クラウドソーシングはあなたの企業を大きく変える可能性を秘めている

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少し前に、国内クラウドソーシングサイトを展開する「クラウドワークス」がマザーズに上場しました。

クラウドワークスが12月にマザーズ上場へ–創業から3年 – CNET Japan

創業から3年で上場ということで、市場の成長性や企業の勢いを感じます。ユーザー数は44万人、企業数は7万社にのぼるそうです。

さて、クラウドソーシングというものをもう少しリアルに考えるために、この本を読みました。企業や個人事業主など、様々なビジネスにクラウドソーシングがどう影響してくるのかを知りたかったので。

勝手なイメージとして、クラウドソーシングに対して以下のような点を主に思っていました。

  • クリエイターやプログラマーなどの個人事業主は、クラウドソーシングで仕事を得ることができるようになる
  • 物理的な拠点の制約がないので、地方でも仕事を得ることができるようになる

ただ、これって主に「仕事を受注する」側の話なんですよね。それだけじゃなく、「仕事を発注する」側の話もわかってきました。

 

柔軟性のある組織を構築するための重要な手段としてクラウドソーシングを使う

ビジネスのスピードはどんどん早くなっていて、自分たちの中核部分以外はアウトソーシングする方が、作業や商品開発、市場投入へのスピードを高められるようになっています。また、変化への対応として組織を変える、ビジネスモデルを変える、という対応も求めらます。

そのアウトソーシングのひとつとして、クラウドソーシングが登場してきています。

クラウドソーシングを活用すれば、今までは固定費となっていた人件費のかなりの部分を流動費にすることが可能となる。しかも、必要な時に必要な人数を調達できることから、コスト効率だけではなく、組織の柔軟性を高める効果がある。たとえば、AOLはITエンジニアの大幅な不足のために100件以上の仕事依頼に応えられないという問題に直面した時、クラウドソーシング市場にその問題解決を求め成功している2。

そういう中で、従来は内製化していた作業や外注化していた作業が、クラウドソーシングを利用することで大きくコスト削減、品質の向上、スピード向上を実現できるようになってきています。

これまで述べたようにクラウドソーシングを活用することで組織の柔軟性が大幅に向上し、コストを60〜90%も削減し、商品開発のスピードを4〜5倍に上げることが可能となっている。

特に「組織の柔軟性」は、ひとつ重要な着目点だと思います。クラウドソーシングによって、新しい取組にクラウドソーシングを利用したり、従来の作業をクラウドソーシングで大きくコスト削減できたり、などが実現可能になっているのです。

 

中小企業や個人事業主は規模をレバレッジするためにクラウドソーシングを使う

もうひとつは、中小企業や個人事業主は、規模をレバレッジするための手段としてクラウドソーシングを利用することができるようになります。

これまでは、近隣の企業と協業したり外注したり、という関係もありましたが、これからはそれにクラウドソーシングへの外注も選択肢に加わります。これらをうまく使いこなせれば、企業としての仕事にレバレッジを効かせて、新しい付加価値を作り上げることが可能になるでしょう。

 

というわけで、クラウドソーシングは大企業にとっては柔軟性を高めるための有効手段であり、中小企業な個人事業主にとってはレバレッジさせるための有効手段になります。

なんでもかんでもクラウドソーシングでできるわけではなく、仕事の内容によって向き/不向きはあります。それらを見極め、適切にクラウドソーシングを利用していくスキルも、今後は経営にひとつ求められるスキルになるでしょう。

 

クラウドソーシングをしっかり理解したい人には、この本おすすめです。

「高学歴大工集団」をつくる平成建設のビジネスモデル

建設業界は未だに3Kというイメージがあり、若い人材が業界に入ってこないと言われています。しかし、テレ東でやってる「ガイアの夜明け」に出ていた「平成建設」は、東大などの高学歴な人たちがこぞって「大工になりたい!」と就職してくる会社だそうです。

そのテレビを見ていて、俄然興味がわいたので、創業者であり社長である著書の「高学歴大工集団」を読みました。

 

