MBAというのが、Master of Business Administrationの略だと知ったのは、随分前だった気がするけど、この本はまさに「Administration」の限界を考察しているのが、非常に面白い。管理方法や部下のモチベーション・育成などに疑問を感じている人は、ぜひ読んでみると良いだろう。
「会社」という存在とは
市場に存在する企業というのは、株主の資源を最大化するための企業と、従業員を含めたコミュニティとしての企業という2つの役割があって、それが相反する場合が多く、かつ株主の方が重要視されているのが現状。ROE偏重で良いのか?というのは、今のMBAでは大きなテーマだったりするわけで。
あと、短期業績重視というのも、経営者に長期投資を行いづらくさせている要因で、大きな企業ほど本当は長い目で活動を考えていくべきなのに、そのような方向性を示しづらくなっている。つまり、いろんなところで企業と従業員に矛盾が表面化しているのが現状なのだ。
外に目を向けて常に学習する
これまでの「管理する」だけでは組織の運営には通用しない、のだとすると、「じゃあどうすればいいのさ?」ということになる。その答えとして提起されているのが、ピーター・センゲが提唱した「学習する組織」だ。簡単にいえば、組織を構成する人たちが学習することで、未知の問題にも対応できるし、各自が意欲を高く保てるという考え方である。
要は、遠い将来を見通すことなどできないので、常に学習して進もうということだ。そのときに組織を結束させるひとつのツールが企業理念やビジョンになる。
有名なPDCAサイクルではなく、PDSAサイクルとして、CheckではなくStudyという考え方が紹介されているし、外の情報を積極的に取り入れて、学習し、改善し、成長していける組織をつくろう、という考えは共感できる。
長い時間軸で考える
不確実な時代で、短期業績を維持するだけで精一杯かもしれない。ただ、創造的で意欲が高い組織というのは、長い時間軸で考えてこそ生まれる。長期的なスパンで考えて投資を行い、人を育てていく。
ただ、土台となる企業の安定基盤が損なわれては元も子もない、というのも理解できる。これがまさにジレンマなのだろう。しかし、それでも短期だけに目を奪われては、その先の発展は難しくなるのは間違いないだろう。
この記事を書くにあたって日本のR&D費を調べてみたら、日本は米国に次いで世界第二位のR&D費を投入していた。さらに、GDP比率でみると世界1位だ。
統計局ホームページ/統計でみる日本の科学技術研究 総括編 その1
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個人主義ではなく、集団での協調を重視する日本人には、どちらかといえば強い管理型は苦手で、長期的に学習して行動する方が合っているのかもしれない。
一般的に言われる「管理」だけでは、人々のモチベーションを向上させ、創造的な組織をつくることはできない。もちろん管理は必要ではあるけれど、それ以外の要素と組み合わせて用いることで、不確実な時代でも生きていける組織になるかもしれない。
各種リーダーシップ論の変遷から話がスタートしているので、管理やリーダーシップ、組織運営に関する様々な考察が得られたよ。