部下に自信を与える3つのこと

 

仕事では結果を求められるし、やったことがないことを「できます!」と言い切るのもやり過ぎだ。それで疲弊するのは現場だよねー。
自信をつける為に役立つ、ちょっとした3つの方法 – GoTheDistance

 

仕事をしていく上で自信というのは大切だと、最近になって思う。一緒に仕事をしたい、とか仕事を任せようか、と考える上では、自信があって堂々と主張する人の方が圧倒的に頼みやすい。頼む側になって考えれば、当たり前だけど。

もちろん結果を残すことは当然のことながら、自信をもっていろんなことを主張することが重要。ただ、これができる人がなぜかそんなにいない。主張と自信は表裏一体だと感じる。

自信を養うためのテクニックはGoTheDistanceに書かれているので、上司の目線から必要なことを書いてみる。

1.与える仕事の自由度を考える

自分が仕事を割り振るときは、まずはこれかな。割り振る人にどの程度の自由度を与えるか。自由度は「判断」と言い換えても良い。判断できる要素をいくつ与えるか。

人のモチベーションを高めるためには職務拡大と職務充実が王道なのだが、拡大させすぎたり充実させすぎると、自信喪失⇒戦意喪失⇒職場大混乱のパターンに陥る。

部下に対する自由度を適切に見極めて割り振れるのが、良い上司。

2.意思決定に参加させる

自分が新人の頃ミーティングに参加して、意見を述べて採用されたとき、非常に些細な内容であっても嬉しかった記憶がある。今思えば単純なもんだ。でも、これは重要な要素を含んでいる。

自分が決定に加わった事項には、仕事をやり抜こうという責任感が芽生えやすい。支障がない限り、いろんな検討事項に部下を巻き込んで、意思決定に参加させるべきだ。

3.成功・失敗に対してタイムリーにコメントする

成功したときは自信を養うチャンス。こういう場合はどんな形でも良いから褒めるべきだ。失敗したときは自信が喪失されるピンチだ。こういう場合はどんな形でも良いから慰めと復活へのアドバイスを行うべきだ。

これは内容もさることながら、タイミングが一番重要だと思う。一週間前の失敗を蒸し返されたときは、「もっと早く言えよ」という気分になる。成功や失敗に遭遇したら、可能な限り早く行動を起こすこと。

まあ、よろしければこちらも参考に。

モチベーションを低下させる上司の行動を適当に上げてみる | Synapse Diary

IT産業が労働集約型から知識集約型に転換するために必要なこと

これを読んで、考えさせられた。

Software is Beautiful:第3回 なぜ日本のソフトウェアが世界で通用しないのか|gihyo.jp … 技術評論社

 

確かに日本のIT産業は明らかな労働集約型になっている。そもそも業種・業界に係わらず、日本全体でゼネコン体質的な構造が多く見受けられるので、そういう労働集約ビジネスの形が受け入れられやすかったのかもしれない。

 

ここから脱却する方法なんていうとおこがましいが、転換するために必要な心構えや取組みについて書いてみたい。

 

 

まずは定義のおさらい

 

労働集約とか知識集約について、ここが端的に纏めていたので、ありがたく引用。

 

1.労働集約産業

これは多くの場合は機械化が難しい分野で、単純労働力の提供が収益の源泉となっている産業。例えば飲食業・人的なサービス業・運送業などが代表例となる。一人あたりの、資本投下額が小さく、売上げに占める労務費の割合が高い。

 

2.資本集約産業

資本投下を行い、労働力よりも機械や設備の力で生産したりサービス提供をするような産業。メーカーや、大型商業施設などが代表例。一人あたりの、資本投下額が大きく、売上げに占める労務費の割合は下がる。

 

3.知識集約産業

知的労働力や、研究開発によって会社としての知識や技術力を高めることが収益の源泉となっている産業。投資ファンド、コンサルティング(ファーム)、ファブレスメーカー、製薬会社が典型例。一人あたりの、資本投下額はさほど大きくはならないが、成功している例では一人あたりの収益力は高くなる。

 

 