平成建設の特徴

いろいろ面白い特徴があるのですが、簡単にいえば、全てが建設業界のセオリーの逆をいく「カウンター・カルチャー」的な存在です。

  • 大工は外注せずに内製化
  • 大工は専門工事で分けるのではなく多能工化
  • 大卒以上の高学歴新卒者を積極的に採用

これらを実現するための、様々な考え方や施策が本の中には書かれていました。

 

内製化のメリット

大工を内製化する、ということは、下請け業者に出さず、全て自社で行ってしまいます。それは、顧客との距離が近くなることになるので、利益幅が大きくなるという財務上のメリットもありますし、内部のスムーズな連携やOJT等を含めた教育によって、高い品質と作業効率の両方を実現することができるようになります。

良いことずくめのように思えますが、今の建設業界の構造を考えると、不思議に思えてきます。

 

内製化が良いのか、アウトソーシングが良いのか

内製化が良いのか、アウトソーシングが良いのかというのは結構いろんなポイントで議論になったりします。経済学では、これを取引コストで捉えます。コースの定理として有名ですね。

元請け企業からすれば、いつでも安く市場(外部)から調達できる状態であれば、内製化する理由がなくなります。しかし、市場から調達するより内部で育成なり製造した方が安くなるのであれば、内製化した方が得だということになるわけです。

つまり、「外部との取引コスト>内製化のコスト」であれば、アウトソーシングする方が得ということになります。逆であれば、内製化した方が良いということになるわけです。

これまでの建設業界は、元請け企業から多重な下請け構造を作り、アウトソーシングし合うことで仕事をこなしてきました。平成建設という存在は、それとは違う方向に進んでいるというわけです。

建設業の下請け比率というのが統計にあります。それをグラフでみてみましょう。

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(参考:国土交通省「建設工事施工統計調査報告(平成23年度実績)」)

これをみると、右肩上がりで上昇してきた下請け比率が、完成工事高の下落とともに横ばいに変化しました。このような状況で成長していくためには、自分が元請けになるか、下請けの中でもパイを増やすしかありません。いずれにしても、競争力を高めないと厳しくなってきました。

 

内製化するにあたって困難なポイント

「内製化が有利なら、そうすればいいじゃない?」と思うかもしれませんが、そうは簡単にはいきません。いくつか理由を挙げます。

 

多様な業務領域をカバーする必要がある

例えば家一軒建てるにあたって、カバーしなければいけない領域は多岐に渡ります。建設業の許可業種は28に分かれていることからも、多くをカバーしなければならないことがわかります。

建設業許可の28業種とは?

またそれ以外に、デザイナーや現場監督なども必要になります。これらを考えると、専門性を高めながら、業務領域も拡大しなければいけません。人間が産業を発展させてきたのは、分業を実現することで、それぞれが作業効率を高めたからこそです。そういう前提を考えても、内製化が必要だからやろう、というのは勇気がいることです。

 

労働集約的であり繁忙/閑散を調整しづらい

建設というのは一時的なプロジェクトであり、人材が欲しいときにはとても必要になりますが、仕事がないときはやることがありません。

多能工化することによって、それをカバーしているわけです。生産性も上がりますしね。

製造業でいう、ライン生産とセル生産の関係と同じです。

一方で、セル生産方式を実現するためには、一人あたりの作業範囲が広くなるため、作業者が高いスキルレベルを有した多能工になる必要があります。作業者への教育時間がかかるため、作業者が頻繁に入れ替わるような流動性の高い環境には適しません。

セル生産方式の特徴とメリット・デメリットの相談詳細(回答) « よくある経営・法律相談 « 経営に役立つ情報 « 産創館あきないえーど

ここで書かれている通り、多能工化するためには有能な作業者が不可欠になるので、高学歴な学生を採用することに合理性があるわけです。

 

人を育てるということには時間がかかります。外部から調達しやすい状況があり、かつ仕事の繁忙/閑散に波がある状況で、育成して内製化するということは、とても時間がかかることです。こうやって見ると、平成建設はとても困難な道を選択し、そして高い経営手腕で成長されてきたんだと思います。

本書では、社長の営業力が高いことがうかがえる記載が随所にあります。こういう点も、内製化を支える重要なファクターとして働いてきたと推察します。

また、ローコスト住宅の普及に伴う質の低下に対する懸念や、若手人材不足のこれからを考えると、内製化によるサービス品質の向上は、時代の追い風かもしれません。

 

