知識やノウハウを売り物にするためには、ITを駆使する方が有利

KIBSという言葉を知ってるでしょうか。

Knowledge Intensive Business Servicesの略で、「知識やノウハウを集約して高い技術やノウハウ等を提供するサービス業」のことを指す言葉だそうです。具体的には情報サービス産業とか、広告業などが対象になるんだとか。

IT系の産業を調べていると、時々KIBSという言葉に遭遇することがあります。なんでかといえば、世界を見た場合に、価値は有形財から無形財に変遷しており、無形財の中でも付加価値が高い、KIBSといわれる産業を育成し、そこに人が移動した方が良いよね、という考え方があるからです。

で、KIBSに関する面白い論文をネットで見つけてしまったので、少し引用しつつ気づいた点を書こうと思います。

 

KIBSにおける都市型とローカル型

まず、見つけた論文はこれです(PDFファイル)。
「知識集約型サービス支援サービス業(KIBS)の専門的人材活用」に関する研究

この中で、KIBSにも「ITを駆使する系統」と「人的なサービスを駆使する系統」の2種類があると定義しています。前者がITサービスや経営コンサルなどで、後者が弁護士や会計士などです。(論文上ではT-KIBS、P-KIBSと定義しています。)

そして、ITを駆使するT-KIBSは都市型で対象エリアが広く、人的サービスを駆使するP-KIBSはローカル型で労働集約産業だと説明が続きます。これは非常に面白い観点だと思いました。つまり、人的サービスを駆使すると労働集約型になってしまってスケーラビリティが出ないので、エリアが限定されるというわけです。

 

知識やノウハウを売り物にするKIBSで労働集約ってどういうことだ?

最初これを読んだときに、少し違和感がありました。知識やノウハウを売り物にする産業がKIBSのはずなのに、労働集約型というのがイメージとしてピンと来なかったのです。

ただ、よくよく考えてみると伝達手段が問題なんじゃないかと気づきました。つまり、会計士や弁護士など労働集約型と呼ばれるものは、知識やノウハウを伝達する手段が人しかないからではないか、と。逆に、情報サービスやコンサルティングなどは、ソフトウェアや本、資料など伝達する手段が別で存在するのでスケーラビリティが出る、というわけです。

そう考えると、情報商材がなくならないのも、そういうところにひとつ要因があるんだろうという気がしてきました。つまり、「情報」そのものをネットに載せて売れるわけですから、スケーラビリティはたっぷりあります。後はマーケティングの問題でしょう。

ちなみに、MBAに通ってわかったことですが、ケース・スタディで用いる企業などの内容が書かれた「ケース」と呼ばれるものは、ハーバードビジネススクールなどが有料で提供しているようです。これは、まさに知識を文書にして、お金に替えて伝達した例になるでしょう。

 

ビジネスモデルを考えていくと、労働集約型では規模をきかすのがどこかで難しくなります。なので、事業として発展させたり、収益機会を増やすのであれば、「知識やノウハウを人以外でどうやって伝達して課金するか」が重要になるということです。

経営の本質がわかるようでわからなくなる「ヤバい経営学」

Kindleセールが行われていたので軽い感じで手を出してみたが、予想以上に面白い内容だった。最近のモチベーション理論や行動経済学と同じように、人間心理と非常に関連がある示唆が含まれている。

 

因果関係と関係は異なる

本の中では、一般的にセオリーと思われている経営手法に対して、たくさん疑問が呈されている。リストラの是非であったり、組織変更の有効性だったり。そこによくあるパターンとして、関係性があることを「因果関係がある」と錯覚してしまうことにある。

心理学者の大家ダニエル・カーネマンの著作「ファスト&スロー」でも、人は因果関係を見出したがる傾向があると書かれている。

なので、経営の名著とされているビジョナリーカンパニーで書かれている内容も、本当に全て当てはまるのかと本書には書かれている。経営理念を設けることも、良い企業をピックアップした結果として経営理念を持っている企業が多かったからといって、その因果関係が証明されているかは別の問題だ、というわけだ。

