佐々木俊尚さんの新刊。Kindleオーナーライブラリーにあったので、気軽に読んでみようと思った次第だったのですが、正直予想以上の衝撃を受ける良書でした。
古代の歴史から本が始まったときは「この本、どうなるんだ?」と思いましたが、歴史から紐解く価値観や社会の仕組みを紐解いており、そして現在の社会がどうなっているのか、未来の社会がどうなっていくのか、というストーリーへつながる運びは、壮大な時間軸から導かれる楽しさと、納得性を与えるに十分なものでした。
ジャンルとしては、少し前に読んだ「未来予測」と似ていると思います。「価値観の変化」や「場の創出」などは、共通するテーマです。
学校の歴史ではヨーロッパが常に世界の中心と錯覚してしまうかもしれないが、中世まではヨーロッパは世界からみて辺鄙な場所。それが世界の中心に踊り出ることで変わった世界の仕組み。その背景にあった、印刷技術による宗教の弱体化。
これらの歴史をひとつの流れとして捉えることで、みえてくる価値観と仕組みの変化があります。
国家や行政の役割は変わろうとしている
本書では、超国籍企業の話が出てきます。国家という枠組みを飛び越えてしまう存在として。それ以外にも、クラウドソーシングなどで物理的な距離は分散してしまっているし、個人の単位でも国境を飛び越えやすくなっています。
超国籍企業については、「企業が「帝国化」する」が面白いです。
社会に入る前に読むのがおすすめ。「企業が『帝国化』する」 | Synapse Diary
そうなると、国の権威や財政というのは、相対的に低下します。ただその半面、グローバル化によって世界が平等になりつつあり、富が分配され、先進国は相対的に貧しくなっています。そして、国家に頼ろうということになるわけです。
ただ、行政も国民の生活を支える力が低下しているので、別の枠組みが求められています。それが「小さな政府」から出てきたアンチテーゼである「大きな社会」であり、「新たな公共」であり、「オープンガバメント」です。ざっくりまとめてしまえば、これらはいずれも行政単独ではなく、民間やコミュニティの力を利用し、行政機関はプラットフォームになろう、というアプローチだと思っています。
今後のパブリックサービスはどうなるか?
今後の行政機関はどう事業を展開していくべきでしょうか。ひとつのヒントは、やはり本書に書いてある通り、「場」の創出にあると思います。「場」を作り、「場」の上に集まる人たち全体に利益を与える仕組みにすることが、特に基礎自治体などのレベルではひとつのアプローチになるのではないでしょうか。
これまで構築されてきた様々な社会的スキームが、いろいろほころびを帯びてきています。どこかで転換しなければならないと思いますし、今は価値観を含め変化している時なのだとすれば、形になって表れるのも近いのかもしれません。
そして、それを実現するためにも、いろいろ実験する場が必要なのだと思います。
「神が世界をこう定めている。それは聖書に書かれている」と考えるのではなく、「世界はどう定められているのかわからない。だから自分たちでひとつひとつ実験して証明しながら確認してみよう」と考えるようになります。この考え方こそが近代科学の出発点でした。