ポリオのワクチン接種事情について考える

国内でのポリオのワクチン接種がこんな状況だなんて、子供が生まれるまで全然知らなかった。

ポリオとは

いわゆる「小児麻痺」の名前で有名。厳密には子供じゃなくても発症するらしいのだけど、最終的には手足の麻痺が残ってしまうのが特徴。

急性灰白髄炎 – Wikipedia

ポリオウイルスが感染して、脊髄神経の灰白質をおかすため、はじめの数日間は風邪を引いたような症状があらわれるが、その後急に足や腕がまひして動かなくなる病気。

ワクチン接種

このポリオの予防対策として、子供のうちにワクチン接種を受けるのだけれど、ワクチンには「経口生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類がある。そして、日本で採用されているのは「経口生ワクチン」。

何が違うのかといえば、生ワクチンは毒素を弱らせた状態になっていて、100万人に2~3人の確率でポリとを発症する可能性があるといわれている。さらに2次感染として親などに感染する場合もあるらしい。毎年発症例が報告されている。

一方で、不活化ワクチンは完全に無毒化したもの。副作用として皮膚に赤みが生じたりすることはあるものの、ポリオ自体の発症はない。

安全性高いポリオ不活化ワクチン 自費でも接種の保護者増加+(1/3ページ) – MSN産経ニュース

生ワクチンはウイルスの毒性を弱めて作る。予防効果は高いが、接種した本人にまひ症状が出たり、他人に移したりする危険性がある。WHO(世界保健機関)は、生ワクチンでは100万人に2~4人のポリオ患者が発生すると警告している。

国内制度の不思議

生ワクチンも予防接種として効果が認められてはいるものの、なんで不活化ワクチンが集団接種の対象になっていないのだろう。普通に考えれば、リスクが小さい不活化ワクチンを選ぶと思うんだよね。どんなことにもリスクはあると思うものの、生ワクチンより不活化ワクチンの方がリスクが低いことがわかっているのだから。でも今国内で接種しようと思うと、海外から輸入して接種してくれる病院を探して、実費負担しなきゃいけない。

それと、回数も不思議な話。ポリオにはどうやら3つのタイプがあって、ワクチンによって3つとものタイプに抗体をつくるらしい。1回の接種では全てに対して抗体がつかないので、3回ぐらいが推奨なのだそうだ。だけど、日本では2回。

経口生ワクチンの場合、2型、1型、3型の順番に抗体がつくため、WHOで3回接種が推奨されているところ、2回のみ接種している日本人では前2者に対する抗体が産生される。

急性灰白髄炎 – Wikipedia

ここのあたりも、どういう政策なんだろうか、と疑問に思ってしまうけど。発症確率と費用バランスから、こうなってるんだろうか。

ちなみに、2012年度から日本でも不活化ワクチンが承認されて、国内に流通するようだ。4種混合の形で。

ポリオ:不活化ワクチン導入へ 厚労省、来年度 – 毎日jp(毎日新聞)

欧米では標準的に使われているポリオ(急性灰白髄炎)の「不活化ワクチン」が国内では未承認になっている問題で、厚生労働省は26日の予防接種部会で、早ければ12年度中に導入する見通しを示した。研究開発を進める複数の国内メーカーが年末から順次、製造販売に向けた承認申請をする予定で、同省は「できる限り迅速に審査する」と説明した。

それにしても、子供が生まれてからこういう国内の制度とか現状を自分がいかに知らなかったかに驚かされるなあ。そして、「なんでこうなっているのか」と不思議に思うこともしばしば。

参考:

ポリオの会 [ホームページ]

ポリオの会は、ポリオ体験者やご家族、医療関係者、応援して下さる方々の集まりで、 体験者同士の情報交換を主な目的にしています。

「AiWiFi」でAndroidの写真と動画を自動バックアップ

GalaxySにしてから、携帯で写真を撮ることが多くなった。貯まった写真は、どこかにバックアップをとっておかないと不安になる。そこで、自動で写真や動画をバックアップできるアプリを導入。

 

AiWiFi – Android マーケット

 

AiWiFiは、携帯の指定したフォルダにあるファイルを、Webサービスに自動アップロードするAndroidアプリ。「前回アップロード時より新しいファイルのみ」を対象とすることができるので、便利。

