総合商社の本を読んだ。総合商社ってなんとなく知っていたけど、実際どういう業務で収益を上げているのか、なんで大規模な活躍ができるのかを知りたかった。
貿易商社の規模は、世界でみても日本企業がダントツで、「総合商社」という業態は世界でも少ないんだそうだ。
これら10大総合商社は、単に複数分野の商品を複数地域で取り扱うだけでなく、オーガナイズ機能・金融機能・投資機能・調査情報機能を持った複雑な経営体である。そこに「総合」の意味があり、この点は海外の商社と呼べる経営体にはない、独自のものである。
総合商社が生まれた背景から辿り、高度成長における製造業や小売業への進出、そして現在までの変遷が纏められていて、「とりあえず総合商社というものを理解したい」というレベルであれば、この一冊で十分だと思う。
近年は事業投資へシフト
総合商社の最近の特徴は、事業投資にシフトしていることだろう。トレーディングや事業オペレーションは子会社・関連会社に移行しており、本社ではそれを管理し、事業投資を行うようになっている。それは、総合商社が新規分野への進出を拡大させたことに起因している。
新規分野、新規事業への進出は、1節〈2〉新規分野への進出・既存分野での新事業開拓で概観したように、必ずしも全部がトレード以外の業務だったわけではないが、これまでにない新たなリスクを抱えるものが多かった。その過程で、分社化や関係会社・合弁会社を使っての業務展開、そして事業投資が増えていたから、子会社・関連会社を含むグループ全体の財務やリスクを管理する方法が求められた。さらに、売上高より収益を重視する経営も、新しい財務管理を必要としていた。
そうなると、総合商社本体にとって重要になるのは、企業を見極めるための事業評価とリスク管理になる。カントリーリスクから企業個別の財務リスクまで大小あるが、これらを見極め、投資をコントロールしていく必要がある。オプションや先物取引などのリスク管理手法を駆使することもさることながら、全社でリスク管理する組織運営が求められている。
オペレーションと投資の両方を行えるのは強い
読みながら思ったのは、一部ソフトバンクと似ているんじゃないか、ということ。ソフトバンクは、情報インフラを自社で手がけるとともに、そのインフラ上で活躍できる企業を買収・投資している。総合商社でも、バリューチェーンの至るところで取引や事業を行うことで収益機会を獲得しようとする。
その場合、こういうたくみな戦略も必要になるのだ。
ソフトバンク、スプリント買収断念でも利益40億ドル – WSJ.com
単なる投資会社にように、売却を狙ったものではなく、育成し事業を継続することで利益を創出しようとする。また、親会社の規模の大きさが、投資・育成にかかるリスクを許容することもできる。つまり、インキュベーションの役割も果たすことができる。
こうやって、両方のアプローチを駆使できるスキルやノウハウを構築するのはそんな簡単なことじゃない。だからこそ、実現できると強い企業になる。
総合商社の強さの理由と、今後どうなっていくのかがわかった。