岐阜県の建設産業

随分前にはなってしまいますが、平成20年における岐阜県の建設業に関する分析資料がありました。

www.pref.gifu.lg.jp/kensei-unei/seisaku-plan/choki-koso/kenkyukai/shoraikoso-kenkyukai.data/200226-2.pdf

これを読むと、その当時から20代の就業者が少なく、新たな担い手をどうやって作っていくかが課題に挙げられています。これから少子化に伴う人出不足は深刻になってきます。今後どうなるんでしょう。

 

以上です。

こう書いてみると、平成建設のアプローチは合理的にみえる一方で、とても参入障壁が高いビジネスモデルといえます。この状況で経営を行うのはとても難易度が高いんじゃないでしょうか。

人材不足に悩まされる建設業にとって、注目される理由がよくわかります。

「ビジネスモデル全史」を読んで、企業の勝ちパターンを理解する

経営戦略全史」に続く、「ビジネスモデル全史」。テーマだけで、「ああ、買わなきゃな」と思わされた僕の負けです。

 

 

ビジネスモデルとは、経営戦略を具現化したもの

企業というのは、経済環境や競合の状況、消費者ニーズの変化などの「外部環境」と、経営理念や組織カルチャー、人材などの「内部環境」が合致して、始めて収益を上げられるようになります(少なくとも、経営学上はそう解釈します)。

つまり、要素の強弱はあるものの、経営者はこれらの要素をうまく組み合わせる必要があるわけです。

「ビジネスモデル」とは、これらの要素としての経営戦略を具現化したものであり、ビジネスモデルを考えることで、構造的かつ論理的に企業活動を捉えることができるようになります。

ビジネススクールでは、「なんでこの会社は儲かるのか」「なんでこの会社は負けたのか」ということを、様々な角度から分析していきました。その当時の経済や競合、消費者ニーズ、自社の置かれている人材、カルチャーなど複合的な視点を組み合わせて、経営戦略の要素を組み合わせていくのです。これこそ、ビジネスモデルを具体化していくことに他なりません。

 

驚かされるのは、この本に記載されている企業やビジネスモデルが多岐に渡るとともに、ビジネスモデルとしての重要なポイントが端的に書かれていることです。

この本を読むと、最近の例えばAppleが新しいiPhoneを短い周期で投入する理由も、LINEのプラットフォーム戦略が任天堂という古い歴史あるモデルと原理は同じである、ということがわかるでしょう。

 

ビジネスモデルを構造的に捉えるフレームワーク

そういえば、ビジネスモデルを構造的に捉えるフレームワークがありました。ビジネスモデル・キャンバスです。

 

 

YouTubeに訳者の解説もありますので、貼っておきますね。

 

 

このフレームワークを使えば、ビジネスモデルを構造的に捉えることができるようになります。

 

それにしても、「ビジネスモデル全史」を読むと、意外にビジネスモデルの歴史は浅いというか、多様なビジネスモデルがたくさん登場してきたのは最近であることがわかります。これは少し驚きでした。

そして、中国のIT事情なども体系的に整理されており、いろんな面で知的好奇心を満たしてくれる一冊でした。

iPhoneやiPadに勢いがなくなるのは当然の流れ

iPhoneよりAndroidが圧倒的にシェアが大きいとか、iPadがASUSにシェアを逆転されるなど、Apple製品が比較される記事が目につきました。

こちらはiPhoneに関する記事。スマートフォンOSにおけるAndroidのシェアは世界的にみて85%に拡大してます。

調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、4-6月期(第2四半期)の世界のスマートフォン(スマホ)出荷台数に占めるアンドロイド搭載端末の割合は85%と、前年同期の約80%から拡大した。スマホ全般の出荷台数は前年同期比27%増の2億9500万台。

アンドロイド、市場シェアが過去最大に – WSJ

こちらはタブレットに関する記事。国内の量販店データのみの比較になってますが、ASUSがiPadを逆転したそうです。

BCNが発表した2014年上期(2014年1~6月)のタブレットのメーカー別シェアでは、ASUSが38.9%と首位に立ち、アップルをシェアで逆転した。2位アップルのシェアも36.3%で、この2社が突出している。