ここで言いたいのは、「関係があることと、因果関係があることは異なる」ということだ。成功企業がコアビジネスに集中し、強固な企業文化を持っているからといって、成功の原因だということにはならない。むしろ重要なのは、そういう成功企業の特徴をただ真似ることは、逆に会社を成功から遠ざけてしまう可能性がある、ということだ。

イノベーションを遂行するためには非常に高い経営リスクが内包されている、組織の定期的な変換には効果がある、企業が上場するメリットは本当に大きいのだろうか、人員削減は本当に企業にとって効果があるのか、といういろんな問題提起が行われている。

また、コンサルタントの活用方法や、コンサルタントを含めた組織内の知識活用についても書かれていて、これらの内容は個人的にとても面白かった。コンサルティング会社は知識を集約し再利用することが意味があると思っていたが、それで必ずしもコンサルタントの価値が高くなるわけではないんだってことは、新しい発見だった。

 

人は見たくないと思ってしまうことは見ない場合が大いにあるし、思い込みによって経営を実践する場合がたくさんあるということだ。むしろ、定量化できず目に見えない部分が経営に影響を与えている部分が大きいとも述べている。この本は、明確な経営手法などの答えを与えるのではなく、どのような点がとらわれやすいのか、どこを気にするべきかを教えてくれるという点で、非常に異質で面白い本だ。

最近読んだ、これらの本と関連性をいろいろ感じた。

経営フレームワークの限界を突破するためにはどうするか

新しいビジネスモデルを生み出すためには何が必要なんだろうか。本書では、実証研究や知識の習得だけでない要素として、「ビジネス・インサイト」が必要だと述べている。

 

経営フレームワークの限界

ビジネススクールに行くと、経営フレームワークをたくさん習う。まあ、本当にたくさん。だけど、それを使いこなしても、結局「で?」ということに対して答えられない場合が多い。「使いこなす」という点ではとても難しい。

でも、そもそもフレームワークに限界があるんだと思う。経営なんて不確定要素がたくさんあるし、ひとつの事象をフレームワークで説明できたとしても、自分にあてはめてうまく説明できるとは限らない。それよりも、考えを整理したり、新しい気付きを得たり、複数人で共通認識を持つために使うと便利だ、というぐらいに捉えるのが賢明だ。

 

「対象に棲み込む」ことで「暗黙の知識」にたどり着く

本の中でよく登場するのは、「対象に棲み込む」と「暗黙の知識」だ。まず、「暗黙の知識」というのは、形式知ではなく、かつ「自分が知っているはず」の知識を再発見する行為にあたる。いやー言葉で書いてみるとさっぱりわからない気がするけど。笑

ただ、形式知だけではない部分というのがたくさんあり、そこにビジネスの本質があるとすると、そういう「暗黙の知識」にどうたどり着くのか。そのアプローチとして「対象に棲み込む」ということを挙げている。簡単に言ってしまえば、当事者意識を持てということなんだけど、細かいことは本を読んで欲しい。(著者は、その一つの方法としてケース教育を挙げている。)

逆に、そこまでしないと知っていることの取り込みだけになり、「コピー・キャット」ではないけど、中途半端な模倣になったりする。本書の例にあるように、ヤマト運輸やセブン-イレブンなど新しいビジネスを創造する人たちはビジネスの本質を捉え、単純な真似ではなく、新しいエッセンスを取り入れてビジネスモデルを構築している。

 

ビジネスというのは、知識や経験だけに拠るものではないし、洞察し実践していく力も同じぐらい重要で、かつそれは身に付けるのが難しいものだけれど、不可能ではない。関心がある人は、ぜひ読んで欲しい。

ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)

イノベーションも重要だけど、模倣することはもっと重要だ

イノベーションが重要だ、と叫ばれ、ビジネススクール界隈でも「Bスクールは時代遅れ。これからはDスクールだ」ということでデザインなどの面が重要視されるようなことが随分前から言われていたりするわけですが、一方で模倣してうまく事業を展開している企業もたくさんいるわけです。でも、イノベーションの方が優れていて、模倣はオリジナリティがない「いけてない企業」という印象がある。