まあ、これらは厳密な境界はないわけだけど、イメージは十分掴めるかと。で、IT産業が労働集約型だと言われるのは、システム規模や作業内容を人月で見積りし、その積み上げで行われているからだ。労働力がそのまま金額になるのだから、その金額を下げることが競争につながる。これは問題視されているし、経産省も人月ではなくパフォーマンスベースでの契約を行うよう促している。

経産省-人月単価脱却に報告書

 

本題に入る。

 

知識集約産業になるためにどうするか

結論からすれば、ナレッジマネジメントにもっと投資した方が良い。ナレッジマネジメントというのは、言葉や概念ではわかるが、実際に仕組みを作り、組織に浸透させ、有効に活用させることは難しい。

勉強会を開いてみたものの形骸化していつの間にか開かれなくなり、作った資料は誰にも見られないままファイルサーバの端っこで放置されている。これでは、いつまでたっても作業は効率化しないし、組織に知識は蓄積・昇華されない。

経験論からすれば、やった方が良いよね、とみんな思ってはみるものの、日々の業務で忙しく、知識を纏めたり、共有する手段を構築するまでに至らない。圧倒的に「知識」を醸成することに対する投資が低いのだ。

 

知識集約産業とは知識の商品化

知識集約産業とは、端的に言えば知識を「商品化」することだと思っている。つまり、ひとつの知識パッケージで、複数の相手からお金を取ることができるか、だ。

例えばテレビのメーカーは、テレビをデザインし大量生産し、多くの客から対価を得ている。これと同様に、知識をデザインし、パッケージングし、複数の客から対価を得ることが理想だ。

自分がある企業の業務システム構築に携わったとする。似たような企業に売れるだろうか。そのとき、ナレッジの蓄積によってどれぐらいコストメリットが出せるだろうか。

システムを構築するときは、相手企業の業界慣習、業務の進め方に始まり、システムの機器設計や採用したアプリケーション、開発方法、プロジェクト管理など、あまたの知識が凝集されている。それを再利用可能なレベルまで引き上げてこと、知識集約産業と言えるんじゃないだろうか。

 

目の前に業務があるのに、どうすればいいのか

本気で実現するためには、リーダーの先導が必要だ。ナレッジマネジメントは、日々の業務からすると緊急性が落ちる。下のマトリックスでいうところの、左上の象限に該当する。緊急性はスタッフでも判断しやすいが、重要性はトップの決断が必要な場合が多い。つまり、緊急性を要しない作業は、トップがやる・やらないという方向性を示す必要があるのだ。

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トップが実務レベルまで加味して、スタッフの日々の業務の中に、ナレッジマネジメントの構築・維持作業を組み込まなければいけない。SECIモデルで示されているようなサイクルを日々回していくための、作業の分担や役割の設定が必要になる。

3MやGoogleのように、20%ルールみたいな制度を作って、日々の業務と切り離した時間を半ば強制的に設けても良いのかもしれない。

 

それいしても、ナレッジマネジメントの資格とかないのかな。基本知識に始まり、業務設計とかツール活用とか、学ぶべきことは多いしそれなりに面白いのにな。データ分析とかいろいろ今後も注目される分野だろうし、勉強しよ。

 

この記事に興味を持たれた方には、こちらの記事を次に読まれるのがおすすめです。

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モチベーションを低下させる上司の行動を適当に上げてみる

最近いろいろ考える機会が多いので、モチベーションを低下させる上司の行動をあげてみる。思いつくまま書いたら6つになった。当てはまったら、反省しよう。

 

部下の話しをさえぎる

人の主張は、出尽くすまで聴くぐらいの姿勢が欲しい。これをしてしまう人は、部下の言動を信用しておらず、自分が正しいと思っているのではないだろうか。そして、「さえぎる」という行動をすることで、部下の仕事ぶりを否定している。

 

仕事を任せるときに、背景や理由などを省略する

部下が汲みとって理解しているのなら良いが、うまくコミュニケーションがとれていない上司にありがち。なぜこの仕事をあなたに任せるのか。なぜこういう方法で仕事を進める必要があるのか。なぜこの日までに仕上げる必要があるのか。