本当はFlickrに対応していると嬉しいんだけど、これは残念ながら対応していないので、Dropboxにバックアップ。

ちなみに、WiFiでアップロードすることが基本になっているようだけど、3G回線でも可能。

データのバックアップは重要だし、こういう自動化してくれるアプリは時間とストレスを軽減してくれるよね。

岐阜市歴史博物館で岐阜の歴史を学んできた

初めて、岐阜市歴史博物館へ行ってきた。岐阜市図書館は、岐阜公園の隣接している結構立派な建物。

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企画展「古地図」が面白い

博物館に所蔵されている、古代からの地図を集めた企画展示。いろいろ興味深く見る。特に、近代になって、路面電車などが走っていた様子がわかる地図をみると、今とだいぶ様変わりしたなあと思ってしまう。

岐阜市は昔というか数年前まで、市内に路面電車が走っていたが、不採算と歩行者への危険性から、全て撤去してしまった。その経緯を知る人たちとこのネタになると、多くの人が「路面電車をなくしたのは失敗だった。名物だったし、移動手段も車に限定されてしまった」と嘆く声を聴いた。一方で、「実際使っている人が少なかったわけだし、仕方ない」という声もあった。

今、似たように樽見鉄道が存続の危機になっている。残したい、という人がいる一方で、採算というどうしようもない資本主義の力が、大きく立ちはだかっている。

岐阜市は、岐阜県の中で最も中心地であろうし、他から人を呼び寄せる力があるはずだ。そういう都市から公共機関による移動手段が消えていく、ということの危うさと寂しさを、地図を見ることで呼び起こされた。

スタッフの方の説明が面白い

2階に通常展示があって、岐阜で見つかった遺跡などが展示されているんだけど、ここにはスタッフの方が何人かいて、展示物などを説明してくれた。

岐阜は西日本と東日本のちょうど中間に位置されるので、発掘されるモノも文化が混在している、とか。

縄文時代には海水がとても上がってた時期があって、岐阜も近くまで海があったんだよ、とか。

発掘されたモノが意味不明で、学者の方々があーだこーだ言っているとか。

これは青銅鏡は地元の中学生が見つけたんだよ、とか。

こういう細かいことや、歴史的背景を説明してくれると、俄然興味がわいてくる。東京でも美術館や博物館に何度も行ったけれど、ガイドはスピーカーだし、丁寧に人が説明してくれることなんてない。休日でもあまり来館者がいないからできる、という皮肉なのかもしれない。

久しぶりに博物館に行ったけど、やはり知的な刺激を受けて面白い。来館者が少なくて、採算がどれだけとれているかは不安になる限りだけど、また行きたい。文化遺産や美術品を見せてくれる存在というのはとても貴重なのだけれど、地方都市で、興味を持つ人が少なく、お金がなくなると危うくなるのかもしれない、と妄想した。そしたら、こんなページを見つけた。

1.「美術館について」

全国的に見て美術館の運営は簡単ではなく、ここ数年でも閉館された美術館は少なくありません。「非営利」を定義している美術館では収入にも限界があり、収入だけで館を維持してゆくことは非常に難しいことなのです。

 多くの美術館は知的財産を支えようとする人間の良心や使命感、歴史や文化に対する畏敬の念、未来に対する責任感と愛情によって維持されています。美術館 や博物館が町にあるということはそういった意識が強いということのあらわれであり、それが維持できなくなるということはその逆を意味してしまいます。

思いがなければ、資本主義は経済性という名の元に容赦なく潰してしまうんだな。また面白い企画展やってくれないかなー。

村上龍から政治の今を感じ取る

逃げる中高年、欲望のない若者たち
村上 龍
ベストセラーズ
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少し脳みそが疲れ気味だったので、軽い気持ちで読めるエッセイを購入。JMMも読んでるし、たまにカンブリア宮殿をみたりもするけれど、村上龍という人は、素直に事象を読むことが上手な気がする。特に政治分野で。

政治に対して何か期待を感じることが難しくなってきている。どの政党や議員を支持すれば、自分や家族や社会が幸せになれるのか、よくわからない感じだ。「辞めろ」「辞めない」とか、「言った」「言わない」とか、どうでも良いことをメディアも報道し続けるし、どうすれば良い政治が行われ、良い社会になると信じることができるんだろう。日本の国家財政の現状、政治家の仕事、民主主義のプロセスについて、村上龍がわかりやすく捉えているのでメモしとく。

