アサヒのスーパードライは、とても売れているし、宣伝も大々的に行われているので知らない人は少ないだろう。この本は、アサヒのスーパードライが発売されてから勃発したと言われる「ドライ戦争」あるいは「ビール戦争」を描いたものだ。
スーパードライの発売当時、アサヒはシェアが低落しており、キリンが独禁法に抵触しそうなぐらい一人勝ちだったが、スーパードライをきっかけに売上げが増加し、ついにはキリンを追い越す。
このビール戦争は、マーケティングの題材としてはうってつけだ。日本人の食生活の変化によるビール嗜好の変化、ドライビール・発泡酒という新しい市場の開拓、既存製品のカニバリゼーション、これまでの製品ブランドへのこだわりによる戦略ミス、冷蔵庫の普及による個人消費の増加、酒屋から量販店への販売チャネルの変化。マーケティング戦略で考えなければいけない材料が、このストーリーにはあらゆるところに含まれている。
大きな企業であってもマーケティングで失敗することもある。それは、王者であったキリンでも、キリンを追い越したアサヒでも。そういう戦いがあるから、ビジネスは面白い。そして、こういう事例から、新しいことを学んでいくのだ。
以前、キリンを始めとするビール会社4社のことを書いたが、そのときは震災などの影響で売上が低迷している、という話だった。しかし、もっと大きな目線でみると国内市場はもう飽和状態に近く、中国など世界市場に目を向けている。それは、サントリーが上海の進出に苦労しながらも、徐々に事業基盤を構築して今では圧倒的なシェアを築いていることからもわかる。
今でもチューハイ、ハイボール、ノンアルコールなど、酒類の進化は続いている。激しいマーケティング戦争は続いていくだろう。