それについて、いくつか仮説を考えてみる。以下、個人的な思い込みに近い仮定。
仮定① 中学生までに学力が高い人は、そのまま学力が高い傾向を維持する
この仮定が成立しない場合は、学力を低下させる何かが、高校以降の生活に要因として存在する、ということになる。進むべき学校が存在しない。存在しても、所得が低いために、高い学力を維持できる環境に身をおけない、等々。実際にいるかもね。
仮定② 学力が高い人は、高い学歴を経る傾向にある
学歴が高いと言われている高校・大学・大学院に進むとなると、ある程度選択肢が限られる。事実として、全国的に名が知れている大学は、ほとんどが東京に存在するのだ。そうなると、高い学力の人は、高校や大学に進学する際に、地元に残らない可能性が高くなる。
仮定③ 高学歴の人は、高所得を維持する傾向にある
これは、先ほども触れたように、統計的にある程度実証されている。高学歴の人は、高所得を得られる場所を選ぶことになるのだ。それは、県民所得の記事でも書いた通り、圧倒的に東京がずば抜けている。
学力の高い人は東京に吸収されている
上記の乱暴でざっくりした仮定に従うと、地方で育成した学力の高い人は、東京などの都市部に吸収されている、ということになる。これは、プロ野球でいうと、主力選手を移籍金ゼロで引き渡す、という行為になる。
何が言いたいかといえば、地方で高い学力を維持することが、県民所得の向上に結びついていないのではないか、ということ。地方自治の観点からいって、教育に投資対効果が得られているか、ということである。
教育は、最終的な目的は、ハイレベルな人材を育成し、GDPを高めることにある。それが、都道府県単位で見た場合に、ちゃんと自分の都道府県にGDPというリターンがないのではないか、という意味だ。
(都道府県別のGDPに該当する、県民経済計算を参考。学力1位の秋田県は36位。学力ワースト1位の沖縄県は38位。)
(引用元:平成18年度県民経済計算)
高い学力を子どもに見つけさせたい方。いずれ、自分の子どもが自分の住んでいる土地を離れる覚悟を持ちましょう。
地方がとりうる戦略は
考えられる戦略は2つある。そのひとつとして、教育水準が高い、という実績から、教育関係の高い人材を積極的に招くことだ。これにより、より高い人材を確保し続けられるとともに、高い教育を受けたい、という人たちをひきつける魅力になるかもしれない。ただ、人口集積の高い産業ではないため、工場を1箇所誘致したら、従業員やその家族を含めて数万人が流入してくる、みたいな即効性のあるインパクトはない。
もうひとつは、人材が東京などの他都道府県に流出した場合は、教育投資を行った都道府県が、東京で稼いだ人からもらった税金を受け取れるシステムにすることだ。地方での教育投資の恩恵を受けた人材を使って、経済効果を得ていると考えると、地方にその恩恵の一部を返還してもおかしくはない。
ふるさと納税は、まさにそういう構造を是正するために考えられた仕組みだ。ただ、これはあくまで納税ではなく、寄付金扱いになるので、厳密な仕組みではなく、地方が人材を積極的に育成し、放出する上でのインセンティブとはいえないが。
結論
自分の住んでいる地域の教育水準が高いことは、喜ばしいことだ。しかし、その先に、高い人材を確保する産業がなければ、その人たちは妥協して収入の低い産業に従事するか、違う場所を求めて去ってしまうだろう。
それが地方の現状であることを認識することだ。教育を受けたその先に何が待っているかをマクロ的視点で考えてみれば、自分の子どもが歩む先が見えてくる。