日本の国家財政の現状

現在、日本の国家財政は、破綻しそうなほど悪化している。借金の山で、使える金が限られている。つまり、どこかに予算を振り分ければ、他には回せない。

そんな状況で政治家を目指す人の動機がわたしにはわからない。予算をどう使おうが、すべての層に利益をもたらすのは無理なので、必ず誰かから恨まれるのだ。P.27

全体の経済状況が向上していれば、どこかにずさんなお金の流れがあっても、多くの人は気にしない。実際に名目GDPは1996年あたりから頭打ちになっている。正直、僕が大人になって、日本経済が拡大していくような感覚は味わったことがない。

[世] 日本の名目GDPの推移(1980~2011年)

「誰かが損をする」という構図が生まれた途端に、削られた方から強い反対が出る。そういう前提に立つと、どこからどう削るかを考える必要が出てくる。ビジョンやコンセプトがないと、なし崩しだったり、とりやすいタバコなんかの増税になってしまいがちだ。

政治家の仕事

外交を別にすれば、政治家の仕事は、資源の再配分に尽きる。国家資源と税金をどう配分するか、ということだが、日本ではそういった感覚があまりない。P.26

これを行うためには、マーケティング的発想だったり、戦略的なコンセプトを作る、という作業が必要なんだと思うが、政治家の仕事を端的に表していると思う。もともと公共機関というのは、市場原理では非効率なことを、関係ある人からお金を集めて託す存在なのだ。そして、集めたお金をどう配分するかという方針を決めるのが、政治家の仕事だ。

民主主義のプロセス

選挙に行こうにも、どの党に投票すれば自分たちの利益となるのか、若者だろうが、中高年だろうが、よくわからないのではないだろうか。政策で選ぶというより曖昧な好感度で選んでいるのが実情ではないかと思う。P.140

民主主義のプロセスというのは、なんだろうか。民主主義が良い仕組みだと学校の授業で教わったけれど、完璧な仕組みからはほど遠く、むしろその仕組みに行き詰まりすら感じたりしている。ただ、政党や政治家が変わったのではなくて、「利権集団」という構成をして、わかりやすい要望を政治に望む人たちが減ったからなのかもしれない、と思ったりもする。政治家は、そういうふわふわした「何となく」な集団の要望を、うまく掴む必要があるのかもしれない。

政治について、毎日毎日情報に触れているけれど、本当に有効な議論がされている?とついつい疑問に思ってしまう自分がいる。ただ、いろんな情報は大抵はある断面でしかないし、できるだけいろんな見方をしたいとも思う。最後にこの言葉を噛み締めて。

わたしたちの社会で流行する言葉は、ある事実や状況を正確に表現するものというのではなく、ミもフタもないリアルな現実を覆い隠すためにある場合が多い。P.14

県庁おもてなし課

高知だけじゃなくて、どこの地方でも抱えている「地域資源の発掘」と「外貨獲得」。小説のストーリーを通して、それに気づき、どうやってブランディングしていくまでの感覚が味わえるのが面白い。少しはデフォルメされている部分もあるんだろうけど、公務員が「民間の発想」にシフトしていく過程が、追体験しているようで読んでいて気持ち良い。

今住んでいるところはいわゆる「地方」で、自分の故郷ではないけれど、縁があって住んでいるところだし、良い状態であって欲しいと思う。町中を歩いて、衰退する感覚を味わうのは堪え難い。

それでも、いろんな視点を変えることで発見があるし、そこから発想が生まれるし、ストーリーを重ねることで人を惹き付ける可能性がある。そういう感覚に、この本はさせてくれる。

観光産業とか、地方振興に興味ある人は、読んでみるといいよ。

県庁おもてなし課
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FlickrのPrivate設定の写真をFacebookに連携

FlickrからFacebookへの連携はこれまでもあったのだけれど、Private設定されている写真の共有が簡単になったので、メモ程度に書いておく。

Facebookとの連携は、この写真の左上にできた連携ボタンでFacebookを指定するだけ。

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これで、Private設定でもFacebookに表示されるようになる。ちなみに、これはGuestpassが自動で発行されるため、Private設定でもFacebookからは参照できるようだ。

