ベネッセの個人情報流出を自社への教訓とするためのポイント

ベネッセの個人情報流出に関して、いろいろ展開が生まれていますが、きっと、日本全国の企業や組織で「自分たちはベネッセと同じようなリスクはないのか?」と右往左往されているんじゃないかと想像します。

ここまででわかっていることを踏まえ、ポイントを整理しておきたいと思います。

情報流出は、法律で罰するのは難しい

今回の事件で、久々に情報漏洩に関する法律関係の知識を思い出しました。既に犯人が逮捕されていますが、立件は「不正競争防止法」になっています。企業における競争を不正に防止するような行為を行った、ということです。

そもそも情報には所有権がありません。というか、実態がないので所有権を特定することが難しいのです。なので、情報を盗むのは、窃盗などと同じように扱うことが難しくなるのです。余談にはなりますが、ビットコインが革新的だと言われているのは、情報に「所有権」を定義できるからです。

ビットコインなどの仮想通貨はなぜ普及しているのか

不正競争防止法が成立するためには、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3つを満たす必要がありますが、今回ベネッセが保持する個人情報はそれに該当すると判断されたようです。

【ベネッセ情報漏洩】顧客情報は「営業秘密」 事件化へ要件満たす – MSN産経ニュース

つまり、自社が情報漏洩した場合に犯罪として立件されるためには、これらの要件が満たされるように情報管理しておく必要があります。今回のベネッセの件では、「秘密管理性」を満たすかが一番ポイントになったようです。漏洩を防ぐ仕組みが構築されており、社内で「秘密」として管理されている状況であったと認められたことになります。

人的対策と技術的対策はどこまでやれば良いのだろうか

今回の犯人は、ベネッセの関連会社であり、システム運用管理の中心的存在であったSEとなっています。これで思い出したのが、少し前にあった横浜銀行の事件です。事件は、横浜銀行のシステム運用を担当していた富士通フロンテックの社員が預金者の情報を見てカードを偽造し引き出していた、というものです。

西本逸郎のIT社会サバイバル術横浜銀行のデータ不正取得事件から考える、内部不正事件と標的型攻撃の共通項:ITpro

横浜銀行の場合、暗証番号を見る正当な権限があり、長年担当する中心人物だったようです。

重要な情報を管理する体制として、長年担当し正当な権限を持つ、信頼されている人間が犯行に及ぶようになると、企業は大きなダメージを受けます。属人的な状況を作らない、権限を一人に掌握させないなどの人的対策は重要になるでしょう。

また、不正競争防止法における「秘密管理性」に認定された通り、入退室管理や権限管理、複製防止などの技術的対策は行われていたようです。あえて書きませんが、Twitterでは複製防止をすり抜けてデータを持ち出した方法に関する情報が流れていました。技術的対策には、いたちごっこの面もあります。常に危機感を持ち、技術的対策をアップデートし続ける必要があります。

クライシスマネジメントにおける初動の重要性

企業に危機が生じたとき、その初動はとても重要です。これまでマクドナルドの「顔」だった原田さんが、新しいベネッセの顔として表舞台に立つにしては、相当ヘビーな案件になってしまいました。

個人的には、最初の記者会見で「金銭的補償はしない」と明言されたことに、違和感を覚えました。会見当時、どこまで事実関係を掴んでいたのかはわかりませんが、漏洩したことに間違いはなく、事情はどうあれ「管理体制が甘かったんじゃないの?」という認識を抱かれる可能性は十分にあります。その後の会見では金銭的補償を行う方針に切り替えたことから、その間に危機管理に関する認識を変えたということでしょう。

こういう場合、法的な正統性や専門的見地からの事実とは別で、「一般的な感覚」が重要になります。銀行やクレカなどの直接的に金銭に関する情報は含まれていなかったようですが、ベネッセの扱っている顧客情報には子どもが多く含まれており、家族構成や職業情報など比較的センシティブと思われる情報が対象になっており、心理的には結構な抵抗感があります。そういう意味で、初動における感覚を読み誤った感があります。まあ、結果論になりますが。

クライシスマネジメントでは、初動がその後の企業イメージを大きく左右します。被害者やメディアがどういう感情を抱くかを考慮する必要があります。企業のためと思い保身に走ると、逆効果で大きく企業イメージを毀損することがあるわけです。

