【書評】ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

「オリジナリティが大事」だと言われていますが、それってどうやって発揮するんでしょう。

情報化社会によって、情報の非対称性などではオリジナリティが生み出しづらくなっていて、独創的な発想やイノベーションが重要視されています。妖怪ウォッチが作られたときも、「普通であること」が主人公のコンプレックスになっていて、「人と違うこと」は「普通であること」よりも上位であるという価値観になっているんですね。

かといって、「どうやったら自分や自社は『オリジナリティ』を発揮できるか?」と問われると、よくわからないのではないでしょうか。

ということで、今回読んだのは、どういう人が「独創的な発想や行動ができるのか」を示した一冊です。

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本書は、様々なアプローチから科学的な検証を積み上げながら、個人や組織にオリジナリティをどうもたらすかをまとめたものです。ちなみに、前書きがFacebook COOのシェリル・サンドバーグ、日本語版あとがきが「ストーリーとしての競争戦略」で有名な、経営学者の楠木建という贅沢さです。

独創的な発想や行動をもたらす要素を知る上で、いろんなヒントが盛り込まれていて、楽しんで読めました。

 

独創的な発想を持つは特別か?

一般的に人は、独創的な発想や行動ができる人というのは、何か特別な才能を授けられたものだと思ってしまうようです。

私たちは、創造性を発揮して世界を変えようとするオリジナルな人たちを見て感心しつつも、彼らは私たちとは異なる才能をもった人たちなのだろうと考えるものだ。遺伝的にがんや肥満、HIVになりにくい幸運な人たちがいるように、創造性に優れた人たちは生まれながらにリスクに対する免疫が備わっているのだと思っている。

不安に強く、社会に受け入れられなくても平気な性質なのだ、と思っている。  因習を打破し、反抗し、我が道を行き、人とは反対のことをするように自然と運命づけられていて、恐怖心や拒絶や嘲笑に惑わされないのだと思っている。

でもやはり同じように生まれた人間なので、決してそういう才能だけで片付けられるものではなさそうです。本書から引用します。

私は本書で、オリジナリティには徹底的にリスクを冒すことが必要だという通説をくつがえし、オリジナルな人たちは私たちが思うよりもずっとふつうの人たちなのだ、ということを示していきたいと思う。

逆に、小さいころから天才と言われる人には、オリジナリティが欠けることも多いのだと述べています。成果を残す人=才能がある人、ではないことは、別の本である「GRIT」でも書かれています。

才能や学歴ではない。仕事で結果を残せる人は、何が違うのか

生まれつきというもので済ますのではなく、どういう要素がオリジナリティを生み出すのかを詳細に分析したのが本書の素晴らしいところです。

 

成功する起業家はリスクテイカ―か?

会社が成長するにあたって、創業者や引っ張っていくリーダーの存在は重要です。それらの人々は、一般的にはリスクテイカ―と見られます。他の人々には取り柄ないリスクを平気で取るように見えるからです。

しかし本書によると、そのような人も実際にはいるものの、現実的にはリスクを好まない人も多く存在し、最終的にリスクテイク(例えば起業)していることがわかっています。

調査をまとめると、起業に専念することを選んだ人は、自信に満ちたリスク・テイカーだった。  一方、本業を続けたまま起業した人は、リスクをなんとか避けたがっており、自信の程度も低かった。  たいていの人は、リスク・テイカーのほうが明らかに有利だと予測するだろう。だが研究の結果はその逆だった。

つまり、リスクを取るにしても、安全な策を自分の中で用意した上で実行に移しています。ポートフォリオバランスをとっていると言えるでしょう。

驚くべきは、そのような考え方をする人たちの企業での成功率です。

本業を続けた起業家は、やめた起業家よりも失敗の確率が三三パーセント低かったのだ。  リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高い。そして、大胆なギャンブラーが起こした会社のほうがずっともろいのである。

長期的な継続と言う意味では、確かにこの説明に納得感があります。必ずしも「大きな成功をしたければリスクをとれ!」という安直なものではなく、「自分のバランスの中でリスクの幅を調整する」というのが、正しいスタンスではないでしょうか。

 

組織にオリジナリティをもたらすには何が必要か?

面白では、個人の特性だけでなく、組織としてはオリジナリティーをもたらす要素についても分析されています。

企業段階では同じ価値観を持つ人たちで集まった方が、方向性が剥きやすく成長すると言う結果が分析されています。しかし一旦成長した後は同じような組織構造では停滞してしまうと言うのです。

組織が成熟すると、献身型の企業文化にはどんな問題が生じるのだろうか? 「献身型の企業では、多彩な人材を引きつけて維持すること、あるいはそういった多彩な人材を融合させることがよりむずかしくなる」と、先述の社会学者バロンはいう。  それを裏づけるデータもある。組織は時間の経過とともに均質になる傾向があることを、心理学者のベンジャミン・シュナイダーが発見している。似たような人々を引きつけ、選び、互いを知る場を設け、同じ人材を維持し続けるなかで、多様な考えや価値観が薄れていくのだ。

そうではなく、他の組織が成熟してきたら多様な人材を確保しないといけません。組織の中に多様性をもたらすことで、新しいアイディアが生まれ、組織全体のオリジナリティーが高まっている。

そしてそのためには組織全体が多様性を受け入れ、新たなアイディアを素直に評価し、何事業に転換させていくカルチャーも重要になってきます。

移り変わりの激しいビジネス環境の中で生き残っていくためには、企業や人間自体も常に変化を求められます。その中で、オリジナリティをどう発揮するか。本書を読めば、そのヒントがたくさん見つかるはずです。

 

この本も、他の著名な海外本と同じく、TEDで著者のスピーチを見れます。さくっと確認されたい方はこちらをどうぞ。

 

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