連携する前の公開設定は、こんな感じ。

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Facebookに連携すると、こんな感じに変わって、Guestpassが発行されたのがわかる。

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FlickrのGuestpassの使い方はこれがわかりやすい。結構便利だよね、Guestpass。

Flickrのゲストパス(Guest Pass)を使う方法 | IDEA*IDEA

選挙で不思議に思うこと

統一議会選挙が日曜に行われた。自粛ムードで十分な選挙活動が行えず、現職有利という分析が多い感じだ。個人的にいろいろ何かがおかしいんじゃないかと思うので、この記事を書く。

候補人に関する情報の少なさ

正直言えば、自分の選挙区の立候補者は、選挙の直前にでもならないと興味を持たない。これはこれで一市民として反省すべきことかもしれないが、それにしても追う補任に関する情報が少ない。

新聞は立候補者の名前と所属と簡単な経歴ぐらい。ネットでもほとんどめぼしい情報がないことに驚いた。これで、どうやって立候補者の主張を把握せよと。。。。

せめて現職の議員などは、ネット上に自分のメディアなどをちゃんと持ち、こういう選挙のときに確認できるよう情報を蓄積・公開して欲しい。これも人口逆ピラミッドによるネット軽視の影響か。

地域政党のわかりやすさ

これまで、政党というのは候補者を選ぶ際のレッテルとしてうまくいっている部分はあった気がする。ただ、最近勢いのある地域政党と比べると、既存政党は効果的なレッテルになっていない気がする。

減税日本であれば減税。大阪維新の会であれば大阪都構想。こういう端的で強いテーゼがある政党の方が、非常にわかりやすい。あれもこれも大事なことは多いが、本当に大切なことに的を絞り結束する地域政党の方が、そのテーゼに対して強い推進力が生まれやすいし、選ぶ側としては実現可能性を感じるのではないか。

地方議員は魅力的な職業か

岐阜県では27選挙区中17選挙区が無投票で当選確定した。

’11統一選:県議選 投票用紙半分廃棄に 17選挙区が無投票で /岐阜 – 毎日jp(毎日新聞)

これも自分が今まで無知だっただけに、その制度と実情に驚いた。まず、候補者が一人の選挙区では、何もせずに当選してしまうということだ。信任投票とかないのだね。そして、こんなにも候補者がいないという実情にも驚いた。そんなに魅力的な職業ではないのだろうか。確かに、最近観たSP革命編でも政治家はわかりやすくダーティなイメージで描かれていた通り、政治家に良いイメージというのはないのかもしれないけれど、なり手がいないというのも非常に危機的状況なのではないか。

ネットによる選挙活動の解禁を

僕は専門家でも何でもないので何でネットによる選挙活動が禁止されているのかよくわからないけれど、今回の選挙を通じて本気で解禁して欲しいと思った。

僕は候補者の立候補の動機や県財政に対する見解、地方経済の衰退に対する公共機関の役割、産業振興、子育て支援、エネルギー政策、主義・主張を踏まえたうえで、チェック機能としての議会をどう運営していくかなど、いろんなことを聞いてみたい。でも、駅で辻立ちされても電車は使わないし、後援会なども開催の情報もなければ、行く時間もない。

前述のネットに関する情報の少なさもそうだし、候補人の主義・主張がほとんどよくわからない。でも、ネットインフラを使えば、いくらかそれが解消されるはずだ。ブログでもTwitterでも今ならコミュニケーションツールはいくらでもある。ぜひ解禁して欲しい。

議員データベースの作成を

選挙が終わった後も、市民は議員の活動をチェックせよ、という人がいる。確かに正しい。正しいけれど、バラバラで分散された情報で、かつ十分に公開されていないものに対して、情報公開請求したり興味を持ち続けるような労力を維持するのは非常に難しい。

だから、議員データベースを作成して欲しい。議員の活動実績や議会での質問回数、質問内容、条例作成の有無などなど。チェックしやすいよう情報を一元化し、蓄積することが市民のチェック機能を向上させる手段になる。

