随分前に話題になった「銃・病原菌・鉄」を読みました。知的な刺激受けっぱなしな内容でした。ちょっとボリュームがあったので、他の本に浮気しつつで読み終わるのに時間を要しましたが。
本書は、世界を見たときに文化の発展に違いが生じた理由を解き明かすもの。具体的には、こういう疑問を解消してくれます。
ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌の犠牲になったアメリカ先住民や非ユーラシア人の数は、彼らの銃や鋼鉄製の武器の犠牲になった数よりもはるかに多かった。それとは対照的に、新世界に侵略してきたヨーロッパ人は、致死性の病原菌にはほとんど遭遇していない。この不平等なちがいはなぜ起こったのだろうか。
そしてそれが本のタイトルにある「銃・病原菌・鉄」になるのですが、要因はもっと奥深いところまで分析されています。結論としては、以下の文に尽きます。
私ならこう答えるだろう。人類の長い歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に居住した人びとが生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたからである、と。
というわけで、ヨーロッパが文明を発展させ、他の国を侵略したりしたのには理由があることがわかります。そして、環境によって文化に発展に違いが生じるのだとすると、現在でも活かせる教訓はなんでしょう。
人が集まり、そして競争する
仮想でもリアルでも良いのですが、文明を発展させるためには、人が集まり、分業して作業効率を上げていく必要があります。歴史でみれば、それが農耕であり家畜です。農作物の生産性が向上したから、組織が発展し、農作業以外の専門的な作業を担う人も登場しました。
人が集まり都市が形成されれば、インフラ効率などあらゆる生産性が向上すると言われています。
都市および組織の意外な数学的法則 | Synapse Diary
つまり、人を集約し分業を進めることで、全体の生産性は向上するというわけです。これは農業だけの話ではなく、組織全般に言えることです。
そして競争も重要な要素になります。ヨーロッパと中国では、文明の発達は中国の方が早かったのに、ヨーロッパの文明が発達した理由も説明されていました。
また、国内の政治状況に対応するために、既存の進んだ技術を後退させていった多くの国々を思いださせるが、中国は国全体が政治的に統一されていたという点でそれらの国々とは異なっていた。政治的に統一されていたために、ただ一つの決定によって、中国全土で船団の派遣が中止されたのである。
逆にヨーロッパは、地域としては人や知識が交流しやすかったものの、国は多数が群がっており、どこかの国が失敗しても、別の国でイノベーションが起こる、ということが起こりやすい状況でした。中国は、統一されていたが故にひとつの判断の誤りが、全体を停滞させる結果につながったということです。組織にダイバーシティが必要な理由のひとつも、このあたりにあります。
人が集まること、そしてその中に競争環境があることは、組織・文化が発展していく上では重要なことだ、というのが本書では歴史的な観点から立証されています。
移動によって環境を変えることができる
グローバルでは、地域・言語・文化を超えて移動できる人が、最先端の場所で活躍できるようになっています。それぐらい、世界の労働市場は流動的になっています。
Human Resource Managemenの講義を受けて | Synapse Diary
日本はただでさえ、日本語という言語の壁が生じやすく、かつ保守的だとも言われています。環境の要因によって文明の発展が変わるのだとすると、人は移動できる方がいざというときに有利だということです。
人が集まる環境を作ることも、同じぐらい重要だとは思いますけどね。
普及するためのドライバー(要因)を考える
本書では、東西に伸びたユーラシア大陸の方が、南北に伸びたアフリカ大陸やアメリカ大陸に比べて、農業が普及しやすかった点が挙げられています。これは、東西であれば気候の違いが生じにくく、どこかで確立された農業手法を適用しやすいからです。
目からウロコでした。必ず、普及していくためのドライバーとなるものがあるんだなーと感心したのです。日本でみても、本州は南北に伸びているところと東西に伸びているところがあります。これによって、有利になることも不利になることもそれぞれの地域であるのでしょう。
何かを広めようと思うときに、それを促進させる要因や阻害させる要因というのは、環境にあるのかもしれません。
上記の考え方は、今後の働き方や仕事への取組み方に対しても使えるものなんじゃないかなーと。
文明の発達の違いはなぜ起こるのか http://t.co/kWjJMac6Za @reijiさんから