そして、この本ではイノベーションと模倣は対になるものではなく、密接に関係していることを示している。この本を読めば、ちゃんと節度ある模倣は、非常に高度で誇らしいビジネス戦略だと思えてくる。

 

模倣するのは恥ずかしいことじゃない

この本が言いたいのは、要はそういうことだと思う。模倣というのは、安易な行為というわけではなく、たくさんの複雑な技術が内包されており、それらを駆使することで、初めて模倣をして結果が出せるようになる。さらに、イノベーションを起こす企業だけがたくさん稼げるわけじゃない。

しかし、一九四八年から二〇〇一年に生み出されたイノベーションを対象にした大規模な調査から、イノベーターたちは自分が起こしたイノベーションの現在価値の二・二%しか獲得していないことが明らかになっている。残りは模倣者たちが手に入れたものと考えられる。

そして、イノベーションと模倣の境界線は非常に曖昧なものであることが示されている。アップルは革新的な企業というイメージがあるが、実態は本書中にある以下の表現の方が適切だろう。

 

アセンブリーイミテーションの達人であるアップルは、既存の技術を斬新な発想で再結合することに創造性を使っている。

アップルのような幅広いスキルがない会社はどうしたかというと、自社のスキルと外部のパートナーのスキルを結合しようとした。組立て─再結合戦略の変種である。この戦略は、提携することで複雑さが増し、取引コストが膨らむという欠点がある。マイクロソフトとサムスンは、それぞれ他のベンダーと提携して、iTunesに対抗する音楽配信サービスを本格的に開始したが、このアプローチは失敗に終わった。両社は、成功している企業であるがゆえに、提携能力が高くなかったことがその一因である。

つまり、アップルもたくさん模倣しているし、そこにオリジナリティあるデザインやビジネスモデルを構築しているということになる。となると、模倣が悪で、イノベーションが善というような単純な図式ではビジネスは構成されていないことがわかる。

 

「正しく」模倣するには背景や構造を深く捉える必要がある

この本では、模倣の失敗例がたくさん登場する。成功企業を真似すればうまくいく、というわけではないのはみんな知っている。ではどうすれば良いのかといえば、表層的なところだけ捉えるのではなく、成功企業はどういう背景や構造によって、成功者たる結果を残せているのかを考える必要がある。安易に部分的な模倣をすると、自社と相矛盾するような考え方やリソースを取り入れることになり、中途半端な結果だけが残ることも往々にしてある。

本の中ではいろいろうまく模倣するためのアプローチが書かれているが、僕はそれに追加してビジネスモデルキャンバスを提案したい。ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルジェネレーションという本で紹介されていて、一度にビジネスモデルを構造的に捉えるという点においては、非常に有用なフレームワークだと思う。

 

話題のビジネスモデル・ジェネレーション(設計書)を徹底解説!

 

 

世の中は情報化によって形式知化されるのも、それが伝達されるのも圧倒的に早くなっている。模倣することはイノベーションにもつながるし、どんどん良いと思うものは取り入れて良いと思うのです。そういう点で、とても勇気をくれる本。

コピーキャット: 模倣者こそがイノベーションを起こす

「起業家」は経営の良いケーススタディ

この本は、経営を考える上での、とても良いケーススタディだと思う。

サイバーエージェント藤田社長の新作。社長の体験談と思って軽い気持ちで読んだし、前半はドットコムバブル後の業界動向やライブドア事件などが時系列に綴られていた。前半だけでも、どうやって外部環境を捉え、組織作りを行っていったのかという点で非情に有意義な内容になっている。しかし、この本の見所は後半にある。赤字を垂れ流していたアメーバ事業をどう成功させていくのか、という信念に基づいた行動の経緯が率直に語られている。

 