以上です。「自分のところは大丈夫」という過信は禁物ですね。

ベネッセの個人情報流出で、今後ベネッセの強みは維持できるのだろうか

venesse

ベネッセで大量の個人情報流出がありましたね。いろいろ情報は出回っているところですし、原因等の解明は捜査中とのことです。

お客様情報の漏えいについてお詫びとご説明

そして、ベネッセの株価は大きく低下しました。4400円から、流出が発表された7/10には4100円まで下がっています。ちなみに、ベネッセの過去5年の業績グラフを貼っておきます。利益率は低下気味ですが、売上は伸びてますね。

個人情報を多く持っていることはベネッセの強み

ベネッセの強みはいろいろあるのですが、今回対象になった膨大な個人情報を保持していることが大きな強みになっています。

ベネッセは通信教育や出版をメインに行う会社で、顧客の開拓手段のひとつとしてダイレクトメールがあります。反応が高まるダイレクトメールのノウハウに関しては、非常に高いものがあると聞いたことがあります。そのときに、送る先として顧客情報が重要になってくるわけです。

昔は住民基本台帳を閲覧できたそうですが、それもできなくなり、最近だと家族連れが集まるような施設でスタンプラリーなどのイベントを行い、景品と引き換えに個人情報を入手する方法で、熱心に情報を集めているようです。

個人情報に対する規制は年々厳しくなっているので、逆にそれを取得できる企業というのは大きな強みになりうるわけです。

それだけ企業にとって根幹となる重要な情報が、このような形で漏えいしたのは残念ですね。全容はまだわからないので、何ともという感じではありますが。

今後どうやって信頼回復していくんだろうか

マクドナルドのCEOだった原田さんが社長に就任して間もないですが、今後どのように信頼を回復していくのかは気になります。個人情報を収集するのが強みのひとつだったわけですが、それも今後は同じやり方では情報を集められないかもしれません。

恐らくはシステム管理の問題だったと推測しますが、社会の大半の人はそういう事情はあまりよくわからないと思いますし。それとも、みんなあまり気にせず情報を渡してしまうんでしょうかね。

個人情報保護法で、今回の漏えいが罪にならない可能性があったり(以前から問題視されてましたね、この点)、漏えいのきっかけとして名前が挙がったジャストシステムの株価がストップ安になったりと、いろいろ話題は尽きません。名簿屋の闇は深いなって思いました。

ベネッセから最大2070万件のデータ流出。盗んだヤツも買ったジャストシステムも罪にならない? | More Access! More Fun!

おまけとして、ジャストシステムの過去5年の業績グラフも貼っておきます。ここ数年は上昇傾向ですね。2009年にキーエンスの傘下に入ってます。

個人的には、ベネッセが水族館などでスタンプラリーをやって個人情報を集めるのはちょっと嫌ですね。親としては子どもが楽しいから良いかと思う反面、個人情報は不必要に渡したくない、という気持ち悪さにさいなまれるので。

リブセンスはなぜ株価が急落したのか

リブセンスの四半期決算の内容が芳しくなく、株価が急落したというのが話題になっていました。興味がわきましたので、どういう状況になっているのか、少し調べてみました。

リブセンスが生命線のSEOを叩き落とされてピンチむかえる : 市況かぶ全力2階建

財務状況などは、こちらの決算資料を見てもらえばわかりますが、売上が思ったほど伸びず、販管費が多くなっていることから、利益を大きく圧迫しています。これまで順調に成長してきたはずが、どうしてこうなったんでしょうか。

投資家情報株式会社リブセンス
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求人サイト全体が落ち込んでいるのか?

外部環境はどうなってるんでしょうか。まず、求人掲載件数は多少の凹凸があるものの右肩上がりです。特に求人サイトは顕著に成長しています。

公益社団法人全国求人情報協会 : 調査発表/求人広告掲載件数

あと、有効求人倍率も特に落ち込んでいないです。なので、求人に対しては旺盛な状況だと思われます。

よって、求人掲載件数自体が大きく落ち込んでいるようには見えず、リブセンスが競合に比べて負けている可能性が高いんじゃないか、と考えられます。

リブセンスの強みは何か?

