中国のリテールが進んでいるというのは、「アフターデジタル」を読んだときも感じましたが、日本でもいろいろ動きが出てきているようです。
トライアルのスマートレジカートに学ぶ、店舗が「客単価」を上げるためのヒント | Agenda note (アジェンダノート)
ヨーカ堂、AIが商品発注 9月から全店8000品目 :日本経済新聞
最近、この「新・小売革命」という本も読んだので、大きな動向としてリテールのDXというのがどういう流れなのか、自分の頭を整理したいと思います。
劉潤 CCCメディアハウス 2019年03月15日頃
オンラインはオフラインを飲み込むのではなく「融合」する
以前、こちらの記事でも書きましたが、EC化率は全体で6.7%で、オフラインの割合はまだまだ圧倒的な状況です。ECが伸びてはいるのですが、多くがオンラインに置き換えられる、という考え方はほとんどなくなっていて、逆に実態店舗をアップデートすることで大きなビジネスチャンスになる、という考えが大きくなっているのではないでしょうか。
小売業のトレンドをEC化率などからみる
つまり、実態店舗に新しいテクノロジーを導入したり、オンラインと融合させることで、全体としての顧客体験を上げるということです。
ではどう融合していくのでしょうか。冒頭で紹介した「新・小売革命」では、そのエッセンスが整理されていてわかりやすかったです。
まず前提として、小売りという業態と、オンライン・オフラインの違いを整理してみます。
著書によると、小売りは以下で定義される。
小売りの本質とは、「人」と「物」を繋ぐ「場所」である。
そして、消費者はモノの背景にある「情報」も同時に受け取り、購買するかを判断しています。リアル店舗では、店舗内で商品に関する情報を受け取り、同時に購買していることになります。
しかし、オフラインではこの「情報」部分だけが切り離されることになりました。ショールーミングが生じたのも、購買に必要な情報として実物を見たい場合は、先に情報だけ店舗で受け取り、後から安いECで買うという行為がある種合理的になってしまったためです。
リアル店舗は物流・在庫を含め非常にコストがかかりますが、一方で買い物体験という意味では大きな優位性があり、未だに小売り市場の多くをリアル店舗が占めています。このように、それぞれ顧客・売り手にオンライン・オフラインでメリットが異なるのです。
それぞれの特性を踏まえながら、うまく融合させていこうという考えが「ニューリテール」です。
「ニューリテール」とは
ニューリテールというのは、中国のアリババで提唱された考え方です。
「ニューリテール」とは、2016年10月にアリババのジャック・マー会長が提唱した10年~20年先の未来に訪れるだろうリテールのコンセプト。簡単に言えば、テクノロジーとデータを駆使し、オフラインとオンラインが融合したリテールビジネスによって、より優れた顧客体験を届けること。同時に小売事業者のビジネス課題も解決する。
アリババが推進する「ニューリテール」時代の顧客体験とは? テクノロジー&データが牽引する小売の未来 | ネットショップ担当者フォーラムより引用
まさに先ほどいった、オフライン・オンラインそれぞれのメリットを踏まえて、テクノロジーでこれらを融合したり、デメリットを小さくさせたりしていく、ということです。
前述の「新・小売革命」では、このように表現されていました。
どのようにしたら小売りの効率が上げられるか
①「データエンパワーメント」により、情報流、金流、物流の組み合わせを最適化する。
②「売場効率革命」により、人流量、成約率、客単価、リピート率の効率を上げる。
③「短絡経済」により、D-M-S-B-b-Cの経路を短縮する。
①は、例えばオムニチャネルと言われている動きが該当します。Click&Collectで、ネットで注文して店舗で受け取るなど、顧客のニーズに合わせてサービスを提供するわけです。それ以外にも、金流という観点だとキャッシュレスやAmazon Goもありますし、冒頭紹介したトライアルのスマートレジカートもそうです。顧客の利便性を上げつつ、店舗の運営コストを下げることが念頭にあります。
②は、例えばウェブの考え方などがオフラインに入ってきており、例えばABEJAが提供するRetail AIだと、店舗前の人数や来店人数などを計測し、購買に至るまでの動きを解明する動きが出ています。売場でのデータを多く収集することで、これまで見えなかった顧客動向を把握し、商品開発や売場改善を向上させます。
ABEJA Insight for Retail | 株式会社ABEJA
③の「D-M-S-B-b-C」は本を読んでいただかないとわかりづらいですが、商品企画から顧客へモノが届くまでの流れです。これを短縮するというのは、冒頭でいうヨーカ堂の自動発注などもその一部として考えることができます。
世の中で出ている様々な取り組みは、このように小売りの旧来の課題と、オンラインでは解決しきれないが、そこで知見として得られたアプローチや新しいテクノロジーが導入されて、アップデートされている感じです。
オムニチャネルという言葉を聞くことは最近少なくなってきたなと思っていましたが、このようなニューリテールの考えはもっと幅広い概念で捉えられているなと思います。ちなみに、オムニチャネルという言葉をGoogleトレンドでみると、下火感もあります。
顧客体験を変える様々な取り組みが、これからも小売りに導入されていくのでしょう。
劉潤 CCCメディアハウス 2019年03月15日頃