アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!

経済というのは、因果関係が複雑で、実証例もそんなに多いわけではないことから、未だに多くの論争を生む学問だ。そういう学問の中では、理論も重要かもしれないが、ストーリーの理解も同じぐらい必要になる。本書はストーリーとして今や今後の経済をどう読み解くかを教えてくれる。

 

インフレだから景気が良くなるわけではない

この本にある主張は、デフレが不況の要因ではないし、インフレにすれば景気が良くなるわけではない、ということだ。

グローバル経済下では、「所得の上昇→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスは成り立ちますが、安倍政権が想定する「物価の上昇→所得の上昇→消費の拡大」という従来のカビ臭い経済理論は成り立ちません。そのことは、この本を読み進めるうちに明らかになっていくでしょう。

統計の世界でよく言われるのは、相関関係と因果関係は違う、ということだが、まさにそういうことだ。むしろ、所得が上がる前にインフレがきてしまうことで、経済にダメージを与えてしまう可能性の方が高くなってしまう。

一方で、株高やドル安になっても、中小企業や一般国民にはその恩恵がほとんどもたらされませんでした。むしろ、金利低下や物価高による副作用のほうが大きかったと言えます。金利低下が銀行の貸し渋りを招き、苦境に陥る中小企業を増加させましたし、ガソリン価格の高騰に代表される物価高は生活コストを上昇させ、一般国民の生活をいっそう苦しくしました。

いわゆる、企業が富むことや、株式を保有する人たちが富めば、労働者も富んでくるという「トリクルダウン理論」が言われているが、それがどこまで効果があるのか、リーマンショック後のアメリカはどこまで効果があったのかは意見が分かれている。

 

シェールガス革命のインパクト

本書のストーリーの根幹になっているのは、シェールガス革命だ。そのインパクトが、自分が思っているよりもとても大きかった。シェールガスが今後普及してくると、アメリカは天然ガス・原油ともに世界一の生産量になると見込まれている。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、アメリカは2015年までに天然ガスでロシアを抜き、2017年までには原油でサウジアラビアを抜き、両方の資源の生産量で世界一になる見通しです。その流れに乗り、アメリカの企業や家計では、割高な石油の代わりに安価なシェールガスを使う動きが広がってきており、海外に依存するエネルギー消費量が減少傾向の途上にあります。

これによって、エネルギーコストが安くなることで、価格勝負ができるようになる。それによって、生産量が増え、雇用が増えるという好循環が発生し、アメリカが景気を浮上させる。その波に日本が乗っていけば、日本も再度景気を浮上させることができるのではないか、ということだ。

この本を読むと、経済というのは外交戦略と切っても切り離せないことがよくわかる。

そして、日本にとってもエネルギーコストの影響は国家レベルでみても大きくて、貿易収支が赤字になるどころか経常収支が赤字になることも予想される。その場合の影響は以下の通りだ。

つまり、日本が経常赤字国に転落すれば、国内の貯蓄や資金が不足し、国債発行による資金調達を海外からの資金に頼らざるをえなくなります。仮に日本の経常収支が赤字に陥れば、最悪の場合、日本国債の利回りが急騰し、日本が財政危機に見舞われるという事態も想定しなければなりません。

アメリカのシェールガス革命によってエネルギーコストが低下すると、経済的にはデフレになると言っている。つまり、コストが下がるので全体として物価が下がるからだ。ただ、重要なのはインフレかデフレかではなくて、実質賃金と物価の関係であり、物価より実質賃金が上回っていれば、人は生活豊かに感じるだろう、ということだ。

世界経済の歴史を遡れば、インフレの時代よりもむしろデフレの時代のほうが長かったことが明らかになっています。インフレになるのは戦争か財政難といった一時的な現象であり、それ以外の平和の時代や技術革新による生産性が向上する時代には、デフレが通常の経済状態なのです。とりわけ、18世紀後半から19世紀にかけてのイギリスの産業革命の隆盛期や、19世紀後半の大デフレ期(グレートデプレッション)においては、技術革新による供給能力の飛躍的な進展が世界的なデフレをもたらしました。

 

最後に本書の中では、興味深い記載がある。

たしかに、地方の生活インフラが向上した現在の日本では、都会よりも地方のほうが暮らしやすく生活の豊かさを感じる部分は少なくありません。とりわけ、子育て世代にとっては、地方のほうが豊かさを実感できることと思います。米欧の有力企業の多くが本社を地方に置いている事実を見ても、日本企業はもう一度、地方に目を向けた経営、雇用を考えてみるべきではないでしょうか。

個人的にも、地方の方が生活しやすい面を感じることがある。今後は日本でも地方が活況になるのかもしれない。

アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!

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