ドラッカーの講義

ガイアの夜明けで就職活動が特集され、厳しい世の中を感じて気持ちが暗くなってしまった人。そんな人はドラッカーを読んで、世の中の仕組みを理解しよう。

久々に読んだドラッカーは懐かしい感じがした。相変わらず事象の捉え方が鋭く、はっとさせられることが多い。ドラッカーのすごさは、豊富な知識を時間と地理の軸から、目の前の事象に対する新しい視点を与えてくれることだと思う。

僕は、今後も労働集約産業ではなく、知識集約産業がもっと発展するのだと思っている。だから、個人としてはいかに幅広く深い知識を身につけるかが重要だし、組織はその知識を活かし、組織に蓄積・発展させる仕組みが重要になるだろう。より一層。

だから、大人になっても勉強しないといけない。知識を蓄えて、アイデアを生み出せる人でいつづけなきゃいけない。ドラッカーを読むと、いつもそういう気持ちにさせてくれる。

あと、ドラッカーが学校の役割にも言及していたのは印象的だったな。

彼らは何よりも、昔の学校が関心の対象にしてこなかったことを学ぶ必要があります。つまり彼らは、どのようにして学べばよいのかを学ばなかればならない、ということです。

今後の学校はぜひそうであって欲しい。

ドラッカーの講義(1991-2003)~マネジメント・経済・未来について話そう~ドラッカーの講義(1991-2003)~マネジメント・経済・未来について話そう~
P.F.ドラッカー リック・ワルツマン

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この情報共有が利益につながる

情報共有やナレッジマネジメントの本の中では、これが最も整理されてる。出版は2004年だけど、今読んでも十分通じる。

 

ピラミッド型の組織では動きが鈍く、劇的に変わる環境に対応できなくなる。そこで可能な限り下部組織に権限委譲して、自ら変革してゆく組織が勝ち残ることになる。各自が能動的に行動するためには、組織内で十分な情報共有が行われる必要があるのだが、皆本当にできてるだろうか。

 

文書管理したり、ポータル作るぐらいは知識共有のファーストステップにすぎない。情報をアクセスするだけでなく、人のコミュニケーションフローをどう効果的にするかも重要だ。暗黙知を形式知に、とかいっても、結局本当に重要な情報は人の頭の中にあるのだから。

 

というわけで、ナレッジマネジメントを十分にできているところは少ないから、どこも改善の余地はあるだろう。これ読んで、目の前の組織を変えよう。

 

自助論 サミュエル・スマイルズ

iTunes UのSFC講義で竹中さんが「熱い!」と推奨していたので、読んでみる。確かに熱い。内容自体は特に目新しいことのない自己啓発書と言ってしまえばそれまでだけれども。自己啓発も、たまに自分の気持ちを引き締めるには悪くないもんだ。

自助論はこういう人におすすめですよ、ってのを書いてみる。

 

自分が賢くないことに絶望感を抱いている人

この本は、凡人であることの安心感を与えてくれます。自分が充実した人生を歩むために必要な要素は、才能も去ることながら、努力の方が重要であることを教えてくれます。

諸君が天性の才能に恵まれているなら、勤勉がそれをさらに高めるだろう。もし恵まれていないのだとしても、勤勉がそれに取って代わるだろう

イマイチ日々の生活にモチベーションが上がらない人

日々の生活が何となく過ぎてしまっている人は、この本がやる気を与えてくれます。いろんな人の多様な境遇が出てきて、自分なんかが適当に生きていて良いんだろうか、と思わせてくれます。着実に努力を積み重ねることで、道が開けるような気がしてきます。

 

時間の大切さがよくわかっていない人

簡単に成功する手段はない一方で、時間が有限であることから余り寄り道はできません。この本が、時間の重要性を教えてくれます。まあ、次の一言で十分ですが。

つまらぬ友と付き合うぐらいなら一人で生きよ。(中略)これを処世訓として肝に銘じておきなさい。自分よりすぐれた人間か、せめて同程度の人間を友とすべきです。人間の価値は常に、友の価値によって決まるのですから

というわけで、いろいろやる気が突き抜けない自分としては、たまにはこういう本を読んで、自分を奮い立たせるのも良い。

facebook ベン・メズリック

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ベン・メズリック
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気分転換に、ひとつの読み物として興味本位で読んでみたけれど、意外に当たり。起業家物語として、起業家の本質をあぶりだすという意味では不十分な点は多いけれど、事業が劇的なスピードで拡大していく様子が、高揚感を与えてくれる。

