商店街はなぜ滅びるのか

商店街というのは、どんどん衰退している印象がある。岐阜にも柳ヶ瀬商店街という、岐阜市の中心に位置する商店街があるが、決して繁盛している様子にはみえない。いろいろ活性化に関する取組が行われているが、人口減少や郊外の大型ショッピングセンターなどとの競争によって、厳しい状況は続いているのだろう。

この本では、そもそも商店街が生まれた背景から、その後の社会情勢と商店街の変遷が理解できる。知らないことばかりだった。

 

商店街の歴史

工業化が発展していく流れの中で、第二次産業によって労働者を吸収するとともに、それでも雇用者となれなかった農村出身者などが零細の小売業者となった。小売が零細のため品質が悪く、また雇用環境も安定しなかった。これを解消するひとつの手段として、「商店街」が生まれた。商店街は昔からずっとあったものではなくて、近代的な社会構造の変化とともに生み出されたものだというのが、本書の主旨だ。

その後、小売や流通の規制が緩和され、スーパーや百貨店が高い生産性を達成していく中で、商店街は政治に保護を求め、保守傾向を強める。それでも今度はコンビニが登場して、商店街を切り崩していく。コンビニが普及していったのも、時代背景と合致していて、ちょうど流通や小売の構造が変わっていって、零細小売業者の生活が厳しくなっていた。一方で、酒などの販売利権は零細業者に付与されており、コンビニはそれを獲得することにメリットがあった。

 

商店街は、零細である専門店を集約して生活に便利な消費圏を構築していたのだけれど、大型スーパーの台頭と、利便性が高く雑多なものが置かれているコンビニで、商店街としての強みは喪失してしまった。まともに比較すると、以下の記事のようになるわけで。
潰れゆく商店街から学ぶ「売れないお店の法則」 | お土産屋さんブログ

 

とはいえ、零細小売業者から転換したコンビニ店主も、結構楽ではない状況だったりする。
インテリライフ2ch : コンビニ経営者 「助けて!年中無休で辛い!糞高い上納金!もう死にそう!」

 

商店街の今後の動向

商店街については、いろいろな観点からみる必要がある。小売や流通の生産性が低い商店街を保護するのは、資本原理に抵抗することになる。実際、2010年現在でも、卸・小売業の労働生産性は製造業などと比べると低いと言われている。対米比で、製造業は70%であるが、卸小売は42%になっている。
公益財団法人日本生産性本部 – 労働生産性の国際比較2010年版 (生産性研究レポートNO.023)

 

一方で、商店街というのは各経済圏の中心に位置していることが多く、これが衰退することで町中の消費体験が低下する、あるいは郊外の大型店に引っ張られて街としての形成が危うくなるという構図がある。

とまあ、いろいろ問題はあるのだけれど、全国10000以上ある商店街に行政も取組を行っている。
中小企業庁:FAQ「小売商業対策について」

 

この問題は経済的な保護の面もあるのだろうけど、どちらかといえば都市政策の分野で考えられるべきところなのかね。昔の田園都市構想とか、そういう都市デザインと関連しているような気がしました。

人口も減っているし、僕は田舎や郊外で生活するのはどんどん厳しくなって、都市に集まる傾向が続くと思っているんだけど、そういうときに、商店街を抱える都市の中心は、どういう町並みであるのが良いんだろうか。