【書評】マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

新年は、普段のことを忘れて、未来や世界のことに思いを巡らす良い機会です。そんな折に、ちょうどマッキンゼーが書いた未来に関する本があったので、ご紹介です。

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本書は、マッキンゼーの経営および世界経済の研究部門である、MGI(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)のディレクターであるコンサルタント3名による未来予測本です。

 

これからの日本の位置付けを再考するために読む本

経済的な数値をみれば、日本は経済的に成熟した国に該当します。欧米や日本などの先進国が経済的な成長を徐々に停滞させていく中で、これからは世界の経済は新興国へ中心がシフトしていきます。

2010年から2025年の間、世界のGDPの成長のほぼ半分が、新興国の440都市により生み出されると予測される。こうした都市の95%は中小規模の都市であり、西欧企業の経営者はその名前すら聞いたこともなければ、地図でどこにあるのか指し示すこともできない都市である。

そんな世界の状況でどうビジネスを考えるか、自分の働き方や生き方をどう捉えるかを考えるきっかけになることが、本書を読む大きなメリットです。

 

これからのビジネスを決める潮流を知る

今後世界を取り巻く破壊的なトレンドとして4つ紹介されていますが、この記事ではそのうち特に2つに注目します。

 

新興国の都市化が進む

まず一つ目は、「新興国の都市化」です。

これからは、新興国の都市化が急速に進んでいきます。この本を読んでいても、全然知らない都市の名前がたくさん登場していました。

ヨーロッパとアメリカの都市化が18世紀と19世紀に起こり、ラテンアメリカの都市化が20世紀後半であったのに対し、それぞれ10億人以上の人口を擁する中国とインドは、現在がまさに都市への人口移動の真っ最中なのである。 中国の李克強首相はこう語っている。「都市化は、単なる都市住民の増加や都市地域の拡大ではない。もっと重要なことは、産業構造、雇用、住環境それに社会保障といったものすべてを、地方型から都市型へと変えなければならないということなのです」

 

これによって、社会の様々な構成要素が変化していきます。また今までは有名でなかった新しい都市が、ビジネスを活況させることになるでしょう。それは間違いなく日本ではありません。

どの都市からどのようなイノベーションが生まれるか。どの都市を戦略的に重要な拠点と定めるか、どのような人材をその都市から獲得するか。考える事はたくさんあります。最近だと、中国の深センが「ハードウェアのシリコンバレー」と呼ばれていますが、そのように新しい勢いある都市が、今後もいろんな都市で発生するでしょう。

また、新興国の都市が発展することで、大量の人たちの所得が増えて、中間層になります。

2012年に世界人口が70億人を超えたときには、大きな論争が湧き起こった。だが、わずか35年の間に、世界の消費者層に30億人が加わったことのほうが、はるかに重要な進歩の道程である。(注12) このことは、1960年代半ば当時に地球上にいた全人類の人口と同じ数の人々が消費者層に加わった、ということなのだから。(注13) ドイツ銀行のグローバル・ストラテジスト、サンジーブ・サンヤルはこう指摘している。「次の20年間について真実を語ると、新興国が中流の地位を獲得することだ。もちろん他の新興地域も同じような移行を果たすだろうが、この変身の圧倒的主役はアジアだろう」(注14)

 

これだけ大量の人たちが消費する社会になると言う事は、ビジネスのトレンドも大きく変わるでしょう。そしてその中心地はアジアなのですね。

 

世界的に高齢化が進む

高齢化は日本の専売特許だと思っていましたが、今後の人口動態の予測では、世界中の人口が高齢化に向かうようです。

世界を変える第3の力は、人口動態の変化である。簡単に言ってしまえば、人類の平均年齢が上昇してきているのだ。出生率は低下し、世界人口は劇的に老化してきている。先進工業国では、人口の老齢化がもう数年前から顕著となってきている。日本とロシアでは、何年か前から人口が減少に転じている。この人口減少という現象は、いまや中国にまで拡大し、もうすぐラテンアメリカ全体に広がるだろう。

 

ここから言える事は、社員と顧客が高齢化していくということです。

顧客サービスは、高齢者に合わせたものに変化していくことが重要になると書かれています。イオンモールや富士通のらくらくフォンなど、日本の事例が多く登場していました。

また、社員の高齢化についても考える必要があります。

高齢になり、必ずしもフルタイムで働くことが魅力的だとは考えない社員が、社内から次第に減少していくことに対処し、彼らを企業内に取り込むためには、企業のほうがグレーゾーンの働き方に慣れていかなくてはならない。明確な線引きではなく一定の幅のある働き方を許容すれば、社員と会社を互いにつなぎ止めておくことができるだろう。だが、その条件は、年配社員のほうに魅力的なものにする必要がある。

 

今は日本で働き方改革が叫ばれ、人材確保や高齢者の活用が叫ばれていますが、この流れは今後、様々な国でも発生していきます。

これらを考えると、「日本は課題先進国」とはうまく言ったもんだなと再認識します。

 

自分のビジネスやキャリアの在り方を考えよう

それ以外にも、技術革新やグローバル化の進展など、とても多い事実とヒントが本書では取り上げられていました。

個人的にはやはり、これからは新興国の都市がビジネスの中心になることと、世界でも高齢化が進み、日本は課題先進国としていろいろなネタを持っているという事が印象に残りました。

後は、これらを自分のビジネスやキャリアにどう活かすかは自分次第です。最後にキャリア形成についても、少し触れておきます。

労働市場は、企業ほどには柔軟性が高くないことが証明されてしまった。労働市場が機能しなくなる一連の麻痺が生じたのを私たちは観察してきている。繰り返し行われる事務作業や、工場の作業プロセスは自動化されてきた。一方では低賃金の手作業による職種の需要があり、もう一方では高賃金・高スキルの職種の人材が求められるという二極分化が、労働市場で着実に進行してきたからである。そして、この二極分化の中間にいた労働者の職が、技術革新の進行と新興国との競争とにより蝕まれてきたのだ。

 

LIFE SHIFT」でも述べられていましたが、これから長い労働人生の中で、同じ職業や同じスキルで生き残っていくことが難しくなっていくでしょう。そのような状況で、技術革新やそれに応じて変化していく社会でも楽しく働けるように、日ごろから自分のスキルや戦う場所を考えておく必要があるのです。

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同じくマッキンゼーが出している、最近のトレンドを踏まえたセールス活動のあり方を書いています。今読んでいますが、セールスの重要な変化や具体的な取り組みが豊富に書かれていて、セールスを考える人には多くのヒントが含まれています。「デジタルマーケティングの教科書」と合わせて読むと良いと思います。

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キャリア形成を考える上では、この本は大きな刺激をくれるはずです。これからの働き方や企業の求められる対応人事制度など、本書と共通する部分が多いです。

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