企業における内部留保の増加と賃金の関係について

今日もファミリービジネスについて書こうと思っていましたが、今朝、日本共産党の記事を見かけていて、「内部留保を動かして、賃上げを」という言葉があったのが気になったので、急遽そちらを記事として書いてみます。

実際、日本共産党のHPにも政策として書かれています。

「デフレ不況」打開のために、賃上げと安定した雇用の拡大が必要です。大企業が溜めこんでいる260兆円もの内部留保のほんの一部を使うだけで、賃上げを実現することができます。8割の大企業では、内部留保のわずか1%を使うだけで、「月1万円」の賃上げが可能です。

1、労働・雇用(2013年参議院選挙各分野政策)

これについて論点はいくつかありますが、整理してみましょう。

 

内部留保は「企業の預貯金」ではない

この論争があるときに良く言われていることですが、内部留保というのは企業の預貯金ではありません。Wikipediaによると、次のように表現されています。

内部留保(ないぶりゅうほ)とは、企業が経済活動を通して獲得した利益のうち、企業内部へ保留され蓄積された部分のことである。社内留保、社内分配とも呼ばれることもある。

内部留保 – Wikipedia

ここで注目すべきは「企業内部へ保留され蓄積された部分」で、その形態は問われないということです。もちろん現金として持っても良いわけですが、固定資産や有価証券で保持しても良いわけです。つまり、必ずしも現金で保持しているわけではないので、内部留保を人件費へ回せ、というのは言葉の使い方としてずれていると思います。

 

賃上げは利益減少になり、市場プレッシャーと相反している

ただ、実際内部留保の中には現金の割合も多いようです。で、内部留保における現金を人件費へ回すと、損益計算書上では利益が減少します。別に利益が減っても労働者の給料が増えるからいいじゃないか、という考えもあるとは思いますし、特に反対するわけではないのですが、株式市場は企業の業績のひとつとして利益を評価するわけで、経営者としては利益を確保する、という役目から逃れられるわけではありません。

また、人件費についてはどこか特定の企業が労働者から不当に搾取しているわけではなく、多くは市場原理で決まっているんじゃないでしょうか。優秀な人材は高給で獲得したり維持しますし、業界・業種によってもある程度給料の相場が形成されているので、簡単に変わるものではない気がします。

それでも労働者の給料を上げる必要がある、と国が命ずるのであれば、企業は利益の創出分を減らすことになります。そうなると、上場しているような大きな企業であれば、日本国外に労働資本を求めてもおかしくない気がします。

 

日本企業の内部留保は本当に多いのか

最後に、日本の内部留保が本当に多いのか、という話です。少し前のデータになりますが、みずほ総研が調査レポートを発表していました。

日本企業は利益をため込みすぎているのか

このレポートを読むと、欧米企業と比べると決して大きすぎるというわけではなく、人件費比率や労働分配率も日本は高くなっています。これは、日本企業は世界でみると雇用を維持する方向に頑張っている、と言えるんじゃないでしょうか。そして、日本の労働市場の特徴とも言えます。

 

というわけで、内部留保というのは企業が再投資するための原資なわけですから、積極的に投資を行うようにするのか、あるいは株主に配当するのか、自社株買いするのか、という選択肢を行えば良いんじゃないかというのが、ファイナンスの考え方だと思います。

「内部留保額が200兆円もあるから、雇用に回そう」ではなく、なぜ内部留保がたまるのか、賃金はなぜ上がらないのか、という原因を考える方が先な気がします。

参考:
内部留保って何? – 池田 信夫 (アゴラ) – Yahoo!ニュース
内部留保の問題点について – カンタンな答 – 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する
賃金と配当と内部留保のこれ以上ない簡単な整理: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

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