リブセンスのビジネスモデルで注目されたのは、成果報酬型の掲載料でした。それによって、広告主は無駄な費用を払わずに求人とのマッチングを受けられることになります。で、それを成立させるために応募者側に「お祝い金」を払うというアイデアが盛り込まれたことが、注目ポイントだったかと。

一方で、いくつか記事を読むと「SEOに強い」ことが強みのひとつに挙げられており、それが検索エンジンのアルゴリズム変更によって低下したというのが見られます。

好調リブセンス、その「手堅さ」の所以とは?
(1/2) 求人情報「リブセンス」株急落のなぜSEOがうまく機能しなくなったせい、との見方 : J-CASTニュース

この記事を書くまでリブセンスのことを深く知っていたわけではありませんが、SEOによる流入が多く、リスティングに大きく頼らずとも集客できることがひとつの強みだったようです。確かに、「地名 アルバイト」とか検索して、トップにきたらクリックされる確率は高いですわな。

そして、いろいろ言われている通り、検索順位は落ちているようです。「名古屋 アルバイト」で検索すると、リブセンスが運営するサイト「ジョブセンス」は10位だったりします。

求人サイトのコアコンピタンスは何か?

求人広告の強さを決める要因は何かってことで言えば、ひとつは求人掲載数の多さだと思います。多ければ多いほど、マッチングの確率が多くなります。プラットフォームビジネスの基本ですね。

求人掲載数の比較

Google検索で1位・2位だったバイトル、タウンワークと名古屋市のアルバイト求人数で比較します。

バイトル:2577件 タウンワーク:3056件 ジョブセンス:589件

数でみれば一目瞭然です。名古屋しか調べていないですが。

一応、スクリーンショット貼っておきます(5/21時点)。

バイトル

タウンワーク

ジョブセンス

ブランド想起

あとは、プラットフォーム自体の名前を検索して、調べるってこともありそうです。なので、Googleトレンドで比較してみました。

googletrend

2013年頃は、ジョブセンスがバイトルを一時的に逆転しているようですが、検索数でも差が生じています。タウンワークが圧勝ですね。

ここからは完全に想像ですが、リブセンスは売上が停滞するタイミングが早かったなってのが正直なところなんじゃないかと思います。人材サービスは成熟した業界で、その中でリブセンスはニッチなところを狙って成長してきたと思うのです。認知度があまり高くない状況で、サービス名で検索されるのではなく、「地名 求人」などの検索流入を丁寧に拾ってきたというのがこれまでだったんじゃないかと。

そして、ネットでの認知向上にやや限界が出てきた中で、マスメディアでCM打ったりして、これからブランド力をつけるってフェーズなんですが、それと同時に売上の頭打ちが来ているんですかね。

こういう勢いあるベンチャーには頑張って欲しいものです。

ロイヤルホストはなぜ業績が好調なのか

先週のカンブリア宮殿は、ロイヤルホストでした。低迷するファミリーレストラン業界の中で、高価格路線で業績が上がっています。ロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスの業績を見てみたのが、以下のグラフです。ただ、ロイヤルホールディングスとしてホテルとか機内食なども運営していて、ロイヤルホストの売上は全体の1/4近い割合です。

特に、営業利益率の伸びが良い感じですね。好調なのがわかります。

royalhost

高級食材による客単価の向上、呼び出しボタンやドリンクバーをなくした接客サービスの刷新を図っています。なんでロイヤルホストがこのような戦略を取るのか、ファミリーレストランの業界動向から紐解こうと思います。

ちなみに、今回の記事を書くにあたって、ファミリーレストランの歴史に興味を持ってこの本を読みました。

小売業はなぜオムニチャネルに取り組む必要があるのか

最近というか少し前から、よく「オムニチャネル」という言葉を耳にします。セブン&アイは、1000億円をかけてオムニチャネルを計画していますし、小売業界ではオムニチャネルへの取り組みがビジネス上必須になってきているようです。

セブンの1000億円オムニチャネル計画、電通など参加  :日本経済新聞

で、なんでオムニチャネルがこれほど注目されているのか、っていうことを僕なりの理解で書いておこうと思います。

オンラインショップが日用品などへ進出している

Amazonや楽天が台頭しているように、オンラインショッピングはリアル店舗から顧客を奪ってきました。最初は本や電化製品など、どこで買っても価格が変わらないものや、製品が特定しやすく低価格勝負しやすいジャンルがターゲットになりました。

しかし、ECサイトが取り扱うジャンルもどんどん領域を広げていて、今は日用品、食料品や衣料品などに主戦場が移ってきています。Amazonもアメリカでは生鮮食品の配達サービスを提供しています。