アップルがASUSに負けた! タブレット市場でシェア逆転劇発生 日経トレンディネット

一見、「Apple、力なくなってきたな」って思うかもしれませんが、そのあたりをどう解釈したら良いかを考えてみます。

 

統合型 vs 分散型

アップルは、iPhoneに限らずハードウェア・ソフトウェア・サービスを統合するビジネスモデルになっています。一方で、Androidを始めとする陣営は、ソフトウェアとハードウェアが分かれていたりします。これのどちらが良いのか、ってのがひとつのポイントになります。

クリステンセンの「イノベーションへの解」では、この統合と分散のビジネスモデルについて詳細に書かれています。一部を引用すると、

製品が十分でない状況では統合が、そして製品が十分以上に良い状況では外部委託、つまり専門化や特化が有利であることを、われわれは発見した。

と書かれています。つまり、常にどちらが良いかという話ではなく、外部環境によって決まるということです。初期市場では、機能が十分になっていないので、全体を統合して機能を最大限発揮できる「統合型」が有利になりますが、市場が成熟してくると機能の充足度が高くなってくるので、機能ごとに特化して組み合わせる方が、価格が安くなります。

 

 

スマートフォンの市場環境は成熟してきている

スマートフォンは、携帯電話の台数を超えて販売されています。が、最近はその成長が鈍化気味のようです。

2014年世界スマホ売上高は伸び鈍化へ、低価格モデル投入で=調査 | Reuters

実際、これまで優勢だったサムスンとアップルがシェア1位、2位で他を大きく引き離していますが、伸び率では他の企業が追い上げてきています。

調査リポート:世界スマートフォン出荷台数、SamsungとAppleのシェア微減──IDC調べ – ITmedia Mobile

市場が成熟しつつあり、分散型モデルに優位な状況が生まれています。中国で新興企業が台頭してきていますし。

Xiaomiがスマートフォン出荷台数でHTCを退け、世界トップ10に食い込む – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

そして、世界的にAndroidが普及しているのは価格が安いからで、比較的裕福な中間層がiPhoneを選択している現状があります。日本がこれだけiPhoneが普及しているのは、世界的には「異常」です。

日本人がAndroidよりiPhoneを選ぶ本当の理由 – NAVER まとめ

 

Appleはイノベーションによる開拓を続けないといけない

タブレットでも、スマートフォンと同じ状況が起きつつあるのではないかと推測します。PCの出荷台数が伸びなくなり、タブレットがずっと伸びてきていますが、普及が進んできていて、低価格による競争が加速してきていると思うのです。

ニュース – 世界タブレット市場、出荷台数が初めて前年割れ、小型機の需要低下で:ITpro

タブレット市場でiPadが強かったのは、振興市場で完成度が高いタブレットを投入できたからです。しかし、市場が成熟してくると、低価格化の波を避けることはできません。

そもそもAppleという企業は、MacintoshでもiPodでもiPhone、iPadでも、新しい市場を切り開き、先行者利益を享受してきました。しかし、例えばiPodは既に国内ではウォークマンに逆転されており、優位性を示せなくなっています。

ウォークマンがついに国内シェア1位を奪還!iPodに逆転後、圧倒してるぞwwww : IT速報

まあ、Appleはそんなことは百も承知で、iWatchなどのウェアラブルやヘルスケアの市場を開拓するつもりなのでしょう。Appleとしては、

  • 自らのデザイン性と総合的な解決力で新市場を開拓する
  • 他のアップル製品やサービスとシームレスにつなぐことで囲い込む

というのが根幹にある戦略だと思いますので、iPhoneがAndroidに負けたり、iPadでシェアが落ちてくるのは当然の流れかな、と。Appleが分散型のビジネスモデルを採用することは考えづらいので、新しいイノベーションによって開拓を狙っていくでしょう。

 

個人的にはApple製品に囲まれて生活しているので、ぜひ新しい価値を示して欲しいと期待しています。

中国食肉偽装事件の企業へのインパクトを、Twitterで分析してみる

休日なので、ライトな感じでいこうと思います。先週起こった、中国の食肉偽装事件で、マクドナルドやファミリーマートが影響を受けました。商品が販売中止になったり対応が行われていますが、Twitter上でどういう影響を受けているのか、軽く分析してみました。