こういう情報が欠落してしまった状態になると、人は受身になって能動的に判断することができなくなる。だって与えられる情報が少ないから。

 

フィードバックのときに、否定から入る

受け取る人にもよるが、基本的に人は怒られるのは避けたいもの。改善を促すときには、ポジティブ要素と抱き合わせするのが常識。自己啓発本なんかには必ず書いてある。

でも、これができない人が多い。特に自分のロジックが正しいと思っているときは、容赦なく相手を責めたりする。ロジック=客観的というまやかしがあるせいだろうか。そして追求していって、部下がグーの音も出ない状態になって殻にこもる。

 

人の性格を決め付ける

組織にいると、「あいつはああいう性格だ」とか「あいつは仕事ができない」というレッテルが貼られる。で、事前にそういう情報を入手したりすると、多面的な見方ができなくなる人がいる。

人にはいろんな可能性があるし、場所や状況が変われば、化けてものすごい力を発揮する人もいる。レッテルと思い込みは本当に恐い。それで人の人生の一部を台無しにしてしまう可能性もあるのだから。

というわけで、目の前の部下の仕事ぶりや態度、言動、相性などを冷静に見つめること。決めつけたらそこでおしまい。

 

箸の上げ下ろしまで指示する

部下を信頼していない証拠。仕事はどこまで任せて、どこまでサポートするかの見極めが重要。少しストレッチするぐらいに任せて、過剰な責任やプレッシャーを与えない程度にサポートする。

 

マズローの5段階欲求やアルダルファのERG理論にある通り、人には承認欲求や成長欲求がある。存在を認め、尊重し、成長の場を与える。そういう前提を正しく理解していなかったり、「仕事ができないあいつが悪い」というスタンスを恥ずかしげもなく前面に出す人もいる。

うつ病・躁うつ病になる人は、年間で100万人ぐらい。潜在的な人はもっといるんじゃないだろうか。部下をうつ病にしないためにも、正しい言動を心がけたいよね。

図録▽うつ病・躁うつ病の総患者数

 

人を活かす方法を理解する-【書評】モチベーション3.0

昔部下に、「これ確認してください」「あれ見てください」と、何でも確認・承認を求められたことがある。恐らく、どこまで確認をお願いしたら良いか判断することが難しかったのだろう。

そのとき、自分で考えるコツみたいなのを教えた。ざっくり次のようなことだったと思う。
・細かいことまで上司に確認を求めるのは、自分に自信がない、何がわからないかもわからない人間だとみなされる。
・逆に、上司も全てを確認したいはずはないので、どこが確認のポイントであるかを、部下の方から決められると良い。
・もしわからない、自信がないポイントがあれば、そこは具体的に要点を絞って上司に問うと良い。

それ以降、依頼の仕方も変わったし、お互いに良いリズムで仕事をすることができるようになった。
驚いたのは、この話をしてから、こちらの予想以上に率先して仕事を進めるようになったことだ。信じる幅、任せる領域を広げると、人間は自信になり、意欲がわき、思考が活性化するんだと、まざまざと思った。

で、本題のモチベーション3.0の話。「自律性」という言葉がよく出てきて、上記のような出来事を思い出した。人のモチベーションというのは、本当やり方によって大きく変わる。

 

モチベーションコントロールによって、人は活きもするし死んだりもする

課せられた業務が個人の能力を超えると、不安が生まれる。能力以下の業務を課せられれば、退屈になる。

日本のうつ病・躁うつ病患者の数は年々増加していて、2008年では100万人を超えているらしい。(参考:図録▽うつ病・躁うつ病の総患者数

職場でうつ病など心の病になる場合のひとつに、仕事の与え方があると思う。

これが適切にできていない上司や職場環境が多い。
往々にして、個人の能力に対して要求が高すぎて、プレッシャーに潰されてしまうか、逆に低すぎてつまらなくなって辞めてしまうか。どちらであってもいけない。(個人的感覚では、前者の方が早く重症化しやすい。)