知られざるAmazonの生鮮食料品配達サービス「AmazonFresh」とは? – GIGAZINE

日用品や食料品は、価格が最大の購買動機にはなりません。ひとつひとつが少額であるため、多少の手間を考えれば最安値でなくても買うんだろうと思います。

調査対象の消費者の24パーセントが書籍、家電、エンターテイメントなど最先端、流行の商品購入には「低価格」が一番重要であると答えています。 また衣料品や家具 、美容や健康、スポーツや趣味関連の製品で「低価格」を一番の理由に上げたのは18パーセントでした。 しかし食品や飲料品になると「品揃え」と答えた消費者が最多(14パーセント)となっています。そして洗剤やトイレットペーパーなどの日用品に関しては「無料配送」と答えた消費者が最多(16パーセント)となっています。

最新調査「なぜ消費者は最安値でなくてもオンラインで買うのか?」 | 小売×マーケティング「海外小売最前線」

つまり、商品ジャンルによってオンラインショップに求められる購買動機は異なり、必ずしも低価格だけが勝負のフィールドではない、ということです。ここに、リアル店舗がオムニチャネルに取り組む理由があります。

リアル店舗の強みをどう発揮するか

つまり、日用品や食料品などは、単に安いからネットから買うということにはならないわけで、これまでリアル店舗が負けていたロジックである「リアル店舗というストックがコストになる」というビジネス構造を真正面から受けるのではない、ということが言えます。

となると、各小売企業はどうやってリアル店舗を運営しつつネットショッピングの利点をサービスに取り込めるか、ということが焦点になって来るわけです。

個人的には、オンラインショップとリアル店舗のスムーズな動線構築がポイントだと思っています。

どこもオンラインショップを立ち上げて、リアル店舗だけではない購買機会を創出しようとしています。そこで、オンラインとリアル店舗でそれぞれ同じ顧客が来ていることが特定できれば、スムーズに動線を作れるようになります。

例えば、リアル店舗で買った購買履歴を記憶しておき、オンラインで買うときにリコメンドされるとか。リアル店舗で在庫がないときに、その場でオンラインで購入できるとか。オンラインで買って、店で受け取るとか。

いろいろ動線をクロスすることができそうです。これこそがリアル店舗の強みになるんじゃないか、ということだと思います。特に僕が注目しているのは2つあります。

新しい買い物体験の創出

オンラインとリアルで顧客データが一元化されることでリコメンドが高度化したり、スマホやタブレットの普及によってこれまでとは違う買い物体験が生み出されるんじゃないかと思っています。リアル店舗の強みというのは、新しい体験を生み出すことだと思います。

ZOZOTOWNのWEARなんかもそういうところに踏み出すひとつの例じゃないでしょうか。

店舗受け取りの増加

リアル店舗の強みとして、「ついで買い」を誘引することができるという点があります。

今ではオンラインショッピングで買ったものは自宅まで届けてくれますし、配送料も無料になるケースが増えています。ただ、配送業者が逼迫するなど低価格競争の中で苦しい状況とも言われています。

そこで、店舗受け取りを増やして、配送に頼らない受け取りを実現するとともに、来店してもらってついでに買ってもらうというように、顧客の行動を変えることができる可能性があります。

今でもコンビニ受け取りなどはできますが、もっといろんな小売業が取り組めば、店舗受け取りを増やすことができるんじゃないかと思いますし、自社配送の資源で賄うことが可能になります。なので、小売業は店舗受け取りにもっとインセンティブを設けて、割合を増やしたらいいんじゃないかと思っています。

オムニチャネルでオンラインショップ有利な状況に変化が出る | マイ・ストアニュース

僕がオムニチャネルについて思っていることは以上です。セブンが本気でこの領域に投資しているようですが、リアル店舗を持っている企業としては取組みは必須だと思いますし、ここでどれだけ先行優位性を築けるかが、今後の業界動向に関わってくるんじゃないかと予想しています。

スターバックスが契約社員を正社員化した理由を考える

スターバックスが、契約社員を正社員化したというニュースがありました。

スターバックスコーヒージャパン(東京)は4月1日から約800人いる契約社員すべてを正社員として雇用することが27日、分かった。店舗で働く契約社員の待遇を改善し、サービスの質を高めたい考えだ。  契約社員は、労働時間が正社員並みになる場合もあるが、1年契約の時給制で通常のボーナスはない。正社員になると、月給制となりボーナスも出るため、給与総額は現在より増えるという。

