マーケティングの神様コトラーの最新刊。マーケティングは時代によって変化してきた。マーケティングは製造中心の1.0、消費者志向の2.0を経て、今は価値中心の3.0に移行している、というのが軸にある主張だ。
もうブランドは自分でコントロールできない
消費者の恊働というこの成長中のトレンドは、すでにビジネスに影響を及ぼしている。今日のマーケターは、もはや自社のブランドを完全にコントロールすることはできない。P.26
自社のブランドをコントロールすることが難しい時代になった、という表現は、本の中で何回も登場する。消費者がエンパワーメントされ、社会で恊働されるようになったからだ。
では、どうすれば良いか。
消費者コミュニティをむりやりコントロールしようとするのではなく、自分の代わりに彼らにマーケティングをやらせるのである。マーケターは自分のブランドのDNAに忠実であればよい。P.69
自分のDNAに忠実に行動する。消費者をコントロールすることは諦めて、そのDNAに共感する人たちにマーケティングしてもらう、という発想の転換が求められるのである。
このあたりは、「ソーシャルインフルエンス」でも書かれていたことだ。
企業は長期的志向に移行する
株主は基本に戻って、企業の価値は主として長期的な未来のキャッシュフローから生まれ、未来のビジョンが企業の業績を決定するのだということを理解しなければならない。P.154
金融の発展によって、企業は短期的志向へのプレッシャーが増していた。しかし、その結果は長期的な企業の利益を時に害し、あるいは一貫性のない行動によってブランドを毀損する結果になったとも言われている。
価値中心のマーケティングに移行するということは、市場がそれを望むことになる。一貫した価値の創造を実現とは、消費者とのエンゲージメントを高めたり、行動の連続による変革のことであり、それには時間が必要になる。そのとき、まさに株主は基本に戻って、長期的な未来のキャッシュフローを創造するために投資するのだ。
逆に、企業も新しい説明責任が必要になってくるとコトラーは述べている。
経営陣には持続可能性の長期的な利益を、できれば財務的観点から、株主に伝える義務がある。われわれは財務データとして数量化できる重要な測定項目を三つ選び出した。コスト生産性の向上、新しい市場機会が得られることによる売上の増大、企業のブランド価値の向上である。P.168
ここで重要なのは、企業への信用だ。消費者との間に信用が築かれることで、コミュニケーションコストが下がり、社会的意義が認められ、一層ブランド価値が向上していく。そのためにも短期的な行動によって、ブランドを毀損することは、大きな誤りにつながる。
最後に余談。最近、マザーハウスのカバンを買った。純粋にカバンのデザインなどをベースに選んだんだけれど、やはりこれがバングラディッシュで作られたという感覚が、何とも言えない満足感を与えてくれることを実感した。これが価値中心のマーケティングであり、経験によって与えられる満足なのだ。