少しタイムリーじゃなくなったけど、ふと疑問に思ったので書いてみる。Google DriveとかAmazon Cloud Driveなど、どうやら最近はクラウドストレージサービスが話題になっている。個人的にはDropboxで20GBを超えた容量があるし、それ以上大きな容量を使うことはないので、他のストレージサービスを使うつもりはないのだが、Amazonがクラウドストレージサービスを展開する意味については興味を持ったので、少し考えてみた。
Amazon Cloud Drive: Learn More |
Amazonの経営戦略
Amazonは、方針がぶれないということで有名である。そして、Amazonの本業はAmazonというネット上の「市場」での売上を向上させることである。Amazonは既にネット書店ではなく(もちろん書籍の販売は重要な位置づけであることには変わらないが)、Amazonというネット上の市場で、販売店とユーザを結びつける「場」を提供することで儲けている。
これについて、いくつか紛らわしそうなものを挙げてみる。
Amazon Web Servicesという会社がある。これは、ITインフラストラクチャを主に企業に対して提供する企業なのだが、これはAmazonの本業であるネットリテールで培った技術を転用することで、本業を助ける儲けにしようとしたと聞いたことがある。ちなみに、AWSの売上はAmazonグループの売上では「その他」に分類されており、5億ドル程度らしい。
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次に電子書籍端末であるKindle。特にAndroidを搭載したKindle Fireは、端末代は採算割れしていると言われている。そうまでして展開するのは、KindleをAmazonのWeb市場へダイレクトにつながる入り口とすることで、Amazon市場での売上を向上させようとしている。ここでも、電子書籍という売り物を売るための仕組むと考えられる。
最近だと、BtoB向けの市場も開始したようだ。これも、これまでのAmazonの市場を拡張するものであり、経営戦略としてはぶれていない。
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Amazon Cloud Driveはどれぐらい儲けるのか
まず、Amazon全体の売上を調べる。年々売上高は増加しているのだが、最近だと2011年10~12月期の売上高は174億3100万ドル。純利益は1億7700万ドルらしい。大体の規模感を把握したいだけなのでこれで十分。この数値を4倍したのがほぼ年間の数値になる。
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これに対して、Amazon Cloud Driveがどの程度儲かるのかを考えてみる。いくつか仮定をおいてみよう。 参考として、Dropboxの登録ユーザ数が5000万人。有料ユーザはその4%だそうな。そうなると200万人になる。例えばAmazon Cloud Driveのユーザが同程度であり、かつ平均してみな50GBを購入したと仮定すると、200万人☓50ドル/年となるので、年間1億ドル。本業の売上高と比べた場合、年間の1%にも満たない。これを大きい売上として期待している、という見方は難しいだろう。
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AWSで培ったクラウド技術なら、Amazon Cloud Driveを提供することは技術的には難しいハードルではないはずだ。そして、AWSと同様に、本業をサポートするための「副業」と捉えることもできるかもしれない。
Amazon Cloud Driveの狙い
最初に述べたとおり、Amazonはネット上の「市場」でどれだけ売るかが至上命題だと思われる。だとすると、Amazon Cloud Driveはどういう位置づけになるのだろうか。僕は「Amazonが提供する電子コンテンツを管理するサービス」の延長と考えている。
今回のサービスでも、Amazonで購入したMP3は容量に含まれないことになっている。これは、Appleも同じ方針をとっているが、自社のマーケットから購入されたコンテンツが容量に含まれない、他デバイスで同期する、といった利便性をシームレスに提供することで、自社のマーケットとPC等のデバイスを結びつけようとしている。Amazonの場合、Kindleを除いて、携帯やPCを直接販売するわけではないので、各プラットフォームで電子コンテンツを管理するような機能を提供する必要がある。
電子書籍はアメリカでは広く普及しており、音楽の電子化は当たり前になった。今後も電子コンテンツは増えていくだろうし、Amazonでの販売比率も増えていくはずだ。今回は音楽だけだが、いずれは電子書籍も範囲に含まれることになるのかもしれない。
今後のストレージサービスはどうなる
個人的には、複数のストレージサービスを併用するのは面倒臭い。そして、容量は個人利用では数GBで十分な気がする。となると、ここはあまり差別化要因にはならない。逆に、AppleやAmazonがやっているように、自社のサービスで購入したコンテンツを管理する仕組みで囲い込む方が、差別化になる。購入したコンテンツは、買えば買うほど大容量になるし、それを無料でWeb上で管理できるようになれば、魅力に感じるよ。その意味で、Dropboxの今後はやや難しい展開になるんじゃないかなあ。
というわけで、Apple、Amazonあたりは、自社で展開しているマーケットとの関連を売りにしていくと思う。GoogleはいまいちGoogle Playが弱いもんなあ。どちらかというと、Google DocumentとのシームレスなつながりでGoogle依存度を上げていく方向性かな。
とはいえ、今のところこの分野ではDropboxが先行者としてリードしてると思うし、使い勝手も良い。上に書いたようなものとは全く違う、今後の新しい付加価値に期待しているけどね。