Yahooがこういう面白いサービスを提供しているので、これで分析してみます。

リアルタイム検索、「つぶやき感情分析(β版)」を公開 Twitter上でどんな印象を持たれているのか“ポジティブ”“ネガティブ”判定! – Yahoo! JAPAN広報からのお知らせ – Yahoo!ブログ

 

マクドナルドとその競合

最初がマクドナルドと、その競合あたりを見ようと思います。

Googleトレンドで、マクドナルド、モスバーガー、ロッテリア、ケンタッキーの過去1ヶ月間の検索ボリュームを比較した結果です。

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わかりづらいですが、青がマクドナルドです。7/22にマクドナルドの検索ボリュームが一気に増えているのがわかりますね。

で、Twitter感情分析を使うと、こうなります。

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横並びで見てみると、マクドナルドがあまり感情面で大きな影響を受けてないように見えます。ロッテリアの方が残念な結果。。。中国産のチキンは全て中止したり対応が比較的早かったのが良かったのかもしれないですね。

それにしても、モスバーガーのポジティブ感は半端ないですね。トータル件数は少ないものの、ここまでポジティブなイメージを作り出せているのは、すごいなって思います。

 

ファミリーマートとその競合

次がファミリーマートです。

同じようにGoogleトレンドで、ファミリーマート、セブンイレブン、ローソンの過去1ヶ月間の検索ボリュームを比較した結果です。

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元々ファミリーマートは他の2社に比べると検索ボリュームが小さいのですが、今回の騒動で検索ボリュームが上がっているのがわかります。

で、Twitter感情分析でみてみると、こうなります。

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横並びで見てみると、ファミリーマートはあまり評価が良くないですね。注目度という意味ではローソンが高いのですが、感情面でのポジティブさはセブンイレブンが一番高い感じです。

 

こうやってみると、今回の騒動で大きなインパクトを受けたということはあまりないかもしれませんが、そもそもの企業イメージがこういうTwitterの分析などで可視化してみると面白いもんだなって思いました。恐らく各企業はこういう分析を既に行っているんだと思いますが、やはり長く愛されるという意味では、売上だけではなくイメージや感情に注目する、というのは経営上重要でしょう。

JINSでメガネを買って感動した

JINSで眼鏡を買ったのだけれど、基本的に接客スキルが高いと思うんですよね。非常に気持ちが良い。ここまで教育して徹底するのって難しいだろうなーと思ったりします。

一度買った眼鏡の度がどうしてもなじめなくて、レンズを変更してもらいにいったんですが、レンズを交換してもいまいち合ってる感じがしなかったのです。それでもいろいろ相談に乗ってもらって、レンズの角度などを調整してできるだけ良い見え方になるように工夫してもらいました。

その結果もそうなんですけど、数千円の眼鏡でここまで接客サービスを高められるってのは、すごいなって本当に感心した次第です。僕の独断と偏見では、接客レベルが高いサービス業のチェーンというのは、長生きするんじゃないかと思っています。基本的な考え方やスキルが組織に浸透しているからです。大規模なレベルでそういうことを実現できている組織は強い。

 

業績をみると、すごい成長していることが改めてわかりますね。

JINS

ZoffやJINS、眼鏡市場などは、カジュアルに眼鏡を作れるようにしたことで、眼鏡の需要全体を創造しました。さらに、PC用やスポーツ用のメガネが登場したり、様々な用途に合わせたメガネにすることで、一人で何本もメガネを買うようになっているのです。

 

さらに、JINSは「JINS MEME」と言うアプリと連動できるウェアラブルデバイスとしてのメガネを発表しています(発売はもう少し先ですが)。買っちゃいそうな気がしますねー。

JINS MEME(ミーム) | JINS – 眼鏡(メガネ・めがね)
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旧態的な業界と見られていたところでも、こんなイノベーションが起こるんですね。また、ITとうまく結びつけてユーザーの満足度を向上させれば、新しい需要を創造することができるんじゃないかと思います。今後のJINSが楽しみです。

 

習慣的に使うほど「ハマる」サービスの作り方

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こういう、新しいフレームワークは結構好きです。

 