組織論からすれば、敵者でなければ追い出すことで、代謝されることも重要だ。ただ、そうではなく仕事の与え方によって、せっかくの人材を潰したり逃したりするケースも多いのではないか。部下の能力と現在の仕事のハードルの高さがだいたい一致しているか、常に気にかける必要がある。良い仕事を与えれば、人は良い方向に化けたりすることもある。

 

報酬と社会的意義

この本は単純に「アメとムチ」に代わるものとしてモチベーション3.0を説いているわけではない。むしろ、一般よりもやや高い報酬の方が効果が出るとさえ書いている。
マズローの五段階欲求でもある通り、やはり生理的欲求から段階的に満たされる考えの方がしっくりくる。実際は、このいろんなレベルの欲求が、いろんな場面で入り乱れているんだろう。

生活の不安というものをある程度取り除いた上で、仕事に対する社会的意義を明確にする。それが、上司・リーダーの役目。
(それにしても、何でこの仕事をやるのか、ということを説明しない上司も、説明を求めない部下も多いよね。不思議。)

意味付けをすることで、人の考え方は大きく変わる。やらされている感も緩和されるし、自発的に取り組むようになるのは、本当に面白い。

最初は少し甘く見ていたけれど、読み込んでみたら評判になっている理由もわかった気がする。モチベーションを理解して、やり方を工夫すれば、組織は活性化すると思う。

ちなみに、本の内容の一部(要約)がTEDにあるので、手っ取り早く把握したい人はこれで良いと思う。

長期的な企業体力をつける-【オーディオブック】現場力を鍛える

  • 現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件
  • 著者:遠藤功
  • 価格:1520円(税込)
  • 時間:04時間45分26秒

なんというか、システム運用をやってると、現場の力というか品質をどう上げて、かつ保っていくかということにすごい意識が傾く。一方で、いわゆるコンサルティング業務として、いろいろお客さんと接していたりすると、モノの考え方から論理的アプローチ、戦略としての組み立て、計画への落し込み、という一連の流れにも、組織のフレーム作りとして重要なんだとも思う。

ただ、この両輪ってかみ合わないときが結構あるんだよね。両方やってて思うけど。かみ合わないときというのが、どういうときか。このオーディオブック聴きながら、ずっと考えてた。
 
 
本書の中では、戦略による企業の優位性はどんどん短くなる一方で、現場力の高さが企業の長期的な優位性を築く、と述べている。
 
戦略と現場力は組織の繁栄にとって両輪ではあると思うけれど、そのバランスはそれぞれの組織にとって異なる。特に、規模が小さい組織では、現場力の方が重要である気がする。それは組織における「選択肢」の幅が、戦略の有効性を決めるからだ。
 

この間、小さめの組織にお邪魔したが、現場の人のナレッジが乏しいことを嘆いていらっしゃった。どうにも現場に知識がない。自分たちの作業に問題がある気がするんだけど、何が問題なのかがわからない。問題を分析するアプローチもない。
こういう場合はとれる選択肢が少ない。拡大戦略だったり理想追求しても実現しないので、足元からスキルアップ、知識の蓄積、優先順位の明確化による取捨選択など、ボトムアップアプローチによる現実解を考える。
 
 
 
あと、本書の中では「一次情報をみろ」と述べているけど、これもバランスというか勘が必要。
管理する立場になれば、現場で発生している全ての情報に目を通すことなんて無理。一方で、現場の雰囲気や現状を把握しないと、管理者として的確な方向性を打ち出せないのも事実。
そこで、「どの情報を自分は取得するか」を的確に意識しないといけない。最初は過剰に現場の情報を見る。そして、内容がつかめてきたら、自分にとって重要でない情報は手放していく。そのバランス感覚をつかめるかが、良い管理者になれるかの肝だと日々思っている。
 
何のためにレビューするか。
どんな情報が自分にとって必要なのか。
自分の存在価値とはどういう結果で表されるのか。
 
自分や自分の身の回りで行われている作業の、細かいひとつひとつに対して、こういう吟味が必要なんだと、これを聴いて改めて思う。聴くことで、現場の重要性がわかって、希望がわいてくるんじゃなかろうか。