スタバ、契約社員800人すべて正社員に – 経済ニュース : nikkansports.com

施策には必ず理由がある、と思いますので、その理由を考えてみたいと思います。

コストが上がるのになぜ正社員化するのか

スターバックスの正社員数は、H25年3月末時点の公表されている数字では1,821名です。

会社案内(会社概要) | スターバックスコーヒージャパン

これに800名の正社員を追加するわけですから、会社全体でみれば正社員が急に1.5倍ぐらいになるインパクトがあります。このコストに見合うだけの理由があるはずです。いくつか要因を考えてみました。

コンビニコーヒ-の台頭

最近話題で考えられるのが、コンビニコーヒーの台頭です。少し前の情報ですが、セブン-イレブンはコーヒーの販売目標を4.5億杯にしたそうです。

5月時点で、年間販売目標を3億杯から4.5億杯に引き上げた。1杯100円でも、年換算すれば450億円の売り上げとなる。8月には約1万5000のほぼ全店に導入した。

いれたてコーヒー、熱い戦い コンビニ業界、セブンカフェに負けるな : J-CASTニュース

ざっくり考えれば、コンビニ全体で1,000億円ぐらいは売り上げているかもしれません。そして、カフェ市場は1兆円規模と言われており、スタバのCEOは脅威ではないと13年6月時点でコメントしています。

スタバの関根純CEO(最高経営責任者)は13年6月2日付日本経済新聞朝刊の取材に対して、コンビニ大手の店内カフェは「脅威に感じていない。1兆円規模のカフェ市場に比べコンビニの販売額は小さい」と余裕を示し、異業種カフェやフルサービス喫茶との差別化についても「これからは軽食にも注力する。

スタバ、急成長に曲がり角か外食、コンビニ、コメダら競合台頭で過熱する喫茶市場(1/2 | ビジネスジャーナル

市場の10%ぐらいを勢いよく喰っていくコンビニコーヒーは、本当に影響を与えていないんでしょうか。そこで2014年1月までの既存店売上高をみてみると、1月は100%を下回っています。(10月も下回っていますが。)

starbucks_2014
(引用:スターバックス月次IRレポートより)

この数字をどう捉えるかですが、スタバなどで買っていた人が一部流れた可能性があります。その場合、スタバの差別化要因である接客などのサービスレベルの高さを維持し強化するために、契約社員を正社員化したと考えることもできます。

ただ、現時点ではこれが直接の要因では無い気がしますね。

出店数の伸び悩みによる成熟フェーズの突入

もうひとつ注目するのは、スターバックスの日本国内における出店攻勢は今後頭打ちになっていき、成熟フェーズに入るということです。

starbucks_tempo
(引用:スターバックス平成26年3月期決算説明会付属資料)

カフェ業界で出店数が多いのはドトールで1400店を超えているので、そこまで到達するかもという可能性はありますが、カフェ市場全体が縮小傾向にあり、かつ今の出店ペースから考えても、出店を加速させるというよりは、単価を上げたり新しい差別化の方向性を強化していくのだと思います。

実際、軽食にフォーカスするという方針が述べられていたり、ハイグレードなエスプレッソを提供する実験店舗を展開するなど、新しい取組みが出てきています。

フォームドピオエスプレッソ | スターバックスコーヒージャパン
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そういうビジネス環境で重要なのは、人の囲い込みによる競争性の確保です。スターバックスに行くと感じますが、接客レベルが高いんですよね。それは一朝一夕で実現できるものではないので、そうやって育成した人材を確保しつづけ、強固な組織にしていくフェーズになったんじゃないかと思います。

契約社員の長期化

スターバックスが日本に銀座1号店を出店したのが1996年で、17年ぐらい経つのですね。そう考えると、契約社員も長く務める人がいたりして、スキルも高度化し、正社員とのギャップが小さいと感じるケースが増えていたのかもしれません。

そうなると、契約社員のモチベーションが低下してしまったり、せっかくの戦力がどんどん抜けてしまうというリスクが高まります。

というわけでいろいろ考えてみましたが、スターバックスのビジネス環境が新しいフェーズに入っており、組織を変えないといけない状況であるのは間違いないでしょう。

過去には、ロフトが正社員と契約社員の垣根をなくして、離職率低下を実現しています。その代わりに、人件費が10%アップしたそうですが。

先進企業に学べ!短時間正社員制度成功例3「ロフト社員」化がもたらした離職率低下:IT&ウェブ業界のスキルアップをサポートする「CAREERzine

人材を活用するときに、人のコストを引き受けるというのは経営上勇気がいるものです。一度引き上げた条件を下げるのは、とてもエネルギーがいるものですし。

今後のスタバはいろんな意味で面白くなりそうです。

居酒屋に行って酒販店業界の厳しさを知った

こないだ、小さな居酒屋でお酒を飲みました。本当小さくて、お世辞にもおしゃれとは程遠い店だったのですが、非常に面白い時間を過ごせました。

酒屋がてがける居酒屋

そこは、酒屋さんがてがける居酒屋で、店の隣には酒屋がありました。

お店にはたくさんの酒が並んでいたのは当たり前として、興味深かったのは酒蔵と提携して独自ブランドを販売していたことです。酒蔵に直接交渉に行って、酒を作ってもらったりするんだそうです。酒の「販売元」にもしっかりと酒屋さんの名前が書いてありました。

店主の方は、「酒屋だけでは最近はずっと厳しいからねー」とおっしゃっていて、居酒屋をやったり、酒蔵にお願いして酒を作ってもらっているようです。

酒屋業界の現状

酒にまつわる業界は、結構厳しい状況です。まず、アルコールの消費量や支出が減ってきています。飲酒運転規制の強化、第3のビールなど様々な要因が重なってきています。また最近では、若者の「酒離れ」もあるようです。

そして、一時酒屋のディスカウントストアが台頭したことによる価格競争が始まり、町の酒屋さんはどんどん減ってきました。今ではスーパーやコンビニなどでも酒が販売が増加しており、ディスカウントストアも苦戦しているようです。

酒ディスカウント・ストアの成功と凋落 – nishichanbunseki’s jimdo-pages

「一般小売店」のシェアは、平成3年から平成18年で3分の1ぐらいになっています

一般酒販店の現状と改善に関する調査研究報告書(PDF

バリューチェーンで考える酒販業界

こんな厳しい酒屋の業界ですが、バリューチェーンで考えると、飲みにいった居酒屋さんは経営戦略として正しいことをしています。

業界をバリューチェーンで捉えると、こうなります。

valuechain

今回の酒屋さんは、最初川下にある居酒屋を開業されました。最終消費を抑えることは、販売単価やマージンをコントロールしやすくなります。

また、川上にある酒蔵に交渉して独自ブランドを作ってもらってます。これは、卸業者の中抜きを行うとともに、プライベートブランドによる独自性を高めています。

つまりバリューチェーンを垂直統合しているんですよね。だから生き残れているんだなーと思いました。

そして、店主の方はやはり酒の知識が豊富なので、非常に話していて面白いんですよ。酒の成分の違いとか、ブランドの由来を説明してくれたり、客の好みにあった酒をすすめてくれたり。そういう違いを生み出せないと厳しい業界なんだなーと思った次第です。

惜しむらくは、ホームページなどの広報手段を持っていないことかな、と。隠れ家的で良いのかもしれませんが。

楽天がViberを買収した理由は何か

だいぶタイムリーではなくなってしまった感じがありますが、楽天がViberを買収した話を書いておこうと思います。やはりメッセンジャーアプリ界隈が新しいフェーズに突入してきている感じです。

楽天は2月14日、都内で事業戦略説明会を開催し、無料通話&メッセージアプリ「Viber」を提供するViber Mediaを子会社化したと発表した。買収金額は9億ドル(約916億円)で、全株式を取得している。

楽天、無料通話アプリ「Viber」を買収固定への無料通話プロモーションも | マイナビニュース

Viberの売上はひどい

楽天の買収発表では、Viberの収益状況が示されています。売上151万ドルで、営業損失は2646万ドル。完全な赤字です。全然収益化できていない実態がわかります。

Viber

楽天株式会社:  Viber Media Ltd.の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ | ニュース

Viberとしては、身売り先というか資金調達をしたかったのでしょう。この数字を見ると、自前で生きていくのが難しい感じです。

このような企業に9億ドルも払うだなんて、ということで結構ひどい買い物したという意見もあるようです。しかし先日、時を同じくしてFacebookがWhatsAppを買収しましたが、160億ドルです。楽天の9億ドルがかすんで見えますね。

