経営の本質がわかるようでわからなくなる「ヤバい経営学」

Kindleセールが行われていたので軽い感じで手を出してみたが、予想以上に面白い内容だった。最近のモチベーション理論や行動経済学と同じように、人間心理と非常に関連がある示唆が含まれている。

 

因果関係と関係は異なる

本の中では、一般的にセオリーと思われている経営手法に対して、たくさん疑問が呈されている。リストラの是非であったり、組織変更の有効性だったり。そこによくあるパターンとして、関係性があることを「因果関係がある」と錯覚してしまうことにある。

心理学者の大家ダニエル・カーネマンの著作「ファスト&スロー」でも、人は因果関係を見出したがる傾向があると書かれている。

なので、経営の名著とされているビジョナリーカンパニーで書かれている内容も、本当に全て当てはまるのかと本書には書かれている。経営理念を設けることも、良い企業をピックアップした結果として経営理念を持っている企業が多かったからといって、その因果関係が証明されているかは別の問題だ、というわけだ。

ここで言いたいのは、「関係があることと、因果関係があることは異なる」ということだ。成功企業がコアビジネスに集中し、強固な企業文化を持っているからといって、成功の原因だということにはならない。むしろ重要なのは、そういう成功企業の特徴をただ真似ることは、逆に会社を成功から遠ざけてしまう可能性がある、ということだ。

イノベーションを遂行するためには非常に高い経営リスクが内包されている、組織の定期的な変換には効果がある、企業が上場するメリットは本当に大きいのだろうか、人員削減は本当に企業にとって効果があるのか、といういろんな問題提起が行われている。

また、コンサルタントの活用方法や、コンサルタントを含めた組織内の知識活用についても書かれていて、これらの内容は個人的にとても面白かった。コンサルティング会社は知識を集約し再利用することが意味があると思っていたが、それで必ずしもコンサルタントの価値が高くなるわけではないんだってことは、新しい発見だった。

 

人は見たくないと思ってしまうことは見ない場合が大いにあるし、思い込みによって経営を実践する場合がたくさんあるということだ。むしろ、定量化できず目に見えない部分が経営に影響を与えている部分が大きいとも述べている。この本は、明確な経営手法などの答えを与えるのではなく、どのような点がとらわれやすいのか、どこを気にするべきかを教えてくれるという点で、非常に異質で面白い本だ。

最近読んだ、これらの本と関連性をいろいろ感じた。

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