 

【書評】情報を共有し、活用する技術

最近ナレッジマネジメントの興味を持ったので。具体的な方法が書いてあって、わかりやすかった。ただ、初歩的な部分が多かったりするので、あまり前提知識がない人が読むことを薦める。
 
参考になったことは、ここにメモ。

マニュアルに書かれるべき内容

 

マニュアルに書かれるべき3つの内容
①その行為の方法
②目的・意義
③例外時・異常時の対処法

これは、言われてみれば当然なんだけど、意外に守られていないのではないか。特に②。システム運用などでは、よくマニュアルとして手順などを記載するが、「何の目的でやるのか」など書かれていないことが多い。
 
これでは、時が経ち、人が変わったときに、意味の無い作業を繰り返してしまうことにつながる。理由がわからないから、理由を考えないし、見直すこともできないからだ。だから、必ず理由は書くべき。マニュアル文書をテンプレート化して、必ず書くよう「目的」の項目を盛り込めば、そういうリスクも減らせそうだ。
 

情報の「置き場マップ」をつくる

 
これは、まあポータルみたいな概念かね。情報がどこにあるかわからない状態では使われないので、それをガイドする役目をどこかに設ける必要がある。それが情報の「置き場マップ」ということだろう。
 
Yahooは各情報を分類し、到達までの時間を早めている。こういう目次で情報を整理することは不可欠だろう。逆にGoogleデスクトップみたいに、検索で見つける方法も考えられる。分類と検索システムの両方を整備して、情報へたどり着ける状況を作るのが望ましい。
 
チームの情報などを、どういう風に整理して、たどり着いてもらうようにするかは、組織に合わせてよく考えなければならないと思う。

リクルートのナレッジマネジメント

リクルートのナレッジマネジメント―1998~2000年の実験
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情報は第4の経営資源と言われており、どの組織でも情報を集約・共有するナレッジマネジメントが叫ばれている。で、いざ実際組織でどういう風にナレッジマネジメントを導入すれば良いか、と考え、参考にならないかと読んでみた。
 
読んでみて、やはりリクルートっぽいというか。あまりテクニックというものではなく、ナレッジマネジメントを構築するまでの組織の葛藤などが中心い描かれているので、具体的なノウハウなどを期待する人は読まない方が良いと思う。
 
いくつか参考になったことをメモ。
 
 
現場の求める情報を提供するためには
 
知識というのは不思議なもので、漠然とした日々の生活では、気づかず通り過ぎることがたくさんある。「こういう情報が欲しかったんだ」「こういう点が困っているんだ」というのも、「さあ、何かあるでしょう?出してください」では、出てこないものだ。
 
リクルートでは、業務内容を熟知した人間が、集めた情報を加工し、提供する形式をとる。そうでないと、現場が求めている情報を、求めている形で提供できない、という結論になるからだ。そういう意味で、ナレッジマネジメントというのは、現場の働き方などを正確に把握する必要がある。そういう人間がナレッジマネジメントの担当になることで、現場にフィットした仕組みができあがるのだろう。
 
 
集めた知識は再度組織に浸透することを考える
 
ナレッジマネジメントは、よく「暗黙知」を「形式知」にして、それをグループウェアなどのツールで共有できるようにする、というイメージがあるが、それだけでは不十分。具体化した知識は、もう一度組織の中に浸透するような仕組みがなければならない。
 
本の中では、次の4つのステップをループして回すと言っていた。
 
共同化(暗黙知) → 表出化(現場)
   ↑             ↓
内面化(セミナー) ← 統合化(形式知)
 
現場で出てきた知識や課題は、集約され、ポータルなどのツールで統合・整理される。
その後、整理・体系化された知識を基にセミナーなどを開催し、それをさらに現場に浸透させる。
 
リクルートでは、この4つのステップが、社内の仕組みとして構築されていた。実際のナレッジ・マネジメントでは、せいぜいが形式知化するまでじゃないかと推測する。肝心なのは、後半の「内面化」「共同化」なのだろう。このステップを、どういう組織の仕組みで創り上げていくかは、大きなポイントになると思われる。
 