創業者マーク・ザッカーバーグが作り出したfacebookを中心に、環境が目まぐるしく変わっていう中で、人や組織がどう変わっていくのかが面白い。特に、ハーバード学生時代の共同創業者で、経営面を担っていたエドゥアルドという人の存在が象徴的だった。最初はうまくマークと役割分担できていたけど、途中から別の人間に代わられて、距離感ができていく。それに気づくのに遅れ、最後には「創業者」の地位に固執するようになってしまう。

このときのマークの対応が冷徹のように描かれているけれど、僕としては何ら不思議はない。組織に貢献できなくなったらその人は存在できなくなる、という意味で非常に厳密で冷徹なものだ。(たまにこれができなくなるから、組織が非効率になるのだけれど。)

そういう組織の中で最も強いのは実行して結果を残せる人。facebookでは創業者マーク・ザッカーバーグだ。自ら企画し、コーディングし、人を牽引していく。

組織の中でどうやって生き残っていくか。結局はどういう人が強いのか。読めばよくわかる。そして、ちょっとコーディングしたくなる。

そういえば、デヴィット・フィンチャーが映画化したんだよね。このストーリーをどう描いたかは興味あるなあ。

Facebook誕生の裏側を描くD・フィンチャー監督作、予告編解禁 : 映画ニュース – 映画.com

これからの思考の教科書 酒井穣

ロジカル・シンキングとかクリティカル・シンキングはわかるけど、ラテラル・シンキングとかインテグレーティブ・シンキングって何?という感じだったので、拝読。面白かったよ。

最近、考えるということは「分析」と「統合」だと思うようになった。分析とは対象を細かく分類して、新しい事実を発見していくこと。統合とは、複数の事象を整合性を保ちながら新しい戦略なり思考に発展させていく行為だと思っている。

そして、ロジカル・シンキングは分析に適しているが、統合には適していない。事実を掘り下げて、正しく事象を捉えるのには適しているが、「飛び道具」的なイノベーションはロジックだけでは生まれない気がしてならない。

そういう意味で、ラテラル・シンキングとかインテグレーティブ・シンキングが登場する、というのが著者の主張だろう。インテグレーティブ・シンキングはまだ未知な要素が大きく、体系だって整理されていない分野ではあるものの、イメージを掴ませてくれる。知的生産を生業とする人は、一度読んでおくべきだと思う。まさに「これからの」教科書だろう。

あと個人的には、最後の曹操のあとがきがよかったなあ。

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける 石黒圭

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このブログで書評を書いているけれど、書評というのは難しいもんだなと思うポイントが2つある。ひとつは本を読み解き、要点を抽出すること。もうひとつは、読み解いた内容を文章に書き表すことだ。この本は、前者を助けるための本だ。漫然と本を読んでいる自分に、新しい「読み方」を提案してくれる。

書いたものに現れる個性は「文体」と呼ばれ、よく知られていますが、読みときにも「読体」というそれぞれの人の個性があります。(中略)本書は、自分なりの読み方、「読体」を対象化し改善する目的を持っています。

この本では様々な読み方に関する技術が書かれていて「●●ストラテジー」みたいな大相な名前がつけられているけれど、内容は全く複雑ではない。ただ、日頃自分では意識していない事象を体系だって整理されると、新しい気づきが多く、ありがたい。

速読で自分の中で前提となる「スキーマ」を利用して文章を予測し、要点を素早く特定していくことと、精読で書かれていることを疑ったり想像を広げたり掘り下げて考えてみることは、正反対である。その相反することが、読む上では重要なのだ。速読で知識を増やせば良いだけではない。本に書かれている内容を、本当に自分の血肉にするためには精読が欠かせない。

ビジネスパーソンとしては、限られた時間で効果的に知識を吸収し続ける必要がある。つまりは、速読と精読のバランスが重要になる。この本のテクニックを意識すれば、読み方の幅を広げられるだろう。

福田和也の超実践的「文章教室」

ブログを書いてみてわかったのは、上手な文章は簡単には書けないということ。愕然として、たまに書くのが嫌になる。名文を書くために必要なエッセンスというのを、具体的な文豪たちの文章から具体的に教示してくれるなんて、贅沢な一冊。

ネットでは文字が溢れていて、僕も日々消化している。その中で、読みやすい文章、読まされてしまう文章というものが確実に存在する。玉石混交の中で人の目に触れてもらうのは、そういう文章を書ける人だろう。