企業文化の育成が強い組織を作る。ただし、それを作り変えることは大変なこと。

前半は特に、サイバーエージェントの企業文化が徐々に形成されていく過程がわかる。新卒を獲得して育成していくこと、買収に頼らず新規事業を生み出していくこと、長期雇用を前提とすることなど、今のサイバーエージェントの特徴といえる部分が生み出され、それを強化するような制度が企業にビルトインされていく。これによって、戦略・企業文化・リソースなどが整合性のある状態で事業が拡大していく。こういう点は、経営のセオリーとしていることだが、実際にやるのはとても難しい。

そして、この企業文化が後半の赤字を垂れ流すアメーバ事業との戦いにおいて、非常に大きな障壁にもなったりする。企業文化は、良い部分だけでなく、知らないうちに副産物も生み出す。技術者軽視のカルチャー、広告事業とメディア事業の評価ベクトルの違いなど、事業の特性や企業文化から作られた人の思考や感情は、簡単には変えられない。

ついに、社長は現場に直接乗り込み、細かいところまで指示・命令を出すようになる。これは一見管理者として良くないように感じるし、社長自身もこれまでの「現場に任せる」スタンスから大きく変えている。それでもメディア事業を成功させる、という信念と、現場に任せてもうまくいかなかったことから、そうせざるを得ない状況だったとも言える。結果は、知っての通り大きなアクセス数を獲得して収益化に成功している。

 

企業をスケールアップするために収穫逓増型を目指す。

本の中に何回も登場してくるのが「収穫逓増型」という言葉。特に、企業をスケールアップさせていくには、とても重要な考え方になる。特にネット企業との親和性が高い。簡単にいえば、「仕組み」で儲ける固定資産型のビジネスモデルだ。

最初にサイバーエージェントが始めた広告事業は、人が動かないと収益には結びつきにくい。それでは、事業を大きくするために人をたくさん採用する必要が出てくる。こうなると、事業拡大にも時間がかかる。

労働集約型が悪いというわけではないが、スケールアップするためにはレバレッジがかかるような儲かる仕組み作りが必要になる。
労働集約型から脱却するには | Synapse Diary

 

ちなみに、Facebookは2011年時点で売上2,856億円に対して、社員数3,200人。
Facebook IPO申請で売り上げ、利益、ユーザー数などの実数が判明

サイバーエージェントは、2012年時点で売上高1,411億円に対して、社員数2,527人。
【株式会社サイバーエージェント 新卒採用】|就活・求人情報はリクナビ2014

 

社長は孤独である。

最近はいろんな企業の社長とお話する機会もあるが、みんな揃って言うのは、社長というのはとても孤独、ということだ。この本でも、まさにその点が非常によくわかる。

組織を作り上げていくものの、思う通りに進まない事業と社員。「任せる」という方針を覆して、現場の細かいところまで口だす方針転換。買収劇を繰り広げるライブドアを始めとする企業を横目に、積極的な買収は行わないことを決めたものの、買収を積極的に進める企業が業績を高めていく焦り。上場企業として投資家のプレッシャーを受けながら、無理に黒字化することへの誘惑と失敗。

 

経営者は様々な状況で、利益が相反する状況が訪れ、その度に考え、迷い、判断しなければならない。一方で少し安心するのは、こういう優れた経営者といわれる人であっても、当然のように迷い、確信と自信喪失を繰り返し、行動しているということ。それでも、そういう孤独な戦いは狂気にも似た信念があるからこそ。

 

僕はアメーバのサービスとかあまり使ったことはないけど、この本にある社長の考えは好きです。後半は、読みながら気持ちが昂ぶり、一気に読み終えました。経営者にはおすすめです。

起業家

良いものを作ってもビジネスモデルが優れていないとお金にならない話

久々に、東京事変の曲を購入した。最後に発表されたコンプリートアルバム「Hard Disk」の未発表曲をiTunesで購入したのだ。それはいいとして、今回書きたいのは「数字は意外な事実を教えてくれる」ということと、「ビジネスモデルは重要ですよ」ということです。

 

東京事変のCD売上

気になったので、東京事変のCD売上を調べてみた。ここの数字がどれだけ正確かは裏付けができなかったが、まあ本当だと信じてみようと思う。信じるかどうかは自己責任で。

【アルバム】
04.11.25 2位 205,012枚 390,665枚 35週 教育
06.01.25 1位 169,551枚 293,604枚 17週 大人(アダルト)
07.09.26 2位 101,475枚 175,418枚 20週 娯楽(バラエティ)
10.02.24 1位 106,831枚 176,780枚 19週 スポーツ
11.06.29 1位  82,396枚 139,699枚 31週 大発見
12.01.18 2位  78,318枚 108,256枚  9週 color bars
12.02.15 1位  36,404枚  61,898枚 15週 東京コレクション
12.08.29 3位  36,272枚  44,126枚  2週 *深夜枠

東京事変 – みんなのCD売上データ辞典 – livedoor Wiki(ウィキ)

 

これ、結構衝撃的です。個人的には。時間が経つにつれてCDが売れなくなっている。自分としては、アルバムが発表されるたびにどんどんサウンドは変化して、魅力が増していったと思っているのに、そういう自分の感覚には反して売上は落ちているという不思議。

まあ、考えてみればなんてことなくて、全体としてCDの売上は落ちているからだと思う。統計データでみると、アルバム売上は著しく落ちているし、東京事変が活動していた7年間も全体として落ち続けていた。

CD売上枚数の推移

一般社団法人 日本レコード協会|各種統計を元に作成)

というわけで、自分の感覚というのは信じてよいときと悪いときがあって、数字があるときはちゃんと確認すると、自分の感覚も修正されて、できるだけ真実に近いところにたどり着ける、という話。

 

何を作るかも重要だけど、どうお金に変えるかも同じぐらい重要

先ほどみたとおり、CDを売るというビジネスモデルには限界がきてるんじゃないかと思われる。

須藤元気がやっているWORLD ORDERのインタビューを少し前に読んだことがあったけど、どれだけすごいダンサーでもお金を稼ぐことは難しい状況があり、須藤元気がお金に変えるパフォーマンスに仕立て上げることで食べられるようになったと言っていた。

野口量 そうです。自分で言うのもなんですけど、僕はダンスを10数年やってきて、ダンス界では結構名前が売れたり海外の人と仕事したりしてたんです。でも、ダンスってすごく厳しい世界で、収入も少ないし賞味期限も短い。それで、WORLD ORDERに誘われたときに「やるんだったらものすごく気合を入れて取り組んで、絶対に成功してやろう」と覚悟したんです。

ナタリー – [Power Push] WORLD ORDER「2012」インタビュー (1/2)

つまり、一流の腕を磨いても、それをお金に変える行為というのはとても難しくて、それを作り上げられる人がいてこそ、良いコンテンツは市場に届けられ、継続されるということだ。最近特に強く思うのは、どれだけ良いコンテンツや技術であっても、市場でお金に変えられなければ、継続していくことは難しい、ということ。須藤元気のインタビューはまさにそういう点を指している。

東京事変が商業的に実際どう判断されていたかは知らないけれど、ツアーも行っていたし、それをDVDで販売していたし、iTunesのようなデジタルプラットフォームにも広げていたし、積極的にお金に変えるアプローチを取っていたように思う。握手券とかには敵わないだろうけどね。

 

当然のことながら、ずっと継続できているアーティストには、こういう経営面での思考も必要だろうし、考えて取り組んでいるんだろうな、と思った次第です。

労働集約型から脱却するには

未だに、このブログでアクセスが多いのが、IT産業が労働集約型から知識集約型に転換するために必要なこと。これは、特にIT業界の労働集約的な現状を考える人がアクセスしているんじゃないだろうかと推測する。

 

東進ハイスクールとセコム

そしてふと、テレビで東進ハイスクールを見て、「ああ、これこそ労働集約型から資本集約型へ移行したパターンだな」と思った。

東進ハイスクールは、最初は直接教える予備校塾から始まったが、今は塾講師が行う講義を録画し、それを全国で配信するという、いわゆるオンデマンド型のビジネスに転換している。学生は、自分の近くで優れた塾講師の講義を好きな時間に好きなだけ受けることができる。
東進ハイスクール – Wikipedia

