物流業界の構造やトレンドを知りたくて、この本を読みました。
自分が不勉強だっただけなのですが、想像以上に変革が起こっており、とても勉強になりました。今の課題やロジスティクス4.0の内容を知るには良い一冊だと思います。
物流業界の課題
物流業界の課題はどういうものがあるでしょうか?本書を読めばわかるのですが、こちらの記事に簡潔にまとまっているので、拝借します。
・ドライバーの高齢化と労働環境
・物流業界各社の過剰サービス
・積載率減少による効率悪化
物流業界の現状と課題 – AIは物流を救えるか? | SmartDrive Magazine
ヤマトの値上げが行われたのも記憶に新しいところですが、このような問題を抱えている業界が、どのように進もうとしているのかを読み解くのが本書です。
装置産業化していく物流業界
課題解決のポイントは2つ示されています。
1つには、属人的なノウハウです。人の介在を必要とするプロセスが減少するということは、今までノウハウとされてきたことが形式知化し、機械やシステムに置き換わっていくことを意味します。
ICTやロボットなど、いろんな領域で機械化・効率化が進められてきていますが、それでもまだ人への依存が多く残されています。そこで生じてしまう属人的なノウハウを、どう形式知化し、現場への実装に落とし込んでいくかが重要なポイントです。
物流倉庫内の動線など作業効率を分析するAIソリューションも登場してきています。
ニューラルポケット、三菱地所グループ初となる、物流施設内での作業効率・動線のAI可視化ソリューションの提供を開始|ニューラルポケット株式会社のプレスリリース
勘と経験に依存していた部分を、定量化しながら改善していく流れが生まれています。
逆に、Amazonはロボットを活用して、ロボットが棚自体を移動させてくれるので、人は移動せずにピッキングだけするという方法を、数年前から導入しています。
アマゾンの物流倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入:日経クロストレンド
それ以外にも、いろいろと属人的な作業はあることでしょう。AIやロボットを組み合わせて活用することで、そのような属人的な領域はどんどん減っていくと本書では書いています。
もう1つは、属社的な仕組みです。物流がインフラ的機能になるということは、特定の企業・個人が占有するのではなく、広く共用される存在に変わることを意味します。「経済合理性を優先するなら、自社ならではの物流にこだわるよりも、他社も利用している仕組みに適合した方がよい」という領域が増えていくはずです。
物流業界は、サプライチェーン全体の最適化という方向性が生まれています。内閣府が進めるスマート物流でも、「物流・商流データプラットフォームの開発」が取り上げられているなど、個社ごとの努力というよりは、業界横断的な取り組みが加速しているのがわかります。
スマート物流を実現するための3つの視点 | IoT NEWS
SIPの研究計画によると、日用消費財、ドラッグストア・コンビニ、医薬品、地域物流などフォーカスを絞ったプラットフォームを構築する想定のようです。
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービス 研究開発計画
それ以外にも、トランコムが荷主と運送業者をマッチングするプラットフォームを構築するなど、新しいマッチングプラットフォームができています。
こうやってみると、どんどん設備投資の割合が今後も大きくなっていき、人が直接作業する領域は徐々に減っていくのでしょう。そのスピードがどうなるかは技術進化などにもよるかもしれませんが、競争優位性として人を効率的にマネージする部分が減り、新しい技術を効果的に取り入れていく点が優位を構築するのだな、と思いました。