選挙が新しいステップに進んでくれますように。

選挙で有名人が当選する2つの理由

愛知・名古屋のトリプル選挙の結果が出た後なので、後だしジャンケンっぽいけれど。その前から書き溜めてたネタを吐き出すだけなので、ご勘弁を。(当選した人どうこうという主旨ではありませんよ。ネタです。)

民衆は、正しく選挙で人を選べているだろうか。最近思うのは、やはりメディアに左右されている部分がまだ多いのではないだろうか。例えば、候補者が出た途端、「ああ、この人が勝つわ」と予想というか確信してしまう。これには、大きく2つの理由があると思う。

ハロー効果

人は、ある人の一部分をその人の全体であると勘違いしてしまう。一部分で良いところがあると、その人が何に関しても良い人だと思い込んでしまうのだ。これをハロー効果という。

例えば、立候補者が好意的にメディアに登場すると、選挙民はその人が良いと思ってしまう。となると、政策の中身というか全体構成はあまり気にせず、心地よいことを叫んでいる人が勝ってしまう可能性もある。

無知のリスク

メディアへの露出量の違いから、候補者に対して獲得している情報量が相対的に異なると、人は情報が多い方を選ぶ。これは、知らないこと自体がリスクであり、より知っている(と思っている)方を選ぶ方が心理的に安心するからだ。

というわけで、ハロー効果と情報量不足による不安から、知名度が高い方が勝つという方程式が導かれてしまう。

必要なのは対立軸の明確化

これを覆すためには、選挙民が正しく政策を理解することにある。これをサポートするのがマニフェストだったはずだが、最近のマニフェストも、心地よい響きが文書化されただけで、選択に影響を与えていないのではなかろうか。

必要なのは、「正しい」対立軸をはっきりさせることだろう。例えば、「減税」と「増税」では対立軸にはならない。どちらか選べといわれたら、「減税」を選ぶに決まっているからだ。「減税」の先にあるのが企業誘致による景気浮揚なのか、地域主権の象徴なのか、公務員改革なのか。よくわからない。

ある対立軸を中心に、それぞれが主張することで差異がわかり、判断できるのであって、会話にならないようなバラバラの主張をされると、結局は上記の理由から有名人が勝ってしまう。候補者が叫ぶ争点は、選挙民にとって正しい選択をできない場合もあるということだ。そういうときこそ、対立軸を設定し直すという意味で、メディアの役割は大きいはず。

リアル公務員

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公務員のイメージに対して正面から対峙しているのは好感。ここでシニカルに描かれている内容は、自分が公務員に対して抱いているイメージそのものだったりする。

「官僚」という言葉には悪いイメージがつきまとっているが、そもそも経営用語として「官僚型組織」というものがある。それは、個人の裁量を小さくして、ルールによって組織を運営するというものだ。これは、組織の規模が大きくなったときに、ある程度はどうしても通らなければならない関門であったりする。

そして、公務員は正にこの官僚型組織でならなければならない。その理由は、日本が法治国家であるから、ということになる。しかし、もうひとつ理由があると思う。それは、ボスである首長が選挙によって定期的に交代されることが自明だからだ。しかも選挙期間中はほぼボスとしての仕事が成立しない、という状況もあり得る。ボスの存在が組織のガバナンスを十分に利かせられないからこそ、公務員はルールによって成立しているのだろう。

とはいえ、法も万全ではない。時代は移り変わるし、個別の事象に対応できる部分は限られている。そういう部分を基礎自治体の職員が機微を働かせて埋めているのだろう、というのも理解できる。

また、各省庁や国・県・市町村によっても文化やキャラクターに特徴があることのが面白い。官僚型組織という括りだけでなく、やはり各組織が固有に醸成する「組織文化」というものがあるのだと思う。

肩書きに準じた印鑑の位置を気にしたり、「万人に平等」の名の元に非効率な結果になったり、一市民からみれば疑問に思う内容も描かれているけれども、それでもその組織の中で何とか意義と活路を見いだそうと努力する個人の姿も浮かび上がる。そういう個人が少しずつ増え、意識が醸成されれば、今の「役人」と言われる組織文化が変わり、公共サービスの質も上がったと言われるのではなかろうか。(既にいろんな自治体でそういう変化の動きが見えているのは嬉しい限り。)

それにしても、自分が住む役所に総合窓口を導入していただきたい、という気持ちが不意にわき上がる一冊だった。