東芝が、粉飾決算で大幅な赤字になったのは記憶に新しいところですね。
2015年(平成27年)7月20日、第三者委員会の報告書により、経営トップの関与による2009年3月期から2014年4 – 12月期で計1518億円の利益を水増しする粉飾決算を行っていたことが報告された[114][115]。同報告書では過去7年間で1500億円を超える利益の水増しの事実に加え、「ストレッチ」と称して拡張した「チャレンジ」と呼ばれる目標予算に「コミット」させて、報告してくる数値に「それは受け入れられない」というプレッシャーをかけ、経営トップが関与して「不正会計」が行われたと分析している[116]。
引用元:東芝 – Wikipedia
これほどの大企業でも粉飾決算できてしまうぐらい、会計制度というのは万全のものではないということです。
では、決算書のどこに不正を潜ませるポイントがあるのか、また企業がどのような動機から不正会計を行うのでしょうか。
それを解説したのが本書「粉飾決算企業で学ぶ実践「財務三表」の見方」でした。
本書は債権者目線であること、中小企業のケースをカバーしていることが特徴です。特に中小企業は上場企業とはまた別の事情を抱えており、特有の決算調整を行う動機や方法が存在するので、教科書的な決算分析では知ることができない様々な粉飾の方法を知ることができます。
銀行員などはこういう手法を知り、実態を見抜くノウハウを身につけているのだと思いますが、それ以外の人で通常の財務分析しか知らない人には、目から鱗の内容です。
会計は調整できる点がたくさんある
会計とは曖昧な部分があります。複雑な制度であるが故に、企業が操作できる余地がいろんなところにあります。
例えば減価償却費だけ見ても、定率法と定額法の2つがありますし、実際の耐用年数との食い違いもあります。
それ以外にも在庫評価や、借入の長期短期の区分など、企業の考え方で左右される要素がたくさんあります。
それを防ぐために監査法人のチェック制度やキャッシュフロー計算書ができたり、いろんな仕組みが講じられてきているわけですが、それも万全ではないので、不正会計が行われる余地があるのが現状です。
本書の中で、この言葉が象徴的です。
利益は主観的なものであり、経営者がその額を決める余地が多分にあります。
企業が不正会計する方法と動機を知る
なぜ企業は不正会計、粉飾してしまうのでしょうか。
簡単に言えば、信用を得るために黒字にするか、節税するために赤字にするか。どちらかに別れます。
債権者からの信用を得るのに心配な場合は、赤字ではなく黒字に見せたくなります。そのため、費用を過小計上し、その結果資産が増えたり債務が減ったりするのです。
逆に節税を重視する場合は、費用を大きくして利益を圧縮します。これは収益性や債権者からの信用は問題ないので、節税を重視するのです。
これらが行き過ぎると、粉飾に走ってしまうのですね。特に前者が多いでパターンです。
本書を読むと、決算書の読み方の基本もわかるし、おさらいとしても良いですね。
また、特に中小企業の不正会計のポイントもわかるので、とても勉強になりました。生々しい粉飾の手法がわかるようになります。これらを知ると、様々な企業の有価証券報告書ももっと深く読めるようになるでしょう。数字の先にある経営実態を探るためには、こういう可能性も頭に入れておくべきってことですね。
あと、実際の粉飾ケースも掲載されており、どのように粉飾して数字に表れてきたかがわかります。
最近話題になった東芝についても書かれています。東芝のドタバタ劇を知るにはこちらの本がオススメです。本書と合わせて読むと、組織の実態と数字の両面で理解できますよ。