FacebookWhatsAppを買収した目的を考える | Synapse Diary

収益化できてないけど、ユーザー数はとても多い

では、Facebookでも楽天でもなぜメッセンジャーアプリを買収するかといえば、抱えているユーザー数が非常に多いからです。そして、それがとても速いスピードで進行しています。つまり、新しいコミュニケーションの形が、急速に市場に浸透しているということです。

それに伴って、プロダクトライフサイクルで考えた場合、普及期を超え、成長期の途中にあると見ています。成長期では、市場全体が膨れていくので複数の企業が成長していきますが、途中から淘汰されていきます。メッセンジャーアプリはWhatsAppもそうですが収益化が難しく、ライバルに勝たなければいけないものの、資本などの投資が難しい状況にあるのではないかと思います。

というわけで、Facebookでも楽天でも「買うなら今」という状況なのだと思います。このタイミングを逃すと、ライバルなどに買われてしまうか、もっと勢力が増して今回のような金額では買えなくなる、という状況になることが予想されます。

楽天の目的は「経済圏」の構築

Facebookの場合は、Facebookサービス以外の有力SNSの囲い込みだと思いますが、楽天についていえば、Facebookとは目的が違います。

楽天は3億人にリーチできるプラットフォームと音声技術を買ったことになるのだと思います。楽天の目的は経済圏の構築であり、多様なサービス展開、楽天カードやポイントなど、楽天内でいろいろなことが完結するようにしたいのです。

そういう意味では、スマートフォンの中でよく使われるコミュニケーションサービスを楽天が保持したいと思っても不思議ではありません。LINEはメッセージアプリから通販などを手がけるプラットフォームに変貌しています。設計次第ではありますが、人が利用し、閲覧されるということは、そこにお金との紐付けを行える機会があるということですから。

もう一つの注目はViberの地域シェアです。楽天の国内流通額は1兆円。海外は130億円。(四半期ベース)。つまり、100分の1ぐらいになっています。

rakuten_jp rakuten_global

http://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/file/13Q1PPT_J.pdf

海外進出を強化する、というのがここ最近の楽天の戦略です。海外ユーザーが3億人ぐらいもいるサービスを買えるという意味では、今の楽天にとっては非常に価値があるのではないでしょうかね。

参考:
【社会】900億は高すぎ? 楽天の「Viber」買収に、冷ややかな海外メディア|政治・選挙プラットフォーム【政治山】

WhatsAppの買収から考える今後のスマートフォンビジネスの動き – Future Insight

フェイスブック、ワッツアップ買収190億ドルは割安?安田佐和子 : アゴラライブドアブログ

mixiが四半期決算で業績好調を発表。その要因と今後の経営を考える

ミクシィの社長がわずか1年で交代、と発表されました。

同日、朝倉祐介代表取締役社長が退任し、森田仁基執行役員(mixi事業本部長)が代表取締役社長に昇格する人事を発表。「黒字化する見込みとなったことを受け、ミクシィグループが再成長フェーズに移行したと考え、代表取締役を交代することにした」としている。
ミクシィ通期見通しを上方修正 営業赤字予想から一転、2億円の黒字に 「モンスト」効果 – ITmedia ニュース

それ以外にも、モンスターストライクの売上など、業績も注目されていた四半期決算でした。これからのミクシィがどうなるのか、調べてみました。

これまでのミクシィ

一時期、SNSの隆盛の中で売上を伸ばしてきたミクシィですが、業績でみると2011年をピークに売上が減少しています。

これは、モバイル対応への遅れやFacebook、Twitterなど新しいSNSの台頭により、プラットフォームとしての魅力が低下して、広告収入が減少していったことに原因があります。四半期単位でみて20億円程度あった広告収入が、最近では3.3億円です。6分の1ぐらいになっていますね。

mixi_sales

それが、今四半期で業績は上向きに転換し、次の四半期決算では黒字になると発表されています。

mixi_sales2

広告収入の減少は、課金収入の増加で補うこととなりました。それらの取り組みが報われた形になったのでしょうか。

収入増加の要因はモンスターストライクか

売上で前四半期から上昇したのは、「課金収入」と「その他」の2つ。課金収入は、前四半期の水準に戻った感じ。あとは、「その他」の売上が全体を押し上げた形になっています。

