バカヤロー経済学

 

経済の根源や政治との絡みを中心に、対談方式で綴られた一冊。
少し大きな枠組みで経済と政治を捉えて、わかりやすく説明されているので、頭にスムーズに入ってくる。

経済とは「インセンティブ」である

面白かったのは、アメリカの地方税と教育の関係。日本では国税で教育が行われているが、アメリカでは地方税で教育が行われている。よって、住民が教育制度をより身近に感じており、地元の教育制度にPTAなどを経由して活発な議論が交わされるそうな。

今、地方分権がマニフェストや地方知事などを通じてよく取り上げられているけれど、地方分権のひとつの形って、こういうことなんだと思う。

自分たちが払った税金が、自分たちが関わる行政サービスに使われていることが、よくわかる形なのだ。

自分たちが意見を言ったりする行政サービスの形によって、自分たちが支払う税金の多寡も決まる。

そうやって、地元の人たちに「インセンティブ」を感じさせる制度設計から、地方行政サービスの充実は達成されていくのだろう。

地方への税源委譲と年金の建て直しは矛盾する

現在の地方自治体の税源は、地方税は3割で、残りは交付税とか補助金とか、国からの補填で賄われているそうな。これが20兆円。

この規模を税源委譲しようとすると、どうしても消費税を委譲しなければいけないそうだ。

このロジックが理解できなくて、少し調べてみた。消費税による税収は、平成19年度時点で約10兆円。
http://r25.jp/b/wp/a/wp/n/%8F%C1%94%EF%90%C5%96@/i/%90%C5%8E%FB%82%CC%90%84%88%DA

さらに、ここを見れば、国税全体の税収のうち、消費税が占める割合が20%弱だから、他の税源も何種類かあるにせよ、消費税は委譲せざるを得ないだろう、という意味かな。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/pdf/0202.pdf

さて、ずっと前から議論されているのが、消費税増税を、年金の財源に充てるというもの。年金というのは、保険と同じ考えで、規模の論理によって成立するもの。だから、年金制度は国が行わなければいけない。

すると、地方分権を実現するためには消費税は地方に委譲するのが望ましい。
年金は国で賄わなければいけない。

矛盾する。確かに。良い解決策ってないんだろうか。

官僚の政治任用

アメリカが一番わかりやすいけど、官僚の政治任用というものがあって、政権交代でどばっと官僚が任用されて、それまで任用されていた人が解雇される、という現象が起こる。

官僚というものは、次の2つの役割が求められるそうだ。

①政治情勢からは中立的に行政事務を行う
②政治=民意であるから、それに従った政策を実行する

これは矛盾する。そこで、官僚の政治任用でバランスをとるんだろう。アメリカはその規模が大きいけど、他の先進国も少なからず政治任用が行われているんだそうな。

でも日本はゼロ。

「政治任用」なんて概念は、初めて知ったけれど、そういう観点でみると、制度設計のどこに問題があるかが見えてくるから不思議。

対談形式であるのに、著者は一人という不思議。政治的事情から社会的抹殺なんて、ドラマのような世界が本当にあるのだろうか。本当のところは、よくわからない。


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