 

あとは、セキュリティ会社のセコムもそう。セコムは、最初は人が警備員として配備されるビジネスモデルだったが、途中から転換して、ネットワークと監視装置をベースにしたセキュリティシステムを提供する会社になった。
セコム – Wikipedia

 

「仕組み」をつくることが重要だ

両社に共通しているのは、「仕組み」を構築することで労働集約型から資本集約型へ転換したことだ。当然、大きな資本を投資することになるので、簡単ではない。ただ、そうやって強固な基盤を構築することで、競合に対する優位性を築くことにつながる。

そして、発想としてはいろんなものが同じだと思うんだよね。個人レベルでみても、自分が日々やっている作業を仕組み化することで、同じ作業結果を少ない時間で行うことができるようになる。つまり、仕組みをどんどん導入していくことで、人が手を動かさなくても成果を出せる形を作っていくことになる。

 

というわけで、仕組みを作るということが、労働集約型から脱却するための答え。あとはその仕組みをどう発想して、実行していくかという問題。

知ってるようで知らない総合商社の過去と未来

総合商社の本を読んだ。総合商社ってなんとなく知っていたけど、実際どういう業務で収益を上げているのか、なんで大規模な活躍ができるのかを知りたかった。

貿易商社の規模は、世界でみても日本企業がダントツで、「総合商社」という業態は世界でも少ないんだそうだ。

これら10大総合商社は、単に複数分野の商品を複数地域で取り扱うだけでなく、オーガナイズ機能・金融機能・投資機能・調査情報機能を持った複雑な経営体である。そこに「総合」の意味があり、この点は海外の商社と呼べる経営体にはない、独自のものである。

総合商社が生まれた背景から辿り、高度成長における製造業や小売業への進出、そして現在までの変遷が纏められていて、「とりあえず総合商社というものを理解したい」というレベルであれば、この一冊で十分だと思う。

 

近年は事業投資へシフト

総合商社の最近の特徴は、事業投資にシフトしていることだろう。トレーディングや事業オペレーションは子会社・関連会社に移行しており、本社ではそれを管理し、事業投資を行うようになっている。それは、総合商社が新規分野への進出を拡大させたことに起因している。

新規分野、新規事業への進出は、1節〈2〉新規分野への進出・既存分野での新事業開拓で概観したように、必ずしも全部がトレード以外の業務だったわけではないが、これまでにない新たなリスクを抱えるものが多かった。その過程で、分社化や関係会社・合弁会社を使っての業務展開、そして事業投資が増えていたから、子会社・関連会社を含むグループ全体の財務やリスクを管理する方法が求められた。さらに、売上高より収益を重視する経営も、新しい財務管理を必要としていた。

そうなると、総合商社本体にとって重要になるのは、企業を見極めるための事業評価とリスク管理になる。カントリーリスクから企業個別の財務リスクまで大小あるが、これらを見極め、投資をコントロールしていく必要がある。オプションや先物取引などのリスク管理手法を駆使することもさることながら、全社でリスク管理する組織運営が求められている。

 

オペレーションと投資の両方を行えるのは強い

読みながら思ったのは、一部ソフトバンクと似ているんじゃないか、ということ。ソフトバンクは、情報インフラを自社で手がけるとともに、そのインフラ上で活躍できる企業を買収・投資している。総合商社でも、バリューチェーンの至るところで取引や事業を行うことで収益機会を獲得しようとする。

その場合、こういうたくみな戦略も必要になるのだ。
ソフトバンク、スプリント買収断念でも利益40億ドル – WSJ.com

単なる投資会社にように、売却を狙ったものではなく、育成し事業を継続することで利益を創出しようとする。また、親会社の規模の大きさが、投資・育成にかかるリスクを許容することもできる。つまり、インキュベーションの役割も果たすことができる。

