いろんな企業の方と話したり、調べたりすると、業績が落ちていく要因は、環境の変化に対応できなくなることです。
特に最近はビジネス環境の変化がはやく、これまでのビジネスモデルが通じなくなったり、あるいは製品やサービスの寿命が短くなっていることから、新規事業開発の重要性は年々高まっています。
以前記事を書いた、リクルートの新規事業に関する本では、継続的に新規事業を開発していくための社内の仕組みやカルチャーが書かれていました。
リクルートの手法から学ぶ新規事業の作り方・育て方
今回読んだ本は、特定の企業ではなく、幅広い業種を対象にした調査に基づき、その結果から新規事業を創造する人の特性、新規事業を進めるときの困難の種類、組織として新規事業を成功させるために求められることなどが書かれています。
田中 聡,中原 淳 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2018-01-29
その中から、新規事業を成功させる組織の特徴を整理してみます。
アイデアを生み出せる組織であるか
新規事業というと、何か素晴らしいアイデアがないと始まりません。しかし、そのためには新しいアイデアを何度も生み出せる状況を作る必要があります。
新規事業は「数」の勝負 です。新規事業の成功確率を高めることに限界がある以上、成功を収めるには数の勝負しかありません。すなわち、新規事業に挑戦する機会の総数として“挑戦母数” を増やす必要があります。新規事業の挑戦母数を増やすためには、事業を創る組織風土が醸成されている必要があります。しかし、これは、一朝一夕に成し得るものではありません。
リクルートの本を読むと、この組織風土が醸成されているのがわかります。
様々な人がアイデアを生み出し、トライできる環境を作らないといけないんですよね。簡単じゃないですけど。
アイデアの質だけでは成功できない
新規事業だと、最初に優れたアイデアがないといけないというイメージがありますが、アイデアの質だけでは成功しないことが、本書の中では何度も述べられています。
成功率を高めるためのポイントは、ずばり経営層のコミットです。
つまり、 新規事業促進施策で重視すべきは、アイデアの良し悪しだけではなく、プラン採用後に資金や人員を動かせることを保証するメカニズムの有無なのです。
先行研究によると、 アイデアが成功するには、そのアイデアが成功する見通し(アイデアの質) よりも、そのアイデアに政治的な支援を集められるかどうかに関する見通しのほうが重要である ことが指摘されています。
図表41は、執行役員以上の経営層が管掌している新規事業と業績の関連を示すデータです。低業績の割合が10.8%であるのに対し、中業績になると27.3%、高業績では33.7%と増加していくのがわかります。この結果から、 経営層が管掌している新規事業ほど業績が上がりやすい ということがわかります。
経営層が放任するのではなく、ある程度自主性をリーダーに与えながら、人やお金などの経営資源を調整したり、困ったら一緒に考えていく姿勢が、制約を取り払い、モチベーションを高めていくということです。
新規事業は様々な困難があり、その種類も本書では具体的に書かれています。なので、モチベーションを上げる状況を作るのは、とても重要になるのでしょう。
これに合致するように、「ジギョつく」でサイバーエージェントが、2014年に制度を廃止していたことは驚きました。アイデアは出るけども、ビジネスとして育ったものはなかったそうです。
つまり、アイデアは単発ではダメで、さらに新規事業に対する経営層のコミットメントが重要になるということです。
本書では、新規事業を成功させる個人の要素についても書かれています。新規事業にはどういう困難が待ち受けていて、どのように乗り越えるか、という内容は非常に示唆に富んでました。
新規事業を考える人以外にも、組織で新しいことに取り組み人におすすめです。
田中 聡,中原 淳 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2018-01-29