NECと富士通の中間決算発表から、国内メーカーの携帯電話事業は厳しいことを再認識

昨日のNTTデータに引き続き、NECと富士通の経営状況もアップデートしておこうと思います。 1年前に、NECの株価がすごい下がっているのに驚いて、記事を書いていました。

NECの株価がすごい下がっている | Synapse Diary

NECの中間決算発表

NECは、市場全体のIT投資増大とXPサポート終了が後押しして業績好調というポジティブな情報と、携帯電話事業が赤字、不採算事業の整理という状況が組み合わさっています。

14年3月期の連結営業利益予想は前年比12.8%減の1000億円で据え置いた。トムソン・ロイターのスターマイン調査がまとめたアナリスト10人の予測平均値1054億円を5.1%下回った。上期が終わった時点でわずか0.3%の進ちょく率だが、好調なIT投資受注の売り上げ計上が下期に拡大するほか、スマートフォンの新規開発を中止した携帯端末事業の収支がトントンまで改善する見込み。

NEC上期の営業利益が計画下振れ、下期は携帯止血 | テクノロジーニュース | Reuters

過去5年の業績は以下の通りです。これまで売上は大幅に下げていますが、利益率は回復しています。苦しいながらも立ち直る気配が感じられます。

富士通の中間決算発表

富士通は、ITソリューション系が好調、PCはXPサポート終了が後押しというポジティブな情報と、携帯電話事業が赤字、半導体事業は固定費削減という苦戦の状況が組み合わさっています。

2014年3月期通期の連結売上高予想を4兆6200億円へと上方修正した。ITサービスの増収を織り込み、7月に発表した予想から700億円増額した。営業利益予想については1400億円で据え置いた。携帯電話の落ち込みを、好調なITサービスなどでカバーするとしている。

ニュース富士通の201349月期決算は増収増益も、携帯電話で「200億円超の赤字」:ITpro

過去5年の業績は以下の通りです。少し売上が低下トレンドにありますが、なんとか踏みとどまっている印象です。

というわけで、両社とも全体的なIT投資の増大とXPサポート切れという後押しもあり、ITサービスは好調のようです。一方で、本当に携帯電話事業や半導体事業は、日本メーカーは厳しい状況なんだな、というところも再認識しました。

この記事をみても、国内モバイル市場のシェアは、Apple・ソニー・シャープ・京セラ・サムソンで全体の75%を占めています。

国内携帯電話シェア、ソニーモバイルが初の2位に – ITmedia ニュース

今後も不採算事業は精算して、ITサービス系に注力していく流れになるんでしょうか。

NTTデータは海外進出拡大するも利益率は低下傾向

IT企業が次々と中間決算を発表しています。1年ぐらい前にいろいろ調べていましたが、久々に情報をアップデートしようと思います。今日は時間があまりないので、さくっと書いていく感じで。

前回書いたのは以下の記事です。

NTTデータの売上をみたけど、日本のSIはやっぱり下火なのかもしれない | Synapse Diary

気になっていたのは、SIというビジネスモデルがどこまで通用するのか、ということでした。で、1年経った今どうなっているのか、ということが気になります。

NTTデータは海外進出を積極的に行っており、売上高は伸びています。ただ、今期はどうやら大幅に減益となるようです。

NTTデータは2013年10月31日、2013年4~9月期の連結決算を発表した。売上高は6130億円と前年同期比1.4%増、営業利益は同91.3%減の26億円だった。不採算案件の影響が強く、大幅な減益となった。

ニュース – NTTデータの上期決算は大幅減益、不採算案件が営業利益を250億円押し下げ:ITpro

過去5年の業績をみると、確かに売上高は伸びていますが、営業利益率は低下しています。

SIerの収益性の低下は、業界全体の課題です。NTTデータは海外進出を積極的に行い、世界に進出する日系企業の受け皿になることで、売上拡大を図っているという構図です。つい最近も、スペインの企業を買収していました。

NTTデータは2014年3月期の海外売上高として2750億円を想定している。エヴェリスグループの売上高をこの2750億円に合算すると、同社が目標として掲げている2016年3月期の海外売上高3500億円超を達成できることになる。

ニュース – NTTデータがスペイン企業を買収、海外売上高3500億円達成を1年前倒しへ:ITpro

海外売上高3,500億円は、全体の25%程度です。今後も増大させていくつもりなのでしょう。

今後の問題は、利益率の低下をどこかで食い止められるか、ということですかね。

書店で保険が売られる時代。今後のリアル書店は生き残れるか

愛知県を中心に、三洋堂という書店チェーンがあるのですが、久々に行ったら保険を始めていたので驚きました。これまでもCD・DVDレンタルをやっていたり、中古本販売も始まるなど、事業領域を広げていたのですが、保険販売までやるとは少し意外でした。

三洋堂保険サポート三洋堂保険サポート

三洋堂が保険サービスを始める理由

調べてみると、2012年から開始しています。収益の多様化を図るのが狙いだそうで。

三洋堂書店は店頭で保険商品の販売を始める。保険販売店チェーンを手掛ける企業と共同出資で子会社を設け、2014年3月期までに30店で取り扱う計画。書籍販売が伸び悩む中、同社は4月に持ち株会社に移行し、M&A(合併・買収)などを通じて収益の多角化を急ぐ方針を打ち出している。第1弾として、保険販売の競合が少ない郊外に立地する店舗を中心に新事業を展開する。

三洋堂書店、保険商品を販売 まず損保中心、30店で取り扱い :日本経済新聞

他に、太陽光の売電も行っていました。

売上高を見ると、過去5年でじわじわ下がっているのがわかります。

というわけで、三洋堂は多くの店舗を展開している強みから、書店を起点にした「ブックバラエティストア」を掲げて、いろんなサービスに広げていくことが今後の方針になっています。

株式会社 三洋堂ホールディングス:株主・投資家の皆様へ

今後の書店業界はどうなるか

三洋堂のことを調べようと思っていたのとほぼ同じタイミングで、書店に関する記事を2つほど読みました。いずれもとても興味深く、そしてどちらもネット書店の大物であるAmazonとの対比で語られていました。2つの記事は必読です。

やっぱり一覧性はもちろん、客の欲求をモチベートしてくれる本棚という役割はITでは賄えない。ましてどんどんデバイスが小さくなってるわけなので、どうやらITの未来は、すべてが画面で完結する世界ではなさそうだ。

リアル本屋がなくなったらAmazonの売上が下がる | F’s Garagefshin2000

なんのかんの言っても、アメリカでEブックは売上げ全体の20%を超えるぐらい、つまり8割はまだ紙の本が読まれているのだ。小さな書店であっても、店に足を一歩踏み入れれば何百、何千もの本が目に飛び込んでくるのに対し、アマゾンのホームページにはどうしたって数十タイトルしか収まらない。へぇ、こんな本があるんだ、面白そうだな、と思わせるdiscoverabilityは限られている。

アマゾンは一般書の出版社として失敗したのか? « マガジン航[kɔː]

どちらも、書店の方が優れている点もあるよ、ということに関しては共通しています。僕の理解でいえば、特に視認性と書店員のキュレーションから生まれる「偶然の出会い」が、刺激的な結果を生み出すのだと思います。

ネットはアルゴリズムには強いですが、如何せんPCにしてもスマートフォンにしても画面が小さいことと、偶然を生み出したり、体験するのは難しいということで、向き・不向きがあります。

昔本屋でアルバイトをしていましたが、本屋というのは気軽に来るという意味ではとても有効なプラットフォームであり、「場所」としての価値は未だに高いんじゃないかと思います。機械では代替が難しいところ(視認性やキュレーション)に特化していく、リアルならではの体験型を増やしていくことが、今後の書店が生き残る道のひとつだと思います。

Yahooショッピング無料化からEコマースの現状とYahooの戦略を考える

昨日から、わずかですがYahoo砲がこのブログをかすめました。この記事が、動画メディアに関するニュースの関連記事として掲載されていたので。

広報担当者はUstream、ニコ動、YouTubeの収益モデルの違いを知っておこう | Synapse Diary

まあ、アクセス数がいつもの2倍ぐらいになったことと、アドセンスの収益がわずかながら上昇した程度で、それ以外の恩恵はなかったわけですが。ひとつの良い思い出になりました。

さて、今日は先日発表されたYahooショッピング無料化を取り上げたいと思います。

Eコマース市場の成長

まずは国内Eコマースの現状から。市場規模は2012年で約9兆円程度になっています。ジャンルにもよりますが、総合小売業は2桁成長を続けており、まだまだ伸びる余地がある市場と言って良いでしょう。

データ元:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(METI/経済産業省)

さらに、消費全体に占めるEC化率という指標があり、これがどの程度かで、今後市場が伸びるかどうかを予測することができます。

しかし、成長度合いは大きいものの、日本の消費全体に占めるEC化率は、わずか3%程度にすぎない。比較的進んでいる米国(5~6%台)と比べても、日本の水準はまだ低い。

市場規模9兆円!知られざるネット通販の実態 | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

ということで、国内Eコマース市場は浸透してきているが、まだ伸びる余地がある段階、という捉え方になります。

楽天・Amazon・Yahooのシェア

次に、Eコマースにおけるプレイヤーの状況です。シェアでみると、楽天が圧倒的1位。それをAmazonが追い上げており、Yahooは2強から引き離されている状況です。このままだと、楽天・Amazonの寡占化が加速してしまう脅威が大きくなっています。

データ元:楽天株式会社: 決算短信・説明会資料 2012 | IR資料

各社ともレイトマジョリティの取り込みが必須

以上から、Yahooショッピングが置かれている状況は、「市場自体は今後も伸びる」「2強が勢力を伸ばしており、自分だけが凋落する恐れ」ということです。

まだEC化されていない層(レイトマジョリティ)をいかに取り込むかが、今後のプラットフォーム戦争の勝因になってきます。Yahooショッピングとしては、テコ入れが急務だったわけですね。

で、レイトマジョリティを取り込むという路線でいえば、いろいろ定義やアプローチはありますが、個人商店や楽天などではペイが難しかった小規模企業を取り込むことを図ったのだと思われます。Yahooは参入障壁のひとつである手数料をなくすことで、今の均衡を崩そうとしたわけです。

Yahooは、出店料を諦める代わりに広告料で補填すると言っています。こういうプラットフォームではいろいろ収益ポイントを作って儲けていくのが常套手段ですが、ECの場合出店料と広告料が主な収益源のようです。そして、店が増えてカスタマーが増えれば、メディアとしての価値が上がって広告料も上がるだろう、というのが戦略の要旨です。

Yahooがカオスとなるかどうか、今後注目

AppleとGoogleのプラットフォーム戦争のように、プラットフォームごとに色合いが異なります。金額や規制によってルールを強めに適用するAppleと、オープンにして競争・淘汰を重視するGoogleが、いずれも一長一短になっています。

そして、今回のYahooも出店料というひとつの障壁を取り払うことで、品質が低い業者が膨大に増え、ユーザーが買いたいものが探せない・買えない、というような状況にならないかが気になります。

個人的には、今アクションを起こさないといずれにしてもジリ貧にだったと思うので、この決断は孫さんさすがだな、と思います。

以下、参考記事を。

Yahoo!のショッピング手数料無料化で何が起こるか? – Rick08の日記

Yahoo!ショッピング無料化でYahoo!サポートに死者続出の予感が(マジ) | More Access! More Fun!

スターバックスカードの利用方法とビジネス戦略

スタバヘビーユーザーです。 昔「スターバックス成功物語」を読んだときは非常に感銘を受けたし、「ストーリーとしての競争戦略」の中で紹介されていたスターバックスのビジネス戦略にも感動しました。そんなこんなでスターバックス愛好者なわけですが、今日はスターバックスが発行しているカードの話です。

スターバックスカードとは

いわゆるスターバックス専用のプリペイドカードです。予めチャージしておけば、レジでの精算はカードですぐに決裁できます。

スターバックスカード | スターバックスコーヒージャパン
[scshot url=”http://www.starbucks.co.jp/card/?cardid=card_001″]

あとは、カードをオンラインで登録しておくと、残高照会や紛失時の残額補償、クレジットカードによる入金やオートチャージ設定を行うことが可能です。

スターバックスカードのメリット

会員限定で申し込みできる商品やイベント招待、新商品の事前紹介などがあります。正直、個人でみればあんまりメリットは少ない気がします。感覚的にはもう少しメリットを増やして欲しいところ。先に現金をデポジットしているのだから。

個人事業主などの場合は、会計処理が楽になるのでその点でメリットがあると思います。

紛失した場合は・・・

で、なんで今回こんな記事を書こうと思ったかといえば、カードを紛失したからなんですね。。。。ああやっちゃったなーと思いましたが、残額補償されていることを思い出したので、My Starbucksから紛失届けを登録しました。すると、残金が入金されたカードが自宅に送られてきます。

「スターバックスカード」というビジネスモデル

単純にみれば、こういうカードの取り組みというのは、ここ数年流行っている「顧客の囲い込み」です。ポイントカードと同じように、店と顧客との関係性を深めるためのツールとして導入されています。スターバックスでもその点は同じでしょう。ここ数ヶ月では、Google Adwordsによるスターバックス会員登録の広告も結構見かけたので、スタバ自身も囲い込みには非常に積極的に進めてるようです。

スターバックス、カード戦略を拡大 常連客とのつながり強める (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

記事によると、利用率は8%程度とのことで、これを3年後までに15%まで向上させるのが目的なんだとか。

IR情報でも、既存店売上が利益成長の源泉になっていて、ロイヤルカスタマーを獲得していくことが今後の戦略であることが書かれています。
IR情報 | スターバックスコーヒージャパン

ドライブスルーを増やして郊外型を狙うとか、ロイヤルカスタマーを増やすとか、方向性がコンビニやファーストフードと同じ道を辿っている感じがします。今後のスターバックスはどう発展していくんでしょうね。