こうやって、両方のアプローチを駆使できるスキルやノウハウを構築するのはそんな簡単なことじゃない。だからこそ、実現できると強い企業になる。

 

総合商社の強さの理由と、今後どうなっていくのかがわかった。

総合商社の研究

「社長復活」を読んで、経営者という職業を感じる

起業家というのは、感情の起伏が激しい人生を送ることができる、とMBAで習った。これは、起伏が激しい人という意味ではない。それだけ、楽しいときはすごい楽しいし、苦しいときはそれと同じぐらい苦しい、という経験によって得られる感情の幅が大きくなる、という意味だ。

そしてこの本は、まさに起業家・経営者としての生き様がみえる。

経営者というのは、つねに不安と隣り合わせで生きている。お金の問題、人の問題、市場の問題、毎日そればかり考えていて、気が安まることがない。が、いったん慣れてしまえば、むしろ、それがないと生きていけない。何も問題がないと、かえって不安になったりするのだ。

こういう心理状態ですよ。

 

成功→失敗→成功→失敗のジェットコースター

ハイパーネットで一躍起業家として踊りでて、その後倒産。しばらくすると、株式投資や企業価値などのセミナーで一稼ぎ。株式投資ブームが去ると、仕事も少なくなりうつ病で引きこもりに。そして、今回書かれているように、再度起業。

本当、ジェットコースターのように浮き沈みを経験している。こういう経験ができることが、まさに起業家・経営者の醍醐味なのだ。起業家を志す人は、こういうことをポジティブに捉えられないといけないのかもしれない。安定がないと不安、という人は厳しいだろうし。一方で、起業して社長を経験した人に聞くと、「絶対にサラリーマンに戻りたくない」という人が多い。それほど、魅力的な仕事でもあると思う。

 

コンスタントに結果を出すには

面白いのは、健康に対して配慮するようになったことが多く語られている点。

暇というのはとても重要だ。ジムに行って身体を鍛えるとか、気分転換に旅行に行くというのは、ある種の予定であって、本当の暇は「予定のない予定」のことを指す。何かをするための時間ではなく、何もしないための時間。そういう時間があれば、人間はモノを考える。しかも、長いスパンで考えられるようになる。

忙しくしていると、どうしても余裕を持って考えることができなくなり、広い視野が失われてしまう。村上春樹は朝早く起きて、ジョギングしたりしながら規則正しく小説を書いていると聞いたことがある。無理して忙殺されるのでは、一時は良いのかもしれないけどそれが続くと自分で自分を見失っていくんだろうな、と最近は自分も思う。

 

ちゃんと稼ごうという意識

金がすべてではないが、稼げる能力があるなら稼ぐべきだ。稼いで、税金を払って、寄付したい人は寄付する。稼ぐということは、社会に何らかの価値を提供した見返りだ。自分はそこから逃げていた。

ビジネスに役立つ『商売の日本史』講義」でも書かれていたが、日本にはお金を稼ぐ行為が卑しく捉えられる側面がある。しかし、お金は良くも悪くもなく中立なものだし、稼ぐという行為そのものは社会からの投票の結果とも考えられる。

実際、こうやってお金を稼ぐことを意識しているから、一度倒産しても講演とか企業価値セミナーでまたお金を獲得していく。それは根底に、「どうやって稼ぐか」という意識があるからだと思うし、サラリーマンとの違いはそういうところにあるな、と思った。

 

素晴らしい経営者が「何か起こすんじゃないか」と思うと、本当にわくわくする。こういう気持ちをまた体験できて嬉しい。

ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義

ひふみ投信のファンドマネージャーが、経済の観点から歴史を書いた一冊。とても貴重な観点で経済のエッセンスがえぐり出されており、とても興味深くページをめくった。

 

