年に何冊か骨太で価値観揺さぶられる本に出会うわけですが、今年もそんな本に出会うことができました。
既にベストセラーにもなっているのですが、組織の新しい形を考察したものです。組織論は、これまで少なからず歴史が積み上げられてきましまが、ティール組織は新しいパラダイムの出現を具体的な事例を交えて考察されています。
正直、このような新しい価値観やパラダイムというのは、一見理解が難しいところもありますし、文量が多いので、逆にポイントが理解しづらいなとも思いましたが、ちゃんと読み砕いていくと、これから求められる組織の在り方が理解できていくのが楽しいです。
では早速ポイントの紹介を。
序盤の組織論の歴史を概観するだけでも読む価値あり
序盤は組織論のこれまでの歴史です。本書は、7つのパラダイムを紹介しています。
パラダイム | 特徴 |
---|---|
無色 | 血縁関係中心の小集団。10数人程度。自分と他人、自分と環境という区別がない。 |
神秘的 | 数百人の人々で構成される種族へ拡大。自己と他者の区別が始まるが世界の中心は自分。物事の因果関係への理解が不十分で神秘的。 |
衝動的 | 組織生活の最初の形態。数百人から数万人の規模へ。力、恐怖による支配。マフィア、ギャングなど。自他の区分、単純な因果関係の理解により分業が成立。 |
順応型 | 部族社会から農業、国家、文明、官僚制の時代へ。時間の流れによる因果関係を理解。計画が可能に。規則、規律、規範による階層構造の誕生。教会や軍隊。 |
達成型 | 科学的、イノベーション、起業家の時代へ。「命令と統制」から「予測と統制」。実力主義の誕生。効率的で複雑な多階層組織。多国籍企業。 |
多元型 | 物質主義の反動としてのコミュニティ型組織の時代へ。平等と多様性を重視、ボトムアップの意思決定。多数のステークホルダー。CSR。 |
進化型 | 変化の激しい時代における生命型組織の時代へ。自主経営(セルフ・マネジメント)、全体性(ホールネス)、存在目的を重視する独自の慣行。 |
このまとめが個人的には目から鱗でした。世の中には様々な組織形態がありますが、それは社会の発展とともに求められることが変わり、よりうまくワークする形態が誕生してきた歴史でもあるのです。
この視点が新鮮でした。
最初の「神秘的」では自分と集団との区別が曖昧であること。だから今から見れば残酷なこともできたんだなーとか。
「順応型」は規律を重視するあまり多様性を受け入れづらく、集団外の人たちを排他的にしてしまうとか。
そして、今の企業の多くは達成型がベースです。しかし、新しい価値観の中で、企業も新しい組織のあり方を模索し始めています。このメルカリの記事がとても面白かったです。
メルカリの組織は達成型?ティール型?これからの社会における組織開発とは – メルミライ – 未来を見るメディア
組織は実現したい形や戦略に合わせて設計されるべきで、さらに今の人々の価値観に合わせて制度は考えられるべきでしょう。科学的なアプローチを前面に出した達成型の組織から、新しい時代が到来している気がします。
今の時代に適した組織のあり方とは?
今の時代はどういう組織形態が適しているのでしょうか。情報が膨大に溢れ、変化が激しく、人々は学び、自主的に活動する範囲が広がっています。
そうなると、できるだけ現場でうまく判断してもらえる状況を作った方がうまく機能する組織と言えるのではないでしょうか。
管理する事は本当に最適な形なのか?
本書を読んで考えたのは、管理や統制は、本当に必要なものか?ということです。
性善説に立って、人々が正しい倫理観と責任感を持って行動すれば、従業員を管理したり、ルールで統制する必要性はどんどんなくなるはずです。
ルールがあるのは人のネガティブな面をちゃんと抑制し、全体としてのバランスを保つためであるといえます。
しかし、産業革命はもっと以前の人類の歴史から考えれば、人々は賢くなり、倫理観を持ち、正しく行動することができるようになっていると思います。
そうなると、管理や統制による全体バランス維持ではなく、現場がそれぞれ自主的に判断していく形の方が、不確実性が高く複雑な今の現在に合っているのかもしれません。
重要なのはルールではなく論理的なコミュニケーション
ただ、現場に委ねたところで、うまく判断できない可能性や不正防止をどうするかという疑問はあるでしょう。
進化型組織では、権力や管理による統制ではなく、現場の各個人やチームに権限がある一方で、社内の専門家やアドバイザーに説明責任を求めています。それによって、個人の暴走を妨げているといえます。
人と人とをつなぎ、組織として行動するための要素は、組織の進化の過程で、暴力的な支配から権力によるルールの統制に変わり、それが論理的なコミニケーションによって人々をつなぐ形に変化していると捉えることができます。
今はインターネットを中心にしたい情報化社会よって、さまざまな情報が可視化されてきています。情報が増えて、論理的に考える機会が増えていくと、権威、権限による統制ではなくても、ロジカルなコミュニケーションで概ね十分かもしれません。
他にもいろいろ本書を読んで考えたことはあるのですが、頭もまとまってませんし、そろそろ長くなったのでやめときます。
人材採用、組織内の人々の付き合い方、リーダーシップの在り方、いろんなところに見直しが必要だと思えます。
ティール組織は万能ではないですが、新しいパラダイムが起こっていると確かに感じられる一冊です。
ティール組織に関する記事をいくつか読みました。こちらの記事はわかりやすかったり、考察が素晴らしかったです。
ティール組織とは?3つのエッセンスの基本を実務的に丁寧に解説!