リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる

キヤノンでキャリアを積んだ、キヤノン電子社長によるリーダーシップ本。

世の中にはリーダーシップ系の本はたくさん出ている。そういう意味ではこの本はその中の一冊ではあるのだが、書かれている内容は非常に実践的で、わかりやすい。管理する立場になって必要な心構えや行動について、学ぶ点は多いだろう。

 

興味深かったのは、いわゆる「心のケア」についても書かれている点だ。こういうリーダーシップ系だと自身がモーレツ系で、あまりそういうケアに関する記載が見られることが少ないのだけれど、この本では違った。

私自身、何度か苦い経験をしてからは、大きな仕事が終わった後は、部下を休ませないようにしたし、空白期間を作らないように、すぐにちょっとした仕事を入れた。そして、下の人間にもそうするよう指導した。

こうやって、急に電池が切れてモチベーションを取り戻せないようなことになったりしないように、仕事面から管理する人たちの精神面の配慮に関しても必要なのは間違いない。

 

あとは、部下の能力を見極める方法についても書かれていて、参考になった。見極めることなんてそんなに難しくない、と昔は思っていたけど、意外に難しい場合もある、ということを痛い目をみて思い知った。

上司の指示をきちんと理解し、正しく実行しようとする人は、そもそも「ここがわからないのでもう一度説明してください」と必ず疑問点を聞いてくる。

こういう基本的なところをちゃんとチェックして能力を見極めないと、最終的に組織全体に悪い影響を与えてしまうことをちゃんと考えないといけない。

 

リーダーシップ論も時代とともに変わっているが、変わらない普遍的な部分もある。この本は、そういう基本的な原則を教えてくれる良い本だと思う。もう少し前に出会えば良かったかもしれないな、とは思う。

 

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