「東京一極集中が日本を救う」を読んで今年の地方創生を考えよう

新年明けましておめでとうございます。

新年最初の記事は、地方創生について考える一冊を紹介したいと思います。

 

地方創生というのは安倍政権で登場した言葉です。これを取り上げるのは、今の政権がどういう考えを持っていて、国の形や地方のあり方がどうなっていくのか、考えてみる必要があると思ったからです。

 

今後必ず訪れる人口減少という衝撃

地方創生の目的は何か?ということを聞かれた場合、どう答えるでしょうか。この記事で、小泉進次郎氏が地方創生の目的を非常に端的に述べています。

小泉:地方創生というのは、すごく簡単に言ってしまうと2つのことです。 1つは東京一極集中をやめるということ。2つ目が、日本全体の人口減を食い止めるということ。この2つを地方創生の目的だと考えてもらって差し支えないと思います。

小泉進次郎が語る、地方創生の「2つの目的」

 

また、いわゆる「増田レポート」の登場も大きな話題になりました。若年女性が2040年までに半数以下に減ってしまう都市を「消滅可能性都市」として、それが全国の市町村のうち約半数にのぼるという衝撃でした。

 

増田レポートの注目ポイントの一つとして、東京一極集中と人口減少を結びつけたことにあります。

これまでは、以下のサイクルが機能してきました。

  • 地方が人口を都市に供給する
  • 都市が富を生み出す
  • 生み出した富を地方に配分する

しかし、人口減少によって地方が人口を十分に供給できなくなったことで、このサイクルは成立しなくなってきました。特に、東京は出生率が低いので、都市に人を供給すればするほど人口が減っていくという問題が「東京一極集中の是正」と結びついたというわけです。

参考:図録▽都道府県の合計特殊出生率

 

東京一極集中を是正させるのは本当に良いことか

さて、前置きが長くなりましたが、本書は東京一極集中を是正することに対するアンチテーゼが述べられています。様々な切り口から述べられているのですが、基本的には都市に資源(ヒト・モノ・カネ)が集まることは、効率を高めることにつながります。

以前このブログでも取り上げましたが、このTEDのプレゼンを見てもらうと都市の効果がよくわかります。

都市および組織の意外な数学的法則

 

さらに、イノベーションは都市で人が集まることで生まれやすくなることが言われています。以下は、このブログで「年収は「住むところ」で決まる」の書評で書いた一節です。

そして、イノベーション企業は一箇所に集まる傾向にあることも重要なポイントです。ICTが進化して、コミュニケーションコストがタダみたいに低くなり、情報の伝達速度が著しく速くなりました。それでも、人が直接集まるとイノベーションが生まれやすくなる、ということがわかっています。 なぜ直接集まった方がイノベーションが生まれやすいかは、本書の中でいろいろな理由が述べられています。僕なりに解釈すれば、やはり電話やメール、SNSなどコミュニケーションは多様化しましたが、それが故に、直接対面で会うことによるアイデアの創出効果が、相対的に高くなったのだと思っています。

【書評】年収は「住むところ」で決まる | Synapse Diary

 

【書評】年収は「住むところ」で決まる

 

本書では、世界における日本、東京の位置付けや競争環境が述べられています。その上で、先ほど紹介した「地方創生」の目的や「増田レポート」に対しては、こういう観点が抜けていると指摘しています。

つまり、「地方創生」という大きなテーマを語るうえで、「人口減少」と「東京一極集中」という2つの論点を絡めたことが、「増田レポート」の新しさだったわけだ。とはいえ、「増田レポート」は「東京一極集中に歯止めをかけるべきだ」「地方に人を戻せ」と訴えるものの、東京ひいては日本の競争力をどう高めるべきか、については語っていない。
また、東京への人口の集中が地方消滅の元凶のように論じているが、一極集中が進んだ背景には、一定の経済合理性があることについては触れられていない。国の政策によって無理矢理東京に連れてこられた若者はいないのだ。仕事の数、生活環境など、彼らには彼らなりの、東京に出てきた理由がある。その事実を無視して地方に帰らせるという結論ありきの議論は、やや乱暴な感が否めない。

結局どうすればいいのさ?

僕は地方が人口減少の中で衰退してくのが良いとは思いません。一方で、東京の都市としての強みも、非常に経済合理性から見て有益だとも思っています。

僕なりの解釈を少し述べておくと、地方はあり方を変えていく必要があると思います。そのヒントは、本書の中のこの一文にあります。

その一方で、なぜか日本の市街地の面積は広がり続けている。同じく国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、三大都市圏および政令指定都市を除く全国県庁所在地の人口は、1970年から2010年の40年間で平均2割しか増加していないのに、DID(Densely Inhabited District=人口集中地域)の面積は2倍に拡大したという。

 

つまり、地方では都市面積が拡大し続けてきたわけです。コンパクトシティという言葉も出てきていますが、各地域で都市を集積させることで経済合理性を生み出しつつ、都市や人が住む場所を再構築する必要があるのではないでしょうか。

 

というわけで、今年は地方創生も重要なテーマであり続けるでしょう。どう言う政策が展開されるかも注目ですし、福岡のように起業などを盛り上げる機運がそれぞれの地方で高まるかもしれません。どこに住んでいようと、人口減少の影響は必ず受けることになります。皆さんは地方創生をどう考えるでしょうか。本書を読んで、ぜひ考えてみてください。