外向きと内向きのスイング

本の軸にあるのは、神話になぞらえた「ウミヒコ」と「ヤマヒコ」という、海系の開放的な考え方か、山系の閉鎖的な考え方のどちらが日本を支配するかによって、日本という国はスイングしてきた、というものだ。つまり、「ウミヒコ」の場合は貿易など外貨を稼ぐことに注力し、「ヤマヒコ」は国内に投資して内需を拡大することに注力する、という。どちらが良い・悪いではなく、そういう時代が交互にやってきていることを指摘している。

そして、今がまさに開かれる時代にまた振れている。それは、戦後の日本にとっては比較的安定した国際情勢の中で、道路などの国内インフラ投資によって内需を拡大してきたが、それも一巡した感がある。と同時に、中国などアジアの影響力が強くなり、日本もそれに影響された動きになるからだ。特に中国の影響はとても大きい。

さて、海と山の話に戻しますが、日本史は中国という隣人の影響を常に強く受けています。中国が経済的に強くなってくると国を開いて積極的に交流をし、中国が弱くなってきたら国を閉じて内国中心的になり、自国の独特の文化が花を開くという軸の移動を繰り返しています。

そういう流れを読めるかどうか、そしてそれが経済や政策にどう影響するのかを、僕らは考えないといけない。

 

ポピュリズムは政権衰退の証

歴史をみると、ポピュリズムというのは政権が衰退した証なわけで。それを経済的な観点でも同じことが繰り返し起こっているわけです。

インフラは、維持が大変です。政権の経済力がなくなると、それが放置され建造物の崩壊が始まります。鎌倉時代、江戸時代、そして昭和はヤマヒコの時代に分類できるでしょうが、いずれも国内の整備、特に道路整備に熱心であることが共通します。そしてその末期には、財政難からそうしたインフラが維持できなくなり、批判を集めます。

本当、歴史は繰り返すんだな。そして、内需が伸びなくなって、外に目が向く。こうやって人々の行動が内向きになったり外向きになったりする。

同じように、衰退した政権はこれまでたくさん徳政令を発行してきて、その度に結果として国を疲弊させてきたんだそうな。

八〇〇年前の鎌倉幕府が行った徳政令を、愚かしい政策と多くの人は笑うかもしれません。しかし、このように大衆迎合的な人気取り政策は、政権の力が弱り衰退期になると、日本の歴史に頻繁に登場します。そして大半が失敗して、政策目的を達成できません。さらに自滅行為というべき愚かしい政策が人々を巻き込む可能性があるのです。

これも、現代でもどこかで聞いたような話。

 

金儲けは汚いという日本の価値観

金儲けをすることはどこか「卑しい」という感覚が、社会の中にはある。本の中で出てきたのは、社会企業家の例だった。

「普通の企業家と社会企業家を分けるのは意味がないのではないかな。企業家はその活動を通じて社会に役立つことをしているよ」。すると学生は「企業家は金儲けを求めるのでなりたくありません。社会企業家になりたいのです」と言うのです。「金儲けは悪い」「会社が良くない存在」と、学生が思い込んでいます。

確かに、社会企業家が注目されていたのは、これまで公共サービスとして事業化が難しいと思われていたことを、新しいアプローチで問題解決しつつ事業を成立させる点にあった。だからといって、社会企業家が一般的な企業家より高邁であるという考え方は違うと思う。

こういう価値観があるから、新しいお金を生み出せるエネルギーが小さくなって、貧しくなっているんじゃないか。お金に関する教育が日本には欠けていると言われているが、こういう価値観が根底にあるからかもしれない。

 

 

歴史とは、いろんな見方によって学ぶべきところはたくさんあるんだな。平安時代における貨幣の広がりと荘園制度の崩壊とか、当時の政権が経済をどうやって掌握するのかとか、たくさん面白い洞察があって、面白くって仕方なかった。最後に、希望の言葉で締めくくろう。

一方で厳しい下げ相場のときにも同じようなことが起こります。下落が永遠に続くように思い、投げやりになり、動揺します。しかし相場はいずれ反転します。今ある現実を嘆くよりも、次の「スイング」を考えながら、手を打つほうが賢明なのです。どんな状況でも絶望する必要はありません。

 

ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)