生まれてくるわが子へ。この国の社会保険は希望がありません。そんな社会インフラが不十分で、生きていくのが大変な世の中に君を誕生させることに、個人的には大きな喜びを感じながら、その反面申し訳ない気持ちです。君やその先の世代の生活を憂いてしまいます。
まず、この国の社会保険がなんで希望がないかを説明しておきます。
社会保険とは、国が国民の生活のリスクを回避・緩和するために設ける、社会保障制度のひとつです。
社会保障は、次の5つの種類があります。
・社会保険(医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険)
・公的扶助(生活保護)
・社会福祉(老人福祉、障害者福祉、児童福祉、母子福祉)
・公的衛星及び医療(感染症対策、食品衛生、水道、廃棄物処理)
社会保険の中で、特に年金保険については、僕らやもっと年配の世代と比較して、著しく恩恵を享受できません。恩恵を享受できないばかりか、僕らなどの世代を支えるための負担だけで、自分たちの生活を切り詰めなければならないでしょう。
どれぐらいの負担になるかといえば、およそ現役1人で、高齢者1人を支えなければならないぐらいの負担です。毎月20万ぐらい、社会保険料として徴収されるかもしれません。
こうなってしまう理由は簡単で、次の2つです。
・この国の公的年金制度は、賦課方式といって、若い世代が年配の世代を支える仕組みを採用していること
・少子高齢化によって、労働する世代に対する高齢者の割合が今後も高くなり続け、高止まりすること
人口予測は今後大きくはずれることはないでしょう。なので、この状況は大きく変わることはありません。
仮に少子化対策がうまくいって、出生率が上昇したとしても、今から生まれた子どもたちが社会保険料の支払いを開始するまでに20年かかります。
そこからさらに数年、数十年かけて、やっと公的年金の財政状況は改善の兆しを迎えることでしょう。だから、出生率が改善しても、君が社会保険料を負担する
頃に問題が解決しているわけではありません。
または、大きな戦争が発生したり、隕石が日本のどこかに落ちて、不幸な惨劇ながら多くの人が亡くなる事態が発生すれば、この状況は変わるかもしれません。ただし、その可能性は低く、また発生した場合は、年金よりも優先される事項が大量に生じていると思いますが。
アドバイスはいくつかあります。
・この国に住まないこと
覚悟さえ決まれば、大きな障害はないでしょう。税金が低い国、社会保障が充実している国、仕事のチャンスが大きい国。世界に目を向ければ、選択肢が広がるのは間違いありません。ただ、老いた親は近くにいけないと思うので、その点だけは了承してください。
・この国に期待しないこと
この国に住むのであれば、国が助けれくれることを、過度に期待してはいけません。年金は、自分で積み立てましょう。君が大人になるころに、公
的年金制度がどのように改革されているかは不明ですが、社会保険料の支払いに、法的拘束力がないのであれば、支払わず、自分の積み立てに回すことも、手段
のひとつとして考えても良いかもしれません。
・国家の制度を選択する、ということ
現時点では国家の考え方として、2通りあります。「高福祉・高負担」「低福祉・低負担」です。前者は、「スウェーデン・モデル」といわれるような北欧諸国が代表的であり、後者はアメリカが代表例です。
どちらが良いかは賛否両論あり、どちらも結論が出ていません。ただし、前者は国民の流動性がある程度低いことを受け入れる必要があると思いま
す。これは、高負担を求めることが、より豊富な賃金を求める移民の意図とそぐわない可能性が高いからです。その結果、移民が入ってこないということは、国
内で労働力を確保できない、低賃金となる職種の従事者がいなくなる、というデメリットが予想されます。
一方で、後者の場合は低福祉である代わりに、低負担となるので、移民にとってハードルは低くなります。これが国内の労働力を増やす源泉とすることも可能になります。
まず国家は、それぞれそういう制度の違いを抱えているのだということを、十分に理解してください。そして、自分が欲する制度を持っている国に住むか、又はこの国で、自分が求める制度設計を行おうとしている政党・政策を支持するようにしてください。
ちなみに、日本は「中福祉・中負担」といわれていますが、残念ですが「中福祉・高負担」ぐらいの感じにならざるを得ないそうです。そうですよね、お金に余裕はないのですから。
・幸せの基準を考えること
個人的な意見に終始してしまいますが、「高福祉・高負担」の国では、労働のみでない、生活の充実さを求めます。生活を取り巻く社会インフラが
充実しているのですから、多少の収入の多寡は気にすることなく、家族やプライベートの時間についても、重大だと捉えるようになるでしょう。
一方で、後者の場合も家族を大事にする考えを持ったりすることに変わりませんが、自分で頑張る部分が大きくなるので、充実した経済状態を作り出すためには、能力が高い・長時間働く、など、収入の多寡を追求せねばならない要素はあるでしょう。
ここで言いたいのは、どちらも良い・悪いの問題ではないということです。自分がどのような生活に幸せを感じるか。それを常に考え、選択するこ
とが重要です。一般的なイメージでの幸福は、気にする必要はありません。他人に迷惑をかけない限り、君は自由です。いろんな考えを持ってよいし、それに
従って行動することも可能です。
これらのささやかなアドバイスを踏まえ、充実した人生を歩んでいけたらなら、親としてそれ以上の幸福はないと考える今日この頃です。
以下、参考にしたもの。
鈴木 亘
東洋経済新報社
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金融日記:移民政策と福祉国家
スウェーデン・モデルは成功か失敗か 福祉大国「素顔」を現地ルポ JBpress(日本ビジネスプレス)
日本は小国になれるか – 池田信夫 blog
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