スマートフォンなどのモバイルが隆盛な中で、「フックモデル」というモデルを提唱し、人々にいかに習慣的に使われるサービスを作り上げるかを分析したものです。

フックモデルとは、ユーザーの抱える問題を、習慣化された行動で解決するという体験をモデル化したものである。

なんとなくタイトルがチャラいですが、心理学的アプローチが組み込まれており、内容自体はストレートなものになっています。ただ、結構ライトなモデルなので本自体はさっくり読めます。

 

いかにして人の習慣は出来上がるのか

自分のことを振り返ってみてもそうなのですが、iPhoneは日々常習的に使っていますし、一日で数えきれないぐらい見ていると思います。また、iPhoneの中には複数のアプリが入っており、いくつかは日常的に使っており、すっかり自分の生活パターンの中に入り込んでいるものがあります。

つまり、そうやって人が日常的に使ってしまうサービスというのを、どうやって作り上げていくのかを解明したのがこのフックモデルなのです。

フックモデル自体は、トリガー・アクション・リワード・インベストメントの4段階に分けて整理されており、人が情報に気づき、行動し、何らかの報酬を受け取るなどの一連の流れを示しています。注目すべきは「インベストメント」のところで、人は自分が時間や労力を投資したものについては、愛着がわき、正当化する傾向にあることを踏まえて設けられているものです。

例えば、FacebookやTwitterなどのソーシャルサービスも、自分が投稿したり閲覧するのに時間を投資しています。そうなると、自分がサービス全体を正当化し好感を常態化させていくのです。IKEAモデルと紹介されていたのも面白い表現だなって思いました(自分で組み立てた方が、買った家具を特別に感じるという意味)。

 

また、人が行動に結びつける上で必要な要素を、「B=MAT」という数式で表現されていたのも、非常に記憶に残る面白い整理だなって思いました。Behavior(行動)は、Motivation(動機)とAbiliry(能力)とTrigger(トリガー)の全てが掛け合わさって実現する、ということを示しています。なので、動機を高める、行動しやすいようにする(能力を高める)、トリガーを適切に設ける、といったサービス設計が重要になってくることがわかります。

 

「リーンスタートアップ」との関係

本書は、フックモデルを説明するだけでなく、「どのようにしたらフックモデルを作り上げられるか」という構築までのアプローチも示しています。そこで踏襲されているのがリーンスタートアップです。

リーンスタートアップについては、こちらを参考にどうぞ。
不確実性の高い現代で、リーンスタートアップをなぜ学ぶべきか | Synapse Diary

簡単にいえば、リーンスタートアップのように「構築ー計測ー学習」のループを回し、サービスの精度を向上させていきます。それが「習慣テスト」と呼んでいるものです。

不確実性が高い現代で、リーンスタートアップは非常に有効なアプローチだと思っています。それはこのフックモデルでも変わりません。

 

スマートフォンは、「歩きスマホ」や「運転中のスマートフォン利用」など、生活に支障が出るほど常習性が高いデバイスになっています。それだけ、人を惹き付ける要素が大きいということです。この本で登場してくる事例は、何も全てが目新しいものばかりではありません。聖書アプリは聖書を単純に電子化したところから始まりましたし、Instagramも言うなれば写真を撮って共有するというシンプルなものです。ただ、そこに人々の課題や習慣と結びつくと、新しい常習性を生み出すことが可能になるのです。そういう可能性を持っているのが、スマートフォンとそれにまつわるサービスだと思います。

新しいサービスを設計する、という人であれば、この本を読んでフックモデルを理解しておくのは必然でしょう。

スターバックスが大学生の学費を負担する理由

アメリカのスターバックスが、大学生の学費を負担する制度を発表し話題になってます。なんでこういう制度を設けるに至ったのかを考察したいと思います。

スターバックスが発表した制度としては、学費の2年分を負担するのが基本のようです。

スタバ、従業員の大学授業料肩代わり 就業義務なし「向学心支援は最高の投資だ」 秋から  – MSN産経ニュース
超太っ腹! 米スターバックスが「従業員のために大学の学費を肩代わりするプロジェクト」を発表 | ロケットニュース24

 

