KIBSという言葉を知ってるでしょうか。
Knowledge Intensive Business Servicesの略で、「知識やノウハウを集約して高い技術やノウハウ等を提供するサービス業」のことを指す言葉だそうです。具体的には情報サービス産業とか、広告業などが対象になるんだとか。
IT系の産業を調べていると、時々KIBSという言葉に遭遇することがあります。なんでかといえば、世界を見た場合に、価値は有形財から無形財に変遷しており、無形財の中でも付加価値が高い、KIBSといわれる産業を育成し、そこに人が移動した方が良いよね、という考え方があるからです。
で、KIBSに関する面白い論文をネットで見つけてしまったので、少し引用しつつ気づいた点を書こうと思います。
KIBSにおける都市型とローカル型
まず、見つけた論文はこれです(PDFファイル)。
「知識集約型サービス支援サービス業(KIBS)の専門的人材活用」に関する研究
この中で、KIBSにも「ITを駆使する系統」と「人的なサービスを駆使する系統」の2種類があると定義しています。前者がITサービスや経営コンサルなどで、後者が弁護士や会計士などです。(論文上ではT-KIBS、P-KIBSと定義しています。)
そして、ITを駆使するT-KIBSは都市型で対象エリアが広く、人的サービスを駆使するP-KIBSはローカル型で労働集約産業だと説明が続きます。これは非常に面白い観点だと思いました。つまり、人的サービスを駆使すると労働集約型になってしまってスケーラビリティが出ないので、エリアが限定されるというわけです。
知識やノウハウを売り物にするKIBSで労働集約ってどういうことだ?
最初これを読んだときに、少し違和感がありました。知識やノウハウを売り物にする産業がKIBSのはずなのに、労働集約型というのがイメージとしてピンと来なかったのです。
ただ、よくよく考えてみると伝達手段が問題なんじゃないかと気づきました。つまり、会計士や弁護士など労働集約型と呼ばれるものは、知識やノウハウを伝達する手段が人しかないからではないか、と。逆に、情報サービスやコンサルティングなどは、ソフトウェアや本、資料など伝達する手段が別で存在するのでスケーラビリティが出る、というわけです。
そう考えると、情報商材がなくならないのも、そういうところにひとつ要因があるんだろうという気がしてきました。つまり、「情報」そのものをネットに載せて売れるわけですから、スケーラビリティはたっぷりあります。後はマーケティングの問題でしょう。
ちなみに、MBAに通ってわかったことですが、ケース・スタディで用いる企業などの内容が書かれた「ケース」と呼ばれるものは、ハーバードビジネススクールなどが有料で提供しているようです。これは、まさに知識を文書にして、お金に替えて伝達した例になるでしょう。
ビジネスモデルを考えていくと、労働集約型では規模をきかすのがどこかで難しくなります。なので、事業として発展させたり、収益機会を増やすのであれば、「知識やノウハウを人以外でどうやって伝達して課金するか」が重要になるということです。