが多様化してきて、スキルを直線上で評価しづらくなる

という点が関係しているようにも思う。つまり、自分で成長のベクトルを見つけて、自分でギャップを埋めていくようにしなければいけないということだ。モチベーションの源泉は外的要因に求めるのではなく、内的要因に作り上げていくものだということを、この本を読み返して思い出した。

モチベーションを思うまま高める法 | Synapse Diary

というわけで、もし組織設計をしたり人事権がある方は、上司と部下の距離間について考えてみてください。

ジェンダーの解消は、企業の業績を向上させる

こういうリアクションをいただいたので、今日は企業におけるダイバーシティ、特に女性に関することを書こうと思う。

 

ダイバーシティを実現すると業績は上がる

ダイバーシティを実現すると、業績が上がるという研究はいろいろ出てきている。冒頭で紹介した記事以外にもこんな感じ。

大和総研 / 女性取締役を有する企業のリターンは好調
「意思決定ボード」のダイバーシティに向けた経営者の行動宣言 ~競争力としての女性管理職・役員の登用・活用~

というわけで、女性差別はよくない、とか先進国の人口減少で女性の労働力が重要、とかマーケティングの観点からも女性の力を引き出すのが有効、とか理由はいろいろあるんだけど。それでも日本は世界と比べるとあまり進んでいないのが現状。
(ここらへんの情報については、女性を活用する国、しない国を参照。)

 

例えば有名な、女性労働力率。日本の場合は20代後半から30代で凹むM字カーブを描く。他の国はあまりそのような傾向にはならない。一番似ているのは韓国か。これは国の文化にも要因はあるだろうけれど、スウェーデン、ノルウェー、フランスなど、ここ30年ぐらいで劇的に変わっている国もある。国に制度などの工夫にもたくさんの余地があるということだろう。

第10図 各国年齢階級別女性労働力率

 

まずはいろいろ知ることから

というわけで、TEDにジェンダーに関するわかりやすい動画があるので紹介。

この動画では女性個人のスタンスを説いているんだけど、個人的に一番印象的なのは、最後に言われていた「結婚の随分前から仕事での競争を諦める」という点。こうやって自ら交渉せず、競争をしないまま職場を下りていく。そういう女性のマインドは少なからずあるのかも。

これは女性自身に問題がある、ということを言いたいのではなくて、社会が期待する「女性」みたいな価値観を気づかない間に持ってしまっているのかも、という結構根が深い問題な気がするわけです。そして、男性も女性もあまり自覚がないところがこの問題の厄介な点。なので、こういう事実を知っていくことが、最初のステップとしてとても重要なのだと思っている。

 

そして、こういう差異を小さくしていこうというのが世界の潮流だし、グローバル企業ではそれをホームページなどで表明している。何となく調べてみたけど、企業によって位置づけや内容が違うし、何となく企業が捉える重要度も感じるよね。

 

ノバルティス。

Novartis Diversity and Inclusion

GE。

GE People: Diversity, Minorities, Military, Veterans

トヨタ。

Diversity and Equal Opportunities

さらに、女性だけじゃなくて、人種もそうだし、LGBTとか表現されるセクシャルマイノリティも対象に含まれているのも最近の特徴。いろんな差別を解消していくことが、多様な人材を確保し、そして会社の業績も上がっていく。そういう事実に気づく必要がある。

 

新しいアプローチの誕生

例えば、「ArrowArrow」のように、女性が働ける環境を合理的な手段で拡大していくアプローチも生まれてきている。本当に何か問題を解決するためには、こういう合理的な方法を創り上げる必要があるんじゃないかと改めて思う。

中小企業向け産休・育休取得のコンサルなら Arrow Arrow(アローアロー)