アメリカの学費は高騰している

上記の記事にも書いてありましたが、今回の制度にはアメリカの大学の学費が高騰しているのが背景にあります。で、なんで高騰しているのかといえば、官僚主義によって管理者の給与をはじめ、運用コストが上昇していることが原因です。

アメリカ暮らしのファイナンシャル・プラニング Smart&Responsible » アメリカ大学 学費高騰のミステリーの裏には・・・

そして、起業ブームと合わさって大学の価値そのものに議論が呈されていたり、カナダへ流出するような状況も生まれています。

学費高騰が続くアメリカ名門大学に意外な「敵」が! コンサルティング会社が設立をもくろむ新たなビジネススクール  | 田村耕太郎「知のグローバル競争 最前線から」 | 現代ビジネス [講談社]

学費の高騰も影響して、大学生そのものがアメリカからいなくなるんじゃないかという感じです。

 

スターバックスのオペレーションは学生アルバイトが前提

これも前述の記事に書いてありましたが、スターバックスの全従業員(アルバイト含む)13.5万人のうち7割が大学生か就学希望者とのことです。つまり、大学生のアルバイトがオペレーションの前提になっているので、安定的に労働力として確保する必要があります。

特にスターバックスの場合は、接客サービスにも力を入れていますし、教育にも熱心です。なので、せっかく教育した人にすぐ辞められるのは得策じゃありません。

 

スターバックスの経営へのインパクトは?

前述の記事によると、一人の学生に対してスターバックスが負担するのは3万ドル程度のようです。

大学で一単位取得にかかる費用は約500ドル(約5万)と高額で、スタバ従業員が2年分の学費を負担してもらえれば、約3万ドル(約300万円)を節約できるのである。

超太っ腹! 米スターバックスが「従業員のために大学の学費を肩代わりするプロジェクト」を発表 | ロケットニュース24

仮に5000人対象になったとすると、1.5億ドルぐらいになります。

一方で、2013年の決算報告書を見ると、売上は149億ドル、利益は24億ドルです。

Starbucks Fiscal 2013 Annual Report – FINAL.PDF(PDF)

なので、5000人対象の場合は6%ぐらいの利益が吹っ飛ぶぐらいの規模感ですね。それでも学生を安定的に確保したり、企業全体のイメージアップに寄与するのであれば、宣伝効果としても良いのかもしれないなあと。アピール上手だなって思いました。

 

ちなみに、日本でも大学の学費は上昇していますね。急上昇という感じではないので、すぐにスターバックスが同じ制度を日本で展開するってことにはならないと思いますが、大学の価値ってなんだろうなーっていろんな人が思うときは来るのかもしれません。

国立大学授業料|年次統計

 

劇的に変化し衰退していく業界で奮闘する「漫画貧乏」

「ブラックジャックによろしく」の作者である佐藤秀峰氏の「漫画貧乏」を読みました。正直、電子版が無料になっていたことが、読もうと思ったきっかけであります。

 

「ブラックジャックによろしく」の電子版が無料で公開されたとき、「新しい時代が来たなー」と感じました。大ヒット漫画が無料で誰でも入手できるのですから。この本は、それに至るまでの、著者の格闘の記録です。

 

衰退する外部環境と、閉塞的な内部環境

漫画を含む出版業界というのは、全体として大きな変化が生じています。そもそもが出版不況と言われており、本というコンテンツが消費される割合が減っています。エンターテイメント全体がインターネットの台頭によって消費スタイルが変わってきているのです。

そして、インターネット業界からの参入によってAmazonという新しいプラットフォームが覇権を握り、読者が本を入手する方法も大きく様変わりしました。電子書籍やオンデマンドプリントが実用レベルに達するなど、どんどん読書のスタイルも多様化しています。

 

そういう状況の中で、漫画業界というのは外部環境の変化についていけてないのではないか、と本を読んで感じました。これまでの漫画業界は、週刊誌をはじめとする漫画雑誌への掲載を広告と捉え、単行本によって収益を生み出すモデルです。そのためには、雑誌が有益な広告媒体でなければいけません。しかし、雑誌は廃刊が続いており、広告媒体としての役割を低下させているのは否めません。

