闘う経済学

竹中平蔵さんの著書。この人は、難しいことを分かりやすく説明することにかけては、本当秀逸。久々に食い入るように読んだ。特に気になったところをメモ。
 
 
政府が公共事業を行っても、経済効果は低いことは証明されている
 
GDPを上げることは、国際競争の中で日本が勝ち抜き、良い生活を享受するために必要なことだが、GDPは数式モデルによって、何をどれぐらい投入すると、いくらぐらいの経済効果(GDPをどの程度押し上げるか)が、検証されているそうだ。
 
そして、政府支出がどの程度GDPに影響を与えるかは、実際のこれまでの数値から、1.2倍程度の効果しかないことがわかっているそうだ(過去は3倍程度)。これは、金融自由化とグローバル化による影響が大きいと思われる。
 
高度経済成長などでは、政府支出がGDPの高い押し上げの一因だったようだが、現在はもう効果がないことが証明されているのだ。だから、バラマキ政策を唱えるような政治家は、本当に時代遅れであると判断すれば良い。波及的に経済効果をもたらすものではないのだ。
 
 
地方分権が必要な理由
 
ものすごくシンプルに説明されているので、なんで地方分権が必要かが理解できた。資本主義・民主主義では、費用と便益はほぼ必ず一致している必要がある。それが、公平である、ということもあるし、費用を負担する人が享受する便益の価値を、ちゃんとチェックするからだ。
 
しかし、税金は違う。支払っている税金のうち、国が6割で地方が4割。そして、税金の支出については、国が4割で地方が6割。つまり、収入と支出が一致しておらず、国から地方にお金を移動させる必要がある。一般的なイメージでは、ここに中央の利権が渦巻いている、と言われている。
 
こういう状態が、国民・地元民の無関心を招き、また国と地方がそれぞれ責任を押し付けあう状態を招いている、ということだ。税収が少ない自治体には、ある程度補填が必要だが、自立と補填のバランスは考えないといけない。どういうバランスが最適なんだろう。
 
 
経済学は政治に対し、役に立つらしい
 
世の中には、その分野では当たり前のことが、一般的なイメージや思い込みで歪曲されて、間違った道理が平気で唱えられたりする。経済だってそうだ。確かに、原理は難しいことも多いのが経済分野だけれど、竹中さんみたいに上手に説明してくれれば、経済が面白く感じる。
 
経済学者が政治家になった、日本では稀有な例であるし、その人の経験が惜しみなく語られているので、読んで損はないかと思う。

闘う経済学―未来をつくる「公共政策論」入門
竹中 平蔵
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