Googleを見習って自由で強い組織をつくろう

もっと自由闊達な組織を作りたいと思っている方へ。

Googleの組織がどのように作られているかが説明された「How Google Works」を読みました。いろんな観点で語られており、なんとも表現しづらい部分もあるのですが、今や素晴らしいグローバル企業となったGoogleの考えがみえるという点で貴重かな、と思います。

 

20世紀型管理組織の否定

Googleは従来の組織管理の在り方を根底から覆す考え方を持っています。経営方針について、以下の通り説明されています。MBAだと、このあたりの方法論やフレームワークを腐るほど教わりますんですが、一切ないそうです。

財務予想や収入源に関する議論は一切なかった。ユーザ、広告主、あるいはパートナー企業が何を望んでいるか、それが市場セグメントにどのように当てはまるかといった市場調査も行わなかった。市場のセグメンテーション、あるいは最初にターゲットとすべき広告主といった考え方もなかった。チャネル戦略も、広告プロダクトをどのように売るかという議論もなし。セールス部門はこれ、プロダクト部門はこれ、そしてエンジニアリング部門の仕事はこれ、といった組織図の概念もなかった。何をいつまでにつくるかを詳細に記した製品ロードマップもなかった。予算もなし。取締役会や経営陣が進捗状況を確認するための目標やマイルストーンといったものもない。

人や組織に対しては管理ではなく、それぞれが自律して行動することが求められます。Googleでは、それぞれが自律的に大きな発想をして、組織の境界などを気にせず、行動する文化を形成しています。

経営者をしていて意外だったのは、プロジェクトチームにとんでもない野心を抱かせるのは、とても難しいということだ。どうやらたいていの人は型破りな発想をするような教育を受けていないらしい。現実世界の現象から出発し、何ができるか見定めようともしないで、最初から無理だと決めてかかる。グーグルが自律的思考の持ち主を採用し、壮大な目標を設定するためにあらゆる手を尽くすのはこのためだ。適切な人材と壮大な夢がそろえば、たいていの夢は現実になる。たとえ失敗しても、きっと重要な学びがあるはずだ。

そして、そんな文化を形成するために、様々なルールがビルトインされています。例えば、こんな感じ。

  • 新プロダクトの取組みは低予算にする(制約によるイノベーションの誘発)
  • 20%ルール
  • マイクロマネジメントの廃止(上司は最低7人以上の部下)

 

不確実性が高いビジネス環境で生き抜くためにプロダクトに集中する

なぜ組織に自由を与え、各自が自律的な発想と行動を求めるかといえば、不確実性が高いからです。IT業界はとても変化のスピードが速く、技術やサービスはすぐに陳腐化し、競争環境がどんどん変わっていきます。そういう中で生き抜くためには、サービスやプロダクトの新しい発想を誘発し、スピーディに開発することが有効になります。

本書の中で、「プロダクトの開発計画を決めると、それ以上速く開発することはない」という考え方は、印象的でした。確かに、計画を立てることは重要ですが、いつの間にか計画の通りか遅れることはあっても、早めることは少ないのが人間の心理です。

 

プロダクト開発に資源を集中的に配分できるよう、素早く行動し、その結果をデータ化して改善を図ります。Googleでは主観的な判断を極力排除し、データに基づいた判断を行うようにしています。

インターネットの世紀がもたらした最も重大な変化の一つは、事業のほとんどの側面を定量的に把握できるようになったことだ。従来の意思決定は主観的意見や事例にもとづいていたが、いまでは主にデータが判断材料となった。

データ・プレゼンテーションとビジュアリゼーションの権威であるエドワード・タフティは、スライドの枚数を減らしてデータ量を増やせ、と説く。

人材採用についても、過去の採用結果をデータ分析した結果から、ルールやマニュアルを作成しているそうです。

 

人材採用の質を高めないと、この組織を維持することはできない

このように、従業員に大きな裁量を与える組織を形成するのは、何もGoogleやIT業界だけではありません。例えば、ホテル業であるリッツ・カールトンでも各従業員に2000ドルの決裁権限を与えるなど、大きな権限委譲をしています。それは、接客内容に100%正解はなく、それぞれの顧客や状況に応じて、スタッフがそれぞれ判断し行動することが必要になるからです。

【第3回】「一人2000ドルの決裁権」の真意|リッツ・カールトン 至高のホスピタリティ|高野登|cakes(ケイクス)

つまり、現場に大きく権限委譲する(予算なり時間なりの裁量を与える)ことは、不確実性が高い状況に立ち向かうためには有効な組織なのです。

一方で、これらのように自主的に考え、判断し、行動できる人材というのは、市場的に価値が高い人材です。また、カルチャーとして合う/合わない、という点も重要視する必要があります。というのは、個人の裁量がとても大きい組織というのは、価値観という明文化されていない領域を共有できている必要があるからです。

というわけで、採用というのは組織を維持するための根幹にあたるところです。Googleが厳密な採用プロセスを構築しているのもうなずけます。

ダメ社員を解雇するような不愉快な事態を避けるには、最初から彼らを採用しないのが一番だ、と。だからグーグルでは、採用プロセスを厳格にすることで偽陰性(本当は採用すべきだったのに、採用しなかったケース)が出るほうが、偽陽性(本当は採用すべきではなかったのに、採用したケース)が出るより好ましいと考えている。

 

まとめ

というわけで、まとめます。

  • IT業界は変化が激しく、新しい発想とスピードが求められる
  • 不確実な状況に強い組織を作るためには、各従業員が自律的に考え、行動できる必要がある
  • そういう人材は市場価値が高く、価値観も重要。採用プロセスを厳格化することで質を維持する

まとめてしまうと、あまり目新しいものではないなって感じもしますが、Googleという偉大な企業を創業者二人が大学卒業後に築きあげてきた、と思うと、やはり凄さを感じますね。

 

似たような内容で、シュミット会長のスライドが公開されています。

Google・シュミット会長による働き方とマネジメントを示すスライドが公開中 – GIGAZINE

 

あと、もう一冊人事の本があります。より詳細にGoogleの採用プロセスを説明した内容のようです。まだ洋書しかありませんが、興味ある方はどうぞ。僕も英語の勉強がてら読んでみようかな。