実際に統計でみると、コミック単行本の売上はほぼ横ばいですが、コミック誌は右肩下がりで低下しています。

日本の出版統計|全国出版協会・出版科学研究所

それでも漫画の製作サイドとしては、安くて不透明な原稿料、漫画家の徒弟制度など、旧来のビジネスモデルを大きく超えるようにはなっていないのです。外部環境が大きく変わる中で、内部環境が変われない状況です。このままでは、業界全体が衰退していきます。

その中を、著者は危機感を募らせ、少しずつ状況を変えていこうと試みます。

 

混沌とした状況から何が生まれるか

経営というものは、良いときは従業員やステークホルダーもあまり文句を言いません。しかし、ひとたび状況が暗転すると、お金を含めたいろんな人の欲望が「ダークサイド」として噴出します。賃金を上げろとか、容赦ないコストカットとか、そういうネタが続々と出てくるわけです。やはり、自分の身を守る必要が出てきますから。そうなる前、なった後に解決を図っていくのが経営者であるわけです。

しかし、外部環境の変化についていくのは結構大変です。特に出版のように長く続く業態の場合は、変化への抵抗力が育成されていないかもしれません。

 

それでも、今後はもっと新しい取り組みが登場すると思います。「ブラックジャックによろしく」の電子版無料開放は、広告効果としては大きなものをもたらし、有料書籍の購買にもつながりました。1.5億円以上の効果があったようです。

「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告

他にも業態として、電子媒体だけを専門とする出版社みたいなのがあっても良い気がしますし、出版社の編集機能を別の形で実現する方法は生まれてくると思っています。今後、いろいろ変わっていくんじゃないかな、と。

ひとまず、本書の著者のように、自ら行動することで外部環境の変化に適応し、新しい価値を創出できるきっかけをつかむことができるのではないかと思う次第です。

過去10年での注目される経営思想家の移り変わり

「Thinkers50」っていう、経営思想家ベスト50のランキングがあります。存命中の思想家を対象に、オンライン投票とアドバイザーの意見で決められるようです。ランキングが発表されるのは2年に1回です。

The Thinkers50 Ranking 2013 – Thinkers 50 | Thinkers 50
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で、いろいろ知っている名前があり、眺めているだけで面白いのですが、1位の変遷をみると時代の変化がわかるなって思いました。

2001年:ピーター・ドラッガー
2003年:ピーター・ドラッガー
2005年:マイケル・ポーター
2007年:CK.プラハラード
2009年:CK.プラハラード
2011年:クレイトン・クリステンセン
2013年:クレイトン・クリステンセン

 

ピーター・ドラッガーは、もう説明する必要がないでしょう。時代背景的には、ホワイトワーカーの生産性などが注目されていた気がします。

 

次はマイケル・ポーター。マーケティングの神様ですね。日本では、ライブドアの日本放送買収があり、IT企業の躍進が顕著になった時期でした。外部環境の変化が大きくなると、やはりポジショニング戦略などが注目をされるんでしょうかね。

 

次がCK.プラハラード。日本では名前自体はあまり著名ではないのかもしれませんが、「ネクスト・マーケット」の著者です。新興国の経済成長が著しく、BOPという新興国に対する新しい捉え方が提言されました。

 

また、ゲイリー・ハメルと「コア・コンピタンス経営」も書いていますね。

 

で、最後がクレイトン・クリステンセンです。「イノベーションのジレンマ」があまりにも有名ですね。イノベーションのジレンマが初めて提唱されたのは1997年なのですが、それでも今注目されている理由は、相対的にイノベーションの重要性が向上しているからにほかなりません。

 

年収は「住むところ」で決まる」を読んでいるところですが、新興国を中心に労働生産性の向上が見られる中で、新しい雇用を生み出すイノベーションの重要性が相対的に高まっていることがわかります。(この本はいろいろ面白いので、また別途書評を書くと思います。)

その中で、大企業・ベンチャーに関わらず、どうやったらイノベーションを生み出していけるのだろうか、というのは世界共通の関心事項なのだと思います。

 

ちなみに、2013年版の2位はブルーオーシャン戦略の著者2人です。ここらへんからも、今の時代を表している気がしますね。

 

 

Thinkes50にある経営思想家は、以下のサイトで日本語で丁寧に解説されています。興味がある方はどうぞ。

経営思想家トップ50【ランキング一覧】 | 経営思想家トップ50|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー