リアル公務員 町田智弥 かたぎりもとこ 英治出版 2010-12-25 |
公務員のイメージに対して正面から対峙しているのは好感。ここでシニカルに描かれている内容は、自分が公務員に対して抱いているイメージそのものだったりする。
「官僚」という言葉には悪いイメージがつきまとっているが、そもそも経営用語として「官僚型組織」というものがある。それは、個人の裁量を小さくして、ルールによって組織を運営するというものだ。これは、組織の規模が大きくなったときに、ある程度はどうしても通らなければならない関門であったりする。
そして、公務員は正にこの官僚型組織でならなければならない。その理由は、日本が法治国家であるから、ということになる。しかし、もうひとつ理由があると思う。それは、ボスである首長が選挙によって定期的に交代されることが自明だからだ。しかも選挙期間中はほぼボスとしての仕事が成立しない、という状況もあり得る。ボスの存在が組織のガバナンスを十分に利かせられないからこそ、公務員はルールによって成立しているのだろう。
とはいえ、法も万全ではない。時代は移り変わるし、個別の事象に対応できる部分は限られている。そういう部分を基礎自治体の職員が機微を働かせて埋めているのだろう、というのも理解できる。
また、各省庁や国・県・市町村によっても文化やキャラクターに特徴があることのが面白い。官僚型組織という括りだけでなく、やはり各組織が固有に醸成する「組織文化」というものがあるのだと思う。
肩書きに準じた印鑑の位置を気にしたり、「万人に平等」の名の元に非効率な結果になったり、一市民からみれば疑問に思う内容も描かれているけれども、それでもその組織の中で何とか意義と活路を見いだそうと努力する個人の姿も浮かび上がる。そういう個人が少しずつ増え、意識が醸成されれば、今の「役人」と言われる組織文化が変わり、公共サービスの質も上がったと言われるのではなかろうか。(既にいろんな自治体でそういう変化の動きが見えているのは嬉しい限り。)
それにしても、自分が住む役所に総合窓口を導入していただきたい、という気持ちが不意にわき上がる一冊だった。