 
普遍的なナレッジマネジメントはない
 
本の中では度々、組織の目的や活動内容によって、最適なナレッジマネジメントの内容は異なると書いてあった。最後のあたりに書いてあったのだが、リクルートは営業を行う組織だから、リスクに対する感度が低いのだそうだ。まあ、言われてみれば確かに。
 
一方で、自分が属するIT業界などは、失敗すると自分たちも吹き飛ぶが、お客さんにも増大な損失を被らせることになる。つまり、リスクヘッジするための管理色の濃いナレッジが求められるはずだ。そういう自分たちの組織の特色や、求める知識、業務分析などを基に、ナレッジマネジメントの仕組みを構築することが肝要なんだと思う。
 
 
リクルートの勢いみたいなのが感じられる一冊。あまりテクニックとかはないけど、組織としてどう立ち上げていくか、という空気感を知る意味では良いかも。
 

なぜこの会社はモチベーションが高いのか

従業員は、自分からどういうアプローチでモチベーションを上げられるか、また今の自分の企業を振り返り、自分の求めている企業として今後も勤めても良いか、考えてみると良いだろう。

経営者や上司の振る舞いが最も重要

モチベーションが低くなる要因として、経営者や上司の人間性に失望する、自分が経営者や上司に大事にされていないと思った、というのが最も高い。賃金や福利厚生などの待遇などを差し置いて、最も高いそうだ。

それぐらい、経営者や上司の振る舞いはものすごく重要であり、部下がいる人は「常に見られている」という意識を持つ必要がある。これは、「人間として完璧でなければならない」ということと同義ではない。自分の欠点も認めながら、部下も個人として尊重する、ということである。「この人は自分を見てくれていない」「いざというとき、この人は裏切る」という失望の気持ちを抱かれたときに、モチベーションの低下は始まってしまう。

継続して積み重ねないと定着しない

読んでいくと、どの企業も当たり前のように企業の理念を作っており、またそれをどう浸透させていくかに大きな労力を割いている。手段はいろいろあるが、大事なのは継続しないと定着しないし、積み重ねによって人の心は変わり、組織は強い方向性を打ち出して動いていく。

「外部講師による研修は素晴らしいのですが、その場だけ感動して忘れてしまい結果としてやりっ放しになってしまう」との考えから、繰り返し何度も同じ研修を受けることができるようにと社員に講師をさせるのです。

アウトソーシングが叫ばれて久しいが、改めて何を自分たちの中で抱えて、何をアウトソーシングするかは考えなければならない。継続的に確保する必要がある知識や価値観については、内部で醸成してゆく仕組みが必要なのだ。

実際読んでみると、ああ、こういう良い企業があるんだなーと明るい気持ちになる一冊。

坂本 光司
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あわせてどうぞ。

システム運用における減点評価からの脱却

経営思考の「補助線」は、経営を考えるにあたって、そのヒントとなる観点を取り上げていく一冊。比喩的な表現も多く含まれているので、好みが分かれると思う。個人的にはやや読みづらい。ただ、読んだことから気づいた点があったので、考えてみる。
 
 
システムは複雑に相互作用してしまう状態にある

 
本の中で、現在社会はシステムが多く形成され、それが複雑に入り組んでいる、かつそれを利用する人はシステムが安全であるという意識が強い、という言葉があった。どうやら、失敗学の畑村さんの言葉らしい。
 
これは、システム運用こそ真剣に考えるべき。ITシステムだけで考えても、ひとつの会社で複数のシステムが同居しており、それぞれがデータを連携したりする。自分たちが運用しているシステムで起こした障害が、想像もしないところから影響が出たりすることだってある。当然のことだが、システムからのアウトプットが、どこにどう使われるかを把握しておかないと、ユーザに重大な影響を与える事態となる。
 