課金収入の内訳をみると、大半を占めていたブラウザゲームの売上が減少する中で、ネイティブゲームの分野が大きく増加しています。これがモンスターストライクですね。

mixi_kakin

つまり、モンスターストライクが売上伸びたと言われたのですが、今四半期は売上全体でみるとこれまでの減少分を食い止める程度の規模感だったようです。

で、もう一つの売上上昇は「その他」のところですね。四半期の説明資料ではあまり詳しく書かれていないですが、「結婚支援事業」の連結を開始したと説明されています。これは、どうやら「YYC」というマッチングサイトからの収益貢献が大きいようです。元々はライブドアから買い取ったサービスなわけですが、その経緯はこのあたりを読むと「うーん」という感じがします。

mixiがこっそりと(?)出会い系サイトYYCを買収したことを、CNETが盛大にバラす

それでも業績予想では大きく上昇する

四半期単位でみると、来四半期の売上高は今四半期の2倍以上の売上予想になっています。課金収入は比較的収益予想が立てやすいとも言われているので、手堅い感じなのでしょう。恐らく、ここはモンスターストライクの貢献だと思われます。やはりゲームがヒットすると、インパクトが大きいんですね。

モンスターストライクは、利用者数は250万人を突破しました。ちなみにパズドラは2400万ダウンロードを記録しており、ガンホーは一ヶ月で173億円の売上があるとなっています。すごいですね。

2400DL突破】パズドラ国内累計ダウンロード数の推移をグラフ化
「パズドラ」大ヒットのガンホー、売上高10.5倍の746億円16月期、営業益451億円 – ITmedia ニュース

まとめ

  • 今四半期は売上減少がとどまり、好転
  • 売上が好転した理由は、モンスターストライクもあるが、出会い系サービスYYCの影響も大きい
  • モンスターストライクのインパクトは今後大きくなる
  • あとは、モンスターストライクがどの程度伸びていくかが、今後の注目ポイント

という感じですかね。

冒頭の話に戻りますが、社長が1年で退任になったことはいろいろ話題を呼んでいるようですが、どうなるんでしょう。ひとまず、その先どういう方向に経営が舵取りされていくのかは関心がありますね。「ゲーム会社になるわけじゃない」ということのようですが、mixiプラットフォーム自体の魅力が低減している現状で、ゲームを提供して売上が回復したのも事実なので。

ウェアラブルの時代到来と、任天堂の今後の戦略

最近、iPhoneアプリで歩数計を導入しました。歩数をカウントするやつ。運動不足を自覚していて、何とかしないとなーと思っていたところで、ふと歩数をカウントしてみたら、やる気になるんだろうかと思い立って導入してみた。

導入したのは、Walkerというアプリです。

Walker – 歩数計 Lite 2.1.3(無料)
カテゴリ: ヘルスケア/フィットネス, ライフスタイル
販売元: Studio Amuate – Naoya Araki(サイズ: 6.9 MB)
全てのバージョンの評価: (3,659件の評価)

多少の誤差はあると思いますが、感度はまずまずで、普通に使えます。

実は最初は、Movesというアプリを使ってみたんです。

Moves 2.0.3(¥300
カテゴリ: ヘルスケア/フィットネス, ライフスタイル
販売元: ProtoGeo – ProtoGeo Oy(サイズ: 8 MB)
全てのバージョンの評価: (516件の評価)

機能としては全く問題ないのですが、アプリを使うためにはGPSロガーの機能を常にOnにする必要があり、バッテリーや通信の浪費が激しかったので、Walkerに切り替えました。Walkerも一応GSPロガーとしての機能もあるようですが、歩数カウントだけで使うことができたので。

GPSロガーと歩数と両方使いたい人は、Movesの方がおすすめです。

ウェアラブル時代が到来します

歩数計アプリを使ってみて、自分でも驚いたのですが、やはりデータが可視化されると、自分の意識に変化が芽生えることです。「え、こんな歩いてないの?」というのが事実として突きつけられると、「もう少し歩こう」という行動に変わりますし、実際に歩数が増加すると達成感も得られます。

今回自分が歩数計アプリを試してみて、自分の行動を可視化することで、新しいモチベーションを生み出すことができるんだな、ということを実感しました。

さて、いろんな人が「これからはウェアラブルがくる!」と言及されていますが、僕も間違いなく新しいジャンルを開拓していくんだと思います。詳しいところは、この本を読むと良いでしょう。ウェアラブルの現状や今後予想される展開について、丁寧に描かれています。