「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム

最近友人と、「ここ最近の中華系の電子製品はバカにできない」という話になりました。ひと昔は「安かろう悪かろう」というイメージをもっていましたが、最近みる中国製の製品は、パソコンやスマホ、スマートウォッチなどいろんな製品のコストパフォーマンスは、実用レベルで高いなと感じています。

アクションカメラなんかは、様々な商品がアマゾンなどを席巻しており、マーケットリーダーだったはずのGoProは苦戦しています。

Amazon.co.jp: アクションカメラ

GoProにみるアクションカメラ市場の現在

先日ご紹介した「マッキンゼーが予測する未来」でも、中国をはじめ様々な新興都市が勃興してきているというのを読み、新興都市の動向に興味を持ったところでした。

そんな時にこの本を知り、深センがどのようにエコシステムを形成してきたのかを、理解したいと思ったのです。

[amazon_link asins=’B077HX882D’ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’548bc749-27c2-4a51-bac3-7dea134ad9db’]

 

本書は、実際に深センにある中国企業と携わり、最後には中国で起業した著者が、実体験をベースに深センのこれまでの発展と現状について詳しく書いたものです。実体験をベースにしているだけあって、非常にリアリティかつ詳細で、実態を理解するのに適した内容でした。

 

本書を読んだ感想ポイント

深センの成長は、著者のビジネスの変化と合わせて、3つのステージで紹介されています。これが、「品質の低い下請け工場」から「イノベーションを生み出すシリコンバレー」に変化するまでの流れを理解できました。

 

激安で似たような製品が大量に出現する理由

前述のアクションカメラのように、「激安で似たような商品が、様々なブランドで大量に登場しているのはなんでだろう」と不思議に思っていました。

その理由も、本書を読むとよくわかります。

「白牌/貼牌」を使えば、一切開発、製造することなく、簡単にメーカーになれてしまう。 「白牌/貼牌」は、扇風機、冷蔵庫、洗濯機といった白物家電から、パソコン、MP3プレーヤー、デジタルカメラといった電子機器製品、そして携帯電話まで対象はさまざまだ。最近ではホバーボード(電動スケートボード)やアクションカメラなども人気を集めている。技術が一般化し、大企業以外でも製造できる状況になれば、無数のメーカーが白牌を怒濤の勢いで作り出す。

深センが築き上げてきた、誰でも真似しやすくて、安く調達できるエコシステムが存在しており、誰でも簡単にハードウェアメーカーになれるのです。

 

中国は商取引としては未成熟だが、一方で日本はニッチな国になっている

本書の中では、著者が中国の商慣習や労働者の取り扱いについて苦戦する様が描かれています。これを読むと、日本と比べて契約等が十分に成立しない社会であることがわかります。

しかし中国企業はというと、契約書などなんの意味も持たず、仕様も守らない。納期に対する責任感もない。途中で価格を変えることもザラだ。しかもこちらが主張すると逆ギレしてすべてをひっくり返そうとしてくる……。付き合うには大変な相手だった。  支払いもそうだ。台湾や香港の相手には100%L/C(信用状)で取引していたが、中国相手では現金でなければ商売ができない。手付金を払わなければ発注できないし、途中で関係がこじれて協業がおじゃんになると、その手付金は返ってこない。もちろん返さない中国企業の違法行為なのだが、裁判をしても外国人が勝つことは困難と八方塞がりだった。

一方で、日本は独自の商慣習やルールが存在しており、ニッチな国という姿が浮かび上がります。それによって、世界の市場から相手にされなくなる可能性があるんではないかと感じました。

もう1つの悩みは、中国企業が日本市場向けの案件を嫌がるようになってきたことだった。日本向けは品質要求がべらぼうに高い上に、日本にしかないガラパゴス的な規制が多い。納期もうるさい。それでいて市場は小さいので数ははけない。面倒な割に儲からない日本向け案件はやらないという工場が増えつつあった

「新興国の工場は品質が低い」という目線で見ていたら、逆に日本は「面倒な市場」という捉え方をされているんだなと思うと、世界の大きな流れを見失わないようにしなければいけないと思いますね。

 

深センはイノベーションを創出する場所になっている

僕の意識は、「最近中国の製品も品質が良くなってきたな」という程度で止まっていましたが、最近はそういうステージすら抜け出して、イノベーションを起こす場所に進化しているということを学べました。

深センにある企業では、アリババと並んで中国トップ企業と言われるテンセントや、ドローンで7割程度のシェアを持つと言われるDJIなど、すでに世界的に地名どの高い企業が拠点を置いています。

Category:深センの企業 – Wikipedia

 

まとめ

マッキンゼーが予測する未来」を読んだ時も思いましたが、世界は確実に変化してきており、数年前の常識やイメージは、足かせになるかもと感じています。

深センの勢いはこれからも止まらないでしょう。一方で日本は成熟した都市として衰退をしていくのかもしれません。深セン、一度見て見たくなりましたね。

[amazon_link asins=’B077HX882D’ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’548bc749-27c2-4a51-bac3-7dea134ad9db’]

 

 

関連本

マッキンゼーの予測する未来

新興都市の隆盛は、これから本格化するというのがよくわかる本です。

【書評】マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている