常識破りのものづくり (NHKスペシャルセレクション)

常識破りのものづくり (NHKスペシャルセレクション)
山田 日登志 片岡 利文
日本放送出版協会
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いろんな製造業の工場で、劇的に生産性を高めて回るコンサルタントがいる。それも岐阜県に。そんなことを知って読んだ、鳥取三洋電機での工場改善のドキュメンタリー。携帯電話の製品サイクルに追われ、中国の低コスト競争にもさらされ、どんどん余裕がなくなっていく。そんな工場に乗り込み、仕掛り品の多さや工場レイアウトの改善を指摘し、仕事の仕方が変わり、人が刺激され、時に反発しながら生産性が劇的に向上していく様子は、気づかないうちに気持ちを高揚させられる。

人を活かす仕事のやり方を考えよう

この山田さんの改善方針は、人を多能工化して、セル生産方式にすることだ。ライン生産方式で人が細かく分業されていくと、考えたり身につける技術の範囲がどんどん狭くなる。それを多能工化し、一人でできることを増やすことで、仕掛り品を減らし、ムダのない生産の流れを作り出す。

多能工化は、工程間の仕掛り品が減るという面から合理的なのだが、加えて人の「職務拡大」も兼ねている。仕事の幅が増えることで、視野が広がり、仕事に対する充実感が増すと言われている。経済の面からは分業が合理的である、と言われているが、分業のやり方によって人の可能性を活かしもすれば、殺しもするのだ。恐いね。

これからの製造業とは

僕はこの本を読むまで、「いつまで日本は製造業に頼ってるんだよ」という気持ちが少なからずあった。シュンペーターが言うように、日本経済の行き詰まりはイノベーションで打開しなければいけないし、それは製造業ではないんじゃないかと。しかし、この本を読めばそういう考えは短絡的で浅はかだと言える。

地方で雇用減が叫ばれる中、海外の低コストと競争しながら働いている人たちがいる現実。そこで品質と効率を高め、付加価値を高めようと努力している人たちがいる現実。そして、海外から多くの外貨を獲得しているのも、やはり製造業である、という現実が日本にはある。

日本以外の製品が身の回りに出てきているけれど、それでも「メイド・イン・ジャパン」が高い評価を受けていることに変わりはない。中国などの新興国が豊かになれば、日本の高品質な製品たちはもっと評価されるだろう。

ふと、「管理者は不要」という言葉が目についた。管理者というのは、分業するから必要になるのだと。一人でスケジュールを把握し、モノを作り、出荷できれば、管理者は不要になる。それは極論だとしても、人が多能工化され、自立することで、管理者の役割りは減る。管理者は部下の役割りを減らすことが役割りなんだな、と気付かされた今日でした。

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