だいぶタイムリーではなくなってしまった感じがありますが、楽天がViberを買収した話を書いておこうと思います。やはりメッセンジャーアプリ界隈が新しいフェーズに突入してきている感じです。
楽天は2月14日、都内で事業戦略説明会を開催し、無料通話&メッセージアプリ「Viber」を提供するViber Mediaを子会社化したと発表した。買収金額は9億ドル(約916億円)で、全株式を取得している。
Viberの売上はひどい
楽天の買収発表では、Viberの収益状況が示されています。売上151万ドルで、営業損失は2646万ドル。完全な赤字です。全然収益化できていない実態がわかります。
楽天株式会社: Viber Media Ltd.の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ | ニュース
Viberとしては、身売り先というか資金調達をしたかったのでしょう。この数字を見ると、自前で生きていくのが難しい感じです。
このような企業に9億ドルも払うだなんて、ということで結構ひどい買い物したという意見もあるようです。しかし先日、時を同じくしてFacebookがWhatsAppを買収しましたが、160億ドルです。楽天の9億ドルがかすんで見えますね。
FacebookがWhatsAppを買収した目的を考える | Synapse Diary
収益化できてないけど、ユーザー数はとても多い
では、Facebookでも楽天でもなぜメッセンジャーアプリを買収するかといえば、抱えているユーザー数が非常に多いからです。そして、それがとても速いスピードで進行しています。つまり、新しいコミュニケーションの形が、急速に市場に浸透しているということです。
それに伴って、プロダクトライフサイクルで考えた場合、普及期を超え、成長期の途中にあると見ています。成長期では、市場全体が膨れていくので複数の企業が成長していきますが、途中から淘汰されていきます。メッセンジャーアプリはWhatsAppもそうですが収益化が難しく、ライバルに勝たなければいけないものの、資本などの投資が難しい状況にあるのではないかと思います。
というわけで、Facebookでも楽天でも「買うなら今」という状況なのだと思います。このタイミングを逃すと、ライバルなどに買われてしまうか、もっと勢力が増して今回のような金額では買えなくなる、という状況になることが予想されます。
楽天の目的は「経済圏」の構築
Facebookの場合は、Facebookサービス以外の有力SNSの囲い込みだと思いますが、楽天についていえば、Facebookとは目的が違います。
楽天は3億人にリーチできるプラットフォームと音声技術を買ったことになるのだと思います。楽天の目的は経済圏の構築であり、多様なサービス展開、楽天カードやポイントなど、楽天内でいろいろなことが完結するようにしたいのです。
そういう意味では、スマートフォンの中でよく使われるコミュニケーションサービスを楽天が保持したいと思っても不思議ではありません。LINEはメッセージアプリから通販などを手がけるプラットフォームに変貌しています。設計次第ではありますが、人が利用し、閲覧されるということは、そこにお金との紐付けを行える機会があるということですから。
もう一つの注目はViberの地域シェアです。楽天の国内流通額は1兆円。海外は130億円。(四半期ベース)。つまり、100分の1ぐらいになっています。
http://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/file/13Q1PPT_J.pdf
海外進出を強化する、というのがここ最近の楽天の戦略です。海外ユーザーが3億人ぐらいもいるサービスを買えるという意味では、今の楽天にとっては非常に価値があるのではないでしょうかね。
参考:
【社会】900億は高すぎ? 楽天の「Viber」買収に、冷ややかな海外メディア|政治・選挙プラットフォーム【政治山】