オーソドックスな本に分類されるようなものだと思うんだけれど、たくさん発見がある一冊だった。これはいろんな人に一読することをおすすめしたい。
人材マネジメントというのは、本当に難しい。それは、企業と個人には対立する要素が必ず含まれているからだ。そして、それをバランスすることが人材マネジメントに求められる。そして、今後の人事部門が求められるスタンスというのは、以下の通りだろうと思う。
今後、企業経営がより分散的になり、組織をまとめていくための求心力が、ビジョンになればなるほど、方向性の共有化の重要性は増します。P.24
企業の求心力が、複合的なものになったり、相対的にビジョンが重要になっている。そうなると、人事部は積極的に個人をコントロールしていくのではなく、個人のキャリア形成をサポートする役割になっているんだろう。そのためにも、選択オプションを用意したり、プロセスを透明化することが重要になってくる。特に個人のニーズが多様化しているので、労働時間、処遇、雇用形態など様々な柔軟性が組織には求められる。
OJTはなぜ有効か
個人的には、OJTがなぜ有効な教育手段であるかが、ちゃんと説明されているのがすごい嬉しかった。こういうことですよ。
経験からの学習可能性が最も高い仕事
1.自己決定:人に押しつけられたのではない、自分の仕事として、受け入れられる
2.フィードバック:結果がうまくいったかどうかの判断がつきやすい
3.有能感とチャレンジのバランス:その課題は難しいが、できると思う
4.有意味であること:どんなに小さな仕事でも、その仕事に意味があるという認識
ただ、最近はOJTの効果を疑問視する声もある。この記事にあるように、「知識」に関しては時間による陳腐化が激しくなってきているので、その点は考慮しなければいけないだろう。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : OJTが効かなくなってきたワケ – ライブドアブログ 大西 宏のマーケティング・エッセンス : OJTが効かなくなってきたワケ – ライブドアブログ |
負のフィードバックの威力
ただ、正のフィードバックは受けたいが、負のフィードバックは受けたくない。そんな心理は誰でももっています。スーザン・アッシュフォードという経済学者は、能力の高いマネジャーほど自分をマイナスに評価する上司を避けることがうまくなるので企業の中で成長せず、逆に、負のフィードバックを意図して探すマネジャーは時間をかけてトップパフォーマーになっていくことを確認しました。P.103
今はライフネット生命で有名な岩瀬大輔さんも、コンサル会社時代は上司から作った資料を真っ赤に添削されて喜んで帰っていったと聞いたことがある。それだけ、自分から積極的に負のフィードバックを受け入れられると、自分の力にできる。確かに、自分の中でも辛いと思った経験ほど、後ほど自分の血肉になっていると感じる。言うのは簡単で、実行するのは難しいけどね。だけど、負のフィードバックが自分に還元されることを知っていれば、受け入れやすくもなる。
他にも、日本は、キャリアで差が付き始める年数を比較的遅くすることで、誰にでも昇進を期待させて、長期間の雇用と忠誠心を確保しているという指摘も面白かった。ただ、早期選抜など成果主義が入ってきて、その傾向も崩れつつある。
人材マネジメントというのは、バックオフィスのイメージがあり難しいのだけれど、モチベーションコントロールや、人の成長、効率的なチームマネジメントなど、日々の作業に直結する重要な要素がたくさん含まれている。そういう意味で、いろいろ気づきが得られる一冊だった。