 
「システムは完璧」であるという幻想
 
自分はIT系の仕事に従事しているので、ITシステムは全くもって完璧ではないことを身にしみてわかっているが、ITシステムがどう作られてどう運用されているかに馴染みがない人は、「こうすれば、こう動く」という正常な挙動を当たり前だと思う。そして、当たり前だと思うが故に、何かうまく使えない状態になると、不満が募ったりする。
こういう心理的な要因が、システム運用においてユーザの満足度を下げる結果に結びついてしまう。やれて当たり前、失敗すれば説教。そういう減点評価しかされないような状況を作り出してしまう傾向にある。
 
現在はSLA締結により、システム運用の妥当性について、相互に納得した上で評価しましょう、ということが当たり前のように導入されてきている。そのSLAでも、オンライン稼働率99.9%とかで定められており、決して100%にはならない。こういう積み重ねから、システムは完璧でないことへの理解をユーザに深めていくことが重要になる。
 
 
 
ユーザを巻き込んでPDCAサイクルを回す
 
システムが完璧でない、という事実を受け入れると、より良くしようという前向きな動きも出てくる。システムは、広義の意味ではベンダだけが運用しているのではなく、ユーザとベンダが一体となって運用されるものである。ベンダは、その中のITに直接的な作業を担っているにすぎない。
 
なので、常に問題点や改善点を管理し、システムの目的を整理した上で、どういう風に改善されるべきか、を話し合う機会が必要になる。お金をもらった仕事をしているので、ユーザに押し付けるわけではないが、システムに関する全ての問題を弁だが抱える必要もないはずだし、それではちゃんとした運用は不可能だ。
 
継続的な維持・向上が評価されるような仕組みづくりや、ユーザとの関係構築が、減点評価の世界から脱却につながるはずだ。

 

経営思考の「補助線」
御立 尚資
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あわせてどうぞ。

 

組織における「衝突」の意味

明るく振舞う – 経営戦略コンサルの洞窟を読んで、組織における「衝突」の意味を考えてみる。
 

多少無駄だと分かっても、無駄だと論戦を張らず、とりあえずやって見せて、話を進めたほうが短時間でクライアントに付加価値がでることもある。

やや大人な対応をしている気もするが、チーム全体が気持ちよく仕事しているほうが明らかにクライアントへの価値が高いと思うようになった。
明るく振舞う – 経営戦略コンサルの洞窟

組織において、無駄だと思う作業がある。そのときに2つの選択が考えられるわけで、ひとつは「従順」で、もうひとつは「衝突」。
 
「従順」の場合は、完全に納得はしないけれど、それを受け入れることで相手の心理的な満足感を得ようとする。これはこれでひとつの正解。思考停止で受け入れてしまう場合もよくある。
 
コンサルタントがやりがちなのは、「衝突」。「あるべき」を振りかざして、上司だろうと顧客だろうと、それは無駄ですよという切り込みを行っていく。ひとつひとつの作業の意味や正当性を疑え、と教え込まれてきたし、正しいことを追求する姿勢を求められているからだ。
 
 
衝突することのコスト
 
あるべき姿を求めるのは正しいが、衝突するにはコストが発生する。それは時間であったり、労力であったり、心理的負担であったり。主張を戦わせることはエネルギーを有する行為であり、またそれによって状況を変えることは、多大なコストを要する。
 
例えば、無駄な作業があったとして、素直にやれば30分で完了するのに、その妥当性を2時間議論するのは、どちらが正しい行為か?という比較を考える必要があるのと思うのだ。お互いが疲弊し、心証を悪化させ、その結果として結局は作業を行う羽目になったりする。
 
そういう観点で考えると、無駄と思う作業であっても、受け流すことにより、時間やメンタルも含めて、トータルコストが小さくなる場合もある。それによって、アウトプットが高まることにもつながる。
 
 
それでも衝突することも必要
 
かといって、衝突を恐れたり回避してもいけない。顧客や組織にとって良いと思うことについては、追求する姿勢はもちろん重要だ。では、どういうときに衝突を選ぶのか。それは、衝突した結果として、その先に大きな結果が得られる見通しがあるとき、である。つまりは、トータルコストで考えた場合に、ちゃんと利益が得られる議論や衝突となるのか、ということを問わなければならない。自分の満足感やエゴだけではいけない、ということだ。

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