周囲に対する「違和感」を大切にすること。目の前の事象を丁寧に描写すること。

ちなみに、いろんな題材が取り上げられるので、つい読みたくなる本がたくさん出てきて困った。

今週の週刊ダイヤモンド「電子書籍入門」が面白い

 

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電子書籍周りが目まぐるしく変わっている気がするが、最近の電子書籍に関連する事項が多角的に整理されている。

-電子書籍プラットフォームの動向

-電子書籍端末の比較

-書店・取次・出版社の現状と今後

-「自炊」の方法や代行業者の行方

ちなみに、週刊ダイヤモンドは最新号1冊のみでもWebから購入可能。送料無料。そして、今なら「電子書籍入門」の電子版がついてくる。

週刊ダイヤモンド|経済・金融・企業情報をタイムリーに伝えるビジネス誌。

過去に電子書籍関連でいくつか記事を書いた。そんなに外れていなかったかな。

Google Readerをストレスゼロで優れたインプットツールに変える5つのステップ | Synapse Diary

ピクト図解で電子書籍のビジネスモデルを考えたら結構面白かったので公開してみる | Synapse Diary

とりあえず今願うことはただ一つ。日本語の電子書籍がたくさん増えて欲しい。そしたら、Kindle3を買っていろいろ読みまくるのにな。

あと、自炊にも挑戦してみたい。

 

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リアリティある事業分析 – 【書評】行政の経営分析

行政の経営分析―大阪市の挑戦
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5 行政改革に取り組む自治体実務者におすすめ

大きなバッシングを受けた大阪市役所。その後の立て直しのために実施した経営分析結果が纏められた一冊。分析の数値や結果がとても生々しくて良い感じ。

下水道、消防、公営住宅などの事業をこんなに細かく具体的に分析しているのは、とても興味深い。本の目次をみればわかるが、どの事業も自治体にとって重要であり、公益性も求められるものばかり。そういうものをどう解決していくか、正面からアプローチしている。

大阪市の起債は、改革後S&P社でAAマイナス、ムーディーズでAa2という格付になったそうだ。起債の価値が上がれば、市民サービス向上にも返ってくる。

一方で、岐阜県は起債制限団体になったし、京都市も数年度には財政健全化団体になるという話がある。

中日新聞:起債許可団体転落 公共事業のツケ ずしり:岐阜(CHUNICHI Web)

京都市、健全化団体転落も 13年度、有識者会議 – 47NEWS(よんななニュース)

財政状況も含めて行政に対するチェック機能を働かせる意味で、情報公開は重要だ。

情報公開への取組は、確実に進んでいる。予算編成過程を公開する自治体は増えたし、大阪府は本当に全査定の内容を公開している。ちなみに、自治体の情報公開度ランキングで予算編成の「透明度」が都道府県中最下位になったことを受けて、岐阜県は改善を図っている。

県:今年度予算などHPで公開 /岐阜 – 毎日jp(毎日新聞)

とりあえず、自分が住んでる自治体の財政状況は把握しておくよ。

あと、もっと広い意味での自治体改革を知りたければ、こっちも面白い。

自治体改革の突破口―生き残るための処方箋
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5 他人事ではありません。本書は厳しい状況にある全国の自治体が生き残るための処方箋を事例を交えて提示しいます

「良いプレゼン」の要素集 – 【書評】スティーブ・ジョブズ脅威のプレゼン

少しタイミングとして出遅れた感があるが、今更ながら読んでみた。やはり良い。
スタンフォード大学のスピーチにしても、iPhone発表時の基調講演にしても、見ていて気持ちが良いものだ。その秘密がこの本に書いてある。

日頃、少なからず資料をつくり相手に説明する立場にあるだけに、反省すべき点が多い。

相手が抱いている問題を提起できているだろうか?
それに対する解決策を提示できているだろうか?
重要なポイントが明確になっているんだろうか?
余分な情報で混乱や退屈を招いていないだろうか?

そして、相手の期待に応え、超えるために十分な練習をしただろうか。

現実は難しい。それでもそれをできる人はいる。少しずつでも見直したいなあ。資料作って説明する機会が多い人は、一度は読んどけって感じ。

本の中に出てた、Slideshareのコンテスト入賞作品をみれば、良いプレゼンというのはどういうものかイメージできる。上達するには、良いプレゼンを見る機会を増やすこと。
World’s Best Presentation Contest 2009 sponsored by Adobe Acrobat 9 on SlideShare